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Review List of うーつん 

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  • 8 people agree with this review
     2018/12/14

     我々音楽愛好者がベルリン・フィルに寄せるイメージとは、そして当のベルリン・フィル自身が「柱」として最も大切に考えているものは、「ベートーヴェン」となるのではないだろうか。 BPO自身のレーベルとして出すからには相当の覚悟と自信を持っていると推察する。内田光子とのパートナーシップによって新しい全集がでたことをまず喜びたい。



        聴いてみて(そしてBlu-ray Discで観て)思ったのは、実に室内楽的であり、即興的、自由さにあふれたベートーヴェンである、というところ。 ラトルも楽団も柱であるべきベートーヴェンを伝統として仰々しく演奏せず、自分たちの身体としてともにあり、ともに呼吸するかのような自然さが心地よい。内田もその中で自由に泳ぐが如く、自分の思うベートーヴェンを表現していると思う。




        特にすばらしいと感じたのは緩徐楽章における濃密な表現と充実した精神性。後半3曲ならいざ知らず、前半2曲の協奏曲にもやはりベートーヴェンがベートーヴェンたる所以があることを示している。特に第2番のそれは絶品。多くの聴衆が入っている大きなコンサート会場であることを忘れてしまっているかのように内田は再弱音で没入の境地で奏し、精神の静謐さを表現している点が特に印象深い。




         オケの各パートも丁々発止、自由闊達であり、聴いていて高揚するような、沸き立つような感興にも不足しない。 重厚でド迫力だったカラヤン時代のそれとは趣を異にするが、現代のBPOのベートーヴェン ピアノ協奏曲なのだから、これで良しとしたい。

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  • 7 people agree with this review
     2018/10/27

     都合がつかず断念したこの演奏会をディスクで聴けることが何よりうれしい。対訳・解説付きオペラのディスク4枚組なら福澤諭吉さん一人分を覚悟するところだろうに、このお値段はコスパ面でもすばらしい。

      まだ聴きこんだ回数は多くないが、メシアンならではの旋律、音とリズム、鳥の声の万華鏡が押し寄せてくる。演奏の規模を考えるとディスクではこじんまり聴こえてしまうように感じるのはやむを得ないだろう。これを会場で聴かれた方がとてもうらやましい。祝福に満ち、法悦にいたるまでの美しい音楽劇が4時間たっぷり。指揮者がこの曲のスペシャリストだけあって見通しもよく、安心して音楽の伽藍に身をひたすことができた。

      音楽の内容について詳しい解説は他の評者にお任せしたい。が、メシアンの人物と音楽における集大成的なこの大作をディスクという形で、日仏友好の記念の年に日本から発信できることは非常に喜ばしいことだと思う。

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  • 5 people agree with this review
     2018/10/27

     ベートーヴェンは真っ向勝負というより、しっかり尊敬をこめて真摯に弾き進めていく印象。このディスクの「聴きどころ」であろう庄司紗矢香作のカデンツァも奇をてらうものでなく極めてオーソドックス。おそらくこの盤から数十年(?)後に再度録音する機会があるならもっと踏み込んだどっしりとした演奏に熟成しそうな予感がある。アグレッシブで求心的な「庄司紗矢香節」を期待すると少しおとなしめに感じてしまうかもしれない。


      一方、シベリウスではライヴという条件もあってか、彼女らしい揺らし方と節回しが出ていると思う。シベリウスの故郷を思わせる峻厳な自然より、作曲者の心の奥底にあるあつい情熱をほんのりと感じさせる。

      サポートはソロを引き立てるかのように前面に出てあれこれ細工はしないが、安定感はさすが。 他にないようなあっと驚くことを求める向きには物足りない印象を与えるかも。じっくり落ち着いた、噛みしめるような演奏が好きな方にお薦めです。

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     2018/09/23

     フルート一本で世界をまたにかけた演奏活動を行うE.パユが、古今東西の曲を通じて縦横無尽に音楽世界を旅するディスク。テレマンの幻想曲と時代も国も異なる作品をちりばめて単調さを回避しつつ、「旅の同乗者」として私たちをいざなってくれている。

