黒人女性として初めてミス・インディアナに選ばれ、71年のミス・アメリカ候補にもなった
と言う才色兼美のシンガー、Kellee PattersonのBlack Jazzからのデビュー作。
Hancockの「処女航海」は原曲の持つ浮遊感・虚無感をさらに浮き彫りにするような歌
唱とアレンジが素晴らしい。クラブ・ジャズ古典として名高い「Magic Wand Of Love」
で味わえる「幸福感」、これもスピリチュアル・ジャズを代弁するキーワードと言えるだろう。

Doug Carn 『Spirit Of The New Land』
スピリチュアル・ジャズ・シーンの伝説的キーボード奏者、Doug Carn、72年Black
Jazzレーベルからの2作目。奥方Jean Carnの歌声をフィーチャーした、Lee Morgan、Miles Davisのカヴァーも素晴らしいが、やはりハイライトは、オリジナルの5曲。アブス
トラクトな「My Spirit」、Charles Tolliverのソロが烈火を放つ「Trance Dance」、
永遠のスピリチュアル・ジャズ・アンセム「Arise And Shine」など名演多数収録。

Stanley Cowell 『Musa』
69年にCharles Tolliverらと結成したMusic Inc.。その活動をより活性化するために、Strata-Eastを設立したことでも知られる知性派ピアニスト、Stanley Cowell。73年
に亡くした父に捧げたピアノ・ソロ・アルバム。彼の繊細でありながら、力強いプレイが存
分に堪能できる名盤。

Adele Sebastian 『Desert Fairy Princess』
79年に設立された西海岸発のインディペンデント・レーベル=Nimbus(ニンバス)。
そのNimbusのアイドル的存在でもありながら、27歳の若さでこの世を去った女性フル
ート奏者/ヴォーカリスト、Adale Sebastianの唯一のリーダー・アルバム(81年)。
ラテン、アフロ、ゴスペルのテキストを用いた、同レーベルの中でも抜群の爽快感を残す。

Codona 『Codona』
Don Cherry、Ravi Shankarを師に持つインド楽器/パーカッション奏者、Collin Walcott(ex−Oregon)、さらには、ブラジルのパーカッション奏者、Nana Vasconcelosによる「民族音楽×ジャズ」プロジェクト、Codona。79年ECMからの
1作目。同レーベルらしい幻想感と、各国文化三つ巴の融合配色とが、最高のカタチで
結実した1枚。

George Duke 『Aura Will Prevail』
70年代は、MPS時代のGeorge Duke最高傑作(75年)。Alphonso Johnson(b)、
Leon“Ndugu”Chancler(ds)による「Weather Rhythm」リズム・セクション+
Airto Moreila(per)が全体をグイグイと引っ張り、ファンク、ブラジリアン、はては
Zappaナンバーまでをハイブリッドに表出する。

Alice Coltrane 『Impulse Story』
John Coltraneの第二の妻としても知られる、スピリチュアル・ハープ/ピアノ女史、
Alice Coltrane。Johnの死後から吹き込んだ、Impulse時代の7枚のアルバムから
選出された名演をコンパイル。2004年のカムバック作からも表題曲「Translinear
Light」を収録。2007年1月12日、呼吸器不全のためこの世を去った。

Chico Hamilton 『The Master』
あのLittle Featとの共演作となる、73年Stax/Enterprise盤。南部テイストたっぷ
りに繰り広げられる、粘り腰のサザン・フライド・ファンク・セッション。言うまでもなく、全
盛期のLowell Georgeのスライド・ギターも大きくフィーチャーされており、ファンキー・
ロック〜スワンプ・ファンにも是非耳にしてもらいたい。

Moondog 『More Mooondog+The Story of Moondog』
ジャズでも現代音楽でもビートニクでもアヴァンギャルドでもなければ、ましては大道芸人
余興でもない、孤高の盲目アーティスト、Moondog。56年のPrestige盤『More Moondog』と、同年『The Story of Moondog』のカップリング徳用盤。浮世離れとも
言える、出典予測不可能な音の塊たち。

Pucho & His Latin Soul Brothers 『Super Freak』
レアグルーヴ興隆期の折、クラブ・シーンで再評価された、ティンバレス奏者、Henry”Pucho”Brown率いるラテン・ジャズ・バンド、Pucho & the Latin Soul Brothers。72年の本Prestige盤には、必殺のCurtis Mayfieldメドレー「Superfly
〜Pusherman〜Freddie's Dead」を収録。乱暴な言い方をすれば、ブラックスプロ
イテーション・ムービー諸作が持つ「B級」のかっこよさに溢れている。