HMVインタビュー:Brian Mcknight

2009年11月13日 (金)

interview

Brian McKngiht

ブライアン・マックナイト オフィシャル・インタビュー
質問:二木崇  翻訳:Yumi Parks

最善の状態にある自分というものを確立するためには、真のソウルメイトを探すことが必要だって思う。偉大な男性の背後には必ずその男性を支える偉大な女性の存在があるわけで、自分にはそういう女性が今いないからね。

--- まず、今回も素晴らしいアルバムを届けてくれてありがとうございます!

ありがとう。

--- 今作は、『Bethlehem』とベストを足しての『10』、そして『I'll Be Home For Christmas』を数えて、12枚目というカウントでいいのでしょうか?

実は13番目の作品なんだ。昨年ユニバーサルがもう1枚グレーテスト・ヒッツ(アルバム)をリリースしたからね。だからベストアルバム2枚とクリスマスアルバム2枚、それから今回のアルバムが9枚目のスタジオアルバムになるんだ。 

--- その中でターニング・ポイントとなった出来事なんかはありますか?

アルバムそれぞれがそうだったと思う。というのも、どの楽曲も自分で書いているからね。どのレコードも当時の自分自身の人生のロードマップのようなものなんだ。だからターニング・ポイントとなった出来事や作品といったようなものが必ずしも存在したとは言わないけど、確かに今まで山あり谷ありだったっていうのは事実だし、今でもその過程にあるわけで…ただひとつだけ分かっているのは自分は自分以外にはなりえないって事だけ。それぞれのアルバムが独特の意味合いを持っているしね。例えばファーストアルバムでは自分自身がよく何をやっているのかまだ分からなかった。で、セカンドアルバムでは自分のやりたいことをすっかり理解できてるって思い込んで作ったアルバムで、サードアルバムではまた自分が何をやっているのかよく分からないまま作ったもので…(笑)。それぞれのアルバムがまるで(アルバム作成)当時の自分の人生の証みたいな内容になっているんだ。

--- 今作のタイトル、テーマは、そうしたあなたのキャリアを踏まえてのものである、人生やキャリアを通じて得たもの、経験したものを反映している、と捉えてもいいのでしょうか?

全くその通りなんだ。自分が今まで経験してきたこと、これから経験したいこと、それから現時点での自分といった全てを反映したものなんだ。過去、現在、未来っていう3つのステップをひとつにまとめたものなんだ。それから今現在の自分に対しては、恐らく今まで生きてきた中で最も幸せだって感じられる。自分自身が人間として大きく進化したと感じているんだ。

--- では、そこに込めた気持ちというのはどんなものだったのでしょうか?

いつも愛、そして恋愛関係についての作品を書きたいって思うんだ。最善の状態にある自分というものを確立するためには、真のソウルメイトを探すことが必要だって思う。偉大な男性の背後には必ずその男性を支える偉大な女性の存在があるわけで、自分にはそういう女性が今いないからね。今までそういう女性が必要だなんて思ったこともなかったんだ。女性に関してもクオリティー(質)とクオンティティー(量)の両方を求めていたというか、これだけ沢山の女性に会えばその中から誰かしら自分に相応しい相手が見つかるって勘違いしていたんだ。でもそういう訳ではなくて、今はクオリティーを重視してる、特別な一人の女性を探しているんだ。まさか結婚と離婚を経験してからこんな気持ちになるなんて思ってもいなかったけどね。だから今はそういう道を選んでいて、まずは仕事に集中して、もしかしたらそうしてる内に、愛を見つけられるかもしれないって思ってるんだ。

---アルバムの話に戻りますが、レゲエのリズムの「While」のアレンジも大いに楽しめました。このアイデアはどこから?

今までにレゲエっぽいアレンジをしたことはなかったんだけど、実際にこれも本物のレゲエっていうよりは、スティーリー・ダンっぽいレゲエっていうか(笑)彼の作品はずっと好きで、「I.G.Y.」とかね。スティングが作ったポリスのレコードの中にもレゲエっぽいフィーリングの曲があったりするしね。だから今回はそういった作品を思い出させるような曲を作りたいって思って、更にそこにブライアン・マックナイトっていう要素をプラスしたような曲をね。そんな感じであの曲は出来上がったんだ。

---先ほどあなたのお話にもありましたが、あなたはまずは曲を書き、その後にトラックを作るということでしたが、あなたの曲を聴いていると、いつもメロディーと一緒にリリックも降りてきているように感じます。その辺は当たってますか?