      
      一番気に入ったのは、演奏の音の録り方(演奏の仕方?)。フルートソロでずっと聴き続けるのは正直いっていくぶん退屈になってしまっていたたちだったがこれは違った。
     (私個人としては)キレイなフルートの音もずっとソロで聴き続けると食傷気味になってしまうのだが、パユの奏する当盤では「息」を使って奏することを意識させてくれる録り方が目立つ。フルートという無機質の楽器に息吹を吹き込み、指でキーを押さえる音までくっきり捉えている。

     
      おそらく確信犯・意図的に録っているようだが、私はこれが気にっている。2017年にエラートからリリースされた「ドビュッシー:室内楽曲集」における「シランクス」と録られた音が全く違う。音が違うのは当然のことではあるが、両者とも録音時期が2016年12月〜2017年の4月で近いにもかかわらずこれだけ音が違う。コンセプトの違いにもよるのだろうが、両ディスクの聴き比べも面白い趣向であろう。
     

      曲の個性もそれぞれはっきりしていて、あちこちの名所・スポットに気の向くまま連れて行ってもらっている感じで飽きさせない。面白いですよ、こういう旅も。

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     2018/09/15

     DG時代のベートーヴェンやモーツァルトなどもフレッシュでそれぞれの楽器からの豊富な発言量が特色だったが、移籍してからの録音はそこからさらに自然な流れと含蓄が加わった内容になっていると思う。

      ドイツ・オーストリア(ウィーン)文化圏の音楽伝統と重みを俯瞰するかのような曲目が嬉しい。他のレビュワーの言にもあるがモーツァルトがここまで彫り込みが深いところは好みが分かれそうだが、ベートーヴェンとウェーベルンとのカップリングであればむしろこちらの方が「らしく」聴こえるのではないだろうか。

      ウェーベルンの2曲は特に圧巻。ごく自然に、内発的に音楽が形成されていながら、切れ込みが鋭く、美感も損ねていない。ウェーベルンが苦手な方にも納得させることができる自由さがここにはある。ハーゲンSQにとって3人の作曲家はどれも「自分たちの言葉」で語れる作品なのだろう。

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     2018/09/12

     我々日本人にとって、自然の牙が剥き出しになって襲い掛かった2011年3月11日は忘れることができない「分岐点」となることであろう。 「体験」が「記憶」になることが将来的に何をもたらすのかまだ判らないが、音楽を通してその痛みや喪失、そしてそこから立ち上がる再生を考えるのも一つの方法と思う。


      このディスクに収録された曲はすべて軽い気持では聴けないものばかり。ただ、それでも聴かずにはいられない。そして、あの震災に、自然の驚異に想いを馳せずにはいられない。

      音楽の語法は細川俊夫らしいものであるが、そのパレットに描かれた風景の激しさといったら…。 氏の既存の作品とは一線を画す、圧倒的に痛烈な自然の凶暴さをそのままに表現していく。対して小さな存在である人間は、か細い声でしかその存在を表現できない。

      「嘆き(2013 ver.2015)」はディスク化を切望していたものだけに真っ先に聴いたが、他の曲も聴くうちに「4曲全体でひとつの作品」と思えるようになった。先の震災をテーマにしてはいるが、もっと根本では「自然への畏れ」でつながっているからだ。


      ライナーノートからの引用を行わせてもらうが、「嘆き」の曲冒頭に歌われるこの一節をご覧いただければこのディスクのメッセージが少しでもご理解いただけると思う。

      『・・・最近、恐ろしい出来事があり、私はもはやその影から逃れることができない。敬愛する友よ、私の人生はわずか数日の間に筆舌に尽くしがたいほど無残に壊された。そして痛みをも拒む無言の苦悩だけが残っている・・・

    (ゲオルく・フォン・トラークルが友人に宛てて書いた手紙の一節、当盤解説ノートより)

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     2018/06/25

     ピアノ・ソナタ作品集とならずに小品や変奏曲を織り交ぜた愉しいアルバムです。直球と変化球を変幻自在にコントロールしてくるベズイデンホウトの才気溢れるディスク。モーツァルトの多面性を愉しむにはもってこい、誰もが奏でる「耳タコ」とも思われがちなK.545のソナタも正攻法的でありながらひねりも加えた新鮮な演奏、そこからさまざまな方向に曲を紹介し、2枚目最後のK.576まで単調にならないところがさすが。かっちりしすぎるとつまらなくて居心地が悪くなり、崩し過ぎると趣味が悪くなるモーツァルトを自然に聴かせてくれるのが一番のポイントでしょうか。ソロ演奏と並行しての協奏曲集もどんどんリリースを進めてほしい、これからも楽しみな演奏家の愉しいモーツァルトをお薦めします。

