TOP > My page > Review List of つよしくん

Review List of つよしくん 

Showing 1321 - 1335 of 1958 items

%%header%%

%%message%%

  • 5 people agree with this review
     2010/10/08

    スメタナ四重奏団によって、70年代から80年代初にかけて完成されたベートーヴェンの弦楽四重奏曲全集は名演の誉れ高い。その中で、後期の弦楽四重奏曲(第11〜16番)は、名演ではあるものの、スメタナ四重奏団が必ずしもベストというわけではない。かつてのカペー四重奏団からはじまって、最近ではアルバン・ベルク四重奏団など、海千山千の四重奏団が個性的な名演を繰り広げており、より音楽的に内容の深いこれら後期の作品では、どうしても、そうした個性的な演奏の方に軍配が上がるからである。それに対して、初期や、本盤におさめられた第9番や第10番を含む中期の弦楽四重奏曲では、スメタナ四重奏団のような自然体の純音楽的アプローチは、抜群の威力を発揮する。本盤の第9番や第10番も、おそらくはこれら両曲のトップの座を争う名演と高く評価したい。スメタナ四重奏団の息のあった絶妙のアンサンブル、そして、いささかもあざとさのない自然体のアプローチは、ベートーヴェンの音楽の美しさや魅力をダイレクトに聴き手に伝えることに大きく貢献していると言える。もちろん、自然体といっても、第9番の第1楽章や終楽章などのように重量感溢れる力強さにもいささかの不足はない。Blu-spec-CD化による高音質も極上である。

    5 people agree with this review

    Agree with this review

  • 14 people agree with this review
     2010/10/07

    かつての大指揮者と呼ばれた人たちは、いわゆる自分の音というものを持っていた。本盤も、第2番の冒頭を聴いただけで、これぞカラヤンの音ということがわかる。最近の指揮者は、指揮者の名前を伏して聴くと、誰の指揮なのかさっぱりわからないようなケースが多く、その意味では、指揮者が小粒化、没個性化していると言える。オーケストラや指揮者の技量などは、むしろ相当にレベルアップしているのであろうが、指揮者とオーケストラの関係が、悪い意味で民主化というか対等化しており、指揮者がオーケストラを鍛え上げるようなことは許されない状況にあることも、こうした現代における軽妙浮薄化の傾向に拍車をかけているとも考えられる。このような現代にあって、全盛期のカラヤン&ベルリン・フィルの演奏は、かつての指揮者の個性全開の黄金時代を思い起こさせてくれる。カラヤンの流麗な指揮の下、金管や木管のスタープレーヤーによる抜群の技量、弦楽器の高弦から低弦までが完璧なアンサンブルで鳴り切っている重厚さ、ティンパニを中心とする重量感溢れる打楽器群、これらが醸し出す極上の美音は、おそらくは史上最高の音響空間を構築していると言える。作品の内容を深く掘り下げていくという意味においてはいささか足らざる面もあるとは思うが、これだけの圧倒的な音のドラマを堪能させてくれれば、文句は言えまい。録音も極上である。

    14 people agree with this review

    Agree with this review

  • 5 people agree with this review
     2010/10/06

    音楽史上最高傑作であることもあって、ベートーヴェンの第9には数多くの名演が存在している。過去の巨匠と言われる大指揮者が、数々の個性的な名演を成し遂げてきている中で、存在価値のある名演を成し遂げるのは容易なことではない。そのような中で、本盤のような、必ずしも個性的なアプローチをとっているとは言えない演奏が、現代においてもなお名演との評価を受けているのは、ベートーヴェンの第9という音楽の魅力を、ゆったりとした気持ちで安心して味わうことができる点にあるのではないか。スイトナーの指揮は、いささかも奇を衒うことはなく、中庸のインテンポで楽曲全体を描き出しており、ベルリン・シュターツカペレの演奏も地に足がついたいかにもジャーマンサウンド満載の重厚な重量感溢れるもの。いい意味での模範的な第9ということができるだろう。録音が、残響豊かなベルリン・イエス・キリスト教会であることも功を奏しており、スイトナー&ベルリン・シュターツカペレの名演に潤いと奥行きの深さを与えていることを忘れてはなるまい。加えて、Blu-spec-CD化によって、従来盤、HQCD盤と比較して、さらに音質の鮮度が増しており、本名演の価値を高めることに大きく貢献している。

