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怒髪天(増子直純)インタビュー2/2

Sunday, November 19th 2006

  唯一無二、我道突き進む怒髪天、ニュー・アルバム発売!
  怒髪天(増子直純)インタビュー 1/2

―インタビュー続き―

怒髪天 / 増子直純

-若者といえば、最近の怒髪天は若いバンドと対バンする機会が多いですよね? そういうバンドとかとの交流はあるんですか?

増子「だいたい対バンした奴らはみんな仲良くなるね。大概俺のほうからいつも話しかけるしね。どういう風に考えてバンドやっているのか知りたいし、どういう人なのかも知りたいし…。でもあれだね。みんな一生懸命やっているよね。もちろん。自分が信じている音楽に対してね。それが、正しいとか間違いとか好き嫌いとか別として、そこに打ち込む力というか。若さゆえに間違っていようがそこに全力を打ち込めるという姿はいいよね。素敵だよね。だんだん歳取ると失くしていっちゃうでしょ。色んなものを知っちゃって。“あ。これはだめだな”ってなっちゃうでしょ。知っちゃった人は知らなかった人には絶対に戻れないでしょ? やっぱ知らないときの青さというかかっこよさっていうのはロックでは重要な要素だよね」

-そのような感覚を一番感じたバンド、対バンした中で増子さんが衝撃を受けたバンドを挙げてもらえますか?

増子「そうだねぇ…。誰かなぁ…。ミドリとか9mm Parabellum Bulletかな。“頑なさ”っていうのがあるじゃん? 彼らには。とにかく向かっていこうという気持ちというか。あれはやっぱり若くないとね。今じゃなきゃ出来ない輝きを持っているよね。サンボマスターが出てきたときもそうだよね。銀杏BOYZもそうだよね。銀杏はGoing Steadyの頃から凄いと思っていてさ。ていうかさ、あのまんま歳を重ねてくるなんて思わなかったもんね。新しいよ、ほんと。“お前ら何歳だ?”っていう感じだよ(笑)。永遠の中二病だよ(笑)。わかっていて出来ることと出来ないことってあるかもしれないけど、わかってなくてもわからないままやるっていう。そこにぶちまける熱というものがあればさ、ぶちまけかたのスタイルにこだわらなければさ、その力量というか熱量というかね。彼らにはあるよね。そういうの今までなかったからね。所謂、“関西ゼロ世代”のミドリもそうだしさ。オシリペンペンズもこの前一緒にイベントに出たんだけどさ、凄くよかった。音楽的センスが鋭いっていうか研ぎ澄まされているって言うか。俺らの80年代のパンクというかハードコアはさ、とにかく無茶苦茶やればいいっていうのがあったんだけど、今のそれは昔のそれじゃないんだよね。確固たる音楽的センスがあって、あらゆるものに裏打ちされた上で、さらにそれをそう見せるっていうところにセンスがあるなぁって思ったよね。あんなに凄いと思わなかった」
ミドリ
ミドリ
オシリペンペンズ
オシリペンペンズ

-そういう表現に対して、単なる衝撃だけをぶちまけるのではなく、“関西ゼロ世代”の人たちは出し方見せ方の方法を歴史的事実として既に知ってしまっているというところもありますよね。

増子「それもあると思うね。色々と正解を知っているというものもあるかもしれないね。実体験はしていないけど、あらゆるものを知ってしまっているかもしれない。その中から何を選択していって、“これはやってもいい、これはやってはいけない”って。それでも、“わかっていてもやってはいけないことをやっていこう”みたいなね。そこを選択しているし。選択をする余地がないほどの情熱が現れているというかね。凄いよね」

-そういった若いバンドを目の当たりにして、“じゃあ、怒髪天はどうしていこうか?”というような葛藤というものが産まれたりはしないんでしょうか?

増子「あまり葛藤というのはないね。俺はもうやるべきことがわかっているからね。今思っていることを切り取っていくことを表現していくだけだし。それこそ若い子たちにあって俺らにしかないものもたくさんあるわけだから。それを出していくということでね。あと、自分たちの役割的なものとかもかなり明確になってきているからね。長年やってきているからさ、“どう表現していこうか?”っていうところも掴めて来ているし。粘土をこねるようにね。怒髪天という粘土自体はもう既に手の中にあるから、“粘土をどういう作品にして行こうか?”という作業になるからね。だから苦しいというわけじゃないよね。でも、何もないところから創るわけだから。音楽は。苦しいこともあるといえばあるけれど、どっちかというと、苦しみよりかは喜びのほうが多いよね」

-今回のアルバム「LIFE BOWL」は怒髪天の粘土がどのような形に形成されたと思いますか?

