―― まずはDJとして音楽活動を始めたそうですが、そのきっかけから教えていただけますか?
edIT: 大学に行くためにLAに来て、黄金時代のヒップホップやドラムンベースにハマったんだ。LAではレイヴ・シーンにもどっぷり浸かったね。それでDJを始めたんだ。そして、ダディ・ケヴ(Alpha Pupレーベル主宰者)とDJハイヴに出会った。DJハイヴは今は有名なドラムンベースのDJだよ。俺は当時ダディ・ケヴとDJハイヴがやっていた Celestial Recordingsというレーベルでインターンをやっていて、当時彼らがやっていたコンクリート・ジャングルというクラブ・ナイトでレジデントDJになったんだ。
―― 自分で音作りをするようになって影響を受けたものは何ですか?
edIT: 今の俺の音楽性に最も影響を与えたのは、やっぱりヒップホップとドラムンベース。コンクリート・ジャングルは、ヒップホップとドラムンベースをミックスしていたんだ。あのイベントでは、P.E.A.C.E.やマイカ9みたいなアーティストが、ドラムンベースのビートの上でフリースタイルとかもやっていた。『Certified Air Raid Material』のアグレッシブでエレクトロニックなシンセの音やベースラインはドラムンベースからきているし、ダンスフロア向けのヒップホップの影響も入っている。俺の前作(μ-ZiqのレーベルPlanet Muからリリースした『Crying Over Pros For No Reason』)にあったテクニカルでグリッチーな音の要素も入ってるし。
―― あなたは、Heftyレーベルの10周年記念のミックスにおけるマッシュアップでも注目を集めましたね。
edIT: マッシュ・アップは冗談から始まったんだ。『Crying Over Pros for No Reason』が出たときに、アメリカのIDMのプロデューサーと顔を合わせるようになったんだ。キッド606を始めとするTigerbeat6の連中とか、モチペット、8フローズン・モジュールズとかとイベントをよく一緒にやって、みんなもヒップホップのアカペラとグリッチーなビートをミックスしてたんだ。俺もやってみたら、ヘフティから声がかかったんだよ。
―― マッシュアップではメインストリームのヒップホップをかなり使っていますが、それらは好きですか?
edIT: LAのアンダーグラウンド・ヒップホップにハマっていた頃は、メインストリームのヒップホップは嫌いだったんだけど、今はインディやメインストリームに限らず、ヒップホップ全般が好きになった。クラシック、黄金時代、オールドスクール、バトル・ライムのヒップホップも好きだし、ティンバランドのようなプロデューサーが作るビートも好きだよ。ラップの内容はどうであれ、ドープなものはドープだよ。
―― ニュー・アルバム『Certified Air Raid Material』について、自分ではどういうアルバムと捉えていますか?
edIT: ダンサブルでポップでフューチャーリスティックなヒップホップ・サウンドと、IDMやグリッチの複雑なテクニックを融合させているよね。ファーストは“喪失”がテーマだったけど、新作はまず第一にダンス・ミュージックのアルバムなんだよ。『Certified Air Raid Material』というタイトルの意味は、『戦争が起きている今の時代において、もう爆弾なんかいらない』ということなんだ。爆弾を地上に落とすのではなく、ダンスフロアに爆弾を落とすべきだって言いたいのさ(笑)。このアルバムを聴きながらダンスフロアで踊って、こういう時代でも少しでも開放感を味わって、みんなに癒されて欲しいね。みんなは、このタイトルが暴力的に思えるみたいだけど、正反対なんだ。
―― バスドライヴァーやTTCなど、ゲスト勢も豪華ですね。
edIT: バスドライヴァーは、俺がコンクリート・ジャングルでDJしていた頃から知っているんだけど、彼がずっと成長してきたのを見たんだ。以前はシャイな人だったんだけど、当時からライムのスキルはずば抜けていたんだ。彼は最もイノヴェイティヴでヤバイMCだと思う。このアルバムを作ってるときに、まず彼に声をかけたんだ。バスドライヴァーはTTCと友達だけど、実は俺は数年前にTTCに呼ばれてパリでライヴをやったことがあるんだよ。ザ・グラウチは俺のビートを気に入ってくれて、それ以来ずっと連絡をとりあってた仲。何曲か彼とコラボレーションしたから、これからも出していくよ。アブストラクト・ルードもコンクリート・ジャングルを通して知り合ったんだ。D・スタイルズはダディ・ケヴと仕事をしていたときに知り合うことができた。信じられないスクラッチを披露してくれたよ。
―― つい最近まであなたもレジデントを務めていたパーティ、“ロウ・エンド・セオリー”について教えてください。
edIT: ダディ・ケヴがロウ・エンド・セオリーのマスターマインドだから、彼に訊いてもらった方がいいけど、本当に素晴らしいパーティで、LAという街の良さを象徴している。音楽を作る人にとっては、何でも受け入れてくれるような環境なんだよ。"これはダメ"という既成概念が全くないんだ。色々なスタイルを融合させるのが許される環境なんだよ。他の街では、もっと境界線がはっきりしている。だからLAのシーンはドープなんだ。ロウ・エンド・セオリーに出演しているフライング・ロータスみたいなアーティストは、Stones Throwや Plug Researchのようなジャジーなサウンドと、ダブリーのようなエレクトロニカやグリッチ的な要素を融合させてる。そういう姿勢は、LAでは完全に受け入れられているんだ。他ではあり得ないよ。
―― 今後の活動予定を教えてください。
edIT: グリッチ・モブという、俺が一緒に音楽を作ったりライヴをやってるクルーがあって、みんな似たような音楽性を共有しているんだ。これからはクルーの活動にも力を入れていきたいね。グリッチ・モブ・アンリミテッドというレーベルとしても活動していくよ。
―― ありがとうございました!