当たってるよ(笑)。

---実際、その曲によって違うのでしょうが、これまでの代表曲や、この新作の中で歌メロと歌詞が同時に出てきたもの、メロだけ先に出来たもの、歌詞、テーマが先にあったものはどれですか?

そういうものは全て一緒に降りてくるんだ。必ずしも毎回全てが完全な形で降りてくるわけではないけど、アイデアは全て同時に浮かんでくる。時には(楽曲の)コンセプトが先に浮かぶこともあるけどね。いつも曲(リリック)作りを始めにする、逆に先にトラックを作るってことは殆どないよ。まずは曲を書いて、それをベースにどんな風に聞こえるべきかって考えながらプロデュースしていくんだ。最近は素晴らしいトラックをまず作って、それに見合うような曲を書くっていう傾向が多いけど、必ずしもそういうスタイルでよい曲を作れるわけじゃないからね。でも反対に、最初に素晴らしい楽曲さえ書けていれば、必ず素晴らしいトラックを後からプロデュースできるはずだからね。それからやっと俺も21世紀のスタイルに追いつけたんだ。今回のアルバムは基本的には全てコンピューターで作ったんだ。俺はもちろんライヴでベース、ギター、ドラム等を演奏してるけど、でも殆どを今回は1台のコンピューターの中で作り上げてる。今までそんな風にレコードを作ったことはなかったからね。だから、今回の作品は今までの作品と比べても最もプロデュースされた作品になってるんだ。今の時代、ロジックやプロツールズ等が蔓延る中で、そういう傾向に対応していくことも必要だって感じたからね。

---アルバム収録の全曲(イントロとインタールードを除く12曲)についてそれぞれコメントしてください。いつ、どんな時に書いた曲…だとか。まずは「Just A Little Bit」について…

「Just A Little Bit」はその場を去る前にもう一度周囲にあるものを見直すべきみたいな内容の曲なんだ。そういうことって実は男性は殆どしないからね。本当はもっとそうすべきなんだけど…(笑)。

---「I Bet You Never」は如何ですか?

「I Bet You Never」って曲では自分の滑稽な部分を表現してるんだ。自分が今までに書いてきた曲のせいか、みんな俺がすごく真面目な人間だって思っていることが多いんだけど、実際のところ自分はあまり色んなことに対して真剣に捉えるタイプではないんだ。(笑)男っていうのはよく自分のセクシャルな能力について自慢したりするけど、それについて女性に訊いてみると意外と男性側の勘違いだったりすることが多くて、だからこの曲ではそういう男性たちに向けて、どうやったら彼らの相手を満足させられるかっていうステップ・バイ・ステップの指導をしてあげてるって感じなんだ。だからさらっとこの曲を聴いたら別のことを歌ってるって思うかもしれないけど、リリックを良く聴いてくれれば一体何を歌おうとしているか分かってもらえる筈だよ。

---シングル曲の「What I’ve Been Waiting For」は如何ですか?

「What I’ve Been Waiting For」は希望の象徴なんだ。自分は元来 楽天的な人間じゃなくて、大抵良くない可能性の方を先に気にしてしまうんだ。そうすれば、結果的に良いことが起こったらサプライズみたいに喜ぶことができるからね。「What I’ve Been Waiting For」は、その人と一緒でなければ眠ること、存在すること、或いは呼吸すらできないって言えるような存在を探し当てたいっていう希望を歌った曲なんだ。それが可能であるって信じたいからね。

---「When You Are Lovin Me」は如何ですか?

