『春の祭典』、『マヴラ』　エトヴェシュ＆ユンゲ・ドイチェ・フィル、エーテボリ響

ストラヴィンスキー：『春の祭典』
エトヴェシュ＆ユンゲ・ドイチェ・フィル

ペーター（ペーテル)・エトヴェシュは1944年ハンガリー生まれの作曲家で指揮者。アンサンブル・アンテルコンタンポランの音楽監督を務め、2003年2月〜3月にはベルリン・フィルの定期で自作やシェーンベルク、ヴァレーズの演目で登場。
　日本でも自作のオペラ「三人姉妹」の上演や新日本フィルへの登場など再三の来日で知名の存在、今や現代音楽の世界では不可欠な存在となっています。
　しかし、レコーディングは現代作品が中心になっていたため（ドイツ・グラモフォンのベリオ作品集などもありましたが）、CDファンにはあまり馴染みがなかったというのが実情かもしれません。
　とはいえ、すでにバルトークのオケコン＆マンダリンや、ヴィオラ協奏曲、青ひげ公の城、ストラヴィンスキー：結婚などといった近代物はリリースされていたので、マニアの注目を浴びる存在であったことは確かです。

　今回登場する『春の祭典』は、1994年に『中国の不思議な役人』でも共演したユンゲ・ドイチュ・フィルが相手ですが、今回はその10年後ということで同じメンバーはほとんど入れ替わっているものと思われますが、イキの良い演奏で知られるこのオーケストラの伝統は健在で、知的で鋭利、情報量の多いテクスチュアを維持しつつ緊迫したダイナミズムを形成するさまは見事というほかないものです。

　組み合わせの『マヴラ』は30分に満たないオペラ・ブッファのような作品で、男女の痴話喧嘩をユーモラスに描いています。作品中の「ロシアの歌」は、ヴァイオリン小品集でもおなじみの存在で、「パラーシャの歌」という知られたアリアもありますが、その実像は、チャイコフスキーやシューベルト、リスト、ロシア民謡などの引用や、対位法からイタリア・オペラ・スタイルの二重唱にいたるまで様々な技法を盛り込んだパロディ・オペラというべきもの。34人中23人が管楽器という特殊な編成のオーケストラが織り成すアイロニカルなサウンドも実にユニーク。ストラヴィンスキーはこの作品を好んでいたと伝えられていますが、パロディ要素や面白い響きが気に入ってのことでしょう。きっと。

ストラヴィンスキー：
・バレエ音楽『春の祭典』[35:41]
　第1部「大地礼讃」[19:21]
　　序奏 3:31
　　春のきざし-乙女たちの踊り 3:23
　　誘拐 1:21
　　春の踊り 3:48
　　敵の都の人々の戯れ 1:56
　　賢人の行列 0:43
　　大地への口づけ 0:25
　　大地の踊り 1:14
　第2部「いけにえ」[16:20]
　　序奏 4:13
　　乙女たちの神秘的なつどい 3:03
　　いけにえの賛美 1:30
　　祖先の呼び出し 0:38
　　祖先の儀式 3:28
　　いけにえの踊り 3:28

　ユンゲ・ドイチェ・フィルハーモニー
　ペーテル・エトヴェシュ（指揮）
　録音時期：2004年9月11＆12日
　録音場所：ライプツィヒ、ゲヴァントハウス

・歌劇『料理女マヴラ』全曲[26:40]
　マリア・フォントシュ（S）
　リュドミラ・シェムチュク（Ms）
　リリ・パーシキヴィ(Ms)
　ヴァレリー・ゼルキン（T）
　エーテボリ交響楽団
　ペーテル・エトヴェシュ（指揮）
　録音時期：2003年10月15〜17日
　録音場所：エーテボリ・シンフォニー・ホール