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2 people agree with this review 2009/12/18
これは類まれなる名演だと思う。ジュリーニがテンポの遅い、粘着質の演奏を行う傾向が出てきた85年の録音であるが、本盤では、むしろ早めのテンポで引き締まった演奏を行っている。第1楽章の終結部など、猛烈なアッチェレランドをかけているが、決してやりすぎの印象を与えないのは、ジュリーニがブルックナーの本質を鷲掴みにしているからに他ならない。同時期にウィーン・フィルを指揮したスタジオ録音があるが、演奏の出来としては段違いであり、本盤は、ライブならではの熱気も相まって実に感動的だ。ベルリン・フィルの技量も特筆すべきであり、ジュリーニとの相性もぴったり。第7は、ブルックナーの交響曲の中でも優美さをたたえた曲であるが、ジュリーニの場合は、優美である上に、更に高貴さをも漂わせている点も見事だ。
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4 people agree with this review 2009/12/17
悲愴は、これまでもグランドスラム盤など、様々な復刻が試みられてきたが、本盤のオーパスによる復刻は、これまでで最も音質がいいものであり、その意味では、究極の復刻盤と言ってもいいのではなかろうか。ゆったりとしたテンポの中、フルトヴェングラーならではアッチェレランドなども随所に見られるが、名演の誉れ高い後年のカイロ盤と比較すると、スタジオ録音だけにいささか抑制的である。しかしながら、深沈とした深みは、今回の復刻CDの音質の良さもあり、本盤の方に軍配が上がるのではないかと思われるところであり、スタジオ録音でのベルリン・フィルの安定感を加味すれば、トータル的には、フルトヴェングラーの悲愴の最高の名演と評価したい。ティルは、フルトヴェングラーの十八番だけに、スタジオ録音とは思えないくらいのドラマティックで、なおかつ深みのある名演であると言える。ジークフリートの葬送行進曲も、スタジオ録音と言うこともあり、じっくりと構えたインテンポによる深みのある演奏であり、フルトヴェングラーの同曲の演奏の中でもスケール雄大な随一の名演と言っても過言ではないだろう。
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6 people agree with this review 2009/12/15
ジュリーニにとって70年代はもっとも脂が乗っていた時期。加えて、ベルリン・フィルも、名うてのスタープレーヤーが勢ぞろいした、力量的にも史上最高の状態にあったと言える。したがって、このような両者が組んだ演奏が悪かろうはずがない。特に超名演と言えるのははじめの2曲だ。ホヴァーンシチナは、我々はムラヴィンスキーの名演を知っているが、本演奏は、あのように引き締まった緊張感を強いるようなものではない。むしろ、明朗なイタリアの明るい太陽に照らされるようなイメージであるが、美しさにおいては、ムラヴィンスキーの名演にも引けを取らないと思う。比較的ゆったりとしたテンポによる曲の進行も、楽曲の持つ美しさを丁寧に描き出していくのに大きく貢献している。チャイコフスキーも素晴らしい。若き日のチョン・キョンファを温かくリードしつつ、ゆったりとしたテンポで、隅々に至るまで優美に曲想を描いていく。しかも、高貴な気品にも満ち溢れており、ジュリーニが本盤をスタジオ録音しなかったのが不思議なくらい、楽曲を自家薬籠中のものにしていると言える。ドヴォルザークの第7も名演であると言えるが、同時期にクーベリックが同じくベルリン・フィルを指揮して超名演を成し遂げており、それと比べられてしまうのが少々不利ではある。第1楽章など、ベルリン・フィルとしては珍しいようなアンサンブルの乱れも見られるが、第2楽章、第3楽章と順次調子を上げ、特に素晴らしいのは終楽章。ベルリン・フィルの圧倒的な合奏力をベースにして、地鳴りがするような重量感あふれる名演を成し遂げている。クーベリックのような民族色を加味すると、どうしても及ばない面はあるものの、総体として、名演と評価するのに躊躇しない。
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0 people agree with this review 2009/12/13
