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TOP > My page > Review List of 遊悠音詩人
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13 people agree with this review 2012/01/18
陰欝でない、明晰なチャイコフスキー!「スヴェトラーノフを彷彿させる」云々とあるが、ソヒエフとスヴェトラーノフは似て非なるものである。金管とティンパニを主体に、怒涛のエネルギーの爆発を見せるスヴェトラーノフとは対照的に、ソヒエフは、全てのパートを微細に至るまでバランスよく配分させ、その総体としての合奏を形成していく。感情に流されず、響きは常に見通しがよい。チャイコフスキーは殊に弦楽器の扱いが巧みであり、掛け合いでは左右を行き来するステレオ効果を出したり、パートを分割させて旋律を強調したりする。そのテクニックは殆ど神業的とも言えるほどだが、そうした特長が、優秀な録音も相俟って面白いくらいに聴き取れるのだ。間の取り方も、必要以上に間をあけずに詰める。それでいて、テンポを揺らすところは思い切り揺らし、ロマンティシズムを表出するあたり、なかなか一筋縄にはいかない。これは新時代の名演といえよう。余談だが、名演・名盤だからといって、すぐに過去の代表作を引き合いに出して消費を喚起するのは止めて欲しい。チャイコフスキーならスヴェトラーノフやムラヴィンスキーに匹敵すると言い、ベートーヴェンならフルトヴェングラーに比肩すると言い、マーラーならワルターやバーンスタインを持ち出す安易な批評は、演奏そのものに対する誤解を招くだけだ。猛省を促したい。
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2 people agree with this review 2012/01/16
透明感溢れるシューマン!今や飛ぶ鳥を落とす勢いを見せるパーヴォ・ヤルヴィ。彼の演奏は、各々が一斉に厚めの音を奏でる旧態保守的なものとは真逆である。言わば寄木作り的というべきか。音の一つ一つを細やかなパーツに分解した上で、その総体としての合奏を再構築するタイプである。その結果、他とは一線を画すクリアーな響きを獲得した。両翼に振り分けられた第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンの掛け合いによるステレオ効果といい、その裏でチマチマと動くヴィオラの明瞭さといい、ふわりと浮かび上がる木管のみずみずしさといい、よくぞここまでというほどの透明感である。それでいて、いざという時の迫力にも事欠かず、また、テンポも随所で捻りを加えているところが何とも心憎い。ヤルヴィが言うところの、いわゆる分裂気質なるものが、絶妙なテンポ設定も相俟って恐ろしいほど伝わってくる。特に《ライン》の第1楽章の中間など、テンポが落ちると同時に急に暗雲が立ち込め、殆どマーラーの世界のように迫ってくる。録音も極めて優秀で、抜群の見通しの良さとレンジの広さを持っている(但し、安価のオーディオだと平面的に聴こえてしまうかも……)。こうなると俄然、第2と第4に期待が高まるが、これはリリース決定次第、即予約だろう。
2 people agree with this review
8 people agree with this review 2012/01/13
古楽器研究が達した高み!《水上の音楽》は、その知名度に比して実態の掴みづらい曲である。ヘンデルの自筆譜は18世紀に消失しているし、作曲者の生前にはまともな形で出版されることもなかったという。お陰で多種多様な版が作られるようになり、大管弦楽の為のハーティ版や、チェンバロ編曲版を基に再構成したレトリッヒ版など、その種類はブルックナーもかくやと言わんばかりである。要は様々な角度から、《水上の音楽》は編まれてきた訳だが、エルヴェ・ニケの編曲は今までの種々雑多なものとは次元を異にするものである。何より、1717年当時の響きを再現すべく、楽器から編成、奏法、更には音律に至るまで、徹底してこだわっているのだから凄いとしかいえない。ナチュラル・ホルンおよびトランペットは、ピストン無し、ストップ奏法無しであり、自然倍音列に含まれる音程を矯正せずに吹いている。これを“ズレ”と捉えるのは我々の勝手な言い分であり、当時はこれが正しい音律だったことを思えば、感慨一入だろう。ヘンデルは、その“ズレ”を計算に入れて作曲しているのだ。殊に第1組曲の“アレグロ”や“メヌエット”などは自然倍音の魅力炸裂!有名な“アラ・ホーンパイプ”も今まで聴いたことのない響きに驚愕必至!第3組曲の“ジーク”終盤のパーカス部隊も豪華絢爛!カップリングの《王宮の花火の音楽》もこれまたとてつもない名演で、ここまで豪快な演奏はないほど!特に第1〜2曲目のティンパニの弾けっぷりは和太鼓を彷彿とさせるほどの強烈な打ち込み!音の一つ一つに火薬が詰め込まれ、夜空一杯に打ち上げられるまばゆいばかりの饗宴!録音も、残響をたっぷりと入れた艶やかなもので、雰囲気も抜群だ。天国のジョージT世も泣いて喜ぶだろう
