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Review List of 千葉のアリアドネ 

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  • 2 people agree with this review
     2010/04/10

    まずドリームライフさんへ。12月のベームのコシについてレコ芸である批評家が「こんなハイレベルな映像がお蔵入りになっていたとは信じ難い」と書いていたが、僅か3ヶ月後に再び超弩級の映像リリースとは感謝の言葉も無い。ベームの芸術の全盛期の高み、当時の活躍ぶりを克明に今に伝える素晴らしい内容だ。特に「死と変容」「第7」には圧倒的な感銘を受けた。シュトラウスは63年(ベーム68歳)、コンツェルトハウスでの映像だが、盛大な拍手で「英雄」が始められない。ベームが2度客席を振り返ってようやく演奏開始(ベルリンのフィガロで吉田秀和氏が同様な体験をしたことが氏の「ヨーロッパの響き、ヨーロッパの姿」に出てくる)。序盤はきびきびと開始されるが(英雄の伴侶でのボスコフスキーのソロが何とも雄弁にして優雅−弾く姿も)、「業績」、「引退」では格調高く、そして熱く熱く音楽が高揚していく。輪をかけて素晴らしいのが「死と変容」。SKDとの凄絶ライブ(72年)に比肩する。音はモノだが、映像が眼光鋭いベームの鋭敏なリードと、本気モードのVPO(弦の高音の美しさ、管の感興の豊かさ−一発ライブだからミスもあるが)が合わさった時に、曲の真価が開花する様を明らかにする。インスブルックライブは64年。この年ベームは「オーストリア音楽総監督」という名誉称号を受けている。国家行事のオリンピック開催記念コンサートは当然の出番であったのだろうが、ここでのベームとVPOの燃焼度、集中度は凄まじい。
    「40番」。BPO盤と基本は似ているが、より緊張感と美しさが増し、4楽章はBPO盤より40秒ほど速く駆け抜けていく。「第7」は克明だが重すぎないリズム、重厚だが輝かしい音で溌剌と曲を進めていく。最終楽章は初めから快速だが、大まかにいえば2回アッチェランドをかけて(ベームが腰を突き出す例のポーズと左手をかきまわしながらオケを煽りVPOが懸命についていく様は壮観)大熱演を圧倒的に締めくくる[6分51秒はフルトヴェングラーVPO(50年EMI)とほぼ同じ]。構成感と情熱が両立した最高級の名演だ。
    ベームのライブも増えてきたものの、不思議なことに60年代のものは50年代よりも少ない。この指揮者の芸術の全貌(真価)はまだまだ明らかにされていないという感を私は強く持っている。ドリームライフさんには次々と「ドリーム」を「現実」のものしていただきたく、更なる御健闘をお願いしたい。

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  • 1 people agree with this review
     2010/04/10

    今の若いファンは渡邉暁雄についてどの程度御存じなのだろう。渡辺暁雄は都響の常任も務めており、私は学生時代、都響の定期でシベリウスの7番とマーラーの6番を聴き、忘れがたい感銘を受けた。今違う演奏とは言え、氏のシベリウスをこうしてじっくり味わえるのは実にありがたい。演奏の特徴だが、例えばバルビローリがフィンランドの叙情を謳うとすれば、この演奏は、質朴にがっしりと音楽を進める中に、強い共感と輝きが、徐々に、そして大きく満ちてくるような感がある。4番は名曲とされながら、相当「とっつきにくい曲」だが、ここでも面白く聴かせようとか、かみくだいて解りやすくとかいうのではなく、あくまで正攻法。にもかかわらず作品への指揮者、オケの共感、愛着が滲み出てくるような演奏であり、深い感動に誘われる(正直4番にこんなに感動したのは初めてだ)。7番もフィンランドの大地と天、そして冷涼な空気をも感じさせる名演。氏のシベリウスをもっと聴きたくなった(他の方もコメントされているがこの名指揮者のマーラーや他の北欧作品も是非CD化して欲しい)。ところでこんな素晴しい演奏が生産中止?商標とかビジネスの話はわからないが、そんなことにならない様、他の会社で引き継ぐとか関係者で最大限の努力をして欲しい。こうした貴重な遺産を引き継いでいきことが現在の音楽文化の興隆にもつながると思う。我々ファンもそうした動きを後押しするべきではなかろうか。

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  • 5 people agree with this review
     2010/03/13

