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Review List of 村井 翔 

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  • 8 people agree with this review
     2011/01/09

    ユダヤ人で身長が低いという自分自身のコンプレックスをそのままオペラの題材選択に反映させてしまうなんて、考えられないセンスだが、私はむしろそこにツェムリンスキーのしたたかさを見る。『こびと』はやはり断然面白いオペラだ。この作品は演出家ドレーゼンが台本を少しいじって『王女様の誕生日』というワイルドの原作通りの題名でも録音されていたが、今回は元に戻されている。「次のプレゼントは心(心臓)のないのにしてね」という王女様の決めゼリフがなくなったのは寂しいが、逆に障害者(奇形者)差別に配慮して除かれたきついセリフは復活した。演出はベラスケスの名画『ラス・メニーナス』を最初と最後の額縁に使う以外は、さしたる工夫もなく写実的だが、17世紀スペイン宮廷の栄華をしのばせる豪華なセット。黒人テノールのディクソンは熱演。背中のコブはリアルに作られているが、かつてのリーゲルのように膝をついたまま歩く芝居はしない。王女のダンリーヴィーも(彼女の容貌に合わせて12歳ではなく18歳の誕生日に設定変更されているが)見た目は申し分ない。ベテラン、アンソニーのギータが善人なのは救い。ツェムリンスキー・ルネサンスの立役者の一人であるコンロンの指揮も良い。
    一方、『壊れた壺』はドイツ演劇史上、希少な傑作喜劇であるクライストの同名作品のオペラ化。抱腹絶倒、面白い。

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  • 6 people agree with this review
     2011/01/06

    三ヶ月のうちにブルックナーの全交響曲を(完全に番号順ではないが)だいたい年代順に演奏してしまうという、なかなか大変なプロジェクトの記録。9番だけはNHK-FMで放送されたことがあり、エアチェックテープを引っ張りだして、同一の演奏であることを確認した。指揮スタイルはVPOとのマーラー全集とほぼ同じ。遅いテンポで細密に作っていくが、バーンスタインのような情念ドロドロにはならず、クールさを失わない。考えてみれば、このスタイルはマーラーよりもむしろブルックナーにふさわしかった。チェリビダッケやヴァントのような一家言を有するブルックナー指揮者ではないとしても、5、7、8、9番はやはり堂々たる名演。特に正規録音が他にない9番の巨大なスケールは圧倒的だ(本人はまだまだ元気そうなので、ミュンヘン・フィルと録音するかもしれないが)。録音が万全とは言えないのが惜しまれるが、ハッタリやケレンだけがクローズアップされがちなマゼールも「根」のところでは実に優良な音楽家であったことが分かる。

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  • 3 people agree with this review
     2011/01/06

    ブルックナー・ファンの皆さんの顰蹙を買いそうだが、実はCSO、BPOとの全集ともに大好きだった。CSOとの8番、BPOとの5番などは本当にいい演奏だったと今でも思っているし、バレンボイムのブルックナーの特質は「フルトヴェングラー風」うんぬんよりも、むしろ世界屈指の機能的な両オケを擁してのモダンな切れ味の良さにあったはず。ただし、BPOとの8番のように明らかな「不発」の演奏もあって、それは客演ゆえの限界かとも思っていた。さて、そこで今度は文句なしの手兵を起用しての三度目の全集録音第1弾。年齢から言って「巨匠」風であるのは少しもおかしくないし、終楽章で第1楽章の主題が戻ってくる「総括部」など、堂々たる幅広いテンポだが、あまりにも泰然自若とし過ぎている。4番に関しては、もう少しアグレッシヴであっても良かったのではないか。むしろ若い頃のバレンボイムが懐かしい。

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  • 5 people agree with this review
     2011/01/05

    アバドと4番との相性は良いと一般には思われがちだが、私はこの曲を悪魔的なパロディ交響曲と考えるので、VPO、BPO盤ともに物足りなかった。しかし、マーラー・ユーゲント・オーケストラとのDVD、さらにこの演奏は素晴らしい。ルツェルンのオケが巧いのは当たり前だが、アバドの解釈自体が確実に進化していると思う。かつての小綺麗なだけの録音に比べると、ポリフォニックな彫りが格段に深くなり、ホーネックのCDに比べればまだ穏健だが、必要とあれば汚い音やドギツイ表情を持ち込むことも辞さなくなった。加えてコジェナーの歌の見事なこと。最近の彼女はブーレーズ指揮の『角笛』歌曲集、ラトル指揮の2番(近日発売)とマーラーでたてつづけに名唱を記録しているが、重くはないが陰影のある声は終楽章にまことにふさわしい。この楽章はフレミングのようなソプラノが歌うと白痴美的になりがちなのだ。リュッケルト歌曲集もシェーファーのように微視的な歌唱ではないものの、実にニュアンスが濃い。

