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Review List of masato 

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  • 1 people agree with this review
     2012/01/22

     ウイルヘルム目黒さんの「vnの美しく〜マエストロと一体になって奏でる」,黒熊怪さんの「時間とともに老化するテープ〜原始霧が晴れ渡るような圧倒的な鼓動を実感する」,このお二方のレビューに完全に共感です。短くまとめられ(長いレビューは辟易…),かつ美文!このアルバムから得られる感動を見事に文章化されています。
     音の悪さはある程度覚悟して聴き始めたのですが,冒頭の弦のしなやかさ,みずみずしさに,まずびっくり。2楽章の爆発も録音年代を考えれば十分。3楽章,4楽章の金管の迫力もうるさすぎず合格点。…という感じで,録音には満足です。第8より遥かに聴きやすかったです。
     演奏の素晴らしさは,もう改めて言うまでもないこと。ウイルヘルム目黒さんと黒熊怪さんのレビューに書かれてある通りです。いやぁ,それにしても,フルトヴェングラーって人は本当に素晴らしい“音楽”を作る人だ…!

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  • 7 people agree with this review
     2012/01/20

     60年代,70年代,そしてこの80年代の全集,それぞれがカラヤン・ファンの私にとっては大切なもの(東京でのライブの全集が加わり,最近4つになりました)。
     60年代は“勢い”,70年代は“完璧(精緻)”,そしてこの80年代は“ゆとり”です。「今後は俺に黙ってついてこい!」の勢いを感じる60年代。オケに対しても,リスナーに対しても,そのメッセージを伝えようとする,意欲的なカラヤンの姿が彷彿とします。
     オケもリスナーもつかんだカラヤンが次に目指すのが70年代の「一糸乱れぬ完璧に美しいベートーヴェン」。そしてそれを見事に達成。これほど精緻で美しいベートーヴェンを私は知りません。
     この2つの見事な全集を受けてのこの80年代の全集。確かに,前出の2つに比べると中途半端の感は否めません。60年代物ほど勢いがあるわけでもなく,70年代物ほど精緻であるわけでもない…。でも,この感じは私の耳に前出の2つの見事さが残っているためであって,虚心坦懐に聴けば,素晴らしいベートーヴェンが鳴っていることがわかります。今までにはなかった適度の“ライブ感”もありますし,指揮者の強引さもやや後退し,奏者の自主性も垣間見えます。
     カラヤンは3つの(4つの),素晴らしいベートーヴェンを残してくれた。どの一つが欠けても物足りなさを感じてしまうかもしれない。

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  • 5 people agree with this review
     2012/01/15

     全集を3つと言われたら,ウィーン・フィルのレバインとオリジナル楽器代表のピノック,そしてこのベルリン・フィルのベームです。
     とにかく“美しい響き”のレバインに,古楽器特有の“爽快感”がたまらないピノック。そしてこのベームは安心して聴ける“安定感”。古楽器勢隆盛の中,その存在価値は薄れるどころか,私の中では増しています。聴いた時の「おっ!」は当然古楽器勢に多いのですが,最近は刺激ばかりが目立って聴こえてしまい,このベームのような響きに惹かれてしまうのです。
     作品がもつ本来の美しさは“位置エネルギー”。そこに指揮者(及びオケ)が“運動エネルギー”をプラスして我々の耳に届く。過度の(過激な)運動エネルギーの付加は,エネルギーの総和は増加するものの,“位置エネルギー”を覆い隠してしまうほどの付加は…。その点,ピノックやベームの加える“運動”は美しさを損なわない見事なもの。

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  • 1 people agree with this review
     2012/01/14

     先にレビューされておられる方々のものを読ませていただいたのですが,改めて書くことがないぐらいです。
     私にとってのベストはヨッフムのライヴ(恐らく今後もこれを越えるものは現れまい)なのですが,このフルトヴェングラーも魅力的。“静”のヨッフムに対して,“動”のフルトヴェングラー。作品を,ゆっくりじっくりと温めていくヨッフム,強烈なエネルギーで急速に熱するフルトヴェングラー。どちらも素晴らしい!
     そして,この音の生々しさはどうだろう…。フルトヴェングラーの仕掛けが,ことごとく,生々しく,こちらの耳に届いてくる。1942年ということを考えれば,満点をつけてもいいぐらい。