    CDとDVDのどちらを選ぶか。何度か双方を聴き返したが徒労に終わった。独唱者もオケも違い、演奏時間もここはDVDが速く、こちらは遅いとか指摘はできるのだが、ひたひたと押し寄せる感動に結局は包まれてしまう。ただDVDの長所はまず独唱者。メンバー全員が当時のモーツァルト演奏を代表する歌い手であるだけでなく「ベーム・ファミリー」としてベームのモーツァルトを知り尽くした人々だ(このうち3人が10年後ベーム逝去時に、ザツルブルク大聖堂でレヴァイン指揮、VPOのレクイエムの独唱者として大指揮者を追悼したのは偶然でもなんでもない)。全盛期の彼らの絶唱がこの演奏をより深いものにしている。加えて画像の威力。曲の雰囲気をよく映像が伝えており、初めての人には(国内盤であれば尚更))曲に対する理解を大いに助けるだろう。VSOも懸命の力演。残響が長いことがVPOに比べやや潤い不足となりがちなところをうまく補っている。CDとともにこのDVD、解説のヴォルフガング・シュテールの言葉を借りれば「明るい美しさも、実存的な厳しさも、計り知れない荘厳さも充分表現された」演奏は、20世紀後半のモーツァルト演奏を代表し、ベームや独奏者の名を後世に伝えるだけでなく、これから後も人々をモーッアルト晩年の音楽の深みへ誘うに違いない。

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  • 4 people agree with this review
     2010/03/13

    素晴らしいマーラーだ。特に第3楽章の深い味わい、第4楽章の壮絶とも言える盛り上がり。粘ったロマン性ではなく(そうした演奏にも魅力があるが-ちなみにバーンスタインACOより全曲で約4分半速い)むしろ爽やかでもあるが、情感の豊かさ、熱気と造形感が一致したクーベリックのライブならではの名演(現場にいたら声も出ないのではないか)。この名指揮者の演奏が今なお愛され続けているのは誠に喜ばしい。70年代前半マーラー全集(このころバーンスタイン、ショルティの3種くらいしか無かった)等で有名ではあったが、セッション録音ではやや「おとなしい」とみられていたクーベリックの評価を一変させたのは75年の来日であった。この時のマーラーの9番(AuditeでCD化されている)を初めとする演奏(個人的にはFM放送されたベートーヴェンの7番が忘れがたい)は「途方もないダイナミズム」(確か吉田秀和氏だっだか)等と絶賛され、3月のベーム旋風(嵐?)の後にも関わらず、日本の音楽ファンに強い刻印を残した。当時音楽評論家の論壇番組がNHK-FMで定期的にあり、皆がクーベリックがあれほど凄いとはという趣旨のことを口にすると、かねてからクーベリックを高く評価していた大木正興氏(N響アワー解説、レコ芸交響曲担当)が「そうですよ、本当にすごい(息を強めて)指揮者ですよ」と強く発言したことが鮮明に記憶に残っている。Auditeへの感謝とともに(本当にいい企画をするレーベルだと思う)更なる名演の発掘をお願いしたい。

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  • 5 people agree with this review
     2010/03/13

    これは朗報だ。私は「輸入盤」で見ているのだが、気鋭のシュトラウス研究家、広瀬氏の対訳、解説とは有り難い(ひどい内容のものも多い中良心的-みなこうあって欲しいものだ)。輸入盤には、伝道師ベームに比べればややとの思いから高水準ながら☆4つとしたが、訳も付き、皆さんにもっとこの素晴らしい作品をみてもらい、この傑作について語り合いたく☆5つに昇格(今年は18年ぶりの日本上演もある-予習にも間に合う筈だ)。筋、内容が難解というが、鷹とか影とかの象徴的意味に深入りしなければ、これは理解しやすい2組の夫婦の成長物語ではないか。終幕皇后がバラク夫妻の犠牲で自分だけが幸福になることを拒み、それにより全てが許され2組の夫婦が歓喜を歌いあげる大詰めは美しくも感動的。大がかりな舞台が必要で、名歌手、大指揮者がそろわないと真価が発揮されないこの曲だが、ベームの尽力で上演リストに残り、ショルティにとっても最高、最愛のシュトラウス作品であった。またニルソン、ルュートヴィヒも人間的成長を歌うバラクの妻の役は非常に素晴らしい体験と語っている。猿之助演出はこのファンタジーへの一つの理解しやすい回答と言ってよいだろう。だがこう書いてくるとやはり原点として伝説のベーム、レンネルトのザルツブルクでの舞台を見たいとの強い思いにかられずにはいられない(77年ウィーンでのトマ演出のものはORFにテープがあるらしいが)。是非発掘の努力をお願いしたい。

