アーティスト・オブ・ザ・ロイヤル・コンセルヴァトワール
アドルフ・ブッシュ:弦楽六重奏曲、ブラウンフェルス:弦楽五重奏曲
前2作『ヴァインベルグ作品集(82876877692)』、『レントヘン作品集(88697158372)』とも、グラミー賞にノミネートされたアーティスト・オブ・ザ・ロイヤル・コンセルヴァトワール(ARC)の3作目のアルバムとなります。彼らは、グレン・グールド音楽院の教授等によるアンサンブルで、主に政治的に失われ変化させられた作品の発掘と演奏を行っており、高い評価を得てきています。
アドルフ・ブッシュ[1891-1952]はヴァイオリニストとして有名ですが、彼は作曲家でもあり、彼のキャリアとして重要性の高い仕事の一つでした。自分や自分の弦楽四重奏団の演奏会のレパートリーして作曲は不可欠だったのです。また、彼の弟フリッツ・ブッシュのためにも多くの管弦楽作品も作曲しました。彼の作品は、マックス・レーガーの影響を最も受けており、シェルヘン、フルトヴェングラー、アーベントロート、ワインガルトナー、トスカニーニも高く評価し、演奏を行いました。しかし彼の独奏者としてのステータスの重要性により、1930年以降の書法は曖昧となり作曲は沈滞していきました。その理由だけでなく、彼はユダヤ人ではありませんでしたが、ナチズムに反対しスイス、アメリカに移住したのです。そのためこの六重奏曲は不承認作品とされてしまったようですが、独創的なソノリティーにあふれ、ヴィルトゥーゾ的な対位法が使われています。
ヴァルター・ブラウンフェルス[1882-1954]はフランクフルトに生まれ、ミュンヘンでフェリックス・モットルに作曲を学びました。1920年作曲の成功作、歌劇『鳥』はブルーノ・ワルター指揮によってミュンヘンだけで50回の公演。ベルリン、ウィーン、ケルンでも行われました。また彼の最も感動的な『テ・デウム』は100回以上の公演が行われました。1923年にプロイセン芸術アカデミー会員となり、1925年からはヘルマン・アーベントロートとケルン音楽大学共同学長に任命されました。しかし、彼は四半ユダヤ人(ナチ時代の言い方で祖父・祖母のうち1人がユダヤ人)だったために1933年に追放され、翌年には彼の作品は演奏禁止とされてしまいました。しかし、戦後ケルン音楽大学に学長に復帰しました。
最近彼の作品は徐々に演奏・録音されるようになってきていますが、この1944年に作曲された五重奏曲は見落とされていたもので世界初録音となり、恍惚とした抒情にあふれた印象的な作品となっています。
この二つの作品は、政治への反思想と伝統的ドイツ音楽の、相反することが融合された独特なもので、この後のレイボヴィッツ、ノーノ、シュトックハウゼン、ブーレーズらの作品とは本質的に異なった作品です。
2009年9月にオープンしたばかりの「ケルナー・ホール」は、カナダでも最も美しい木製のホールであり、視覚的だけでなく音響的にも完璧に設計されたものです。すでに高い評価を得ており、このホールでの初の録音となります。(ソニー・インポート)
【収録情報】
・アドルフ・ブッシュ:弦楽六重奏曲ト長調 Op.40* (1933)
・ヴァルター・ブラウンフェルス:弦楽五重奏曲嬰ヘ短調 Op.63 (1943)
アーティスト・オブ・ザ・ロイヤル・コンセルヴァトワール
Marie Berard & Benjamin Bowman, violins (Vn)
Steven Dann & Carolyn Blackwell* , violas
Bryan Epperson & David Hetherington, cellos
録音時期:2009年11月16〜18日
録音場所:トロント王立音楽院、ケルナー・ホール
録音方式:デジタル(セッション)