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  • 4 people agree with this review
     2012/01/14

     ブルックナーの交響曲,第9だけベスト盤が決まりません…。それは,最晩年のカラヤンとウィーン・フィルが,第7,第8だけを残し,第9を残してくれなかったからです…。第7,第8には名盤多々ありますが,カラヤン・ファンの自分には,どんな名演がかかって来ようとカラヤン最後のものにはかないません。最後に第9を残して欲しかった…。だから,私の中では第9だけ,ポッカリと穴が開いているのです。
     そんな状態が20年以上も続いてきたのですが,ここにきて,その穴を埋めてくれる(カラヤン&ウィーン・フィルへの渇きを癒してくれる)最有力候補に出会えました。
     1楽章冒頭…なんて柔らかく,美しい響きなんだろう…。皆がみな,同じ楽譜を元に,殆ど同じ楽器で吹いているはずなのに,何でこうも違って聴こえるのだろう…。
     2楽章の推進力は強烈…!だからこそ,トリオの弦の美しさが際立つ。弦・金管・木管のバランスも完璧だ。「私の余命もあと僅か…早く作品を仕上げねば…」作者のそんな焦りが聴こえてきそうだ。
     3楽章も夢のような音楽が響き続ける。そして,ラスト数分にきての絶望(?)の大咆哮…そして,諦観にいたるまでのあのたっぷりとしたパウゼ…。エンディングまでの彼岸の響き…言葉にできるはずもない。
     カラヤン最後のレコーディングとして,ブルックナーの第9を聴きたかった…!クナッパーツブッシュでさえ,シューリヒトでさえ,ヴァントでさえ,ムラヴィンスキーでさえ,癒されなかったこの渇きを,やっと癒してくれるアルバムに出会えた…。

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  • 10 people agree with this review
     2012/01/11

     試合に臨むスポーツ選手のインタビューへの返答には「自分の力が発揮できれば必ず勝てます」という自信たっぷりのものもあれば,「観戦してくださる方に勇気・感動を与えられるよう最善を尽くします」という謙虚なものもある。カラヤンなら前者のような返答をするだろうし,ジュリーニなどはきっと後者の返答だろう。
     中には「精一杯試合を楽しんできます」と答えるアスリートもいる。ここに聴くバーンスタインは,正にこの返答タイプ。指揮者と演奏陣が楽しんで音楽を作っているのがひしひしと伝わってくる。ソロの部分など,やけに強調されて聴こえてくる。あたかも「ここが君の見せ場だよ!思い切り美しく目立とうよ!」という指揮者の指示が聞こえてきそうだ。そして,見事弾き終えると,指揮者はニコッと笑って親指を立てるか,“投げキッス”。そんな情景がまざまざと眼前に浮かぶ。“音”を出すことを“楽”しんでいる…この60枚から聴こえてくるのは正に“音楽”だ。
     世界の名だたるオケを従え,自分の音楽を表現しつくした70年代以降のバーンスタインも魅力的だけど,ここに聴く“楽しみながら,みんなで音楽を作っていく”彼も,負けず劣らず魅力的だ。

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  • 7 people agree with this review
     2012/01/09

     先にレビューされておられる雅虫さんに完全に同感です。手に入るものはことごとく購入し聴いてきましたが,これが間違いなくベストです(迫力ではオーパス蔵版が勝るかなぁ…)。中央にカザルスががっちりと定位し,モノラルながら音の広がりも感じられます。余分な雑音は上手く消され,高域の聴きづらさもなく,低域もしっかり,どっしり。今までで一番ボリュームを上げて,カザルスを,バッハを,至高の音楽を味わうことができました。
     この演奏に惹かれるのは何故なんだろう…未だに解けぬ謎というか,私にそれを表現するだけの語彙がないというか…。フルトヴェングラーのバイロイトの第9を聴くときも同じように感じるのですが,最新の技術を駆使したSF映画も『2001年宇宙の旅』には勝てず,どんなサスペンス映画もヒッチコック作品には勝てず,どんなコメディ映画もチャップリン作品には勝てず…こんな感じなのです。
     唯一つ,言えることは,お手本がない状態で,きれいな白紙に,たっぷりと墨(思いのたけ)を付けた筆で,渾身の力を込めて,書を書いた(たたきつけた)…ような力強さを感じます。

