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1 people agree with this review 2021/07/29
まるで、「ウィーンでヨハン・シュトラウスを指揮するなんて野暮なことはしないよ。君たちの好きなようにやってくれたら俺が合わせるよ」とでも言ったんじゃなかろうかと思うくらい、両者ともに自然体で伸びやかで美しい最高の演奏会。一曲終わるごとのカラヤンの満足げな表情はまるで「いやあいいねえ!どうだい俺もうまく合わせただろ?」とでも言いたげ。 BPOを追われた身とはいえ、功成り名を遂げて、聴衆の歓ばせ方も知り尽くしたこの人が、ニューイヤーコンサートで無粋にウィーンフィルを引きずり回すようなことをしたとも思えず、ただただこの人が立っているだけでこういう演奏になったのでしょう。 「昭和」の終わりとともに消えゆくクラシック全盛時代への郷愁も相俟ってなんとも言えない複雑な幸福感に満たされる一枚でした。 クライバーにしろカラヤンにしろ、オーケストラの自主性にまかせて最高の音楽を引出してそれに乗っかってるときが、聴衆にとっても最高の音楽と感じられたのでしょうね。
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5 people agree with this review 2019/12/22
ハイティンクのRCO版はカラヤンに次いで好きなCDなのでかなり期待していましたが、最初は「第九」に期待する教会音楽的な荘厳さや天国的な神々しさのようなものが感じられなくて、やや残念な気がしていました。 ところが、途中から、これまで何十年ものあいだ気がつかなかった、「英雄」「田園」「第7番」などのモチーフが聞こえてきて、「これは“第九”ではなくて“ベートーベンの九番目の交響曲”なんじゃなかろうか?!」という気がしてきました。 三楽章のテンポ感は今までなら受け入れられないものなのですが、歴とした「交響曲の三楽章」なんですよね。 そして、最終楽章。 この人類の遺産とも言える巨大な音楽の源が「フィデリオ」であったり、「フィガロ」まで隠れているのが見えてきて。それらがヴェルディやワーグナーに継承されているような気がしてきました。 おそらく史上最高齢で第九の指揮をしたハイティンクは、最後の第九を指揮するに当たって、「職人」としての至芸を残す決意をしたのでしょうか。 だとしても、オーケストラをここまでコントロールできたのは、やはり「巨匠」であったのでありましょう。 感傷的にすぎるかもしれませんが、少なくとも、ベームの最晩年のものよりもよほどしっかりした感じでした。
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2 people agree with this review 2019/12/20
ちょうど届いたときにヤンソンスの訃報を知って聞き比べてしまいましたが、音楽の流れはあちらの方が自然で聞きやすいものの、こちらはじっくりと熟成した古酒のような味わいがありました。 1番ではワーグナーの楽劇を思わせるような陰影があるかとおもえば、フィニッシュの盛り上がりは、まるでその数小節のためにブラームスが何年も呻吟したかのよう。 2番はかなり遅めですが、音の響きのひとつひとつを味わえて珍しい経験でした。 3番も、昂揚感とはちがう、諦観のようななんとも言えない感動がありました。 4番は、それらの当然の帰結のように、どういえば良いか、ベートーベンにおける第九の存在のような趣で、バレンボイムが到達した境地のようなものを感じました。 ただ、録音が、ホールの特性なのか楽器の音像があいまいというか安定してない気がして、オーディオ的にはもの足りなさも少し。サラウンドならいいのかもしれませんが・・・・。
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0 people agree with this review 2019/12/15
ラフマニノフの全曲録音となると有名どころではアシュケナージしか知りませんが、すごいことをやってたんですね。 1番なんて小川典子のイメージにぴったりで、あの頃ならこういう風に弾いただろうなという期待どおりの最高の演奏だと思います。 女流では、じゃなくて小川典子でないと出せない、「ちから強い」というだけではなく、振り下ろした指の先がまちがいなく思い通りに鍵盤を叩いてくれるという確固とした自信のある音、というイメージなんですよね。 1番は、CDとしての総合点ではツィメルマン版の方が録音のバランスもよく、小澤&ボストン響の管弦楽も凄味があるかなという気もしましたが、4番はミケランジェリの、古いアナログ録音もあいまっての独特の響きの魅力を覆するほどに、小川典子はじつに精妙にこの曲の魅力を引き出していて愛聴盤になりそうです。 それにしても日本人ピアニストの録音って少ないですよね・・・・
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2 people agree with this review 2019/12/10
