ニンジャ新時代は、この男が牽引する

忍び寄るポスト・ダブステップ〜ジューク以降の最深ビート

ジュークやポスト・ダブステップ以降のビートと、自身のエレクトロニカをカットアップしたプレフューズ直系の出自を見事に掛け合わせた ＜Planet Mu＞ からの傑作『ルームス』で一気に最前線へと躍り出たマシーンドラムことトラヴィス・スチュアート。ソロとしてはもちろんプラヴィーン・シャルマとのセパルキュアやジミー・エドガーとのジェッツなどユニットでも貪欲にダンス・ミュージックを探求、新世代ネオ・ソウルの旗手ジェシー・ボイキンス三世や注目の才媛ラッパー、アジーリア・バンクスのプロデュースでもその手腕を発揮した今まさに一番脂のノっているこの男がさらに深化を見せつける決定打『ヴェイパー・シティ』を完成させ、エレクトラグライド 2013 で再来日を果たす。

本作のイントロダクションとして触れなくてはならないのが UK ラガ・ジャングル界の至宝コンゴ・ナッティの帰還である。ポスト・ダブステップ以降、ジュークを経由したビートのトレンドの矛先がにわかにジャングル〜ドラムンベースへと向かい始めた 2013 年 ( ジューク / フットワークの帝王 DJ ラシャドも EU のドラムンベースからの影響を新作に反映させたと公言 ) を象徴するように、その御大の復活の狼煙をナスティなリミックスで援護射撃したのがマシーンドラムだった。その後、アルバムからの先行カット「Gunshotta」で披露された異形ジャングルはピッチフォークで見事 Best New Track を獲得。アルバム全編を一つの街に見立て、ポップとドープを自在に往来する様はブリアルの不在すら簡単に埋めてしまいかねない確信がある。

ローン、フォルティ DL、レザレットにラファティ、新世代の才能たちが続々と黒い装束を纏ってインディ・ダンスのトレンドとともに早耳のもとへ忍び寄っていく中、マシーンドラムもまた ＜Ninja Tune＞ の新時代と自身のキャリアの行く先を重ね、“Vapor” な街を疾走する。