    5 people agree with this review

    Agree with this review

  • 10 people agree with this review
     2010/10/04

    これは、ベートーヴェンの「田園」という交響曲の素晴らしさをダイレクトに味わうことができる自然体の名演だ。この演奏には、聴き手を驚かすような強烈な個性があるわけではない。テンポも速すぎもせず、遅すぎもせず、中庸のテンポであり、アッチェレランドなどもいささかも見られない。それでいて、のっぺりとした凡庸な印象はいささかも与えず、ベートーヴェンの美しい音楽の魅力を心行くまで安心して聴かせることに成功している点を高く評価したい。録音は1980年であり、この当時は東ドイツという国が存在し、ベルリン・シュターツカペレにも、現代にはすっかりと失われてしまった渋いジャーマンサウンドが生きていた。本演奏には、スウィトナーの墺オーストリア人ならではいくぶん柔和なアプローチと、ベルリン・シュターツカペレの重厚で重心の低いサウンドが、最高の形で融合し、硬軟併せ持つ至高の名演に仕上がったとも言える。ベルリン・イエス・キリスト教会の豊かな残響を活かした名録音も素晴らしい。併録の2曲の序曲も名演であり、本盤がレコード・アカデミー賞を受賞したのも当然のことであると考える。Blu-spec-CD化によって、音質がより鮮明になったのも大変嬉しい。

    10 people agree with this review

    Agree with this review

  • 0 people agree with this review
     2010/10/03

    朝比奈には、最晩年の名演の数々に鑑みれば、どうしてもブルックナー指揮者としてのイメージを拭い去ることはできないが、彼の累次の演奏記録を見ると、マーラーの交響曲も第1番を除いて、相当回数演奏していることがわかる。CDも、これまでのところ、第2、第3、第6、第7、第8、第9及び大地の歌が発売され、そのうち何曲かは複数の音源が発売されている。本盤の第4は、朝比奈のマーラーの第4としてはじめて世に出るものであり、その意味でも大変貴重な記録であると言える。モノラル録音であり、音場がいかにも狭いのが玉に傷ではあるが、演奏内容は、壮年期(この演奏時は60歳)の朝比奈ならではの剛毅な名演と評価したい。まずは、全体の厳しい造型美。マーラーの交響曲の中でも、最も古典的様式をとどめている作品だけに、こうした造型を重んじるアプローチは大正解。もう少し踏み外しがあってもいいと思う箇所も散見されるが、ブルックナー指揮者である朝比奈にそれを求めるのは酷というものだろう。それでも、第3楽章のゆったりとしたテンポによる深沈たる情感溢れる味わいは、後年の大巨匠朝比奈を彷彿とさせる至高の音楽に仕上がっている。終楽章の樋本のソプラノは、録音のせいもあって、朝比奈の重厚な指揮と比較するとやや軽妙に過ぎる気もするが、同曲の演奏全体の価値を減じるまでには至っていない。朝比奈のマーラーの交響曲の遺産として、今後発売の可能性が残っているのは第5だと思うが、マスターテープが著しく損傷していて、発売が厳しいと聞いた。何とか最新の技術を用いてCD化し、発売にこぎつけて欲しいと思っている聴き手は私だけではあるまい。

