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平沼義之

本 廃道探索 山さ行がねが じっぴコンパクト文庫

廃道探索 山さ行がねが じっぴコンパクト文庫

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    ココパナ  |  北海道  |  不明  |  2021年04月12日

    膨大な情報量とともに精緻な「廃道・道路」の探索・調査報告を行っている有名なサイト、「山さ行がねが」の管理人である平沼義之氏による著書で、同サイトの「書籍版」である。シリーズ第1弾であり、投稿日現在、続編にあたる第2弾も刊行されている。当該サイト内では紹介されていない(重複していない)もの計8編が収録されている。 著者の平沼氏は、すでにその筋の人の間ではとても有名な人物であるが、一応、紹介しておくと、本書の末尾で紹介されているように、「廃道探索で生計を立てるプロ・オブローダー(廃道探索者)への道を現在も探索中!」とある。そして、私の知る限り、氏の現在は、限りなくその目標に近い。私が第一に感心するのはその点である。趣味を極め、その面白さを世にプレゼンテーションすることで、一定の収益化が行われ、また、イベント等への出演などでも活躍中だ。私も趣味を深めたいと考える人間だが、どうしても仕事に多くの時間を割かなければならないので、氏の勇敢な生き方には、憧れと敬意の双方を感じるのである。 下記に、私が本書において、こういうところが魅力というところを書き出してみた。 ・古い地形図の紹介 平沼氏の探索の多くは、氏自身による古い地形図の調査からはじまる。(ちなみに私も新旧問わず地形図は大好き)。例えば、第1章で紹介されている加須良と桂の2つの集落の姿など、地形図を見るだけで、様々な物語が胸に去来する。氏の巧みな説明も手伝って、読み手は、今、ここがどうなっているのか知りたい、と興味をかき立てられる。 ・実地の写真と撮影地のリンク 実地調査時の写真は核だ。氏だからこそ訪問できる個所の写真は、読者にとってかけがえのないもの。ただ、ここで「書籍」というツールの限界も感じられる。写真のサイズには制約があり、白黒印刷のため情報量は限られる。Webサイトならワンクリックだった「現在地」も、本書ではQRコードを読み込まねばならない。ただ、必ずしもその必要はなく、当該地がある程度絞られれば、ネット上で地理院地図と見比べながらの読書でも十分に楽しい。 ・難所の乗り越え 廃道は当然のことながら荒廃が進んでいる。時には事前通告もなく、崩落等により、通行の難所が出現する。しかし、本書ではこれを「見せ場」として、巧みに演出。いくつもの難路を攻略してきた著者は、自身の経験を踏まえて、何に注意すべきか、どのような方法でこれをクリアするかを語っており、なかなかの冒険譚に仕上がっている。時には日没というタイムリミットと戦いながら、いかにして目的を回収するか。なかなかスリリングな味わいがある。 ・発見 当然のことながら発見の喜びがあちこちに満ちている。それは道路のストラクチャに限らず、その道路の由来や歴史にかかわるものなど様々だ。それらが、その道路を必要とした人と集落に肉付きを与え、読み手の想像力を刺激してくれる。そして、「今、ここがどうなっているのか」と沸き上がった興味を、鮮やかに回収してくれる。 ・謎解き 想像力を刺激するだけではなく、探索の過程では、新たな「なぜ」が発生する場合もある。そんなとき、氏はこれを持ち帰り、様々な文献を当たって、解明の光を当てていく。 こうして書いていくとわかるが、氏の探索は、知力と体力の融合したきわめて高度な遊びであり、同じように堪能できる人はなかなかいないだろう。書籍という制約を踏まえて、精いっぱいのエンターテーメント精神が反映されているし、それになにより、いつもの著者ならではの面白味が伝わってくる。というわけで、文句なく、推薦です。

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