初めて人を殺す 老日本兵の戦争論 岩波現代文庫

井上俊夫

基本情報

ジャンル
ISBN/カタログNo
ISBN 13 : 9784006031053
ISBN 10 : 400603105X
フォーマット
出版社
発行年月
2005年01月
日本
追加情報
:
15cm,319p

内容詳細

中国の戦線で、捕虜の刺殺訓練をさせられた著者。以来六十余年、戦死した友の眠る故郷の墓地で、八月十五日の靖国神社で、半世紀近くたって参加した戦友会で。自身の戦争体験や、軍隊、戦争そのものの正体を問い、老日本兵は、歩き、考え、書く。「お前は中国でいったい何をしたのか」、終わらない問いを抱え記したエッセイ集。

目次 : 日中戦争で戦死した大阪生まれの英霊の声―今は亡き昭和天皇が、まだ臨終の床にあった時に作れる歌/ 銭池村墓地にて/ 老兵「バリアフリー2004」へ行く/ 「なみだ(涙)」/ 大阪・中之島・中央公会堂脱出記/ 私の八月十五日―靖国神社へ行く/ 初めて人を殺す/ 八王子の麗しき森の住人に捧げる歌

【著者紹介】
井上俊夫 : 1922年、大阪生まれ。詩人。42年、徴集され中支に派遣。捕虜生活も含め足掛け五年、日中戦争に従軍。戦後、農民運動に参加。57年『野にかかる虹』でH氏賞受賞。カルチャーセンターなどで文学関係の講座を担当(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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読書メーターレビュー

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  • おたま さん

    著者の井上俊夫は、戦時中召集され中国華中の連隊に入隊する。そこで、体験したことを、美化することも、隠蔽することもなく、淡々とした筆致で書き綴っていく。題名はショッキングであるが、正しく軍隊というところはそうしたことを日常感覚において成してしまう機構であったということ。私たち戦後生まれには、軍隊とはどういうものか、その中での兵士の日常生活はどういうものか、感覚として知ることは難しい。井上俊夫は詩人でもあるので、自作の詩も交えながら、私たちの軍隊に対する想像力を喚起してくれる。五感に訴えてくる軍隊=戦争論だ。

  • たまご さん

    もっと早く読めばよかった…,難しそうなイメージでなんとなく後回しにしてたのがもったいない.このお年の方が書いたとは思えない若い文章で,読みやすい.実際に従軍し,戦争を体験した著者の,時に図らずもユーモアを交えながら,戦争とはなんだったのかを問い続けるエッセイ.当事者から,戦争を美化もせず,卑屈になることもなく,ステレオタイプに悲惨さを強調することもなく,日常として淡々と語られるものを目にするのは,初めてかもしれません.今の日本は井上さんにとって想定内でしょうが,ご意見伺ってみたかった.

  • みなみ さん

    元日本兵だった井上氏の回顧録。戦友に偶然出会うところから始まり、短い章でさまざまな過去や現在のエピソードが綴られる。後半はタイトルどおり「初めて人を殺す」初年兵時代の回顧録。度胸試しにと初年兵に中国人捕虜を銃剣で殺させる。中国人捕虜は日本軍で働いていて、兵たちは名前も顔も知っている。彼は、私を殺すのはいけないと必死で日本語で訴える。捕虜殺害をどうしてもできない初年兵もいる。かように中国人への加害行為、また慰安婦問題も、当事者により語られていく重い内容だった。読んでいて朝ドラのカーネーションを思い出した。

  • ぽん さん

    強き者が弱き者を叩き弱き者はさらに弱き者を叩く。理不尽はこの世で無くなりはしないと思うけど、戦争という理不尽はやっぱりあって欲しくない。読みやすい文章でした。戦場にいた人にいなかった人は何も言う資格はないけど、やっぱり戦争はだめだ、と思います。

  • つまみ食い さん

    著者の言葉を借りれば「老兵」となり、軍人会などへ行っておこなう過去の上官や戦友との会話を通じて日本人(ひろくは人間)と戦争の関わり方について著者自身が考えていくような一冊。悔やむ人間も、社会の成功者として戦後を過ごし、老いて戦友会で中国旅行へ行った際の中国人の反応を著者に問われ、あっけらかんと「民族の程度が低いから、何も気にしていない」と言うような者もいる。また、戦争で犯した罪に苛まれる著者と戦友も、かけがえのない青春があった場所として軍隊生活を振り返り、軍歌がつい口から出る場面も印象的。

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