    0 people agree with this review

    Agree with this review

  • 8 people agree with this review
     2010/10/03

    ついにあの感動のコンサートがCD化された。本年3月25日、東京オペラシティ・コンサートホールで行われたコンサートは、小雨が降る寒い日であったが、私も聴きに行った。その時に受けた深い感動は今も忘れ難いが、本CDでは、その時の感動が8割方蘇ってくるような素晴らしい高音質に仕上がっている。特に、SACDマルチチャンネルで聴くと、臨場感溢れる音場も相まって、コンサート会場ほどではないものの、当日のコンサートの体験を反芻できるほどの素晴らしい高音質だ。スクロヴァチェフスキは、朝比奈やヴァントが鬼籍に入った今日においては、世界最高のブルックナー指揮者であるが、当日の舞台にその雄姿をあらわした時点で、既に凄いオーラを発していた。これは最晩年の朝比奈やヴァントと同様。86歳(当時)の老巨匠が矍鑠とした姿勢で指揮台に立つ威風堂々たる姿だけで、もはや音楽というか、雰囲気が出来上がってしまう。そして、演奏が開始されると、冒頭の心底から絞りだすような低弦の響きからして、もはやこの世のものとは思えないような次元の高い音楽だ。一部の高名な批評家からは、朝比奈やヴァントのブルックナーに比して、スクロヴァチェフスキのそれは、やたらバランスを重視し過ぎとの批判も寄せられているが、当日のコンサート会場、そして本CDからは、そのような欠点はいささかも感じられなかった。第1楽章では、さすがに来日の疲れもあるのか、やや調子に乗り切らないところもあるように思うが、第2楽章からはほぼ完璧。第3楽章の清澄な音楽は、巨匠スクロヴァチェフスキとしても、最晩年に至って漸く到達し得た至高・至純の境地と言える。終楽章の、ややテンポを早めに設定した生命力溢れる力強い指揮ぶりは、もはや86歳(当時)の老巨匠の指揮とは思えないような迫力であり、終演後の凄い熱狂。当日は、スタンディングオベーション、そして楽員が去ってからも指揮者だけが呼び出され拍手が続いたが、当然のことであると考える。今月15日及び16日には、スクロヴァチェフスキは、シューベルトの未完成とブルックナーの第7を指揮する。私は、16日のチケットを購入しているが、どのような名演を披露してくれるのか、大いに期待している。

    8 people agree with this review

    Agree with this review

  • 19 people agree with this review
     2010/10/03

    カラヤン&ベルリン・フィルは3度にわたってベートーヴェンの交響曲全集を録音したが(映像作品を除く)、その中でも最高の名演は70年代のものと言ってもいいのではないかと考えている。というのも、カラヤン&ベルリン・フィルの黄金コンビがベストの状態にあったと言えるからである(60年代の全集がSACD化、80年代の全集がSHM−CD化されているのに、70年代の全集が、第9のSACD化を除き、いまだに全く高音質化されていないのは実に不思議な気がしている。)。ところが、今回、全集の完成直後の来日時のチクルスがCD化されるというのは何と言う素晴らしいことであろうか。カラヤンは、スタジオ録音よりもライブ録音でこそ本領を発揮する指揮者であり、カラヤン&ベルリン・フィルの全盛時代のライブ録音を聴くことができるのだから、これ以上の幸せはないと言える。録音状態さえ良ければ、もしかしたら、カラヤン&ベルリン・フィルの最高のベートーヴェンの交響曲全集と成り得るかもしれないのだ。そして、本盤を聴いたが、期待にそぐわない素晴らしい名演であった。何よりも素晴らしいのは全盛期のベルリン・フィルの分厚い重量感溢れるカラヤンサウンド。第1やエロイカの冒頭を聴いただけで、これぞカラヤンサウンドということがよくわかる。金管楽器や木管楽器の最強奏の箇所においても、弦楽器は高弦から低弦まですべてが完璧に鳴り切っており、カラヤンの流麗な指揮ぶりと相まって、肉厚の至高の音楽空間が創出されている。金管楽器も、特に朗々たるホルンなど、この世のものとは思えない美しさで、全盛期のカラヤン&ベルリン・フィルの恐るべき実力を思い知ることができる。一部の高名な評論家からは、オーケストラがだぶつくだけで精神的に浅薄などという批評も予測されるが、これだけの圧倒的な音のドラマを展開したカラヤン、そしてベルリン・フィルに対しては、例えば、徹底して作品の精神的な深みを追及したフルトヴェングラーなどとの優劣は容易にはつけられないと考える。録音は信じられないほど素晴らしい。音響が決して良くないとされる普門館でのライブとは思えないような鮮明さだ。

