--- 今作の製作会社であるフォルテシモは、ウォン・カーウァイやジム・ジャームッシュ作品などの製作会社であり、邦画を手掛けるのは初めてとのことですが、何かあちらからの要望で、強くあったものなどはありましたか?
黒沢 えーっとね、あちらからの要望で強くあったのは、「題名に"トウキョウ"っていうのを付けて欲しい」っていう(笑)、それだけでしたね。「もうちょっと何か言ってくるかな」って思ったんですけど、そこはこちらを信頼してくれていたのか、あとは本当に何もなかったので、作ったものに満足してもらえたようです。
--- (タイトルに)"トウキョウ"と付けるのは・・・。
黒沢 抵抗がありましたね(笑)。・・・というのは、これまで僕、映画何本も撮ってますけど、実はほとんど、東京で撮ってるんです。
--- そうですよね、拝見させて頂いています。
黒沢 ありがとうございます(笑)。でね、何で東京で撮ってるかって言うと、理由はただ1つ、「どこでもいいから」なんです。どこでもいいんで、どこでもいいなら、東京が一番近いし、よく知っているっていう。これが、「北海道で撮る」って言ったら、「何で北海道なんだ?」っていう理由が必要なんですけど(笑)。
ですから、今回、題名に"トウキョウ"って付けられちゃうと、"東京じゃなければいけない理由"がいるんじゃないかっていう気がして、「東京じゃなきゃいけない理由って、何かあるのかしら?」ってことを、ずいぶん考えながら撮ってしまいましたね。「どこでもいいんだけどなあ・・・」って思いながら(笑)。
でも結局、"東京じゃなければいけない理由"っていうのは、見つかりはしませんでした。ただ、見つからなかったんですけど、「一生懸命、東京で撮ることを考えたんだよ」っていう証のようにですね(笑)、今までは1回もやったことがなかったんですけど、東京の風景のカットを3回くらい入れました、物語と関係なく。
--- あえて、東京のカットを?
黒沢 はい、あえて。「ここは東京なんですけど、どうでしょう?」っていう(笑)。「どうでしょう」って、こっちもよくわかんないんですけど・・・すごく目立ってるわけではないんですが、入れてあります。
--- そのあえて入れたという、東京の風景のカットというのがどこに入っているかというのも、今作の見どころの1つですね。
黒沢 そうですね。東京・・・注意してみれば、どこも東京なんですけど・・・まあ露骨にね、東京タワーとかそういうものを撮ってないんでわかりにくいんですけど、ぽこんって撮ってある風景だけの絵が、ドラマとは関係ないところで入っているので、ぜひそこも観て頂きたいですね。
--- 物語と関係ないカットというわけではないんですが、恵比寿の"タコ公園"でも撮影されましたか?
黒沢 あ、"タコ公園"?恵比寿の裏の公園でも、撮影しましたよ。
--- 井之脇海くん演じる、健二が家出した友達と逃げている時に立ち寄ったあの公園なんですが・・・。
黒沢 ああ、そういえば、あの公園、"タコ公園"って書いてあったなあ・・・。
--- ああ、やっぱり、あそこだったんですね!ピンク色・・・と言っても少し、生々しいピンク色のタコのすべり台があったので、もしかしたら・・・って(笑)。
黒沢 そうです、そうです。あの公園、ご存知でしたか?(笑)。
--- はい(笑)。近くに、NADiff a/p/a/r/tという施設が新しく出来て、そこに行った時にちょうど、あの公園を通ったんです。
黒沢 恵比寿の明治通りから1本入った川沿いですけど・・・変なところですよね?恵比寿はちょくちょく行くんですけど、あそこは全然知らなくて。「こんなところがあるのか?」って、おもしろがって撮ったんですけどね。