増子「今回のアルバムはわりとシンプルに出来上がったね。さっきも言ったけど、この歳になるとあらゆる選択肢がもう既にあって。押してもいいスイッチの数も増えて来てしまっちゃってね。どうしても、そのスイッチ全てを押したくなってしまうんだよね。だけどそれをなるべく押さないで伝えたいというのがあったね。“押すべくスイッチだけ押す”という感じでね。説明的になりたくないというか。そういう思いがここ何年か続いていて。ようやく形になったかなっていう感じかな。ていうかね、怖いんだよ。スイッチを全部押さずに隙間が出来てしまうのが。音もそうだし歌詞もそうだしね。隙間が出来たことによって、今までの怒髪天じゃないって誤解を受けてしまう怖さっていうのがあってね。もう少し歌詞を付け加えたほうが伝わるかとか、音にすれば、もう少しリフに厚みをつければ伝わるんじゃないかとかね。それを考えずズバっとやることが今まで出来なかったんだけど今回はそれが出来て。もう誤解されても、誤解されることすら自分らしくあるんじゃないかなって思えるようになってきたんだよね」

-ゲスト・ミュージシャンを招聘したということも、その誤解を受けてもいいという境地に辿り着いたからこそ出来たことなんですかね?

増子「そうね。もともとライブで再現できないものは音源として創りたくなかったんだけど、それももういいかなって思えるようになってね。それと同じようにゲストも、16年前のデビュー以来今回の作品まで入れたことなかったんだけど、そこを超えてみようと思えたんだよね。例えばラーメン食べるときにさ。しょうゆラーメンを食べようとしたときにさ。ちょっと手の届くところにおいしそうなコショウがあるとすればさ、やっぱり入れたくなるじゃん? そういう感じだよね。それと、自分たち怒髪天を理解してくれている仲のいい連中にやってもらえればいいものが出来るかなって思えてね」

-そのようなゲスト・ミュージシャンの力もさることならが、ほんといい意味で、隙間がある、間のあるサウンドになってますよね

増子「今までは、1曲だけでも人生を語れちゃうようなものが多かったんだけど、それよりももっとアルバムとして聴いてもらえるようなものにしたかったからね。『LIFE BOWL』というアルバムでね。『LIFE BOWL』というどんぶり一丁で表現するという感じだよね。それとね、“軽く、深く”っていうのが今回の俺のテーマでもあったからね。ぱっと聴くと軽く聴こえるかもしれないけれど、よく聴くと深いっていうね…。人生哲学が並んでいるようなアルバムじゃ聴いていられないからね辛気臭いのは人生だけでいいかなって(笑)。音楽ぐらいはさ、楽しくなくちゃね」

-“軽く、深く”というところでいうと。「LIFE BOWL」に収録されている最終楽曲、「不惑 in LIFE(reprise)」なんですが。これは深いですよね。重いですよね。1曲目の「不惑 in LIFE」の後半部分をリプライズさせつつも、歌詞の内容が変わっていて。“「ロックは死んだ」〜”っていう部分。この歌詞を言い切りたかった気持ちが増子さんの中でかなり強いと感じたのですが。

増子「まさにそうだね。その通り。もうね、最後の曲からアルバムを聴き始めてもらってもいいぐらいだね。“みんなして「ロックは死んだ」っていつもいっているけどそれはどういうこと?”っていうことだよね。聴いてもらえればわかるけど。ていうかロックに限らず何にでも言えることなんだけど、あらゆる古いものが死んだと言われ続けているけれど、それを真に受けちゃいかんぞっていう気持ちだよね。そういうことを言っているやつが死んでるんだよっていうことで。“馬鹿って言っている奴の方が馬鹿だろうよ!”みたいなね。小学生的な感覚だね(笑)
Eastern Youth
Eastern Youth
Bloodthirsty Butchers
Bloodthirsty Butchers

-怒髪天は、そう考えるとジャンルとかにカテゴライズされにくいというか。オリジナリティを確立して今まで来てますよね?