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  • 11 people agree with this review
     2010/02/20

    ベームには白鳥の歌となった渾身のエレクトラ(81年、DVD 、VPOの圧倒的演奏、リザネクの熱演、熱唱)があるが、ほぼ20年前、60年録音の当盤も今なお価値を失わない。一つには歌手陣の素晴らしさ。当時エレクトラ歌いとして世界的に評価されていたボルク(43歳)、気品とドラマ性あふれる名唱は、ニルソンの鋭くも美しいエレクトラとはまた違った魅力を放つ。マディラ(41)は美貌の野性的カルメンとしてならした人だが、クリテムネストラも当たり役で、単なる悪女ではなく苦悩する人間としての表現が素晴らしい。男性陣もウール(32)、F=D(35)と表現力の優れた歌手を揃えた布陣は当時のベストキャスト(もしこのメンバーで映像が残れば-女優出身のボルク、美貌の演技派マディラ-魅力的な映像になったのではないか)。これを率いるのが全盛期のベーム(66)、オケがシュトラスウスの伝統を誇るSKDとあっては成果が低い筈が無い。録音年代からの限界はあるが(再発になるときはOIBP化を!)重厚だが鋭く、圧倒的迫力はあるが誇張や絶叫に陥らないベームのシュトラウスの素晴らしさが十分伝わってくる。歌詞がはっきり聞こえるのも良い。これで更にニルソン-リザネク-ベームの「定番トリオ」のヴィーン国立歌劇場ライブ(65年)が正規盤として出れば言うことは無い。Orfeoさん是非頑張ってください。

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  • 15 people agree with this review
     2010/02/14

    カラヤンのDVD(60年)は最高だと思う。クライバーもまた素晴らしい。が私はベームの薔薇(当盤および69年ザルツブルクライブ)も欠くことができない。当盤は歌手も魅力的だ。何といってもゼーフリート(カラヤンは当時オクタヴィアン歌いとして人気絶頂だった彼女を起用したかったそうだが何故かレッグの反対で実現せずルードヴィヒにお鉢がまわった)、オックスでエーデルマン同様の評価を得ていたベーメがこの録音の価値を高めている。シュトライヒも可憐。これでもし元帥夫人がリザ・デラ・カーサだったら完全にカラヤン盤の対抗馬たりえただろう(シェヒも少しも悪くはないのだが)。ベームが明確にシュトラスウスのスコアを音にするさまは痛快とも言え、陶酔に走るのではなく、当初はオックスが主人公として構想されていたこのオペラのブッファの精神が生きている。かといって明快一方でなくこの演奏にロマンをも与えているのは、シュトラウス演奏の伝統を誇るSKDの自発性豊かな演奏。弦、管ともチャーミングな表情がなんとも言えない。私はこの盤をじっと聴いていると58年を越えて、戦前のベームとシュトラウスの活躍していたころのゼンパーオーパーに自分がいるような気になることがある(当時を知る団員も大勢いたのではないか)。演奏の魅力に加え、シュトラウス演奏史を考える上でも是非一聴をお勧めしたい

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  • 3 people agree with this review
     2010/02/13

    auditeさんまた快挙。アルプス目当てに購入。52年3月の録音としては驚異的な鮮度だ。周知の通りベームには57年SKDの名演があり(あと1年遅ければステレオ収録であったろうに)、OIBP化もされているが、解像度はこちらが断然良く、ベームの音作りが理解しやすい。演奏だけで言えば爽やかなロマンと山岳の臨場感にあふれ、オケ特に管楽器の自発性あるSKD盤がやや上回るかもしれない(演奏時間SKD51分58秒、当演奏54分24秒)。しかし山を仰ぎ見ながらがっしりまとめ上げたかの様な当盤の魅力も相当なものだ。特に嵐以降は素晴らしい。聴くたびに思うのだがベームのアルプスは自然への畏敬、憧憬そして「感動」に満ちている(ベームがステレオ録音を残し人口に膾炙していれば、安っぽいスペクタル的作品などと言う不当評価をされずに済んだのではないか)。私事で恐縮だが私は富山県に赴任したことがある。北アルプスの堂々とした立山に登ったり、峻嶮な剣岳を見上げながら5年間を過ごし、山の荘厳な美しさに魅了されたが、最もそれに似つかわしいのはベーム(そしてケンペ)の演奏だと思っている。思えばベームは終生出生地「グラーツ(美しい世界遺産の町だ)の山男」であることを誇りとした人だった。

