1974年に発表された最初のソロ・アルバム『I've Got My Own Album To Do』は、そんなロニーの愛すべきキャラクターを的確に捉えた1枚と言え、邦題も「俺と仲間」と、まさにドンピシャのタイトルだ。現に、ロニーの自宅地下室でベーシック・トラックが録られたこのアルバムには、盟友ロッド・スチュワート、イアン・マクレガン、以前から親交の深いキース・リチャード、ミック・ジャガー、ミック・テイラー、デヴィッド・ボウイ(お酒を持ってただ遊びに来ていただけという説もある。)といった気心の知れた”仲間”たち、さらにリズム隊には、スライ&ザ・ファミリー・ストーン『Fresh』でファンク史上最高のドラミングを聴かせているアンディー・ニューマークと、ダニー・ハサウェイの名演『Live』で歌心溢れるグルーヴィーなベースを弾いていたウィリー・ウィークスという、当代きっての名セッション・マンを招き、リラックスしたセッションを展開している。ミックのコーラスが映える「I Can Feel the Fire」(この曲のお礼にロンが手伝ったのが「It's Only Rock'n Roll」)、ジョージ・ハリスンとの共作「Far East Man」(ジョージの『Dark Horse』にも収録)、キースがリード・ヴォーカルをとるロックンロール「Sure the One You Need」、ロッドが歌う「If You Gotta Make a Fool of Somebody」、アンディ&ウィリーの名人芸インスト「Crotch Music」など、ロニー独特の黒くルーズなグルーヴがバラエティ豊かに詰め込まれている痛快作だということは、あらためて説明するまでもないだろう。
71年発表の2ndアルバム。ケニー・ジョーンズのドタバタ・ドラムに身悶えする「Bad 'N' Ruin」から返品・交換不可のフェイセズ節全開。70年に行なわれたフィルモア・イーストにおける実況録音を変則的に収録。ポール・マッカートニーの「Maybe I'm Amazed」では、ロニーとロッドが、バーごとに入れ替わり見事な共唱を聴かせる。また、観客を巻き込むライヴの熱気をそのまま伝えた「Feel So Good」でのロニーの繊細なギター・プレイは見事としか言いようがない。「Sweet Lady Mary」は、フェイセズ史上最高に美しいバラード。
Faces 『Nod Is As Good As A Wink To A Blind Horse』('71)
フェイセスのメンバー全員が参加したロッドのソロ2ndアルバム。タイトル曲をはじめ、ディランの「Only A Hobo」、「Country Comforts」といったフォーク/トラッド・ベースの楽曲で聴けるロッドの味わい深い歌声が染み入る。フェイセズのライヴのオープニングを何度となく飾った「It's All Over Now」も収録。
ロニーのリッチモンド邸地下スタジオに何人ものミュージシャンを招いてベーシック・トラックが録音されたソロ1stアルバム、『俺と仲間』。本作制作前から、そのスタジオに頻繁に転がり込んでいたキースは、「ストーンズのメンバー以外のやつと長期間仕事をしたのはあれが初めてだったんだ。ていうのは、それまで俺にとってはストーンズがすべてだったからさ。自分の時間ってのがほとんどなかったし、誰か別のやつとやってみようなんて気になれなかったんだよ。でも、ロニーは気に入ったんだ。」と当時を振り返っている。その言葉どおり全11曲中8曲に参加し、「Sure The One You Need」ではリード・ヴォーカルもとっている。
Ron Wood 『Now Look』('75)
ストーンズの正式なツアー・サポート・メンバーとなった75年に発表したソロ2nd。前作で大車輪の活躍をみせたキースは今回3曲参加とやや控えめ。アンディー・ニューマーク、ウィリー・ウィークスらの参加もあるものの、ソウル・メイト、ボビー・ウォマックの共同プロデューサーとしての全面参加と楽曲提供(「If You Don't Want My Love」)がやはり目玉。ストーンズ本隊、ソロを含めた全作品の中でも最もソウルフル(さしづめニューソウル的なフィーリング)な1枚と言えるかもしれない。カントリー・ロック・バンド、スワンプウォーターのカヴァー「Breath On Me」は、92年の『Slide On This』でも再録されている。
Ron Wood 『Gimme Some Neck』('79)
キースとの双頭バンド、ニュー・バーバリアンズ(名付け親は、ニール・ヤング)興行のきっかけともなった79年ソロ作。「Burried Alive」、「Come To Realise」、そして、ボブ・ディランが提供した「Seven Days」の3曲にキースは参加しているが、ギターを弾いているのは「Burried Alive」のみで、あとは控えめなバッキング・ヴォーカルでのクレジットとなっている。「Seven Days」は、最終的にエリック・クラプトンとロニーのどちらかに上げることをディランは考えていたらしいが、その話が本当だとしたら、ロニーは、”グレイト・ギタリスト・ハント”に続く大金星をクラプトンから挙げたことになる。
