指揮者の役割 ヨーロッパ三大オーケストラ物語 新潮選書
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mulder | 福島県 | 不明 | 2012年11月15日
著者は音楽プロデューサーで,ヨーロッパ在住の経験があり,多くの有名オーケストラの団員や指揮者と知古のある方のようである。ここで取り上げている「ヨーロッパの3大オケ」とは,ウィーン・フィル,ベルリン・フィル,ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の3つ。それぞれの楽団と関係する指揮者について,楽団関係者からの直接聞いた貴重な情報が披露されている。中には噂に基づく出所のはっきりしない情報もあるが。ウィーン・フィルとベルリン・フィルについては,既にいろいろなところで語り尽くされており,それほど新鮮味のある情報ばかりではない。著者はこういった本にありがちな,カラヤンをこき下ろしてフルトヴェングラーを神格化するようなことはなく,公平な目で書かれていると言ってよい。ただし,アバドやラトルには厳しい。コンセルトヘボウについては,日本ではそれほど情報が豊富とは言えないので,初めて聞くような興味深い話が多かった。私は今まで(今でも)なぜコンセルトヘボウが世界の3大オケに入るくらいの評価がされているのか全く理解できなかったのだが,そういう評価がなされるだけの歴史があるということは分かった。こちらについても,評価が分かれている(らしい)シャイーについて,きちんと正当に評価していると思う。いろいろなエピソードの中で一番興味深かったのは,それまでウィーン・フィルと長期にわたり非常に密接な関係を築いていた2人の指揮者,アバドとレヴァインが,ある時期以降全く登場しなくなってしまった理由について書かれているところであった。2人とも大好きな指揮者で,ウィーン・フィルとの相性も抜群だと思っている指揮者なので,これだと今後も共演の機会は二度とないものと思われ非常に残念であった。なお,本書では「コンセルトヘボー」,「クレッバース」など通常とは異なる表記がされている(あえてそうしたのだろうが,一言コメントがあってもよかったのでは)ので注意が必要であろう。1人の方が、このレビューに「共感」しています。
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