    19 people agree with this review

    Agree with this review

  • 3 people agree with this review
     2010/10/03

    こんなにゆったりとした気持ちでシューマンのピアノ曲を味わうことができたのは始めてだ。本年はシューマン生誕200年記念の年であるが、そうした記念の年に相応しい素晴らしい名演CDと高く評価したい。いずれも名演であるが、特に感動したのは謝肉祭。この謝肉祭は、私見では、史上最高の名演と言っても過言ではないのではなかろうか。前口上の力強い開始。一転して抒情的な高貴なワルツやオイセビウス、スフィンクスのおどろおどろしい不気味な世界を経て、蝶々やA.S.C.H.−S.C.H.Aのリズミカルな軽快感、ショパンの優美さ、そしてパガニーニの巧みな演出など。変幻自在の表現力の幅の広さには大変感心させられた。そして、ぺリシテ人と戦うダヴィッド同盟の行進の威風堂々たる演奏には風格を感じるほどで、この名演を最高の形で締めくくっているのである。謝肉祭には、やたら理屈っぽい演奏で、シューマンの豊かなファンタジーをスポイルさせてしまう駄演も散見されるが、これほどまでに音楽それ自体を楽しませてくれる演奏は珍しく、聴いていて思わず微笑んでしまうほど。これぞ謝肉祭の理想の演奏であり、史上最高の名演と評価する所以である。次いで、トロイメライの繊細な演奏を掲げたい。これはいかにも女流ピアニストだけがなし得る至純の美しさに満ち溢れている。クライスレリアーナも名演であるが、こちらはシューマンの最高傑作だけに、他にもライバルが多く、高橋の名演が随一というわけにはいかない。それでも、圧倒的な技量と緩急自在の巧みなテンポ設定など、さすがと思わせる箇所も多い。録音は、SACDによる極上の高音質であり、全く言うことがない。

    3 people agree with this review

    Agree with this review

  • 7 people agree with this review
     2010/10/03

    クラリネット五重奏曲の二大傑作をカプリングした名CDは、これまでも数多くあったが、本盤も、その中で存在感を決して失うことがない名演と高く評価したい。本盤は、クラリネットのプリンツを始め、史上最高のコンサートマスターと謳われたヘッツェルなど、ウィーン・フィルの首席奏者を構成員とするウィーン室内合奏団の極上の美演が売りと言える。どこをとっても、ウィーンの香りが漂っており、こうしたあたたかいウィーンスタイルの演奏を聴くだけでも、本盤の価値は相当に高いものと考える。プリンツのクラリネットは、正にまろやかなウィンナクラリネットの醍醐味を満喫させてくれるが、圧倒的な技量や作品の内面を深く抉り出していこうという深遠さにもいささかの不足はない。ウィーン室内合奏団では、何よりもヘッツェルのヴァイオリンが素晴らしい。特に、ブラームスのクラリネット五重奏曲冒頭のこの世のものとは思えないような清澄な音色は、ブラームスの最晩年の枯淡の境地を最高の形で具現化するものとして、他のヴァイオリニストを寄せ付けないような至高・至純の高みに達していると言える。Blu-spec-CD化によって、音質が非常に鮮明になったのも大変うれしいことだ。