チェコの音楽の魅力を存分に味わうことができる名演だ。楽曲の魅力、演奏の見事さ、そしてSACDによる高音質録音という三拍子揃ったCDも珍しく、このような名演が12年もの間、お蔵入りであったことが実に不思議なくらいである。スークの交響詩「プラーガ」は、ドボルザークやスメタナの楽曲でも有名ないわゆるフス教徒の旋律を巧みに交えた親しみやすく、わかりやすい音楽であるが、ヴァーレク&チェコ・フィルは、実に明朗で、なおかつ郷愁溢れる美しい演奏を行っている。また、ヤナーチェクの有名な2曲も、豊潤なチェコ・フィルのブラスセクションをベースとしつつ、ここぞという時の迫力にも、そして繊細な美しさにもいささかの不足もない。タラス・ブーリバでのオルガンの絡み方も見事であり、ヤナーチェクの音楽の魅力を存分に満喫させてくれる。SACDによる高音質録音も見事であり、エクストンとしても最高の部類の出来と言ってもいいのではなかろうか。
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4 people agree with this review 2009/12/13
ジュリーニは、特に80年代のロサンジェルス・フィルの監督をやめた後からは、非常にテンポの遅い、しかも、ねばっこい、いわば粘着質の演奏をすることが多くなったような気がする。したがって、楽曲の性格によって、こうしたジュリーニのアプローチに符合する曲とそうでない曲が明確に分かれることになった。ブルックナーの交響曲も、同時期にウィーン・フィルと組んで、第7、第8及び第9をスタジオ録音したが、成功したのは第9。それに対して、第7と第8は立派な演奏ではあるものの、ジュリーニの遅めのテンポと粘着質の演奏によって、音楽があまり流れない、もたれるような印象を与えることになったのは否めない事実である。本盤は、84年の録音であるが、確かに第1楽章など、ウィーン・フィル盤で受けたのと同じようにいささかもたれる印象を受けた。しかし、第2楽章から少しずつそうした印象が薄れ、そして、素晴らしいのは第3楽章と第4楽章。ジュリーニの遅めのテンポが決していやではなく、むしろ、深沈とした抒情と重厚な圧倒的な迫力のバランスが見事であり、大変感銘を受けた。総体として、名演と評価してもいいのではないかと思う。その要因を突き詰めると、やはり、ベルリン・フィルの超絶的な名演奏ということになるのではなかろうか。この時期のベルリン・フィルは、カラヤンとの関係が決裂状態にあたったが、ベルリン・フィルとしても、カラヤン得意のレパートリーである第8で、カラヤンがいなくてもこれだけの演奏が出来るのを天下に示すのだという気迫が、このような鬼気迫るような超絶的名演奏を成し遂げたと言えるのではないか。
7 people agree with this review 2009/12/12
ハイティンクのマーラー指揮者としての適性については、私としては、やや疑問符がつくと思っている。穏健派とも言えるハイティンクの芸風が、マーラーのような劇的な交響曲では、どうしても根源的な力強さに欠けるきらいがあると思うからである。同じシカゴ交響楽団を振ったマーラーの第6など、その欠点がもろに出ていた。本盤の第2も、確かに角がとれた演奏だ。わめいたり叫んだりすることなど、薬にしたくもない。しかしながら、その分、魅力的な箇所も満載だ。例えば、第2楽章の繊細な美しさ。第4楽章の独唱が入る箇所の深沈とした深み。そして、終楽章の合唱が入る箇所の荘重たる響きと、終結部の決して力づくではない壮大な迫力。このように、ハイティンクの穏健なアプローチでも、十二分に魅力のある名演を成し遂げることが出来たのは、曲が第2というマーラーの初期の交響曲であったということが大きいのではないかと思われる。そして、何よりも素晴らしいのは、シカゴ交響楽団の卓抜した技量と、それを鮮明な音質で捉えたSACDマルチチャンネルによる名録音である。総体として、高い評価を与えることができる名CDいうことが出来るのではないか。
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1 people agree with this review 2009/12/11
第1集が発売されたのが確か2002年なので、何と7年ぶりの第2集の登場だ。本盤に収められた曲はいずれも立派な演奏ではあるが、ロッシーニの2曲を除くと、何かが足りないような気がする。フルトヴェングラーならではの音楽の本質を抉り出すような深みのある演奏を心がけているのであろうが、これらの小品ではどうしても重苦しいものになってしまう。例えば、ハンガリー舞曲第10番に特に顕著で、舞曲というよりは、まるでお化け屋敷に入ったようだ。こうもりもいわゆる愉悦感に欠けているし、モーツァルトの3曲もどこかやぼったい。バッハの2曲も大仰なまでのものものしさが際立つ。それに対して、ロッシーニの2曲は、フルトヴェングラーのドラマティックな芸風によって、実にコクのある名演に仕上がっている。中間部のアッチェレランドなど見事な音のドラマであり、この両曲を偉大な芸術作品に仕立て上げている至芸はさすがと言うべきであろう。しかし、全体を俯瞰すると、同時に発売されたトスカニーニ盤に比べると、どうしてもおもしろみに欠ける気がする。フルトヴェングラーの芸風は、小品ではなかなか力を発揮するのは難しいということなのだろうか。
