ジェシー・ノーマン 未発表録音集〜ワーグナー:『トリスタンとイゾルデ』抜粋(マズア指揮)、他(3CD)
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村井 翔 | 愛知県 | 不明 | 2023年05月08日
芸術家の自己批判は、ちょっと常人には理解しがたいところがある。レヴァイン/ベルリン・フィルとの『4つの最後の歌』はなぜ発売されなかったのかと長年思ってきたが、聴いてみて納得。より緻密に歌おうとしたのだろうが、今なおこの曲の最良のディスクであるマズア/ゲヴァントハウスとの圧倒的な録音と比べて、明らかにスケールダウンしている。『大地の歌』でもレヴァイン/ベルリン・フィルとの盤よりデイヴィス/ロンドン響の方が良いのと同じだ。『クレオパトラの死』もバレンボイム/パリ管との録音の方が上。ただひとつ、『トリスタンとイゾルデ』の全曲録音が実現しなかったのだけは、本当に残念。マーガレット・プライスも舞台で歌ったことはなかったわけだから、クライバー盤のヒロインが彼女になってもおかしくなかったし、晩年のカラヤンにまだ全曲を振る体力があれば、再度の全曲録音が実現したかもしれない。こればかりは指揮者との相性や録音タイミングの問題が難しい。ここに聴かれる1998年の録音では、声自体はややピークを過ぎた感もあるが、表現としてはまことに見事。相手役のトマス・モーザーも健闘しているし、シュヴシァルツ、ボストリッジといった豪華な歌手が付き合っているので、このままマズア指揮で全曲録音になってもおかしくなかったが、彼女自身も自分の衰えを感じたかもしれないし、フィリップスにはバーンスタイン盤があったせいもあり、そうならなかったのだろう。4人の方が、このレビューに「共感」しています。
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