Recovery Time

ダブを進化させた傑作『Survival & Resistance』に潜む狂気は、本作でダンスフロアへと解き放たれる。

ブルースのエレジーやブラジル音楽のサウダーヂ、絶妙な音の配置、ダブの新解釈。2012年、ON-U SOUNDの総帥にして、UKダブ・シーンを常に牽引してきたエイドリアン・シャーウッドは6年ぶりとなるソロ・アルバムにして最高傑作の呼び声高い『Survival & Resistance』をリリースした。そして、今回リリースされる『Recovery Time』はその美しき静寂に潜む狂気を解放するかのように、ダンスフロアを揺らすべく強靭なビートが陣を取り、スピーカーを震わせる。

本作『Recovery Time』は、多くのリミックス・プロジェクトがプロモーションのために話題のアーティストを起用する中、「レコード会社は普通他の人間にリミックスをやらせたがるけど、俺はあまりそれが好きじゃないってこと。自分でやるほうが好きなんだ。自分の創造力の延長であるべきだよ」と語る通り、エイドリアン・シャーウッド自らが楽曲を再構築している。ピアノ・フレーズが印象的な原曲「Effective」を、「In Full Effect」ではレーベルを主宰し、ブリストル・ベース・ミュージックを牽引するピンチを共同プロデューサーに迎えて畳み掛けるビートとともに薄く敷かれていたノイズは膨張し、恍惚の風景へと誘う。また、他のトラックは全てビートをグラミー賞受賞プロデューサー、ジャズワドと共作。『Survival & Resistance』のリード・トラックでもある原曲の「Two Semitones & A Raver」を「Semistoned」ではより凶暴になったヘヴィウェイトなグルーヴ、後半にはジャングル・ビートへと変貌しリスナーを引き連れて疾走する。本作『Recovery Time』で聴けるバージョンたちは、すでに原曲を知っている人たちをフロアで狂気のダンスへと導き、また初めて聴いたリスナーを『Survival & Resistance』へと誘う。エイドリアン・シャーウッドはダブを進化させることを止めない。