「When You Are Lovin Me」は楽しい曲で、(愛する)誰かと一緒に居るときにどんな気持ちになれるか、どんな風に楽しい気持ちにしてもらえるかっていうことを歌ったものなんだ。

---「Never Say Good Bye」の曲調はまさにシカゴっていう感じですが…。

そうなんだ、あの曲はまさにシカゴへのオマージュなんだ。昔に書いた曲を改めてレコーディングするっていうことはあまり普段はしないんだけど、あの曲は恐らく10年位前に書いた曲なんだ。とにかくすごく昔に書いたもので、昔作ったデモなんかを色々聴いてみてたんだ。とにかく当時からシカゴが大好きでね。

---「Next 2 U」は…

フェイバリットな曲の1つだね。ストーカーに関するコンセプトをベースにしていて、ストーカーに付きまとわれたらどんな気持ちなんだろうかっていうような部分を表現したいと思ったんだ。誰かがじっと自分を隠れてみているみたいな不気味な感じをね。

---「I Miss You」は如何ですか?

「I Miss You」っていうコンセプトの曲を作りたいって思ったんだ、でもそれと同時に少しひねりを加えた内容にしたいって思ってね・・・この曲ではある男性がある女性との別れを経験し、すごく傷つき、なんとか失恋を乗り越え新しい人生を歩んでいこうとしているその矢先に誰からかかってきたのか分からないけど携帯が鳴って、彼が「もしもし」って出たら、(別れた)彼女から「I Miss You」って言ってきたんだ。さぁ、彼はどうしたらいいと思う?

---元に戻るんでしょうか?

わからないけど、「I Miss You」っていう現象にすこし自分なりのひねりを加えた内容の曲なんだ。

---「Always Be My Baby」は?

この世の中で最も難しいことの1つは誰かを傷付けずに別れること。すごく難しいことだよね…。

---「Baby It's You」はどうでしょう?

「Baby It's You」は相手に対して自分がどういう気持ちを持っているのかはっきりと伝える典型的な曲なんだ。

---「While I'm Feeling This Way」は?

昔付き合ってた相手と別れて大分時間が経ってから偶然再会して、当時二人の間にあったグッドフィーリングが蘇って、気づけばメイクラヴしてる…Wow…もうこれ以上言う必要ないよね(笑)。

---「Another You」は?

結婚の誓いを交わす前に、祭壇の前に立ち、自分が人生をかけて愛そうとしている相手が通路(ヴァージン・ロード)を歩いてきているのを見ている時にどの曲をかけたいと思う?

---「Another You」ですかね…(笑)

そうだったら嬉しいね(笑)。もしくは、彼女が目の前に立ち、一緒に結婚の誓いを交わすときに、この曲で歌ってるようなことを言って欲しいと思って書いたんだ。これは完成までに2年近くを要したんだ。(この曲を介して)何を言いたいかっていうのははっきり分かっていたんだけど、それを上手く言葉に出来なかったからね。

---「Not Alone」は?

信仰というものについてすごくオープンに捉えた曲なんだ。今まで自分が聴いた中でも最も信仰に対する正直な気持ちを歌った曲だと思う。自分自身の“Evolution”(進化)において、Faith(信仰)っていうのはとてつもなく大きなもの。我々人間は色々なものに対して形は違っても信仰というものを持っていて、でもその信仰を持つという状況に至るまでの過程で色々な疑問を持ち、「一体自分たちは本当に信仰を持っているのか、それとも他人から教えられたことだけを信じているのか」って自分自身に問いかけることもあると思うんだ。だからこの曲では俺自身が自分の頭の中で抱き続けてきた様々な疑問を投げかけている。最終的にそういった疑問に対しての答えが見つからなかったとしても、自分は決して一人ぼっちなんかじゃないってことだけは信じ続けていられるんだ。

---非常に強いメッセージを持った曲ですよね。

そうなんだ。だから最初はこの曲をアルバムに収録することに少し躊躇いがあった。というのも、自分がどんな風に育ったかを知ってる人たちやそういったものを未だ信じ続けている人たちからしたら、俺はそういう信仰を捨ててしまったのではないかって思われてしまうかもしれないからね。でも決してそういうことを言ってる訳ではなくて、ただ誰もが持ってるような疑問を自分も同じ様に持ってるっていうだけなんだ。

日本のアーティストからコメント!

「シルキー、スムース、スウィート、どんな言葉を並べても表現しきれない奇跡の声の持ち主!今作も絶対裏切らない、充実の内容です。聴かなあかんですよ!」 JAY'ED

「私の恋人が彼の音楽だとしたら、「決して離れたくない。」と思うだろう。」 坂詰 美紗子