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TOP > My page > Review List of つよしくん
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6 people agree with this review 2010/11/29
バーンスタインは、マーラー指揮者としては、おそらくは大巨匠の一人と言えるだろう。いや、もしかしたら、史上最高のマーラー指揮者と評価しても過言ではないかもしれない。それに続くのがシューマンであると思うが、私は、その他の、特にドイツ系の音楽は、雄弁ではあるものの、深みがないのが大いに問題であると考えている。これは、ショスタコーヴィチについても言えるところであり、一部の評論家が支持するシカゴ交響楽団との交響曲第7番など、どこが名演なのかさっぱりわからない。雄弁ではあるが、それだけでは、ショスタコーヴィチの本質を表現することは不可能だ。ショスタコーヴィチは、ソヴィエト連邦という、例えて言えば、今の北朝鮮のようなとんでもない国で、粛清の恐怖を耐え忍んで、したたかに生きていた。こうした日常における死への恐怖は、ショスタコーヴィチの楽曲に色濃く反映されており、それをバーンスタインのような外面的で大仰な表現で演奏したのでは、表面をなぞっただけのきわめて浅薄な演奏に陥ってしまう危険性が高い。例えば、交響曲第5番を初演者として十八番にしてきたムラヴィンスキーの数々の名演などと比較すると、バーンスタインの演奏のあまりの浅薄さにがっかりとさせられてしまうのだ。雄弁な解釈であることはよくわかるが、うわべだけを繕った演奏では、とても、第5の真価を表現することは不可能である。本盤も、そうしたバーンスタインの欠点がもろに出た演奏だ。特に、終楽章の力づくの乱暴な荒れ狂った演奏は、ほとんど場違いな印象を与える。そもそもショスタコーヴィチは、マーラーではないのだ。録音も、底の浅いバーンスタインの演奏の性格をさらに際立たせることになっており、これまた大いに問題だ。
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1 people agree with this review 2010/11/28
チャイコフスキーは、交響曲や管弦楽曲、協奏曲、バレエ音楽、オペラなど、多岐にわたる分野において、数々の傑作を遺しているが、ピアノ曲や室内楽曲となると、傑作と評価される作品は、極めて少ないものとなってしまう。もちろん、古今東西の作曲家でも、様々な分野で傑作を遺したオールランドプレイヤーは、モーツァルトやベートーヴェンなど数えるほどしかいないところであり、室内楽曲やピアノ曲に傑作が少ないからと言って、チャイコフスキーの名声を傷つけるものでは決してないものと考える。ただ、そうした傑作が少ないと評される室内楽曲の中でも、本盤におさめられたピアノ三重奏曲「偉大な芸術家の想い出」だけは例外だ。それどころか、ベートーヴェンの大公にも匹敵する至高の大芸術作品として、高く評価されるべきものである。この傑作の最高の名演は、まぎれもなく、本盤の全盛期のチョントリオによる名演だ。兄弟ということで、鉄壁のアンサンブルを誇る息のあった名コンビが、チャイコフスキーの絶美の旋律を、透徹した表現で、完璧に歌い抜いているからである。感傷に陥ることはいささかもなく、高踏的な美しさを常に保っている点も、このコンビならではの凄みであり、芸術性の高さであると考える。併録のショスタコーヴィチも名演だ。HQCD化による音質向上効果もなかなかのものである。
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0 people agree with this review 2010/11/28
何よりもガヴリーロフのピアノが素晴らしい。ロシアの悠久の大地を思わせる重厚なピアニズムと、故国を思う郷愁に満ち溢れた情感の豊かさが、演奏に結晶化しており、超絶的な技巧も圧倒的だ。特に、ピアノ協奏曲第2番の第2楽章は、他のどのピアニストよりも、テンポをゆったりとしたものとして、情感豊かな感動的な演奏を繰り広げている。時折見られる間の取り方も実に効果的であり、こうした点に、ガヴリーロフの芸術家としての抜群のセンスの良さを感じさせる。パガニーニの主題による変奏曲の、各変奏の描き分けも、超絶的な技巧をベースとして、完璧に表現し尽くしており、有名な第18変奏の美しさには、もはや評価する言葉が追いつかないほどの感動を覚えた。ムーティの指揮も素晴らしい。イタリアオペラを得意とした指揮者だけに、ラフマニノフの抒情豊かな旋律の歌い方の何と言う美しさ。それでいて、ピアノ協奏曲第2番の終楽章の終結部の猛烈なアッチェレランドなど、決めるべきところのツボを心得た心憎いまでの演出巧者ぶりを示しているのはさすがと言える。当時の手兵であるフィラデルフィア管弦楽団は、オーマンディやデュトワとともに、ラフマニノフの名演を数々残してきたこともあり、本盤でも、ムーティの統率の下、最高のパフォーマンスを示していると言える。HQCD化によって、音質は非常に鮮明になっており、本名演の価値を高めるのに大きく貢献している。