    7 people agree with this review

    Agree with this review

  • 9 people agree with this review
     2010/10/02

    ブーレーズは、15年もの長きにわたってマーラーの交響曲全集の録音に取り組んできたが、本盤は、その最後を飾るものである。正に、有終の美を飾る名演として高く評価したい。全集の最後を、未完の交響曲第10番で終えるというのも、いかにもブーレーズらしい。ブーレーズのマーラーは、若き日の前衛時代ではなく、むしろ角の取れたソフト路線が顕著となった時期の録音だけに、純音楽的なアプローチでありながら、比較的常識的な演奏に仕上がっていることが多いように思う。そのような中で、今回の第10番は、もちろん、若き日のブーレーズのような切れ味鋭い前衛的な解釈が全体を支配しているわけではないが、近年のブーレーズに顕著な好々爺のような穏健的な解釈ではなく、むしろ、曲想を抉り出していくような冷徹とも言えるアプローチをとっている。それ故に、甘さを一切配した、若き日のブーレーズを彷彿とさせるような名演に仕上がっていると言える。テンポがやや早めなのも、こうした傾向に拍車をかけており、私見ではあるが、ブーレーズが、マーラーの交響曲へのアプローチの仕方を、この第10番において漸く見出すことができたのではないかと思うほどだ。併録の「子供の不思議な角笛」は、第10番とは異なり、いかにも近年のブーレーズらしい穏健な解釈であるが、コジェナーやゲアハーヘルの独唱と相まって、ゆったりとした気持ちで音楽を味わうことができるのが素晴らしい。

    9 people agree with this review

    Agree with this review

  • 6 people agree with this review
     2010/10/02

    ザンデルリングによるブラームスの交響曲全集の名演としては、本盤よりも後年に録音したベルリン交響楽団との全集(カプリッチョレーベル)の世評が高い。私としても、そうした評価を否定するつもりは毛頭ないが、だからと言って、本盤を含むシュターツカペレ・ドレスデンとの全集を過小評価するのには納得がいかない。そして、本盤も、素晴らしい名演であると高く評価したい。本盤の成功は、もちろん、ザンデルリングの巨匠風の堂々たる指揮ぶりにあるが、何よりも、シュターツカペレ・ドレスデンの重厚な音色をベースとした素晴らしい好演にあると言える。それにしても、何と言う深みのある響きであろうか。録音場所となったドレスデンの聖ルカ教会の残響も見事なものがあるのであろうが、シュターツカペレ・ドレスデンのいぶし銀の音色には、現代のオーケストラにはもはや求め得ないような至高・至純の輝きがある。したたるような弦楽器の音色や重量感溢れる打楽器も見事であるほか、金管楽器や木管楽器も素晴らしいが、特に、ダムが吹いているであろうホルンの朗々たる響きには、ただただ感動するのみ。本盤については、数年前にHQCD盤が発売され、しばらくはそれを愛聴してきたが、今般のBlu-spec-CD盤の音質は、さらにそれを上回る。そうした最高の音質で、本名演を味わうことを大いに喜びたい。

    6 people agree with this review

    Agree with this review

  • 11 people agree with this review
     2010/10/02

    期待を裏切らない名演だと思う。ブーレーズとエマールの組み合わせは、これまでもリゲティのピアノ協奏曲などの競演で既に名コンビぶりを発揮していたが、今回は、ラヴェルの傑作協奏曲をいかに料理するのか、聴く前から大変興味を抱いていた。若き日の前衛的なアプローチが影をひそめ、すっかりと好々爺になったブーレーズであるが、フランスの若手ピアニストでありながら、非常に個性的な解釈で知られるエマールとの競演で、この傑作協奏曲をいかに解釈するのか。。。結果は、意外にも正統派のアプローチであった。もちろん、左手のためのピアノ協奏曲において時折見られる無機的になる寸前の最強奏など、若き日の前衛時代を一部に垣間見ることもできるが、ピアノ協奏曲ト長調、特に第2楽章などの繊細にして優美な指揮は、若い日に先鋭的なラヴェルの管弦楽曲集を遺した指揮者とは思えないような情感の豊かさだ。エマールのピアノもただただ美しい。2つのピアノ協奏曲における繊細にして情感豊かなタッチも美しいが、「鏡」における諸作品におけるエスプリに満ち溢れたセンス満点の弾きぶりは、あらためてエマールがフランス人であることを再認識させられた。録音も非常に鮮明であり、素晴らしい。