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  • 4 people agree with this review
     2010/12/06

    カーペンター版三つ目の録音だが、非常に丁寧かつ緻密に演奏されていて、文句なしにこれまでで最高の出来。ラン・シュイ指揮によるDVDと併せて、クック、マゼッティに比べて録音に恵まれなかったカーペンター版の復権にふさわしい。この曲の補筆版にパーフェクトなどあろうはずもないが、私はどちらかと言えばクックよりもカーペンター、マゼッティの路線を買っているので、これは二年続きのマーラー・イヤー最大の成果の一つと言える。クックに比べて第1スケルツォのテンポ指定が遅いこと(カーペンター版では全体がほぽレントラー)、逆に終楽章終結部はクックのアダージョに対してアンダンテ・コモド(つまり第9の第1楽章と同じで両交響曲が見事に対をなすことになる)であること、そしてもちろんオーケストレーションが遥かに厚いことなど、この版の特徴は漏れなくとらえられている。第9までの、このコンビの冴えない演奏も、この第10のための慣れ、布石だったと考えれば、許してあげましょう。

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  • 7 people agree with this review
     2010/12/06

    ピリオド・スタイルによるシューマン交響曲にはガーディナー、ダウスゴーと既に良いディスクがあったが、さすが本命と言うべき演奏。管楽器にトロンボーンが加わるゆえ、ベートーヴェンよりは編成を大きくしていて弦は10/8/6/6/3だが、やはり格段の解像度。『ライン』の第1楽章など壮大な曲想にもかかわらず、内声部はチマチマと動き、しかも3拍子という指揮者泣かせの楽章だが、各声部が手にとるように聴こえる。確かにテンポは速いが、ジンマンのように単に「軽い・薄い」だけではなく、終楽章ではバスの強調、リズムの弾みを加えてマッシヴな迫力もある。『春』はちょっと前に出たルイージ指揮のロマンティックな演奏が忘れがたく、それに比べるとややドライな印象だが、スケルツォ末尾(終楽章への接合部)や終楽章のカデンツァでは、思わず唸らされるような譜読みをみせる。今回はいわゆるピリオド楽器は用いないし、東京でのナマ演奏ではホルンを5にするなど、もはや杓子定規なピリオド・スタイルではない。

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  • 6 people agree with this review
     2010/11/30

    はじめて名前を聞く指揮者、団体の演奏だが、まぎれもなく掘り出し物。弦はかなり小編成で(この種のディスクには珍しく、メンバー表がないが、8型ぐらいか)、機動力に優れている。必要とあれば絶叫することも辞さないが、小編成かつヴィブラートを控えたために、pやppの表現域が広がり、静謐な部分がきわめて印象的になった。第1楽章「深き淵より」から一貫して音量抑え目で、他に例のない感触だ。曲の一つのクライマックスである、十二音技法で書かれた第7楽章「ラ・サンテ監獄にて」はヴェーベルンのように一音一音が実に重い。二人の歌手ももはや従来の歌という感じではなく、(録音ならではの)ささやき声から絶叫まで、まさしくシュプレッヒシュティンメの幅広い表現を自在に駆使する。なお、日本語解説に付けられた「解題--ショスタコーヴィチの『シンフォニア・ダ・レクイエム』」は力作。フランス語または英語に自信のない方は、日本語解説付きをお勧めする。

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  • 3 people agree with this review
     2010/11/29

    ブライアンの交響曲第1番「ゴシック」など滅多に演奏されない曲を除けば通常、演奏会に登場する交響曲のうち、史上最長の長さを誇る大曲。そこからイメージされるスケールの大きさを期待するなら、この演奏はやめておいた方が良い。第4番ではフランクフルト時代の演奏とかなりイメージが変わったが、こちらはあまり変わらない。巨大だが細部に構わないというタイプではなく、かなり綿密に作り込んでいくが、マラ3マニアさんがおっしゃるように、音楽の流れが破綻してしまうほどポリフォニーに凝るわけではなく、口当たりはいいが、やや中途半端な印象。都響の繊細な表現力は今回も生かされていて、第2楽章など非常な美演。難所の多い金管楽器もポストホルンを含め、とてもうまい。けれども、ここ十年ほどの間にティルソン・トーマス、ブーレーズ、アバド(ルツェルン祝祭管)、ヤンソンス(コンセルトヘボウ、近日発売)など、きわめて精緻な演奏を聴くことができるようになったので、かつては最前衛だったインバルの新鮮さが薄れてしまった。