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2 people agree with this review 2012/01/04
新時代の真正フランク登場!フランクの交響曲というと、“フランス風とドイツ風の合いの子のような作品”だとされることが多い。そのためか、中途半端な洗練さと中途半端な重厚さを合わせただけの、中途半端な演奏が跋扈する嫌いがあった。あるいは、極端に軽すぎたり極端に重すぎたり、要はちっともフランクがフランクとして響いて来なかったのである。ミュンシュもマルティノンもクレンペラーも、筆者から言わせれば「何だかなぁ……」なのだ。そこへ来てヘレヴェッヘが古楽器でアプローチしたのだが、これがとてつもなく素晴らしい。全ての音が透けて見える。こんな音が隠れていたのか、鳴っていたのかと、目から鱗の連続なのだ。そうした細部に渡るまで洗練された響きを構築しながらも、重心は決して軽すぎず、殊に最弱音から強奏に至るまでの振幅には圧倒させられる。これぞ洗練さと重厚さの融合の極致。これぞフランクの醍醐味である。対するフォーレがこれまた素晴らしい。大編成ともなると、必ずオケや合唱が濁るものだが、さすがヘレヴェッヘ!天から降り注ぐが如き神々しさで、響きには一点の曇りもなく、どこまでも透き通っている。これを聴いてしまうと、有名なクリュイタンス盤やコルボ盤が粗雑に聴こえてしまうのだから困ったものだ。録音も、合唱の美しさを十二分に堪能させてくれる優れたもの。いつまでもアナログ時代の“名盤”に寄り掛かっていると損をするとはこのことだ。
3 people agree with this review 2011/12/29
こんなことを言っては往年のファンのお叱りを受けそうだが、バッハは古楽器で弾くのが当たり前の現在、学術的見地からすれば、リヒターの演奏など“過去の遺産”に過ぎないのかも知れない。また、様々な歴史考証や新たな解釈が出てくる中で、いつまでも“名盤”という名に固執していては、クラシック音楽はちっとも前進しないであろう。そうした旧態然とした風潮に反駁しつつもなお評価するのは、やはりスタンダードのスタンダードたる所以なのであろう。バッハの入門編として、お手頃価格で名演に触れられるのだから、初心者には持ってこいなのかも知れない。しかし、少しでも古楽に親しみのある人なら、本来金管は当然ナチュラル・ホルンとナチュラル・トランペット(唇の振動だけで音程を変える。原則、自然倍音列の音しか奏でられない)であるべきことも、弦だってノン・ヴィブラートであるべきことも知っている。テンポ設定も、今日的解釈からすれば全く異なり、本来はもっと歯切れがよいということもご承知の通りである。だが虚しいかな、こういうのを十把一からげに“小手先の業”だの“流行の産物”だのこき下ろす風潮が根強く残っている。第一、音楽評論家のお偉方からして食わず嫌いをしているのだから世話はない。だが、批判的精神を持ってした綿密な調査や解釈、それらを活かした演奏が、果たして“小手先”で出来るだろうか?また、古楽器奏法は既に1960年代から本格化しており、もう半世紀も経つのだが、それでも“流行の産物”と言い切れるのであろうか。この盤は、過去に思い入れの深いファンにのみ“名盤”としての価値を有するものだと言ってよい。
3 people agree with this review
9 people agree with this review 2011/12/25
