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いましゅう さんのレビュー一覧 

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     2014/12/06

    ウィーンで薫陶を受けた、若きヴァイオリン界ホープの白眉の名品集。デビュー作とは銘打ちながらも、全体にゆったりと落ち着いたテンポと、速いパッセージの歯切れよく軽快な演奏とともに、重音、スタカート、装飾音など細かい動きに至るまで、曲の隅々までを精緻に再現した、奏者の並々ならぬ楽曲への配慮と演奏技術の巧みさ、素晴らしさがうかがえる、堂々とした正統派の演奏が楽しめる作品集である。

    永ノ尾の奏でるクライスラーの「愛の喜び」「美しきロスマリン」の演奏は、作曲者自身が生まれ過ごした、洒落たウィーンの音楽の香りや雰囲気で充溢している。同じく「プレリュードとアレグロ」「ヴィターリのシャコンヌ」では、バッハの無伴奏ソナタを彷彿とさせるような、妖気漂うスリリングなヴァイオリン演奏が堪能できる。
    さらに「イタリア組曲」(ストラヴィンスキー)のガヴォット、および「シチリアーノ」(パラディス)では、ノスタルジックなヴァイオリンのメロディーの歌い方が見事である。
    最後に収録されているシマノフスキーの「タランテラ」は、曲のモチーフや緩急の変化が見事に反映されており、ピアノとヴァイオリンの掛け合いにより、圧巻のフィナーレを飾っている。

    全体にピアノ伴奏は控えめで、ヴァイオリンは高弦部の美しさが際立つ、出色のCD録音に仕上げられている。

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     2012/09/05

    タイトルは南米ピアノ作品集だが、これがはたして南米音楽かと思わせるような、洗練された透明感と凛とした美しさに溢れたピアノ小品集である。ピアニストの三舩優子は、ヴィラロボス、ヒナステラ、ピアソラといった南米音楽の大家の作品を、歯切れのよいタッチと強弱をつけた明確なバランスや軽快なリズムで、類を見ない透徹した、曲の構造が手に取るようにわかる音楽に仕上げている。作品に選ばれた曲もどれも聴き手をうならせるもので、ところどころリストの後期作品やショパンのバラード、バルトークのスケルツォのような曲想のパッセージが現れたり、どことなくメランコリックなロマン派的な音楽でありながら、現代音楽のようでもあり、かつラテン調の激しいリズムにも溢れているという、さまざまな角度から味わえ楽しめる小品がこのCDには詰まっている。普段クラシックをあまり聞かない人も含めて、どんな聴き手の心も癒してくれそうな、お奨めの一枚である。

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     2012/03/24

    テンポが大きく揺れ動く、軽快かつ斬新なタッチで歌われた、いずれも肩を凝らずに楽しめる14曲が収録されている。

    林美智子の歌は、その表現も声質も、ベル・エポックの時代に相応しいフランス世紀末風の、どことなくメランコリックで憂いに満ちながら、今その瞬間を楽しむ当時の人々の錯綜した心理をものの見事に反映している。歌い手のフランス語の発音の美しさや歯切れの良さや歌唱技術の高さもさることながら、短いながらひとつひとつの曲の歌詞に込められた背景や登場人物の心理を深く解釈し、読み込んだその抑揚や起伏の豊かな歌唱は、聴く者の心を揺さぶるに十分な説得力を持っている。

    収録曲中では、とりわけ同じ歌詞で2つの異なる作曲家による「カディスの娘たち」が面白い。とりわけドリーブの曲はフラメンコ風の情熱あふれる圧巻な曲である。他にも「エレジー」のような存分に物悲しい雰囲気の曲もある一方で、「アイ・リュリ」のような明るく生気に満ちた曲もあるなど、さまざまな曲想の小品が収録されており、1枚のアルバムで、多様な色彩を帯びたベル・エポックの作品を贅沢なまでに存分に堪能することができる、洗練された稀有な作品集である。

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     2010/05/24

    間近でライブを聴くような刺激的な演奏である。
    サン=サーンスのソナタはコンサートでもCDでも取り上げられる機会は少なく、それだけでも貴重であるが、瀬崎明日香はこのソナタの曲のもつ醍醐味を余すところなく演奏に反映させている。