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  • 3 people agree with this review
     2012/01/07

     富士山のようなどっしりとバランスの取れた山もあれば,北アルプスのような急峻な山容を誇る山々もある。ザンデルリンクの4番は正に富士山の様。どっしりと安定し,バランスがいい。そして,このシューリヒトが描く4番は,正に峻厳な北アルプスだ。一つ一つの音が,北アルプスの岩肌の厳しさ,鋭利さを連想させる。しかし,峻厳一点張りというわけではなく,厳しい自然の中でひっそりと咲く高山植物のような可憐な美しさも,チラッと顔を出したりする。
     富士山と北アルプスの峰々…全く様相の異なる山容だけど,どちらもたまらなく美しい!

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  • 0 people agree with this review
     2012/01/02

     安価だし“初演プログラムの再現”に乗せられて購入。それほど期待せずに聴き始めたのですが,『献堂式』序曲から魅力的な響きとライブ感に,すっかり引き込まれてしまいました。ミサ曲よりの3曲も,1音1音,1フレーズ1フレーズが見事に息づいていて,顔がほころんでしまうほどの幸福感を覚えました。特に「アニュス・デイ」には,ほれぼれです。
     で,メインの第9。開始の弦…あまりの繊細さに心配になりました。ベートーヴェンの作品のオリジナル楽器による演奏では弦楽部は,どちらかというとザラッとした方が私は好みなんですが(ブリュッヘンなどの。勿論,音が汚いという“ザラ”ではありません。なんというか“ツイード”のような肌触りの“ザラ”です),これはこれ以上ないほどの繊細なシルクのような音…。ところが,金管が加わると一変。そして,そこに温かな木管が加わっていく。繊細な弦,刺激的な金管,そして温かな木管,何とも魅力的・理想的な三つ巴。
     オリジナル楽器による第9,ブリュッヘン以来,惹きつけられるような演奏には出会えていませんでしたが,久しぶりに出会えました。

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  • 2 people agree with this review
     2012/01/01

     1942年盤の迫力,バイロイトの陶酔感,1952年盤の均衡感,そしてこのルツェルン盤は…。私たちの耳に届けられる彼の最後の第9…どうしても何か“特別な意味”を持たせて聴いてしまう…。1942,バイロイト,1952の3種の後,他に何を表現しようとしていたんだろうか…。私など「この3種の後じゃ,もう表現できるものなんてないだろうに…」となってしまうのだけれど…。
     年末,4種を一気に聴いてみました。他の3種にまして,とりわけこのルツェルン盤から聴こえてきたのは“温かさ”でした。先に書いた通り,無意識のうちに何らかの意味づけをして聴いてしまっているかもしれないので,はなはだ当てにならないのですが…。1942年盤のど迫力に圧倒され,バイロイト盤で忘我状態に陥り,1952年盤で「これぞ正に第9」となり,そしてこのルツェルン盤で“ホッ”としたのです。
     これぞ正に素のフルトヴェングラー,これぞ正に素の第9(勿論,なん人にも真似のできない,相当にレベルの高い“素”ですが)。

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  • 4 people agree with this review
     2012/01/01

     フルトヴェングラーが残した素晴らしい4種の第9,1942,バイロイト,1952,そしてルツェルン。この中で,安定した美しさと,バランスのとれた劇的迫力でもって,この1952盤が最も素晴らしい第9と呼べるのではないかと思います。
     私にとってのベストはバイロイトなのですが,どこに違いがあるのか…専門的な用語を用いての説明は私にはできません。ただ,専門知識のない私のレベルでもはっきり言えることは,1952年盤の聴後は「なんて凄い作品なんだ…」「なんて凄い指揮者なんだ…」「なんて凄い演奏なんだ…」となるのですが,バイロイトの聴後は忘我状態のため何の感想も抱けないということです。
     第9という作品の素晴らしさを,これほど見事に表現できた演奏は他にないのでは,と思います。だから,第9を聴きたいときは,私は1952年盤を取り出します。…が,1942年盤,そしてバイロイト盤には,それを越えた何かがあるんです…。

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  • 1 people agree with this review
     2012/01/01