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  • 14 people agree with this review
     2010/02/11

    正しく夢の舞台。本来演奏の良し悪しは背後の状況とは関係なしに語られるべきだろう。が、医師や周囲の反対を余所に来日に執念をかけたベーム(来日に付き添ったテア夫人は自らの病は隠してベームを支えた)。彼は、バルツァに日本公演のため再びケルビーノを歌うよう(スター街道を歩む彼女はケルビーノは「卒業」していた)自ら懇請。「今回はベームのために引き受けた」と語ったバルツァ。会見で遅いテンポで歌いづらくないかとの質問に「あの人は特別です、息の続く限り歌います」と言い切ったヤノヴィッツとポップ。そうした演奏者の思いがこの忘れがたい名演に結実したとは言えまいか。最晩年様式の良いところが結晶。テンポを落としているところの音楽の深さ。ブッファの愉悦の中の人間への深い慈愛に満ちた眼差し。感情のひだを表現しつくすオーケストラと歌手の熱唱(風邪が心配されたプライも頑張りをみせている)。<壮年期の輝き、63年来日公演(PONTO)や68年DG盤との聴き比べも是非どうぞ>。映像を世に出したNHKさんには深く感謝。そしてお願い。そろそろ値段を落として再発してもらえないでしょうか。より多くの人に、特に若い人達にこの素晴しい音楽を伝えたいと切に思うが故に。

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  • 12 people agree with this review
     2010/02/11

    不世出のモーツァルト指揮者ベームは、幸いなことに最も得意とするフィガロにライブ盤を含め多くの録音、映像を残した。80年来日公演DVDも、ポネル演出の76年の映画も、63年来日公演のCD(PONTO)もそれぞれかけがえのない存在…だがベーム(74歳)、プライ(38)、F=D(42)数々の画期的公演で演奏史にその名を残した「鉄壁トリオ」の全盛期の指揮、歌唱。加えて若きヤノヴィッツ(31)、マティス(30)の魅力溢れる当盤は録音も含め、最も条件の整った、完成度の高い記録と言え、20世紀中盤から後半にかけてのモーツァルト演奏を代表するCDというに躊躇しない。これでVPOならばという意見は良くわかるが(状態の良い録音が発掘されればもちろん聞きたいが)ベルリンオペラのオケのやや硬めの響きが却ってベームのアプローチを明らかにしている面もあり、これはこれで評価したい。初めてCDでフィガロをという方には迷いなくこの盤を推したい。

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     2010/02/07

    ドンナ・イゾルデ、ドンナ・アイーダ、ファゾルト騎士長にドン・ジョヴァンニ博士…ニルソンはこの役をかなり歌っており(不評なら続けないだろうし)、ベームとの初共演は55年ナポリでのこの曲が最初である。ニルソンがいかに高音を楽に出せても、歌い回しでは苦しい面があると私は思うが・・・。ではベームは表現上ニルソンの様な歌い手をアンナ(解釈の難しい人だ)に、必要としたかというとそうも言えない(77年盤はトモワ=シントウ、その他デラ・カーザ等)。ではアーロヨのエルヴィラ(この人も難しい-弱いのか、強いのか?-これこそ女性?-今時こんな人いない?)をどう考えるか・・・。 プラハのオケは健闘。ブッファを基調としたベームの指揮には聴きどころも多いが、この曲にはやや几帳面。コシやフィガロに比べ一段落ちるかに言われてきたベームのドンジョヴァンニだが私は55年ヴィーン国立歌劇場ライブ(MYTO)を聴いて評価を改めた。若々しさ、艶、雄弁なドラマ・・・。この他私は未聴だが数種のメトロポリタン盤(音は良くないと聞く)等のライブがいくつもある(海外では人気があるのではないか)。是非録音の良い名演を発売して真価を味あわせて欲しい。

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  • 4 people agree with this review
     2010/02/07