重厚一辺倒なブラームスの時代は終わった!ブラームスの、それもピアノ協奏曲第1番といえば、冒頭のドラムロールからして重々しくやるのが当然のように思われてきた。ギレリス盤然り、カーゾン盤然り、ポリーニ盤然り、フルオーケストラをバックに、大音響轟く豪傑な演奏が、すなわち最もブラームス的であるといわれ続けてきた。しかし、ブラームスの時代のオケやピアノのありようは、現在のそれと似て非なるものであった。ピアノの構造自体違うし、楽器も古楽器が主体で、なおかつ編成もコンパクトだったはずである。現代オケのような轟音など、ブラームスは想像すら出来なかったはずなのに、何故それが正統派だと言い切れるのだろうか。本盤は、そうした旧態然とした風潮に対するアンチテーゼであり、ゆくゆくは真の正統派となるべくして生まれたものだと言える。綿密な歴史考証に基づき、ピアノはエラールを使用。オケも古楽器で、弦は勿論ノン・ヴィブラートだ。今まで重厚の名のもとに埋もれてしまっていた微細な音まで、くっきりと浮かび上がる。エラールの丸みのある音も上品だ。騒がない、喚かない、それでいて心の奥へ染み入るような独特の世界がここにある。こんなブラームスが、かつてあっただろうか。
9 people agree with this review
4 people agree with this review 2011/12/22
《グレート》はこうでなくては!よく、天国的な長さなどと評される交響曲であり、おおよそ冗長ともいえるほどフレーズの繰り返しが多い曲である。だからこそ、古色蒼然たる大編成のオケで聴いてはいけない。だが如何せん、ただでさえクドい曲に脂肪の上塗りをするような解釈が、随分長いこと「正当的解釈」と目され、一方、時代考証に基づく演奏を「流行の産物」と十把一からげに批判する風潮が、いまだ根強く残っている。ヘレヴェッヘの解釈は、ピリオド奏法自体を目的とするのではなく、モダンオケとピリオド奏法の融合によって如何に音楽を創造していくことが出来るかという、可能性の追求にある。その結果もたらされたのは、ピリオド奏法ならではの透明感や明晰性を出しつつも、決して痩せぎすで拙速になることなく、モダンオケならではの底力をも見せ付けるという、非常に多彩な音響に満ちたシューベルトである。例えば第1楽章など、普通の演奏だと序奏からして眠気を誘ってしまうが、速めのテンポでさらりと流すことによって、合奏の微妙な色彩の変化を醸すことに成功している。続く主題も速めながら、コシの据わったサウンドで決して拙速には聴こえず、むしろ躍動するリズムに身体が揺れる程の心地よさがある。繰り返しばかりの終楽章など、凡百の指揮者だと変化に乏しく飽き飽きしてくるが、ヘレヴェッヘは疾風怒涛の如きテンポと強弱のメリハリをつけることによって、実にダイナミズムに富んだ演奏に仕上げている。軽やかな木管の響きもよく広がるし、ティンパニの打ち込むもさすがだ。両翼配置ならではの弦楽器の掛け合いの妙も面白い。主題のリピートもあって、通常の演奏よりもむしろ長いはずなのだが、これは一気に聴ける。録音がこれまた超優秀で、ダイナミック・レンジもとてつもなくワイドだ。こんなにも、一つ一つの音が微塵のストレスもなく伸びやかに広がり切る録音も珍しい。間違いなく最高の一枚だ。
4 people agree with this review
6 people agree with this review 2011/12/08
廉価にして演奏は超一流!今や廉価盤BOX隆盛の時代を迎えたが、この手のものは玉石混淆甚だしく、演奏も音質も明らかに三流のものを寄せ集めただけのものさえ少なくない。この点、DHMは全く素晴らしい出来栄えである。演奏は何れも硬派にして上品であり、アンサンブルも精緻の極み。バッハ父子やヘンデル、ヴィヴァルディといった王道レパートリーはもとより、滅多に聴くことのないザヴァテッリやゼレンカ、ピゼンデルなども入っており、資料的価値も持ち合わせている。ブックレットには曲目の解説こそないが、使用楽器や編成について詳細に書かれており、非常に興味深い。装丁も綺麗であり、オリジナルのデザインを活かした紙ジャケも心憎い。バロック期の管弦楽作品を幅広く聴きたい人には恰好の一組といえよう。
6 people agree with this review
3 people agree with this review 2011/12/05