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7 people agree with this review 2010/11/28
ジンマン&チューリヒ・トーンハレ管弦楽団によるマーラーチクルスも、本盤の登場によって、残すは大地の歌のみになった。ジンマンが、第10番をどう採り上げるのか大変興味を持っていたが、アダージョだけでなく全曲版を採り上げ、しかも版の採用に当たっては、一般的なクック版ではなく、何とカーペンター版を採用したのには、さすがに驚いた。これまでのマーラー指揮者では、直弟子であるワルターやクレンペラーは当然のこととして、バーンスタインやテンシュテット、ベルティーニ、ブーレーズ、シノーポリなど、第10についてはアダージョのみという指揮者が多い。第10をクック版により演奏した指揮者も、インバルやラトル、シャイーなど、少なからず存在しているが、マーラーの交響曲全集完成者で、カーペンター版を採用した指揮者は、おそらくはこれが始めてではないだろうか。こうした点に、ジンマンの同曲への深い拘りが感じられて興味深い。クック版と比較して、ティンパニを効果的に活用するなど、オーケストレーションがより華麗なものになっており、私見ではあるが、ブルックナーで言えば、第7におけるハース版とノヴァーク版のような関係にあると言えるかもしれない。ジンマンのアプローチは、いい意味でのオーソドックスなもので、カーペンター版の華麗なオーケストレーションを実にコクのある内容豊かな表現で、面白く聴かせてくれるのが素晴らしい。SACDマルチチャンネルによる極上の高音質録音も、本名演の価値を高めるのに大きく貢献していると言える。
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11 people agree with this review 2010/11/28
何よりも評価したいのは、SACDマルチチャンネルによる極上の高音質録音だ。特に、合唱が加わる「ダフニスとクロエ」が凄い。合唱付きのオーケストラ曲は、従来から、録音が極めて難しいとされており、これまでのCDを見ても満足のいく音質に達しているのは、数少ないと言えるが、本盤は、これ以上は求め得ないようなハイレベルの音質に達していると言える。要は、オーケストラが主体か、それとも合唱が主体かと言ったレベルではなく、オーケストラと合唱が一つの音楽として、完全に融合しているのだ。その上で、オーケストラも合唱も完全に分離して聴こえるのは驚異でもあり、マルチチャンネルによって、それぞれの楽器や合唱の位置までが完璧に聴き取れるほどだ。演奏も、素晴らしい名演。ゲルギエフは、もともとオペラを得意とする指揮者であるが、こうした標題音楽における巧さは格別。各曲の描き分けは、殆ど名人芸の域に達しており、録音の素晴らしさと相まって、あたかも眼前に情景が思い浮かぶかのようだ。併録の亡き王女のためのパヴァーヌは、ゲルギエフとしては普通の出来だと思うが、むしろボレロが超名演。各楽器を完璧にならし、この曲の魅力、そして、ラヴェルの巧みなオーケストレーションを完璧に再現してくれている。極上の高音質録音がこの名演を大きく後押ししているのも素晴らしい。
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8 people agree with this review 2010/11/28
これ以上は求められないような超高音質SACDの登場だ。ベーム&ウィーン・フィルによる定評ある名演だけに、これまで、従来盤に加えて、SACDハイブリッド盤やSHM−CD盤など、高音質化に向けた様々な取組がなされてきた。英デッカの録音だけに、もともとかなりの高音質で録音されているが、それでも、前述のような高音質化に向けての不断の取組を見るにつけ、まだまだ高音質化の余地があるのではないかと考えてきた。そして、満を持しての今般のシングルレイヤーによるSACD&SHM−CD盤の登場であるが、これまでのCDとは一線を画する極上の高音質CDと言えるだろう。この歴史的な名演の売りはいくつかあるが、何よりも素晴らしいのは、ウィーン・フィルならではの美しい音色を味わうことができることだ。そして、本CDでは、こうしたウィーン・フィルの美しい響きを存分に満喫できるのが何よりも素晴らしい。朗々たるウィンナホルンの響きは見事であるし、どんなに最強奏しても、あたたかみを失わない金管楽器や木管楽器の優美さ、そして厚みがありながらも、決して重々しくはならない弦楽器の魅力的な響きなど、聴いていてほれぼれとするくらいだ。各楽器の響きの分離も、最強奏の箇所も含めて実に鮮明であり、演奏の素晴らしさも含め、究極のCDと評価しても過言ではないと考える。
