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渋谷 NEW STYLE 〜クラシック〜

Monday, August 24th 2009

カルモンカルモン
渋谷 NEW STYLE
渋谷 BLOCK PARTY ライブレポート
ジャンルバイヤーセレクト
クラシック注目のシーン
担当:サトウ
「現代クラシック考察〜“過去”と“現在”をつなぐミッシング・リンクとして」
多くの人にとってクラシック音楽とは、音楽室の後ろで深刻な顔を浮かべる様々な肖像とともに記憶の彼方へ追いやった“過去”の音楽なのかもしれない。
学校の音楽の授業では、教養としてそれらの音楽を身につけはしたが、私たちが普段耳にする“現代”の音楽と、音楽室で鑑賞するそれら“過去”の音楽の間に横たわる断絶について、けっして説明してはくれなかった。
17世紀から本格的な歴史をスタートさせたクラシック音楽というジャンルは、現代においては上流主義と密着した教養のひとつとして、博物館的ショウケース空間の中で息を潜めて遠巻きに観られる(まさしく“鑑賞する”という言葉がしっくりくるような)状況が一般的であるが、ジャンルの境界線付近では、新たなムーヴメントの息吹も感じられる。
ひとつはアメリカを中心とした60年代に端を発するミニマル〜ポスト・ミニマル系の作曲家に見られるクラシックを内側から突き破る動き。
そしてもうひとつは、テクノ系DJを中心とした外側からのクラシック音楽の破壊と再構築。
ショウケースに陳列され、限りなく抽象化してゆくクラシックという壺を、日常空間の中へ取り戻してゆく作業は、様々なベクトルからひっそりと実践されているのだ。
クラシック音楽の遺伝子を受け継ぐこれら同時代の音楽は、授業で教えられなかった断絶をつなぐミッシング・リンクなのかもしれない。
CARL CRAIG  「RECOMPOSED BY CARL CRAIG & MORITZ VON OSWALD」
RECOMPOSED BY CARL CRAIG & MORITZ VON OSWALD
デトロイト・テクノの異才、カール・クレイグとミニマル・ダブの巨人、モーリッツ・フォン・オズワルドによるクラシックの再構築。
クラシック録音史における、最大のアイコン的存在であるカラヤンの名盤をバラバラに分断し、原曲のグルーヴをそぎ落とした奇怪なビートに組み直す。
我々クラシック・ファンが崇め奉る偉大な過去の遺産を切り刻むという侵食行為そのものが、現代におけるクラシックの意味の再定義を強いる荒療治なのかも知れない。
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(DEUTSCHE GRAMMOPHON/UCCH1024)
STEVE REICH  「EARLY WORKS」
EARLY WORKS
ライヒはテープレコーダー実験中の偶然の失敗から新たな音楽のアイデアを得る。
2台のテープレコーダーの再生速度の微妙な違いから生まれるモアレは、予想外の“第3”のフェイズを生み出したのだ。
テキストリーディングのテープを素材とした「カム・アウト」「イッツ・ゴナ・レイン」はこの原理をそのまま作品として提示した革新的作品。
同じアイデアを器楽に投射した「ピアノ・フェイズ」、そしてズレを音符の単位に整理した「クラッピング・ミュージック」ともども、ライヒ初期の方法論が分かりやすく提示されている。
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(NONESUCH/7559.79169)
佐藤聰明  「太陽讃歌」
佐藤聰明/太陽讃歌
1975年発表の幻の名盤「太陽讃歌」の初CD化。
2台の、アンプリファイされディレイを施されたピアノが織り成す怒涛のトレモロが、輝く倍音の宇宙を現出させ、光のシャワーが降り注ぐ。トライバルな音響が作り出す圧倒的な聴取体験は、我々の感覚を原始の太陽信仰の時代まで巻き戻す。
もはやそこにあるのは知性で聴き分ける“音楽”ではなく、太古のヒトが畏怖とともに崇めていた“音”そのものに他ならない。
ファーアウトの極北にひっそりと佇む名盤。
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(コジマ録音/ALCD11)