Ron Wood 『1234』('81)
アンディ・ジョーンズとの共同プロデュースとなった81年作。ボビー・ウォマック、アニタ・ポインター、ワディ・ワクテル(後にキースのX-ペンシヴ・ワイノウズに参加)ら多彩なゲストを迎えている。映画「Let's Spend The Night Together」のバンド・イントロダクションでのミックのMCでは、本作リリースにちなんでロニーを「1234!」と紹介している。タイトル曲や「Outlaws」といったシンプルなロックンロール・チューンでは、久々に手数の多いソリッドなベースも披露。ロニー画伯の絵は、今回裏ジャケに登場。
Ron Wood / Bo Diddley 『Live At The Ritz』('87) 【廃盤】
87年、ニューヨークの名門ライヴ・ハウス、リッツにおけるボ・ディドリーとのジョイント・ライヴ盤(発売当初は日本盤のみのリリース)。「Road Runner」、「Crackin' Up」、「Who Do You Love」といったボの代表曲に加え、ロニーも「Ooh La La」、「Outlaws」、ストーンズの「Honky Tonk Women」、さらには、ボトルネック・ギターによる必殺のインスト・メドレー(Around The Plynth〜That's All You Need〜Gasoline Alley〜Prodigal Son)をキメる。ボは、「Money To Ronnie」という12小節ブルーズの書き下ろしの新曲も演奏。このガンスリンガーズは、88年には、中野サンプラザなどで来日公演も行なっている。
Ron Wood 『Slide On This』('92) 【廃盤】
『Steel Wheels』で息を吹き返したストーンズでの多忙な日々がそうさせたのだろうが、前作から実に11年のインターバルを置いて発表された92年ソロ作。ハービー・ハンコック・グループやスティーヴィー・サラスとのニッケルバッグで活躍していたバーナード・ファウラーを、メイン/サブ兼用のヴォーカリストとして招き、よりコンテンポラリーな地平で捉えたソウルフル・サウンドを作り上げた。パーラメント「Testify」のカヴァーでは、その起用がぴしゃりと的中。愛妻ジョーに捧げた「Josephine」、ジェリー・ウィリアムス作のロックンロール「Show Me」、『Now Look』所収の再録「Breath On Me」等々、ストーンズ本隊の好調ぶりがそのままソロ活動にも良い連鎖をもたらした充実作。じゃ、なぜ廃盤!?
Ron Wood 『Slide On Live』('93) 【廃盤】
来日公演も果たした『Slide On This』ツアーの模様を収めたライヴ・アルバム。新作曲もそこそこに、「Flying」、「Silicon Grown」、「Stay With Me」といったフェイセズ時代の名曲に加え、ストーンズ「Pretty Beat Up」(ロニー作曲。この時のツアーでは、「Black Limousine」、「It's Only Rock'n Roll」も演奏)、ソロ人気曲「I Can Feel The Fire」、「Am I Groovin' You」、「Seven Days」などを惜しげもなく披露。
Ron Wood 『Not For Beginners』('01)
9年ぶりのソロ・アルバムは、98年に亡くなった母親に捧げて作った現時点での最新作。息子のジェシー・ウッド(g)や、娘のリア・ウッド(vo)もレコーディングに参加した、まさにロン・ウッド・ファミリーが手を取り合って作ったといえる1枚。また、「King of Kings」に、ボブ・ディラン、「Interfere」に、スコッティ・ムーア、「R. U. Behaving Yourself?」には、ウィリー・ウィークス、アンディー・ニューマークがそれぞれ参加している。
Ron Wood 『Anthology: The Essential Crossextion』('06)
New Barbarians 『Buried Alive: Live In Maryland』('06)
79年『Gimme Some Neck』のリリース・ツアー、そして、77年トロントで麻薬不法所持のために逮捕されたキースの執行猶予判決とともにチャリティ・コンサート開催を命じられたことに端を発したニュー・バーバリアンズ興行。その初公式音盤。79年5月5日の米メリーランド州ラーゴ公演を収録。2匹の野蛮人に、リズム隊にはスタンリー・クラークとミーターズの”ジガブー”ことジョゼフ・モデリステ、そして、旧知のボビー・キーズ。完璧なラインナップでギグは夜毎大盛況・・・とはいかなかった。スタンリーのスラッピング・ベース・スタイルとのアンフィット、興行プロモーションの不手際など、行く先々で混乱があったとロニーも自伝の中で語っている。ただ、ストーンズ本隊以上の粗さと酒臭さで迫る(音質もやや粗い!)おなじみの楽曲には、ロックンロールの本質と凶暴さがストレートに宿っていると、今でも評価は高い。