※ご注意!心臓疾患をお持ちの方、また心臓に何かしらの病歴をお持ちの方は、《驚愕》第2楽章の試聴をお控え下さい。心肺機能が停止しても、その責任は負いかねます。シャックリが止まらなくてお悩みの方には特効薬としてお勧めします。ただし、繰り返し使われますと免疫が付きますが御容赦下さい。その他の方も、神経質な方の中には、最悪の場合警察へ通報される方も出てくるかと思われますが、あくまでミンコフスキの演出であって、緊急事態ではございませんので、予めご承知おき下さいませ。さて、冗談はこの辺で。このザロモン・セットは演奏・演出・録音全てにおいて最高級だ。《驚愕》に限らず、ミンコフスキの表現意欲は実に旺盛で、ルーブル宮音楽隊も何とも楽しげに弾いている。古楽器演奏ながら、ありがちな乾ききった響きではなく、立派な低音に象徴されるように、厚みのある迫力満点のサウンドを堪能できる。勿論、古楽器ならではの見通しのよさはピカ一で、楽譜に書かれた全ての音が躍動している。特に《ロンドン》はすこぶる豪華で、ハイドンの交響曲の集大成に相応しい絢爛たる演奏に仕上がっている。録音も特筆もので、レンジが広く、コンツェルトハウスの雰囲気をよく再現している。勿論ライヴ音源特有のノイズもある。だが、《驚愕》など客席の反応あってこその面白さがあり、ノイズも臨場感を増すのにプラスに働いている。
3 people agree with this review 2011/12/03
アーノンクールの先見の明は、21世紀のバッハ演奏解釈のあり方を見抜いていた!今日でこそ、古楽器によるバッハは当たり前になってきている。だが、まだフルオケで演奏するのが一般的であった60年代から、古楽器演奏を提唱し続けていた先駆者こそ、アーノンクールなのである。この録音も80年代、まだまだフルオケ優勢な時代だったと思うし、同年代の録音と聴き比べてみても異色の部類に入っていたが、今日翻ってみると、アーノンクールこそ正統派だったのだと思わずにはいられない。フルオケでの演奏は、何れもテンポが遅く響きも重く、重厚というより鈍重という方がしっくりくるような感じであり、いささか食傷気味であった。そこへアーノンクールが、実に快活で覇気に富んだバッハ観を提示してくれた。音楽室の左上の壁で偉そうにしていたバッハが、スッと我々の前に降りてきて、楽しげに音楽を奏でてくれるような、そんなイメージの大転換に導くアーノンクール。このCDにはは、時を超えた天才同士の邂逅の軌跡が刻まれているように思えてならない。特に管弦楽組曲第3番は、決定的名演といえよう。
1 people agree with this review 2011/11/29
細部まで克明!ファンの間では、評論家諸氏の手放しの賛美も相俟って、「幻想交響曲=ミュンシュ」というフォーミュラが長いこと続いている。確かに、多感な青年芸術家の恋物語をこれ以上ないスケールで描いており、殊に1967年収録のライヴおよびスタジオ盤は、全録音中屈指の名盤として名高い。しかし、時は21世紀、そろそろ新しい解釈が受け入れられてもよさそうである。従来のベルリオーズは、その破天荒なストーリー性を強調する余り、曲の繊細な構成や豊かな音色をなおざりにしてしまう嫌いがあった。特に強奏部においては、音が混濁し、ただの喧騒にしか聞こえない部分すらあった。しかし、的確な時代考証や奏法の工夫などを行うと、この曲の新たな魅力が開陳される。既に古楽器での演奏では、ノリントンやガーディナーなどが著名であるが、ミンコフスキ指揮の当盤は、あくまでマーラー室内管を主体にルーブル宮音楽隊が加わる感じであり、従って音色自体は現代オケのそれに近い。だが、楽器編成は比較的コンパクトであり、また随所に古楽器が加わることで、今まで聴くべくもなかった音響に何度も出逢うことが出来る。殊に内声部の充実は目を見張るばかりであり、耳をそばだたせずにはいられない。確かに、ミュンシュのような切れば血の出るような狂気は感じられないが、その分、じわりじわりと襲う恐怖がある。特に第5楽章は、魑魅魍魎がケタケタと笑っているような感じがよく出ている。反復もしっかり行っているし、録音もオーソドックスながら秀逸。併録の《エルミニー》がこれまた幻想好き泣かせで、冒頭からいきなり固定楽想が出てくるので驚きだ。これ程魅力的なCDが、廉価で手に入る。これは“買い”だろう。
1 people agree with this review
3 people agree with this review 2011/11/29
重厚なだけがブラームスではない!ブラームスというと、油絵の具をべっとりと塗ったような、厚ぼったく渋いイメージを持ってしまう。しかし、的確な時代考証に基づき楽器編成を小規模にし、なおかつ演奏法を工夫すると、楽譜に書かれた全ての音が有機的に作用していることに気づく。ハーディングとマーラー室内管の解釈はまさに正鵠を射ている。細部まですっきりと見通しがよく、今まで埋もれがちだった微細な音も克明に鳴らされている。それでいて痩せぎすな感じはせず、殊に内声部の充実は目を見張るばかり。ティンパニの乾いた響きも小気味よい。ファウストのヴァイオリンがこれまた素晴らしく、知・情・意、全てにおいて一本筋の通った筋肉質な音を聴かせてくれる。女流ヴァイオリニストにありがちなヴィブラートのきつさや線の細さなどとは無縁で、音色自体輝かしいし、技巧も磨かれている。個人的にはハイフェッツやシェリング、オイストラフ等を愛聴してきたが、何れも一長一短、録音も古く、第一、旧来保守然とした厚手のブラームスであり、いささか食傷気味であった。しかし、当盤を聴いて、溜まった垢が一気に落とされた想いだ。ジャケットの若葉色のように、実に清々しいブラームスだ。