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5 people agree with this review 2009/12/10
第1集よりもよりポピュラーな名曲がラインナップされているが、これまたトスカニーニの指揮芸術の至芸を味わえる超名演揃いである。トスカニーニのCDは、これまではデッドな録音が多く、それ故にテンポの速い素っ気ない演奏をする指揮者という誤解を生む傾向があったが、最近では、より高音質のCDが発売されることにより、そうした誤解が解けつつあることは嬉しい限りだ。本盤も、オーパスが良質のLPから見事な復刻を行っており、トスカニーニの至芸を良好な音質で味わうことができる。前述のように、いずれも名演であるが、特に、私は、ローマの謝肉祭、死の舞踏、フィンランディアを高く評価したい。ローマの謝肉祭の何という生命力であろうか。畳み掛けるようなテンポ設定と、トスカニーニならではの温かなカンタービレの融合が見事である。死の舞踏は、冒頭の12時を知らせる音型を比較的ゆったりと強めに演奏しており、これは大正解。殆どの演奏が早めのテンポであっさりと演奏しているが、それでは音楽が生きてこない。主部もゆったりとしたテンポによるコクのある演奏を行っており、多くの評論家が酷評している同曲を実に内容豊かな音楽にしており、おそらくは同曲の最高の名演と言っても過言ではあるまい。フィンランディアも、いわゆる北欧風の演奏ではないが、湧きあがる生命力とダイナミズムは迫力満点であり、中間部の抒情も感動的。カラヤンも同曲を得意とし名演を遺したが、このトスカニーニ盤を規範としたのではないかと思うほどだ。
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4 people agree with this review 2009/12/08
本盤は、トスカニーニの類まれなる指揮芸術の至芸を味わうことができる一枚である。かつて、トスカニーニは、快速のインテンポによる指揮者というイメージがあったが、それは、過去に発売された多くのLPやCDのデッドで劣悪な音質によるところが大きい。最近では、復刻CDやXRCD化などにより高音質化が図られ、歪められたトスカニーニ像が正されつつあるのは朗報というべきであろう。本盤も、オーパスによる見事な復刻によって、トスカニーニの至芸を十分に満足し得る音質で味わうことができるのが素晴らしい。どの曲も、決してインテンポではなく、曲想を巧みに描き分けるための緩急自在のテンポ設定を行うことにより、聴かせどころのツボをしっかりと押さえている。加えて、トスカニーニならではの濃厚なカンタービレが随所に現れ、徹底的に鍛え抜かれたNBC交響楽団の名人芸も卓越している。本盤におさめられたいずれの曲も名演と高く評価したい。
6 people agree with this review 2009/12/06
ヴァントが最晩年にベルリン・フィルと遺した名演の数々は実に凄いものであった。第5に始まり、第9、第4、第7、第8と、いずれも神々しいばかりの名演である。今般、同時期にミュンヘン・フィルと行った名演の数々が、国内盤で発売されたが、いずれも、ベルリン・フィル盤と比べても、勝るとも劣らない名演である。重複しているのは、第4、第5、第8及び第9であるが、違いはオーケストラの音色と録音くらいのものであり、あとは好みの問題だと思われる。本盤の第9の録音は98年。その約半年後のベルリン・フィルとの録音、さらに、来日時の録音が、名演のベストスリーということになるが、その中でも、本盤とベルリン・フィル盤が超名演と言うことになるだろう。第1楽章など、実にゆったりとしたテンポによる深沈とした趣きであるが、ここぞというときの金管楽器の最強奏など悪魔的な響きであり、低弦の重厚な響かせ方にも凄みがある。第2楽章も豪演だ。ここは中庸のテンポをとるが、中間部のトリオの箇所との絶妙なテンポの対比も自然体で見事だ。終楽章は、相変わらず金管を最強奏させているが、決して無機的には陥らず、天啓のような趣きがある。それと対比するかのようなこの世のものとは思えないような美しい弦楽の奏で方は、ブルックナーの絶筆に相応しいアプローチであると思われる。演奏終了後に起きる一瞬の間も、当日の聴衆の感動を伝えるものであり、ヴァントの音楽を愛する聴衆の質の高さの表れということが言えるだろう。