     凄まじい気迫…迫力…! 最も気宇壮大な劇的迫力に満ちた第9。全ての楽章が緊張感に満ち,それぞれの頂点をもつ。それが何故か,このアルバムを私から遠ざける。
     私にとって,バイロイト盤は頂点が第3楽章。来るべき頂点に向かって,第1,2楽章は感情の表出をセーブしているような気さえする。あふれ出そうな感情を押さえ込み,頂点に向かって歩んでいく。そして,第3楽章…この感じ,まるで静かな湖面に完全な脱力状態で仰向けになって浮かんでいるような…。この楽章の最後には,もううっとりとした虚脱状態…(トランス状態…?)。で,そのままの状態で終楽章になだれ込み,一気にエンディングへ。こちらはうっとりとした虚脱状態だから最後の演奏の乱れや,ちょっと変な聴衆の拍手など気にならない。忘我状態で聴き終える。
     ところが,1942年盤の第3楽章は,第1,2楽章が激しさの後に「騒乱後の静けさ」を演出してしまう…。第4楽章の迫力の前に「嵐の前の静けさ」を演出してしまう…。第3楽章だけを単独で聴くと,とんでもなく魅力的なのに…。
     でも★は5つです。この演奏に5つ付けなければ,どの演奏に5つをつければいいんだろう。バイロイト盤が★6つ(いや…7つかもしれない…)なのです。

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  • 3 people agree with this review
     2011/12/27

     『フィンガルの洞窟』の冒頭から,グッと私の耳を釘付けにしてしまう。見事な海のうねり。目を閉じて浮かんでくるのは印象派J.ターナーのタッチじゃない。もっとクリアで冷たい。そのクリアな冷たさが自然が生み出した柱状節理の美しい正六角形を見事に描き出す。他の演奏よりも突出して聴こえる管楽器も,柱状節理の幾何学的美しさを見事に描写。このコンビの長所が最も発揮された名演ではないかと思います。
     『スコットランド』もクリアな冷たさが最大限に生かされた名演。この幻想的な序奏はどうだろう…瞬時にスコットランドの冷涼感で耳を一杯にする。「長い序奏だなぁ…」と感じてしまう演奏も多いですが,これは違う。「もっと聴いていたい!」そんな序奏です。そして,感覚的には一気にエンディングへ…あっという間の時間です。ぎっしりと美しさの詰まった素晴らしい感覚的な短時間。
     音質もかなり改善されていると思います。

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  • 0 people agree with this review
     2011/12/24

     音の良さにビックリです。『モルダウ』の冒頭,この清らかさは最新の録音でも出せないのではないかと思ってしまうほど。管楽器,打楽器が,あたかも眼前で鳴らされているような臨場感。指揮者とオケが徐々に大きく広くなっていくモルダウ川を見事に描ききる。R.シュトラウスの3曲も演奏・録音共,見事というほかない。私の中で,フルトヴェングラーが他の指揮者を圧倒しているのが“起伏の演出”。それを最良の形で聴かせてくれる見事なアルバム。

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  • 3 people agree with this review
     2011/12/23

     素晴らしい…! 素晴らしい音楽の素晴らしい演奏を堪能しました。47年の『運命』の勢い・開放感…! 全曲について,いちいち書き上げたらきりがありません…。交響曲や協奏曲などは勿論,『真夏の夜の夢』をはじめとする序曲らも重量感タップリで正に聴き応え充分。ベートーヴェンやブラームスなどより比較的聴く機会の少ないフォルトナー,ヒンデミット,ブラッハーの作品も改めて「いい曲なんだなぁ…」と実感。最後にやってくるのが圧巻の54年『田園』『運命』。ゆったりと大きな『田園』…響きの柔らかさ,ホッする温かさ,を考えると,ベーム&ウィーン・フィルがベストだという思いは変わらないのですが,構成面では,この演奏が私にはベストです。言い換えれば“聴いていて一番短く感じる”演奏なのです。『運命』もユニバーサルの4,500円SACDにはかないませんが,感じ取れるスケール感は,こちらの方が大きいかもしれない。…とにかくフルトヴェングラーという素晴らしい指揮者とベルリン・フィルの魅力を堪能できる素晴らしいセットです! 素晴らしづくめ。

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