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3 people agree with this review 2010/11/27
内田光子の円熟を感じさせる素晴らしい名演の登場だ。約20年ほど前にも、内田はモーツァルトのピアノ協奏曲全集をジェフリー・テイトと組んで録音しており、それは内田光子の名声を確固たるものとする名演であったが、本盤が登場するに及んで、すっかりと影に隠れてしまった。それほどまでに、内田光子のこの約20年にも及ぶ道程は、きわめて意義深いものであったと言える。モーツァルトの傷つきやすい繊細な抒情を、これほどまでに意味深く演奏した例は過去にあったであろうか。第20番など、何気なく開始されるのに、聴き進むに及んで、音楽の内面から浮かび上がってくるモーツァルト渾身の魂の響きは、あまりにも繊細にして優美であり、涙なしでは聴けないほど感動的だ。内田光子の弾き振りであるが、クリーヴランド管弦楽団も、内田光子の繊細なピアノに符合した、実に内容豊かでコクのある演奏をしているのが素晴らしい。第27番も素晴らしい超名演。モーツァルトの畢生の名作を、これ以上は求め得ないような透徹した表現で弾き抜いている。繊細な抒情に加えて、ここぞと言う時の力強さにもいささかの不足はないが、それでいて、時折見られる効果的な間の取り方は、殆ど名人芸の域に達しており、これは、内田光子としても、前録音から約20年を経て漸く到達し得た至高・至純の境地と言えるだろう。ピアノとの相性抜群のSHM−CDによる鮮明な高音質も、本名演に華を添えることになっており、高く評価すべきものと考える。
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7 people agree with this review 2010/11/27
極上の高音質録音だ。本演奏については、これまで、従来盤に加えて、SACDマルチチャンネル付きのハイブリッド盤や、SHM−CD盤が発売されているが、今回のシングルレイヤーによるSACD&SHM−CD盤は、これまでの数々のCDとは一線を画する画期的な高音質CDと言えるだろう。マルチチャンネルは付いていないが、かつて発売されたSACDマルチチャンネルと比較しても、臨場感において何ら劣るものではないという点は、殆ど驚異とも言える。私も、本盤を聴く前に、再生装置や音源(マーラーの第2)は異なるものの、SACDマルチチャンネルを聴いていたが、それと全く遜色のない音場が形成されるのには、正直言って大変驚いた次第だ。諏訪内は、最近では、結婚や不名誉な醜聞などもあって、低迷期にあると言えるが、本盤の録音当時は、ベストフォームにあったと言える。女流ヴァイオリニストならではの詩情溢れる繊細な優美さが、持ち前の抜群のテクニックとも相まって、各演奏において最高に結晶化していたからである。特に、シベリウスにおいては、こうした若き日の諏訪内の素晴らしさが最高に発揮されており、おそらくは、同曲のトップの座を争う名演と高く評価したい。そして、この若き日の諏訪内の見事なヴァイオリンを、その弓使いまで捉えた鮮明な高音質は、もはや筆舌には尽くしがたいハイレベルの音質に達しており、正に完全無欠のCDの登場と言えるだろう。
6 people agree with this review 2010/11/27
まず、SACDマルチチャンネルによる極上の高音質録音を高く評価したい。ホールの残響をたっぷりと捉えた録音も見事であり、サラウンドスピーカーから流れる音が、メインスピーカーの音と対等の音量、音質を保っている点も素晴らしく、それ故に、臨場感溢れる音場が形成されるものと考える。最近のSACDマルチチャンネルのCDの中には、サラウンドスピーカーの音を、メインスピーカーの音を補完する程度に絞っている例も散見されるが、それでは、マルチチャンネルの意味がないと言えるのではないか。本盤の、このような素晴らしい臨場感溢れる音質によって再現される演奏の素晴らしさはどう表現すればいいだろうか。ヤンソンスのアプローチは、聴き手を驚かすような個性などとは全く無縁のオーソドックスなものであるが、そうした自然体のアプローチによって、マーラーの交響曲第2番の魅力が、聴き手にダイレクトに伝えられているという点を忘れてはならないだろう。楽曲の聴かせどころのツボを心得た演出は心憎いばかりであり、特に、終楽章の中間部。他の指揮者では冗長に陥りがちな箇所を、緩急自在のテンポ設定や絶妙な間の取り方などを駆使して、実に面白く聴かせてくれていることを高く評価したい。手兵のコンセルとへボウ・アムステルダムや、独唱陣、合唱団も最高のパフォーマンスを示していると言える。