5 people agree with this review 2009/12/06
ブルックナーの第6は隠れた名曲である。いわゆるブルックナー指揮者でも、第3〜第5や第7〜第9はよく演奏会で採り上げるものの、第6はあまり演奏しないということが多い。作品の質の高さからしても、これは大変残念なことと言えるだろう。そのような中で、ヴァントは、この第6を積極的に演奏してきた指揮者である。これまでの最新録音は、CDでは95年盤、DVDでは96年盤が知られ、いずれも手兵の北ドイツ放送交響楽団とのもので、いずれも名演と言えるものであった。本盤は、99年の録音であり、今のところ、ヴァントが遺した第6の最後の録音ということになるが、ヴァントの第6としては、前述の95年盤や96年盤を超える間違いなく最高の名演であり、他のヨッフムの旧盤やアイヒホルン盤などと比較しても本盤の方がはるかに格が上。ということは、現存する数々の第6の名演中、史上最高の超名演と言っても過言ではあるまい。第1楽章など、金管を思いっきり力強く吹かせているが、決して無機的にはならず、アルプスの高峰を思わせるような実に雄大なスケールを感じさせる。それでいて、木管楽器のいじらしい絡み合いなど、北欧を吹く清涼感あふれる一陣の風のようであり、音楽の流れはどこまでも自然体だ。第2楽章は、音楽評論家の宇野氏が彼岸の音楽と評しておられたが、本盤の演奏こそが正に彼岸の音楽であり、ヴァントとしても、死の2年前になって漸く到達し得た至高・至純の境地ではないだろうか。第6は、第3楽章や第4楽章のスケールが小さいと言われるが、ヴァントの演奏を聴くと決してそうは思えない。終楽章など、実に剛毅にして風格のある雄大な演奏であり、特に、第2楽章の主題が回帰する箇所のこの世のものとは思えないような美しさ。演奏終了後、ただちに拍手が起きないのも、他の第4や第8などの場合と同様であり、当日の聴衆の深い感動を伺い知ることができる。ヴァントは、2002年にベルリン・フィルと第6を演奏する予定だったとのことであるが、その死によって果たせなかった。本盤の演奏を超えるような名演を成し遂げることが出来たのかどうか、興味は尽きない。
4 people agree with this review 2009/12/06
ブルックナーの交響曲中で最もポピュラリティを獲得している第4であるが、ブルックナーの権威であるヴァントとしても、98年のベルリン・フィルとの演奏で、漸く理想の名演を成し遂げることができたのではないかと思う。それは、やや早めのインテンポで淡々とした演奏ではあったが、随所に見せる味の濃さが見事であった。しかし、ヴァントの死後、手兵の北ドイツ放送交響楽団との神々しいばかりのラストコンサート盤が発売されるに及んで、ベルリン・フィル盤もトップの座を譲ることになった。本盤は、そのラスト・コンサート盤の1か月前の演奏であるが、これは、ラスト・コンサート盤にも勝るとも劣らない超名演だと思う。いわゆるブルックナー開始は、やや強めの弦楽のトレモロによって開始されるが、これを聴いただけで他の指揮者とはものが違う。この第1楽章は、意外にも随所でテンポの変化を行っているが、それでいて音楽が実に自然に流れる。金管楽器を常に最強奏させているが、無機的な響きは皆無。ヴァントのブルックナーの交響曲の本質への深い理解と相まって、筆舌には尽くしがたいハイレベルの演奏を成し遂げている。第2楽章は、ゆったりとしたテンポで淡々と進行しているが、そこから湧きあがってくる何とも言えない寂寥感を何と表現すればいいのだろうか。第3楽章も、主部をやや早めのテンポで演奏して、中間部でテンポをやや緩やかにするという緩急の差を、オーケストラを手足のように扱い、決して恣意的な印象を与えないで成し遂げるのは、正に巨匠ならではの至芸。終楽章は、ヴァントのブルックナー交響曲演奏の総決算。厳格なスコアリーディングによる緻密さと、最晩年の第8でも顕著であるが、柔軟で、なおかつスケール雄大なアプローチを融合させた稀有の名演。演奏終了後、聴衆から拍手が起こるまでに一瞬の間が空くが、これは、この超名演から受けた聴衆の深い感動と、聴衆の質の高さがうかがい知れる素晴らしい瞬間だ。
7 people agree with this review 2009/12/05