    11 people agree with this review

    Agree with this review

  • 1 people agree with this review
     2010/10/01

    ベートーヴェンのピアノ三重奏曲第7番「大公」は、ベートーヴェンのピアノ三重奏曲中の最高傑作であるだけではなく、古今東西のピアノ三重奏曲中の帝王とも言うべき至高・至純の名作である。その後、このような形式により、様々な作曲家が作曲に挑んだが、チャイコフスキーやラフマニノフなどの一部の傑作はあるものの、内容の深さなどを加味すれば、未だにこの名作を凌ぐものはあらわれていないと言える。これだけの名作だけに、これまで数多くの演奏・録音がなされ、名演も数多く遺されてきたが、そのような中で、本盤の存在意義は何か。それは、チェコ出身の名室内楽奏者による息のあった、自然体の絶妙のアンサンブルということになるのではなかろうか。ピアノのパネンカも、ヴァイオリンのスークも、チェロのフッフロも、いずれもチェコが誇る名奏者ではあるが、必ずしも個性的なアプローチや卓越した技巧を売りにする奏者ではない。むしろ、情感豊かな温かみを感じさせるアプローチを旨とする奏者であり、こうした三者が奏でたピアノ三重奏曲は、正に、熟成したワインのような味わいのある大人の名演に仕上がっていると言える。同曲に、怒れる獅子のような力強さを指向する聴き手にはいささか物足りなさを感じさせるきらいがないわけではないが、ベートーヴェンを単なる威圧の対象にしていない点は、高く評価してもいいのではないかと考える。Blu-spec-CD化によって、音質により臨場感が増した点も評価したい。

    1 people agree with this review

    Agree with this review

  • 0 people agree with this review
     2010/10/01

    何と言う素晴らしい名演であろうか。弦楽四重奏曲第17番「狩」は、正に狩りを皆で楽しむような生き生きとした力強い生命力に満ち溢れている。スメタナ四重奏団の各奏者の醸し出す絶妙のアンサンブルは、これぞ弦楽四重奏曲の醍醐味とも言うべき高次元の至高の音楽を構築していると言える。他方、第15番の方は、モーツァルトにしては珍しい短調の楽曲であるが、悲劇的な曲想の中でも、決して甘美なメロドラマには陥ることなく、常に高踏的な至純の美しさを失わないところが素晴らしい。ここでも、スメタナ四重奏団の各奏者の奏でるアンサンブルは、これ以上は求められないようなレベルに達しており、第17番「狩」と同様、録音をも含めれば、同曲最高の名演と言っても過言ではないだろう。本盤が、レコード・アカデミー賞を受賞したのも当然のことであると考える。録音は、世界初のデジタル録音として、前述のようにもともと素晴らしいものであるが、今般のBlu-spec-CD化によって、さらに素晴らしい極上の高音質に生まれ変わった。モーツァルトの弦楽四重奏曲の録音史上、最高の名演の一つをこのように極上の高音質で味わうことができることを大いに喜びたい。

    0 people agree with this review

    Agree with this review

  • 4 people agree with this review
     2010/09/30

    若き日のラトルならではの生命力溢れる凄みのある快演だ。まずは、ミューズを司るアポロは、その重量感溢れる音色に驚かされる。特に、アポロの踊りにおける低弦の滴るような響きは、正に未来の巨匠とも言うべき堂々たる風格に満ち溢れている。ストラヴィンスキーが新古典主義に傾斜した時期の作品であるが、ラトルは、前述のような重厚さをも加味しつつ、得意のレパートリーであるハイドンを指揮する時のように、生き生きとした軽快さにも事欠くことはない。同曲を得意としたムラヴィンスキーなどとは全く異なるタイプの解釈ではあるが、本盤も若武者ならではの名演と評価したい。春の祭典も凄演。ラトルは、聴き手を驚かすような個性的な解釈を行っているわけではない。むしろ、ストラヴィンスキーが記した複雑なスコアをしっかりと踏まえつつ、その中で、鋭いリズムや音の強弱のダイナミズムなどを非常に強調した演奏に仕上げている。緩急自在のテンポも思い切って駆使しており、正に純音楽的な若武者の快演と言えるだろう。ラトルは、近年にベルリン・フィルと同曲を録音したが、本盤には、それとは違った若々しい魅力に満ち溢れていると言える。HQCD化によって、非常に鮮明な音質に生まれ変わったのも素晴らしいことだ。

    4 people agree with this review

    Agree with this review

Showing 1321 - 1335 of 1958 items