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     2018/06/24

     ヴァイオリンとオーケストラによる親密な室内楽の様相。ヴァイオリン協奏曲ではないから、そのいきおいで考えると肩すかしくうのでご注意。じっくりと耳をそばだてて聴いている(ひたっている)と思いがけない表情が見えてきて面白いですよ。遅々として進行していない…と思いきや新しい楽想や音空間が開けて、新たな場面や色相が登場し、飽きずに愉しむことができます。音楽理論的なものは抜きにして、こういう作品がもっと多くの方に知ってもらえたらいいですね。というわけでお薦めします。

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     2018/06/11

     日本には四季があり、それぞれに味わいがある。思索もそれぞれの季節で変化するものだが、このディスクはそんな「秋」にぴったりな演奏が詰まっていると思う。 かなり奇矯な感想になるが、聴いてもらえれば何となく理解してもらえると思う。   まず、音楽が実に渋く、それでいて芳醇。シフ&塩川夫妻による滋味深い音色 −− 特に、品良く静的にくすんだヴァイオリンは、京都・実相院において、紅葉が木張りの床に映りこむような程よい艶加減と光のバランスを連想させる。−− と掛け合いにぐっと惹きこまれるのだ。バッハ、ブゾーニそしてベートーヴェンともに外向的な音は一つもなく心の内側に凝縮されるような音楽作りがなされている。


    冒頭のバッハはヴァイオリンとピアノの音の線が、お互いを聴きあいながら会話するかのように豊かに絡み合っていく。   ブゾーニは見かけの晦渋さよりも安定した音の運びで見通しがよく、バッハのコラールによる変奏は非常に美しい。バッハのソナタの後にくるから余計にそう感じる。   ベートーヴェンも、およそ派手に技巧をちりばめずに、中身勝負の曲であることをしみじみ実感できる、最期を締めくくるにに相応しい充実した音楽に満ちているように思う。


      「秋」といってもそれらしい風情が希薄になってきているが、こんな音楽に耳をかたむけるのも秋の愉しみになるのではないだろうか。一聴を薦めたい。(HMVサイトのよく分からないサイト改定でアカウント再設定させられ、レビューのニックネームも取り直しになってしまいましたので、再投稿させてもらいます)

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     2018/05/31

     ベルリン・フィルが初めて来日公演を行った年から数えて70年。2017年の公演をメモリアル・アルバムとして追った当盤。公演に参加できた方がうらやましいくらいに魅力的な演奏をディスクで追体験できた。残念ながらチケットが取れなかった私にとって、そして日本の音楽ファンにも嬉しいプレゼントであろう。


      全体に「合奏するソリスト」のようなBPOの様子をきれいに収めてあると思える。ズン!とくる音の迫力は薄い気がするが、それを忘れさせるスリリングな調和がある。  各メンバーが主体性をもって主張しあいながら、合わせることも万能にこなす。これが現在のベルリン・フィルの特徴と考えているが、そこに指針を指し示すのがラトルの存在意義だったのだろう。 特に『ペトルーシュカ』は、このコンビの特長を一番物語っていると感じた。彼の指揮姿でよく見る「左手指を細かく動かし歌を煽る」仕草などで歌がうねりとなって押し寄せてくる。彼の指揮とベルリン・フィルによって現代音楽でも歌にあふれる曲に聴こえてしまうのもまた彼の功績と思える。当記録はアジア・ツアーの記録にとどまらず、協奏曲・交響曲・管弦楽曲・現代音楽を網羅し、ここまでラトル&BPOのコンビが行ってきた協働を俯瞰できる記録でもあると思う。