6 people agree with this review 2011/11/22
温かく愉悦に満ちた絶品のモーツァルト。ピリオド奏法と聞くと、つい慣習を打破しようと躍起になってやる演奏だという印象を持ってしまう。アーノンクールやノリントンなどその好例だろう。だが、マッケラスのアプローチは違う。ピリオド奏法ならではの透明感と、現代オケならではの重量感を高い次元で融合させている。弦はノン・ヴィブラートだが、ありがちなキンキンとした感じはなく、むしろ柔らかく響くあたりはさすがとしか言いようがない。楽器編成は少ないはずなのに迫力にも事欠かない。コントラバスの低音などズッシリと抉るようだし、ティンパニの破裂音も小気味よい。ナチュラルホルンおよびトランペットの響きにも独特の艶がありまろやかだ。何より、全てのパートが実に生き生きと音楽を愉しんでいる。学究肌タイプの指揮者にありがちな、四角四面で杓子定規な窮屈さなど全くないのだ。勿論、従来の演奏の在り方に喰ってかかるような喧嘩腰なところもない。あらゆる聴き手を包み込み夢中にさせる包容力と職人魂。マッケラス恐るべし!40番のメヌエットなど、「アレグレットはアレグロより早い」側の解釈による快速テンポで度肝を抜くが、これでこそ「疾走する哀しみ」というもの。感傷に過ぎず、高潔なる哀しみが表現され、勢いを止めることなく終楽章になだれ込む。その展開の鮮やかさといったら凄い。《ジュピター》など白眉の出来で、殊に終楽章など天にも昇る心地良さ!LINNの超美麗優秀録音も最高!
0 people agree with this review 2011/11/20
うっとりするほどの美演!《チェコ組曲》は、巷ではプラハ室内管盤を高く評価する傾向にある。何より廉価で本場の演奏を聴けるとなれば売れるのも当然だろう。しかし筆者としては、ポルカで顕著なように、粗っぽいヴィブラートにどうも馴染めないものを感じ、いまいち好きになれなかった。録音も、やや硬さが残るのが惜しかった。そんな折、EXTONで、しかもチェコ・フィルという当盤に期待を寄せたのは言うまでもない。早速聴いてみて、やはりアンサンブルはプラハ室内管よりチェコ・フィルのほうが数段上と感じた。何より弦楽器の艶が違う。もっとも、ノイマン全盛期の頃の渋味はやや薄れ、より洗練されたものに変わってはいるが、それを短所だとは私は思わない。むしろ、録音の優秀さも相俟って、どこまでも優美で気品ある演奏に仕上がっていることを評価したい。確かに、プラハ室内管に比べテンポは緩やかであり、見方によっては勢いに欠けると感じるかも知れない。しかし、チェコの抒情をたっぷりと節度を保って奏でるあたり、やはり抗い難い魅力がある。併録の《おとぎ話》などまさに秘曲というべきもの。ファンタジーとノスタルジーが融合した、何とも愛らしい佳曲である。殊にヴァイオリンのソロは絶品!
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2 people agree with this review 2011/11/18
ああ、こういう温かいピリオド奏法もあるのか。時代考証に基づくモーツァルト演奏というと、つい「古い慣習を破ってやる!」と喧嘩腰になってやるものだという先入観を抱いてしまう。アーノンクールやノリントンなどはその典型だ。確かに面白いのだが、落ち着きやデリカシーに欠け、何ともギクシャクした印象をもつ人も少なくないだろう。だが、マッケラスのアプローチは違う。ピリオド奏法特有の明晰さは勿論、流麗で伸びやかな質感にも事欠かず、何とも典雅な演奏に仕上げている。まるで、老匠の人柄のよさと博学ぶりがそのまま音になったかのようだ。溌剌とリズムに乗りつつ、弦の艶やかさは常にキープ。ホルンの合いの手も愛らしく、角が取れた、柔らかいサウンドであり、安心して身を委ねていられる。LINNの録音も、さすが2010年のレーベル・オヴ・ザ・イヤーを受賞しただけあって極上!
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