同世代では小山実稚恵とならんで好きな小川典子、2番は実演でも聴きましたが、全曲録音を出していることを最近になって知ってポチりました。 が、たしかに、しょーぱんさんも書かれているように、ソロのときは彼女らしい強靱なタッチが聴けるんですが、オケがかぶってくるとピアノが追いやられてしまうのが残念。 ふと、カラヤンのブルックナーを思い出して、寒色系のプレーヤーに替えてみたらいくぶん改善されたので調べてみると、やはりシューボックス型のホールみたいでした。 抜けのよくないホールでピアノの直接音に合わせて録音して、強奏部で反響を拾いまくってバランスが悪くなったんじゃないでしょうか。1番&4番ではわずかに改善したようですが・・・・。 それでもとにかく演奏はすばらしいので★5個。 2番はいうまでもなく、3番にいたっては、これまで感じたことのない、官能的ともいうべき興奮をおぼえました。 そして、後になって気づいたのですが、「ラフマニノフの3番」が、ちっとも難曲らしくなく弾かれていたのでした!! 脱帽。
0 people agree with this review 2019/12/03
モーツァルトですっかり気に入ったターリヒ四重奏団。代替わりしてるのでどうかな?と思いながらポチりましたが、伝統が引き継がれているようで嬉しくなりました。 ブラームスとしては、ど根性演歌みたいな演奏を好んでいた若い頃だったら物足りなく感じたにちがいありませんが、50代も半ばを過ぎた今はとても心地よく聴けます。あっさりというわけではないんですが、飽きの来ない演奏というべきでしょうか。これは年をとらないと分からない感覚かもしれません。 ただ、録音は上出来と思いますが、装丁がいただけませんでした。紙ポケットから出しにくくて手間取ってる間に破けてしまい、一音も聴く前のトラブルでテンション下がってしまいました(それも加味したら★4個)。 曲そのものは、私には四重奏よりも聞きやすくてこっちの方が好ましくも思えますが、この時期にブラームスが交響曲を発表していたら、音楽史の版図は少しちがったものになったのかもという気もします。はたしていかがなものでしょうか。
2 people agree with this review 2019/10/13
アナログ時代の若い頃からブラームスはカラヤンの方にのめり込んでて、ベームはCDで持ってなかったので、ポチってみました。そのときは、やはりBPOの方がいいかなという感想でした。 ヤンソンスの録音を聴いてからはあちらの方が音質もいいし、しばらくプレーヤーに載せることもないままでしたが、久しぶりにヤンソンスをかけてみて、どこか物足らないところがあって、このCDを取り出して聴いてみたんですが、不思議なことに、圧倒的にこのベームの版の方が身体になじんだ気がしました。 なぜ今まで分からなかったんだろうというほど、ベームのディナーミクの絶妙さ、気がつかないくらいのテンポの揺れのようなものを感じて、どハマリしています。 それでまたヤンソンスを聴いてみると、そっちもすばらしく良いんですが、ベームというかウィーン・フィルの音だからか、安心して聴いていられるんですよね。言ってみれば「おふくろの味」みたいなもんでしょうか。ラックに一枚だけ残せといわれたらカラヤンですが、もう一枚ならベームになりそうです。
0 people agree with this review 2019/10/12
7番はさして期待もせず買って大感激してしまいましたが、8番はヴァントのBPO版でえらく退屈したので、カラヤンでも同じだろうと思ってずっと買わずにいました。 最近、ヤングの録音でブルックナーの苦手意識が少しやわらいできたので買ってみましたが、金管とティンパニーがうるさくて、一度聴いたきり棚の肥やしになっていました。 ところが、いつも大編成のオケで使ってるプレーヤーから室内楽やピアノに使ってるものに替えて聴いてみたら、すばらしくバランスよく美しい音が響いて、ティンパニーのバチが当たる瞬間、金管の奏者のほっぺたが膨らむ様子が感じられるくらいニュアンスのあるものになりました。 7番はプレーヤの違いはあまり感じませんでしたが、8番はオーディオ機器でだいぶ印象が違うのかもしれません。
1 people agree with this review 2019/10/11
ブルックナーはどうにも苦手でして、カラヤン最後の7番だけは大感激して何度も繰り返し聴いていますが、4番、5番、8番と有名どころもまともに通して聴いたことがありませんでした。 デビューした頃にN響でモーツアルトを女流が振ってるのを見て物珍しさで覚えていたヤングの新録音、SACDということでダメ元で一枚買ってみました。 演奏のよしあしなど分からないながら、音質がよいせいか、最後まで聴き通すことができました。 ブルックナーというのは、響きが大切なのかな、と思ったりしました。 演奏のよしあしは分かりませんが、その響きをうまく活かしたテンポ感が良かったんでしょうか。
0 people agree with this review 2019/10/02