    ドイツ語だから「ぶってよマゼット」がbatti,battiではなくschmale, schmaleになったりする。この時代レチタティーヴォはピアノ。録音も聞きやすいとまでは言えないが、歌手陣の様式感ある名唱、白熱の指揮、歴史的価値から☆5つを進呈。55年11月6日、記念すべきフィデリオによるウィーン国立歌劇場再建公演の『翌日』、ベームは再びタクトをとった。当演奏である。ロンドン(36歳)はジョバンニ歌いとしてシェピと人気を二分していたというが勢いと色気のある歌唱が凄い。クンツ(46)の達者なレポレロ。デラ・カーザ(36)はエルヴィラ(フルトヴェングラーのDVD等)の方がより「向き」かなとも思うが立派。デルモータ(45)ゼーフリ-ト(36)若きベリー(26)大ヴェテランのウェーバー(56)それぞれ魅力一杯の歌唱で会場の大喝采もむべなるかな。ベームの指揮。この曲に必要な「若さのエネルギー」に溢れ、VPOも灼熱の輝き。基本線はブッファに置きつつ、地獄落ちではすさまじい響きを具現。ベームのジョバンニの真骨頂を示す(後年の正式盤が必ずしもベームの実力が示されていないため貴重)。思えばベームのジョバンニのライブCDは数種のメト盤等結構ある(日本と海外では評価が違うのではなかろうか)。是非録音の良い名演を発掘して欲しい。

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     2010/01/24

    この自然賛歌から神々しい祈りへと高まっていく稀有な田園の演奏について、私が付け加えることなど何も無い。この1枚だけでベームの大指揮者たる所以を後世に伝えることだろう。シューベルトは42年SKD以降4回目のセッション録音。明確な構成の中にVPOと溌剌としたロマンを謡った54年の名盤(このレコードで5番の魅力を知った人も多いのではないか-私もLP時代愛聴-現在入手困難なのは誠に遺憾)、堅固、重厚な中にシューベルトを生き生きと歌いあげた完成度高い(有名な全集に含まれる)66年BPO盤、これらとはまた違った魅力あふれる演奏だ。この演奏ではまず暖かさが前面に出る。ベームはシューベルトを、そしてあたかも生きるもの全てを慈しむように第一楽章を始める。第二楽章はBPO盤に比べ1分近く遅いが感興の豊かさは比類が無い。第3楽章はやや重いが、最終楽章は活気にあふれ溌剌と締めくくる(演奏時間もBPO盤と大差ない)。VPOの優美さ、チャーミングな表情。録音時期は79年12月、冬のさ中なのだが、ベームの胸には来るべき暖かい春の光景が去来していたのではないだろうか。

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  • 2 people agree with this review
     2010/01/24

    田園の演奏について私が付け加えることは何もない。この1枚だけでベームの大指揮者たる所以を後世に伝えることだろう。ライナーノーツ記載のリチャード・オズボーン氏-カラヤンの浩瀚な評伝でお馴染み-のベームの芸術への敬意と愛情に満ちた一文(タイトル「カール・ベーム:霊感にあふれた忠実さ」−何と的確な賛辞、且つベームの芸術の本質を衝いた言葉だろう)や、ペンギンガイド、グラモフォン紙の批評などを見ると、日本だけでなく、世界の人々のこの演奏に寄せる敬意と愛着が思われる。我々はまた77年3月の来日公演という素晴らしい記録を手にしている。霊感あふれる両演奏のどちらがなどという問いに意味はない。あえて言えば当盤の方がやや締まった感じ、77年盤は更に熟成した感じとでも言おうか。音質はもちろん当盤が勝り、SHM化により更に向上したと思う。是非2種のCDとDVDでベームの田園の素晴らしさを味わっていただきたい。シューベルトは42年SKD以降4回目のセッション録音だが、VPOの魅力を生かした暖かさと滋味溢れる名演。

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  • 3 people agree with this review
     2010/01/24

    EMIの敏腕プロデューサー、ウォルタ-・レッグ(シュワルツコップフの夫君)は録音当時(62年)「今後20年間は生命を失うこのとないレコード」と「豪語」したというが、20年はおろか50年を超えて愛され続けるだろう。カラヤンの薔薇をも凌ぐといわれた60年ザルツブルクでの画期的成功を受け、女性主役2人を公演と同じにして録音。この事が当盤に不滅の価値を与えており、素晴しいVPOとのDVD(69年-ドリームライフ)が出た今も価値を減ずることはない。クラウス、タディーもベームの様式と齟齬なく立派そのもの。溌剌としてウィーン情緒豊かな55年VPO、ライブの魅力と熟成した感情表現の74年VPOと比べてどうかというのは酷な質問だが、「完成度」という観点からは当盤に最初に指を折るべきであろう。74年盤でカットされている27.28番のアリアは当盤では演奏されている(7.24番は両盤ともカット)。R.オズボーン-カラヤンの伝記等でお馴染み-の解説はコシの演奏史、ベームの芸術とコシにつき簡潔的確に伝えており秀逸。

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