クワイエット・コーナーを探して・・・

ここ最近、就寝前のひと時に『Windfall Light』という素敵なタイトルが付けられたECMのヴィジュアル・ブックをパラパラとめくりながら見ている。その画角に収まった詩的かつ幻想的なジャケット写真を眺めていると、自然とイマジネイションが広がっていく感覚に陥る。無機質な空間に存在する人物や、「光と風と水」を捉えた自然の風景、そして日常の何気ないシーンさえも芸術的に切り取るセンスはまさに映像美にあふれている。僕はECMの作品なら何でも欲しくなるようなコレクターではないが、それでも少しずつ増えていくのは、ある意味その美しいジャケットやパッケージに惹かれているからだろう。本当に好きなECMの音は、膨大なカタログの中ではおそらく一片に過ぎないかもしれないが、“音とヴィジュアル”という一連を成した美意識は他の作品には決して味わうことはできない。ここに並べたのは僕が心鎮めるときに聴いているECMの作品。11月に初来日を果たすマルチン・ボシレフスキやジュリア・ハルスマン、ケティル・ビヨルンスタといった理想のピアニストたち。アラブのウード奏者アヌアル・ブラヒムはどこかサロン的な雰囲気。ブライアン・ウィルソンの「Caroline, No」をスピリチュアルにカヴァーしたチャールズ・ロイド。そしてギリシャ聖歌をピアノ・ソロで祈りをこめるバシリス・ツァブロプーロス。もはや格言ともいえるECMの理念に掲げられた「静寂の次に美しい音」。音の一粒で世界観を表現できるように、このクワイエット・コーナーもそういう存在になれば嬉しい。