『さまよえるオランダ人』全曲 ホモキ演出、アルティノグル&チューリッヒ歌劇場、ターフェル、カンペ、他(2013 ステレオ)
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村井 翔 | 愛知県 | 不明 | 2015年02月27日
演出のアンドレア・ホモキが相変わらずいい仕事をしている。舞台は一貫してダーラントの家、正確に言えば貿易商社ダーラント商会のオフィスの中。時代は20世紀初頭といったところか。第1幕では幽霊船は姿を見せず、オランダ人は事務所の中にまさしくゴーストのごとく忽然と登場する。つまり、舞台を支配しているのは1920年代ドイツ怪奇映画の雰囲気。歌に合わせて壁の絵(実はテレビモニター)が動く「ゼンタのバラード」もまさしくそうしたテイストだ。ちなみに娘たちはもはや糸紡ぎはしておらず、商会のタイピスト達という設定。タイプライター、電報、電話といった当時の最新メディアが登場している。このオペラをハッピーエンドで終わらせようとするのは、もはや欺瞞でしかないと思うが、クプファーと同じ1843年初演時の稿を採用していることからも分かるように、最後は予想通りの結末。他には幽霊船の船員たちの歌とともに壁のアフリカ地図が燃え上がる第3幕第1場もなかなか秀逸。第1幕からダーラントの召使いとして黒人の青年が登場していたのは、この伏線だったのかと合点がいく。 歌手陣はきわめて強力。ターフェルは声の力、表現力ともに申し分ないが、例によって、ちょっと作り物めいた歌。でも、この演出ではゴーストという設定なので、これで構わない。カンペは声の力自体は圧倒的とは言えないが、思い込みにとらわれた乙女を的確に表現して、まことに素晴らしい。半世紀前のアニア・シリアもこんな感じだったろうか。ダーラントがサルミネンというのも豪華だが、声自体の衰えをさほど気にする必要のない役だし、娘を金品同様にやりとりしてしまう家父長制の象徴としては、これぐらい貫祿があってもいい。指揮はもう少しワイルド、粗削りであってもいいと思うが、響きをあまりふくらませず、初期ワーグナーらしい節度を守った上で、十分な劇的迫力は確保している。3人の方が、このレビューに「共感」しています。
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