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  • 2 people agree with this review
     2010/11/23

    ブルックナー交響曲全集がこの後、出るからいいようなものの、今年はマゼール80歳の祝いの年でもあるはずなのに、記念盤がこれ一枚しか出ないとしたら何とも寂しい。しかも建前はバイエルン放送響創立60周年だ。厖大な英デッカ時代の録音を持つUM社はどうした。彼の活動の一つのピークが1960年代であったことは間違いないが、もう一つ、巨匠的なスケールを獲得した後、やりたい放題の指揮をした90年代も注目すべきだと思う。バイエルンとの録音にはなぜか目ぼしいものがないが、この頃はメジャーレーベルがまだ彼を起用していたので、ウィーン・フィルとのラヴェル、ピッツバーグ響とのシベリウスが残ったのは幸い。さて、『火の鳥』組曲はこれが三つ目の録音となる得意曲。「カスチェイ王の魔の踊り」あたり少々もたつき気味で寂しいが、彼の持ち味は出ている。これも三つ目の『春の祭典』はあえてウィーン・フィルを起用して、独特な面白さを狙ったデッカ盤に似ている。決してスマートではなく、むしろ故意に不器用。緩急の差も大きく、恐竜がのたうつような趣きがある。録音は最善とは言えないが、まあまあ。拍手はカットしてある。

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  • 0 people agree with this review
     2010/11/23

    チャイコの5番は良く言えば豪華絢爛だが、悪く言えばセンチメンタルでゴテゴテしたところがあり、作曲者自身も自作の装飾過剰について自己嫌悪気味の発言をしていた。ところが、これはセンチメンタルのセの字もないような筋肉質でマッチョ系のチャイコフスキー。相変わらず楽譜の読みは緻密で、たとえば第3楽章ではホルンのゲシュトップト奏法を浮き立たせて、甘美なワルツの背後に暗い影を感じさせるが、全体としてはもう一息、彼ならではの個性を刻印しても良かったかな。同じホ短調のシベリウスの1番ほどには感服しなかった。既に書かれているように『フランチェスカ・ダ・リミニ』の方が上出来。

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  • 5 people agree with this review
     2010/11/23

    ストローブ=ユイレ監督の映画版を含めると三組目の本作の映像だが、デッカーの冴えた演出のおかげで、もともと良かったウィーン国立歌劇場版を凌ぐほどの出来。既に『兵士たち』の上演でも使われていた非常に特異な会場をまず紹介しておくと、20世紀初頭に見本市会場として建てられた体育館のような場所で、両側にヒナ壇のような観客席があり、その間の細長い部分が演技空間。細長い部分の片方の端にオーケストラが陣取る。しかし観客席全体やオケピットすらも可動式であり、この演出では、演技は観客席やオケピットの中ですら行われる。冒頭、暗闇の中からモーゼの声が響いてくると、スポットライトは観客席に座っていた背広姿の男性を照らしだす。第二次大戦後の前衛演劇ではおなじみの手法だが、この男性がモーゼなのだ。第1幕では観客席の壁や、壁が半透明の膜になった箱型の装置などに映像を投影するが、第2幕の乱痴気騒ぎではウィーン版とは逆に、映像に逃げず「四人の裸の乙女」などもト書きそのまま(これが18禁ではなく12禁に過ぎないところにドイツとの国情の違いを感じる)。デュージングはこの役でよく聴かれる深々としたバスではなく、バリトンの声だが、風貌からも役柄にふさわしい。下着一枚、ついには全裸になっての演技者たちの熱演には感服させられるし、合唱団、オケともに完全に作品を手の内に入れている。かつての難解な「現代音楽」も半世紀を経て、見事に演奏者たちに消化されたことを実感できる。きわめて機動的なカメラワークも秀逸。

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  • 4 people agree with this review
     2010/11/21