    サン=サーンスのソナタはスリリングな迫力ある場面もあり、情緒的な
    メロディーもあり、抑揚が聴いていて面白く、ときおりブラームスのソナタのような重厚さも彷彿とするような起伏に富んだ曲ばかりである。瀬崎のヴァイオリン演奏は、温かく人間的なぬくもりのある、しかも情熱が
    ほとばしる、力の漲った演奏を貫いている。
    同じく収録されている「序奏とロンド・カプリチオーソ」はそのイントロから、女性奏者ならではのたっぷりと艶めかしい演奏が聴ける。

    瀬崎のヴァイオリンは、G線は重厚な肉厚のある響きを聴かせ、E線はつややかで伸びのある音を発し、聴く者の心を即座に惹きつけ、病みつきにさせてしまう。そういう「魔力」のある演奏が十分に楽しめる一枚である。

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     2010/05/24

    イザイのヴァイオリン・ソナタ全集は外盤も含め、すでに様々な奏者のCDが出されているが、全体の印象は地味で重々しく、刺々しい現代作品の演奏というイメージであった。

    しかし瀬崎明日香のヴァイオリン演奏は、その印象を一気に払拭させるような、流麗で軽やかな聴きやすいものに仕上がっている。強弱のメリハリも明確であり、何より曲の運び、テンポが良い。しかも演奏自体は繊細そのもので、音一つ一つの響きに実に配慮されている様子がうかがえる。

    総じてイザイの6曲のソナタのそれぞれの楽章が持つ、起伏に富んだ曲想の楽しさや面白さ、創意工夫があらためて発見できる演奏である。クラシック現代音楽の初心者にも十分お薦めできる一枚である。

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     2009/10/26

    最近の現代音楽の演奏の中でも稀にみる、ハイレベルの完成された演奏が楽しめる一枚である。

    左右の手にバラバラなリズムと運動を要求する、バーバーのピアノ・ソナタは、譜面をさらうだけでも至難の業であるのに、三舩優子はこの超難曲を、いとも簡素でクリアな構造に仕立て上げ、クラシック音楽をあまり聴いたことのない者にも親しみやすく、わかりやすい音楽に再生させた。

    このCDの彼女の演奏では、この複雑な大曲の構成やフレージングの網の目が見事なまでに解きほどかれ、楽譜をざっと追うだけではわからない、無秩序なまでにもつれ交錯した音の羅列がきちんと「秩序」づけられて整理され、リスナーの前に「端正なるソナタ形式」の現代楽曲の形で披露されている。

    ともすれば無味乾燥で抽象的、意味不明の演奏に流れてしまいがちな、このソナタの文法構造をここまで鮮明化し浮かび上がらせることに成功した演奏は、おそらく過去のいかなるピアニストのレコーディングにもない、特筆すべきものであろう。

    このCDに収められているソナタ以外の作品も、それなりに趣きがあり、次々と交錯する音の洪水の中で一筋、凛とした気品と美しさ、透明感を輝かせている。これらも偏に、奏者の曲のモチーフや構造に対する深い読み込みと、強弱と緩急のバランスを自在に駆使した色づけができなければ、これほどまでの明快なテクスチュアを描き切ることはできない離れ業ばかりである。
    一曲一フレーズへの細かい色づけの結果、曲全体の雰囲気も極めて特徴あるものに仕上がっている――『間奏曲』がかもし出す静けさと安らぎ、一瞬の沈黙の深い意味。作品『遠足』の軽快なリズムの裏にある作曲者自身の遊び心や悲哀。

    バーバーの音楽は、音の重なりとともに、その間につねに繰り返し現れる「沈黙」の瞬間が、もうひとつの「音」としての実に重要な役割を与えている。まさに「沈黙」も「音」の一種であり「音楽」の不可欠の構成要素であることを、これほど直截的に感じさせてくれるのは、バーバーならではの醍醐味だ。

    この作品集は、長年レコーディングの構想を温めてきた、バーバーの演奏にかけては絶対の自信と深い愛着をもつ、三舩優子ならではの快挙であり、本人のデビュー20周年記念を飾るに相応しい記念碑的演奏である。

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