四重奏曲集がたいへん気に入ったので、こちらも買ってみました。大満足です。 まさに、「音を楽しむ」音楽ですね。 若い人にはどこか物足らなさを感じるかもしれません。 あるいは、若い時にこの演奏に満足してしまって、年を取ってから何かに目覚めて憑かれたように力のこもったいろんな演奏を聴きあさるようになるとかえって厄介かもしれません(笑)。 でも、決して「枯れた演奏」という意味ではありません。 おそらくメンバーは大ベテランだったと思いますが、モーツアルトの音楽、仲間とのアンサンブルを楽しむ、という気持ちがこの演奏になってるように思います。 もしかしたら、ビジネスだと思って割り切った演奏してたのかもしれませんが(笑)。だとしても、本当に満足です。 四重奏は録音にじゃっかんの不満を感じるディスクもありましたが、こちらは曲数が少ないのも手伝ってか、音質も統一感があって違和感も感じませんでした。 ベートーベンもポチっちゃおうかな・・・・
ティーレマン贔屓なので甘めですが、音楽は最高です。 演出も、いろんなものに興味をもって楽しむことのできる知的好奇心のある方には十分楽しめる作品だと思います。 私には、ドイツ人というのはナチス風にして何を語りたいのかわかりませんが、そういうのにもだいぶ慣れましたのと、前半から終盤の入りにかけてはさほどナチスだドイツだという押し付けもなく抵抗なく音楽を楽しめていました。 狼谷の描写や小道具も愉快ではないが、ツェッペンフェルトの存在感で相殺された感じがしました。 ただ、オットカールが登場してから、その性格つけがどうしてもこのオペラに合わないという違和感がぬぐえず、隠者の風貌の必然性もわからず、それでも音楽のよさに酔いしれてクライマックスの大団円、あーあ、やっちゃった・・・・って感じ。 ナチスっぽくしただけじゃもの足らず何か意味ありげに見せたかったんでしょうかね・・・ 私自身の許容範囲が狭いので、気に入ってる方には申し訳ありません・・・・
0 people agree with this review 2019/10/01
オケと歌手だけなら文句ナシで★5個なんですけど、演出は、私が保守的というか通俗的に傾きすぎてるせいもありますが、「よけいなことしなくていいから・・」という感じ。 それでも、これまでに映像で見たティーレマンのオペラとしては一番マシ以上の好印象でした(ウィーン国立歌劇場のものを見てないので)。 ハルテロスのドイツ物を見たのは初めてでしたが、かなり良いと思いました。イゾルデやブリュンヒルデの方向ではなさそうですが、フリッカをやってみてもらいたい気がします。 コワリョフのヴォータン、ミラノでもそうでしたが、出ずっぱりのヴォータンは終盤はつらそうですね。リアリティがあって却って好ましく思いました。 そして、なんといってもツェッペンフェルト!! 舞台が引き締まります。 歌手の良し悪しは分かりませんが、有名どころを集めて豪華で楽しめる舞台だと思います。 なんだかんだで繰り返鑑賞しています。
0 people agree with this review 2018/02/17
序曲がいいので気になりつつ、有名じゃないし歌詞も分からないしなぁ・・・・と数年、欲しいものリストに入れっぱなしでした。 音が素晴らしく良かったです。立体感や奥行きも感じられ、楽器や歌手の立ち位置まで見えるような感じでした。AADと書いてあったからレコード用の編集のままCDにしたということでしょう。よほど出来の良い録音だったんだと思います。 マズアって軽く見られてる気がしますが、私はナマで「運命」「田園」を聴いたこともあって、質実剛健なドイツ的な音楽作りながらもメロディーも美しく歌わせるいい指揮者だと思ってまして、この盤でも期待を裏切られずすばらしい演奏でした。 マズアの存命中に買えば良かったとなんとなく後悔です。
4 people agree with this review 2018/02/11
ウィーン・フィル来日公演の颯爽とした指揮ぶりで、当時あまり好きではなかった「英雄」に感激した記憶も新しく好きな指揮者ですが、シューベルト?という若干の不安も覚えながらもこのレーベルの音の良さに期待して買ってみました。 音も演奏もとてもよかったと思います。マゼールには音楽を気持ちよく聴かせるテクニックがあるんだなあ、と感動しました。やはり20世紀の巨匠の一人であったんでしょうね。 拍手でライブであることを思い出しますが、オケの乱れもなく音質も極上です。 ただ、時代の流れとはいえ「未完成」を7番・・・・としてあるのは残念でした。 解説も簡潔で、中身は丸々輸入品ですし、ベームを筆頭として、ブロムシュテットやスイトナーに優る最高の全集とまでは申しませんが、分売で手持ちの名盤とカブらずに全集を一つ持ちたいとなればかなりお勧めできると思います。
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2 people agree with this review 2018/02/07
おそらくは聴いたことのないシューマンの弦楽四重奏を物色していて、耳慣れないグループの新しい録音に行き当たったので思い切ってポチってみました。 一番はシューマン独特のゴツゴツ?した感じはあんまり強くなくて、二番、三番と進むにつれて音楽も演奏もシューマンらしくなってくるのが興味深かったです。 カルテットを批評するほどの鑑賞歴はありませんが、若手のグループにしてはオーソドックスな安心して聴ける演奏かと思います。とりわけ、ヴィオラとチェロの音が極上でした。 録音も抜群に良く、素晴らしく響きの良い小ホールの最前列で聴いているようです。 このグループがベートーベンの全集を出したらぜひ聴いてみたいです。
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