    ヤンソンスが今日の名声を得たのは、緻密な楽譜の読みとそれを確実に具現できるオーケストラ・トレーナーとしての能力のゆえ。でも、2000年代に入ってからの彼は単に品位の高い、堅実な音楽を作るにとどまらず、曲によってはかなり個性的な押しの強さも見せるようになってきた。「ピッツバーグに行って悪い癖がついた」などと悪口を言う人もいたが、これは彼の指揮者としての自然な成長であったと思う。マーラーの2番は彼にとって初の合唱付き交響曲ということで、まだ若い作曲者(完成時34歳)がベートーヴェンの第9に張り合おうと、大いに背伸びをして書いた曲であるから、やや表面的な効果に頼った皮相なところもある曲だ。ヤンソンスの指揮は「効果」はそれなりに生かしつつ、しかし皮相さをあまり感じさせない音楽的な充実度の高いもの。木管のひと節、弦の歌い口などでも実にいいオケ、ひいては実にいい指揮者だなと感じさせるところが随所にある。十分に5つ星に値する演奏なのだが、それでも星を一つ減らしたのは「効果」もここまでやると言葉を失うほどのラトル/BPOの強烈きわまりない演奏を視聴してしまったから(これもCD化の予定)。そして、これもすでに視聴できたヤンソンス/コンセルトヘボウの3番が、曲との相性という点で、遥かに2番より良好と感じられたから。

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  • 3 people agree with this review
     2010/11/03

    結構モダンな第4番は文句なしに良い。ミケランジェリを凌ぐほどの出来だ。問題はかの「怪物的な」第3番。ピアノは一音も弾き漏らすまいという構えの緻密でデリカシーに富んだ演奏。指揮もオペラ指揮者らしく、オケがピアノをマスクしてしまわないように、周到に気を配っている。ただし、アダージョも必要以上には粘らないし、たいていの演奏者がちょっとテンポを落として「見得を切る」のが普通の、終楽章のクライマックスもイン・テンポのままで大変あっさり。ラフマニノフ節を堪能したいという聴き手からは、もの足りぬという声も出てこよう。バカテク・ピアニストのためのショー・ピースと割り切るならば、同じEMIのガヴリーロフ/ムーティ盤がとことん満足させてくれる。でも、この曲にはそれ以上の「音楽」があると考えるならば、この演奏は面白い。賛否両論、やっぱり好みは割れそうだけどね。

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     2010/09/28

    2007年の来日公演が圧倒的だったし、その後の読響への客演でも好演の連続なので、注目せざるをえない指揮者だ。彼が取り上げたこれまでの演目を見ると、マーラーはやや苦手なのかなという気がしたが、確かに普通のマーラー指揮者のやり方と違うところがある。しかし、それを否定しようとは思わない。つまり、まぎれもなく彼だけの個性的なマーラーだからだ。最も目立つのはテンポの動かし方。マーラーの総譜はデジタル的にテンポの変化を求めるところが随所にあるが、彼のやり方はアナログ的。つまり、加速の指示がある所のちょっと前から速めていって、徐々に目的のテンポに達するという、いわばフルトヴェングラーのような方法だ。オケの響きも悪く言えば洗練が足りないとも言えようが、低音を軸に積み上げてゆくようなピラミッド型だし、この個性のせいでマーラーの交響曲がまるでシューマンの進化形のように聴こえる。細かいアゴーギグのおかげで、例のアダージェットをはじめとする抒情的な部分はすべて無類の美しさを誇るし、終楽章は直線的に飛ばしすぎたような気もするが、今はこれでよしとしよう。

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  • 6 people agree with this review
     2010/09/26

    今回も「最新の研究成果」を踏まえての録音という触れ込みだが、シカネーダーは優れた台本作者でオペラの筋に矛盾はないと強弁するアスマン先生のお説は、解説書を読む限りではシャイエの幾らかマシな再版といった感じで、全くもって凡庸。にもかかわらず演奏自体は大変魅力的だ。導入曲から聴いたことのない一節が出てくるほか、緩急、強弱の変化、装飾句の挿入などはこれまで通り、いやジングシュピールゆえ、これまで以上に自由な感覚で行われており、初めてこの作品を聴くようだ。随時、フォルテピアノの伴奏まで加える台詞部分も、ほぽすべてのセリフが語られており、「聴くドラマ」としてドラマティックに作られている。かつてはセリフ部分を俳優が受け持った録音もあったが、今の歌手たちは皆、セリフが巧い。ベルリンの新鋭古楽器オケの切れ味の鋭さにも舌を巻く。歌手陣はベテランのフィンク(ザラストロ)のみ渋すぎて声に魅力がないが、若手はいずれも好演。特にペーターゼン(パミーナ)、カーッポラ(夜の女王)は技術、表現ともに出色の歌手と思うし、シュムッツハルト(パパゲーノ)のウィーン訛りも楽しい。

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