ブルックナーの第8は、まぎれもなくブルックナーの最高傑作であると思うが、それだけに、ヴァントも、ライブ録音も含め、何度も録音を行ってきた。しかしながら、ヴァントの厳格なスコアリーディングによる眼光紙背に徹した凝縮型のアプローチとの相性はイマイチであり、93年の北ドイツ放送交響楽団までの録音については、立派な演奏ではあるものの、やや面白みに欠けるきらいがあった。しかしながら、本盤のミュンヘン・フィルとの演奏と、この数カ月後のベルリン・フィルとの演奏の何という素晴らしさであろうか。神々しいばかりの超名演と言っても過言ではあるまい。ヴァントは、これまでの凝縮型のアプローチではなく、むしろ朝比奈隆のように、より柔軟でスケール雄大な演奏を行っている。本盤は、ベルリン・フィル盤に比べると音質にやや柔和さが見られるが、この当たりは好みの問題と言えるだろう。微動だにしないゆったりとしたインテンポを貫いているが、同じミュンヘン・フィルを指揮したチェリビダッケの演奏のようにもたれるということもなく、随所で見せるゲネラルパウゼも実に効果的だ。演奏終了後、拍手が起きるまでの間に少し時間が空くが、当日の聴衆の本名演に対する深い感動が伝わってくる名シーンだ。未完成も超名演。かのワインがルトナーが、第1楽章の低弦による旋律を「地下から聞こえてくるように」と表現したが、提示部が終了し、展開部に移行する個所の低弦の軋むような重厚な響かせ方は、正に地下に降りて行くような趣きがあり、他の指揮者では決して聴くことができないもの。第2楽章は、早めのインテンポで淡々と演奏するが、随所に漂う何とも言えない寂寥感は、ヴァントとしても最晩年に漸く到達し得た至高・至純の境地と言えるだろう。
6 people agree with this review 2009/12/04
私見であるが、シューベルトの第9(最近では第8番とするのが一般的であるが、CDの表記にここでは従う)は、歌曲や室内楽曲、ピアノ曲に数多くの傑作を遺す一方で、交響曲ではなかなか名作を生み出せなかった(未完成は傑作であるが、完成された曲ではないことに留意)シューベルトによる唯一の完成された傑作であり、そのせいか、これが正解というアプローチがない。つまりは、様々な演奏のアプローチが可能であり、それにより、曲から受ける印象がまるで異なってくることになる。ウィーン風の演奏ならば、ワルターの名演がある。この曲を愛しつつもなかなか思うようには指揮できなかったカラヤンの流麗な名演もあるし、ベートーヴェン風のドラマティックなフルトヴェングラーの名演もある。シューベルトの交響曲を後世のブルックナーの交響曲に繋がっていくものという説に従えば、クレンペラーや朝比奈隆などの名演もある。その他にも、様々なアプローチが可能であると考えるが、ヴァントはこの第4のタイプの名演だ。冒頭からほとんど微動だにしないインテンポに貫かれている。いかにもブルックナーを得意としたヴァントならではのアプローチだが、それでいて、第2楽章の中間部や終結部の繊細な抒情は、特別なことは何もしていないのに、人生の諦観のような寂寥感を味わうことができる。これは、大指揮者だけが表現できる至高・至純の境地と言えるだろう。ヴァントは、この数年後にベルリン・フィルと同曲を録音しており、基本的なアプローチに変化はないが、ミュンヘン・フィルと録音した本盤の方が、オーケストラの違いもあるのだろうが、やや柔和な印象があり、このあたりは好みの問題だと思う。
3 people agree with this review 2009/12/03
ブラームスの第1は、全集となった手兵の北ドイツ放送交響楽団との名演の1年後の録音であり、基本的な解釈は変わらない。眼光紙背に徹した厳格なスコアリーディングの下、凝縮された緻密な職人芸の演奏を繰り広げているが、決して血も涙もない演奏ではない。それどころか、随所に人間的なぬくもりがある個性的解釈が見られる。第1楽章は誰よりも快速の序奏で開始されるが、主部に入ってからは幾分テンポを落とし、歌うべきところは優美に歌いあげている。第2楽章は実に繊細なタッチで開始されるが、その抒情の豊かさは、最晩年のヴァントならではの至高・至純の境地と言えるだろう。第3楽章の導入部では再び快速のテンポに転じ、そして個性的なのは終楽章。特に、低減による主旋律が厳かに奏された後の全強奏による猛烈なアチェレランドは、他の演奏では決して見られないもの。そして、終結部の低減の濃厚な表情づけも効果的であり、ヴァントにもこのような個性的な指揮をすることがあったのかと驚かされる。ヴァントと同じく職人肌の指揮者であったケンぺも、ミュンヘン・フィルと同曲を録音しているが、演奏の性格は全く異なる。質実剛健のケンぺに対して、ヴァントの方がより柔軟性があり、チェリビダッケのオーケストラを見事に統率して、自分の思い通りの個性的な名演を成し遂げたヴァントを大いに讃えたい。ベートーヴェンの第1も、第1楽章のゆったりとした序奏に続く主部を快速で演奏して、緩急の差を強調させたり、第2楽章を誰よりも優美に歌いあげるなど、これまたヴァントの個性的解釈を味わうことができる名演と評価したい。
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