増子「昔はさ、CD屋とかでさ、ジャンル買いしている人とか多かったでしょ。そういうのに一切引っかからなかったからね。だから、“何かのシーンやジャンルの仲間に入れて欲しいよなぁ”って思ったときもあったんだけど、もう、しょうがないよね、ここまで来たら。自分らでやるしかないし。これからも自分らでやるしかないし。だってフォロアーがいないからね。初代で終わりだと思ってるから。だって怒髪天の音楽的フォロアーを見たことないもん(笑)。あとさ、仲のよいバンドを挙げるとさ、Eastern YouthとかBloodthirsty Butchersとかはさ、若いバンドにさ、“みなさんに憧れてバンド始めたんです!”って言われてるわけよ。でもさ、“怒髪天に影響されてバンドはじめたんです!”なんて言う奴らには会った事ないからね。だから、良い意味でも悪い意味でも音楽的に括りづらいっていうのがあるんだろうね、俺ら。まあ、ドリフみたいなもんだから、怒髪天は(笑)。人間力で成り立っているっていうね。それもありかなって思うんだよね、音楽って」

-でも、怒髪天の増子さんの人間力に影響を受けて、増子さんみたいなDJをやり始める人はいるかもしれませんよ?

増子「DJではいるかもしれないね。でもね。最近みんなに言われるのが、“DJってあれでもいいんだ”って言われるんだけどさ。“アレでいいわけ無いじゃん!”って感じだよ?(笑) これはね、声を大にして言いたいね」

-いやいや。僕は増子さんのDJを見て、“これもアリなんだ!”って思いましたから。

増子「いやいやなしなし!(笑) なしだよ? なしでも、俺は好きで勝手にやっているだけだからね。でも、ジャパンフェスを海外でやってくれたら面白いかもしれないな。で、是非DJで呼んでもらいたいな(笑)。海外の奴らにアニソンかけてさ。どれだけ通用するか試したいな。結構ガッツり食いついてくるかもしれないよな(笑)。面白そうだな。アメリカで『キン肉マン』かけてみたいな。みんな知らないだろうけど(笑)」

-(笑)。そういえば夏のフェスの後にメロン記念日のイベントでDJやられてましたよね?

増子「やったやった。えらい盛り上がったよ。だって俺、無意味にダイブとかしちゃったもんね(笑)。ていうかさ、お客の求心力が凄いんだよ。DJ終わった後に、“握手して下さい!”って彼女たちのファンに言われちゃうしさ。“今度、ライブ観に行きます!”なんていう奴もいて。“おう、来て見るがいいさ”ってね。“ライブも楽しいよ!”って言ってやったよ。したら、“すんません。あのぅ、なんて言うバンドなんですか?”って聞かれちゃった(笑)」

-すごいっすね(笑)。でも、ほんと、DJを観て楽しんでくれた人が怒髪天のライブに実際に足を運ぶようになったていう人も多いですからね。

増子「うん。ほんときっかけはなんでもいいからね。ライブも楽しいんだから。これでさ、怒髪天のライブがすんごいどんよりしたようなもんだったらまた別だけどさ。近い感覚はあるからね。でもほんとDJは楽しいよ。だって唄わなくて好きな曲かけられるんだから。ライブだと唄わなきゃいけないでしょ?」

-いやそれは当たり前のことだと思うんですが…(笑)。

増子「だって歌を唄っていると100%楽しめるわけではないからさ(笑)」

-そんなこと…言わないで下さい(笑)。

増子「まあ、また年末のロッキングオン主催の『COUNTDOWN JAPAN 07/08』でもDJやるからさ。ライブもね。楽しんでもらいたいよね

-DJでの新しいネタは考えているんですか?

増子「考えてるよ。色々ネタ集めもしなきゃなぁ…」

-「アラレちゃん」はまた登場するんでしょうか?(注:夏フェスのDJブースにてアラレちゃんのコスプレで増子さんは登場した)

増子「どうかなぁ。暇があったら、『ペンギン村』から出てくるかもしれないな(笑)。けどわからないよ。あれは『アラレちゃん』ではなく『アラレさん』だからね。そしてあれは俺でもないから。あくまでもあの人は『アラレさん』だから。出るか出ないかは『アラレさん』に聞いてみてよ!」

-了解しました(笑)。それでは今後のDJ、およびライブ楽しみにしています!そしてみなさんにも是非アルバムを聴いてもらいたいですね!

増子「そうだね。よろしく!

  

 

 

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