       要するに「これは買い」とお薦めしたい。

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     2018/05/17

     SHM-CD盤(2018年05月23日 発売予定)での視聴でないのであらかじめ星印を1つ減らして評価しますが、演奏の評価は星印5つの満点を出したい銘盤です。


       なによりもヴェネツィアのサン・マルコ大聖堂での収録による、のびのびとした響き、明るく煌びやかな歌声と演奏が見事。屋内ゆえ当然天井があるわけだが、聴いていると天井の存在を忘れて音がそのまま天まで伸びていくような音響。声部のまとまりと分離がバランスよく混在し、しかも瑞々しい。あいにく同曲で他の盤を持っていないので聴き比べはしていないが、これも「この1枚で十分」と考えてしまえる美しさがあるため。

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     2018/05/06

     私たち音楽を聴く者は多かれ少なかれ「音楽のフィナーレ」に向けて聴き方を予想しているのではないだろうか。主題が提示され、展開し、再現され結末を迎える…、形式は様々あろうがおおむね音楽における「今どこ?」が分からず、フィナーレが見えてこないと恐らく大概の人は不安に駆られるのだと思う。  そこでフェルドマンだが、かれの作品を聴いていてその種の不安は(個人的には)出てこない。その静寂と微視的に時間が流れていくような音響にむしろ安心して身をひたすことができる。この『バニタ・マーカスのために』も同様だ。外道な聴き方かもしれないが、聴きながらボーっとしてみると非常に贅沢な時間を過ごせたと思ってしまう。音楽として聴かない音楽、と言えばよいだろうか。  ・・・おすすめです。

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     2018/05/04

     自由にくずして弾きすぎると曲がダメになるし、楽譜通りにやってもつまらないものになる。  ショパンのピアノ曲はこのバランスが難しいのかな、なんて思うことがある。 そこにきてルイサダのショパンはそのバランスのギリギリの線をいっている気がする。人によって彼のショパンはクセがありすぎると感じてしまうのではないだろうか。バラードのような語り物系こそルイサダの個性がうまく出せる(そして人によっては「語り過ぎ」と思われる)作品だと思う。私的には当盤は「面白い!」となる。これがバラードの代表盤とは言わないが、バラードらしい演奏としてお薦めしたい。

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     2018/05/04

     学生時代に聴いてからずっと、これがモーツァルトのホルン協奏曲における「基準値」になってしまっている。

        落ち着いたテンポでのびのびと奏でられる弦、協奏曲というより室内楽といえそうな親密さ(ソリストというより楽団員の一人だからこそだが…)、なによりも少しくすんだというか朴訥とした色調のホルンの音色。 底抜けに明るくてはっきりした輪郭のホルン演奏と違った独特の味が気に入っている。これがウィンナ・ホルンの音色なのか断言できる耳を持ってはいないが、ホッとするいい演奏なのは解る。 おそらく我々がこの曲集に求めている明るさ・愉悦感・ローカリズムなどを自然な形で表しているいるから今でも聴かれ続けているのだろう。

        キレイな音がよい演奏になるわけではないし、技術があるから銘盤になるわけでもない。もっと内的な蓄積や思い入れがコクと言ってもよいような「不思議な何か」を生むんだ、と思わせるのがまさに当盤の特徴だと思う。

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     2018/05/03

     2018年2月、新国立劇場での「松風」にも村雨役で熱演していたS.ヘレカントのすばらしい歌唱が光るモノドラマ。テキスト(邦訳をネットで探して参照しながらですが… )が深遠で、だからこそ音による表現が多様に行えるのか音楽の重力が大きい。実際に舞台作品として上演したのかはわからないが、面白い演目になるのではないだろうか。松風のように能をベースにしても物語が活きてきそうだ。むしろ実際の能舞台の上で上演するとこれはかなり刺激的で重層的な作品になるような気がする。能舞台の橋掛かりがかなり重要なスペースとして使われそうな演出が望ましいと思う。少なくとも当盤を聴けばその手の想像が各々に働くのではないだろうか。

      朗読が最初のトラックに入っているのでそこでじっくり「予習」して音楽に臨むこともできるのはうれしいところ。


      文章で追うだけだと只の文学になる所に、細川俊夫の音を入れることで現実と夢幻が徐々に入り混じって自分が果たして「現実」にいるのか「夢幻」に来てしまったのか、解らなくなる様なドラマが展開されていく。大鴉とは、本当に家の扉の外から来たのか、それとも心の中の扉に潜んでいたものなのか…それを考えていくのは、これを聴いてもらい各々が感じてもらえれば。と思う。

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