4 people agree with this review 2010/11/27
カラヤンは、チャイコフスキーを得意としたが、その中でも十八番は、この交響曲第6番「悲愴」だっと言える。スタジオ録音だけでも7度も行うとともに、昨年発売された来日時のライブ録音や、NHK交響楽団とのライブ録音などを加えると、圧倒的な点数にのぼる。オペラのように起承転結がはっきりした標題音楽的な要素や、華麗なオーケストレーションなど、いかにもカラヤンが得意とした要素が散りばめられているのが、カラヤンが同曲を得意とした要因の一つに掲げられると考える。遺された録音は、いずれも名演であるが、その中でも、本盤は、ライブ録音ではないかと思われるような劇的な豪演を成し遂げているのが特徴と言える。悪魔的とも言うべき金管楽器の鋭い音色や、温かみのある木管の音色、重厚な低弦の迫力、そして雷鳴のようにとどろくティンパニの凄さなど、黄金時代にあったベルリン・フィルの圧倒的な技量が、そうした劇的な要素を大いに後押ししている。カラヤンも、圧倒的な統率力で、ベルリン・フィルを巧みにドライブするとともに、ポルタメントやアッチェレランド、流れるようなレガートなどを効果的に駆使して、悲愴の魅力を大いに満喫させてくれる。録音も、同時期に録音の第4や第5と異なり、なかなかに良く、HQCD化によって、さらに鮮明さが増した点も大いに評価したい。
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5 people agree with this review 2010/11/26
カラヤンはチャイコフスキーを得意としていたが、このうち、交響曲第5番は5回もスタジオ録音している。いずれも名演であると思うが、その中でもトップの座に君臨するのは、1971年に録音された本盤であると考える。スタジオ録音であるが、ライブ録音ではないかと思われるほど、劇的な性格を有した豪演と言うことができる。この当時は、カラヤンとベルリン・フィルは蜜月状態にあり、この黄金コンビは至高の名演の数々を成し遂げていたが、本盤の演奏も凄い。金管楽器も木管楽器も実に巧く、厚みのある重厚な弦楽器も圧巻の迫力だ。雷鳴のようなティンパニのとどろきも、他の誰よりも圧倒的。そうした鉄壁の技量とアンサンブルを誇るベルリン・フィルを、これまた圧倒的な統率力で指揮するカラヤンの凄さ。粘ったようなテンポや猛烈なアッチェレランドの駆使、そしてカラヤンには珍しいポルタメントの効果的な活用など、実に内容豊かでコクのあるチャイコフスキーを構築している。惜しいのは、録音がいささか良くない点であり、第4のように、音が歪むという致命的な欠陥はないが、それでも最強奏になった時の音像のあいまいさは、演奏が素晴らしいだけに大変残念な気がする。HQCD化によって、幾分はましになった気がするが、抜本的な改善が図られたわけではなく、大変もどかしい思いがする聴き手は私だけではあるまい。
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10 people agree with this review 2010/11/25
カラヤンは、チャイコフスキーを得意としており、交響曲第4番は6度もスタジオ録音している。加えて、ウィーン交響楽団とのライブ録音も存在しており、カラヤンとしても何度も演奏した得意のレパートリーと言えるが、遺された録音の中で随一の名演は、カラヤン&ベルリン・フィルの黄金時代である1971年に録音された本盤であると考える。本盤の特徴を一言で言えば、ライブ録音をおもわせるような劇的な迫力だ。豪演と言っても過言ではないような圧巻の迫力であり、その圧倒的な生命力は、とてもスタジオ録音とは思えないほどである。冒頭から、悪魔的な金管の最強奏に始まり、厚みのある弦合奏の重量感や、雷鳴のようなティンパニのとどろきには戦慄を覚えるほどだ。第1楽章終結部の猛烈なアッチェレランドは、古今東西の同曲の演奏の中でも、最高の迫力を誇っていると言える。第2楽章の木管の巧さも特筆すべき美しさであり、そのむせ返るような熱い抒情には、身も心もとろけてしまいそうだ。終楽章の疾風の如きハイテンポによる進行は圧巻という他はないが、それでいて、アンサンブルにいささかの乱れもないのは、殆ど驚異でもある(これに匹敵できるのは、ムラヴィンスキー&レニングラード・フィルの1960年盤のみ)。本盤で惜しいのは録音がイマイチであることであり、特に、終楽章のティンパニの音色が歪むのは大変残念だ。HQCD化によっても、大きな改善が見られず、マスターテープに起因する問題を解消するのは難しいのかもしれない。
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0 people agree with this review 2010/11/24
素晴らしい名演だ。ヤンソンスは、現在においては、コンセルトへボウ・アムステルダムとバイエルン放送交響楽団という、世界有数のオーケストラを手中におさめる現代を代表する指揮者の一人に成長したが、本盤の録音当時(1990年)は、オスロ・フィルという、決して一流とは言えないオーケストラを指揮する気鋭の指揮者の一人に過ぎなかった。そんなヤンソンスではあるが、当時から、シベリウスを得意としており、交響曲第1番には、後年にも手兵のバイエルン放送交響楽団と録音し、それもすばらしい名演であったが、本盤も、後年の名演に勝るとも劣らない見事な名演に仕上がっている。本盤の特徴、そして優れた点は、北欧の雰囲気を大いに満喫できる点。前述のように、この当時は、まだまだ研鑽を積みつつある若手指揮者の一人に過ぎなかったのであるが、いわゆる青臭さは皆無。若さ故の勢いに任せた強引さもなく、北欧風の抒情を巧みに盛り込みつつ、実に成熟した演奏を行っている点を高く評価したい。ゲネラルパウゼの効果的な活用や、木管楽器の響かせ方にも個性的なものがあり、独特の魅力を持っていると言える。併録のカレリア組曲やフィンランディアも、交響曲第1番と同様の傾向の、北欧風の抒情を活かした成熟した名演だ。HQCD化によって、音質はきわめて鮮明になっており、本名演に華を添えることになっている点も高く評価したい。
2 people agree with this review 2010/11/23
スメタナ四重奏団は、ドヴォルザークの弦楽四重奏曲第12番「アメリカ」を果たして何度演奏し、録音したのであろうか。本盤の録音は、1966年であり、スメタナ四重奏団としては初期の録音になるとは思うが、他の録音にも勝るとも劣らない素晴らしい名演と高く評価したい。スメタナ四重奏団には、聴き手を驚かすような特別な個性があるわけではない。あくまでも、楽曲を真摯な姿勢で忠実に弾いて行くという、いわゆるオーソドックスなアプローチを旨としているが、素晴らしいのは、息のあった各奏者の鉄壁のアンサンブルと、チェコ風のローカル色豊かな美しい音色だ。そのあたたかささえ感じさせる音色と鉄壁のアンサンブルによって、演奏したいずれの楽曲にも、潤いと温もりを与えることになるものと思われる。したがって、アプローチがオーソドックスなものであっても、平板な演奏にいささかも陥らないのは、こうした点に理由があるものと考える。チャイコフスキーも名演だ。チャイコフスキーの場合は、旋律のあまりの美しさ故に、いたずらに感傷に陥ったりして、芸術作品としての格を落としかねない危険性を孕んでいるが、スメタナ四重奏団の手にかかると、高踏的な美しさを失わないのが見事だ。HQCD化によって、音質がさらに鮮明になったのも素晴らしい。
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4 people agree with this review 2010/11/23
スケールの雄大な異色の名演だ。ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」と言えば、ボヘミア風の民俗色豊かな演奏を期待されるところであり、これまでに成し遂げられた名演の多くも、そうした点に主眼を置いてきたような感がある。しかしながら、クレンペラーには、そのような民俗色など、いささかも眼中にはないのではないかと思われる。クレンペラーは、同曲を、ベートーヴェンやブラームスの大交響曲に接するのと同様のアプローチで、指揮していると言える。冒頭のおどろおどろしい導入や、弱いティンパニの音色の響かせ方など、いかにもドイツ音楽風の重厚な響きがするし、第3楽章のゆったりとしたインテンポによる進軍も、あたかもブルックナーの交響曲のような重量感のある迫力だ。クレンペラーは、ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」という国民楽派の交響曲を、ベートーヴェンの交響曲にも匹敵する大芸術作品に引き上げたのだ。したがって、同曲に、ボヘミア風の民俗色豊かな演奏を期待する聴き手からすれば、野暮ったさや場違いな印象を与えることも考えるが、前述のように国民楽派の範疇にとどまらず、後期ロマン派を代表する至高の芸術作品に引き上げたクレンペラーの功績は、やはり讃えられてしかるべきであろう。HQCD化によって、音質は相当に鮮明になっており、本盤の歴史的名演の価値を高めるのに大きく貢献していると言える。
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