―― LisM(Go Hiyama)さんを知らない読者も多いかと思いますので初めに簡単に自己紹介をお願いします。
LisM: はじめまして、日山豪です。2002年にJames RuskinのレーベルCoda Recordsよりデビューしました。その後、オランダ、スペイン、アメリカ等のレーベルからEPをリリースし、Asian Dynastyからリリースした「Page.122 EP」は iTunes Music Storeのエレクトロニカ部門でトップ10入りをはたしました。それに伴い、ヨーロッパを中心にライブ活動を行っています。また、LisM名義でdisques cordeよりアルバム「reverso」でデビューします。Go Hiyamaとは異なるダウンビートでメロディアスな楽曲となっています。
―― LisMというアーティスト名の由来を教えて頂けますでしょうか?音楽的な"リズム"からでしょうか、もしくは隠語的に何か別の意味からでしょうか?
LisM: 近代建築家を代表する一人ミース・ファン・デル・ローエの言葉「Less is More」からきています。自分は建築が大好きで、彼のこの言葉に感銘を受けました。「最小は最大なり」。この言葉を自分なりに受け止め、建築だけでなく、考え方にも影響を受けています。これを略し、音楽的なリズムと発音するようにしたものです。
―― LisMの音作りを始めたきっかけ、理由から教えてください。
LisM: 自分はズゥーッとハードテクノをつくってきました。しかし普段聴く音楽は、それとは異なるものがほとんどです。聴いていると「つくりたい!」という感情が次第に強まっていきました。でも、その時はつくらなかったんです。つくりたいけどできない。頭に完成はあるけど形にできない。こうなる事は分かっていました。そんな日々が過ぎました。でもある日、突然できたんです。友人が家に遊びに来てリラックスしてたからかもしれません。当時の特殊な人間関係がそうさせたのかもしれません。これには自分でも驚いています。
―― Go Hiyamaのハード・ミニマルと、LisMのブレイクビーツでは、大きくイメージが異なりますが、ご自身ではその違いをどう思われていますか?
LisM: 「つくりたい」と思った音が「ハードミニマル」という区分には入りきれなかった、「ブレイクビーツ」に近い所に位置した、という意味で違いはあります。しかし、しっかりと同じ所からでてきている事を感じています。そういう意味では、自分に「違い」が明確にはないんです。底面は全く同じなんです。付き合いの長い友人に「どちらも同じ人だって分かるね。」と言われました。嬉しかったです。
―― 曲づくりで大切にしていることは何でしょうか?
LisM: 「心地いい音楽がつくりたい」というのは大まかにありました。でも本当に大まかな事で、“意図的に”大切にしようと思った事はないです。こういう曲にしようとか。こうならないようにしようとか...。とにかくずっと形にできなかったものが、デローンっていっぺんに出てきたんでしょうね。それがこういう形に固まったというか。ただ、固め方、作り方(自分の頭の姿勢)に関しては考えました。
自分はPCで曲をつくっています。今の時代、1クリックでメロディーがなり、リズムが組まれます。機械です。自分がつくりたいのは機械な曲じゃない。PCを楽器みたいに操りたい。音を奏でたいと考えました。これに関しては「意識した」と言った方が良いかもしれない。というのも、生のドラムの音やピアノの音をPCに取り込み、作業を始めてすぐ、何だか奇妙な違和感があったんです。「叩いてる」んじゃなくて、「弾いてる」んじゃなくて、音が出てる感じ。そして「PCを楽器みたいに操ろう」と感じたんです。それを大切にしました。
―― アルバム『reverso』が出来上がるまでのプロセスについて教えてください。
LisM: 上記したものと一緒になりますが、必死に形にしていったという感じです。変な固まり方しないように。
―― Go HiyamaとしてはDJで海外のフェスにもよく招聘されていますが、そういった現場で得た経験は、LisMにも何らかの影響を与えていると思われますか?
LisM: オーディエンスの反応はGo HiyamaにもLisMにも影響を与えていったと思います。曲の流れ・展開がどのようにリスナーを引き込むのか。フェスでの反応・経験が音楽制作にもあらわれていると思います。
―― ハードミニマル以前の音楽経験について教えてください。LisMを聴いていると、楽器演奏や作曲を学んだようにも伺えるのですが。
LisM: このような質問を頂いて誠にお恥ずかしいのですが、音楽経験は何もありません。人並み程度にピアニカを弾き、縦笛を吹いていた程度です。楽譜も読めず、音楽の教科書にはびっしり「ド」とか「ファ」とか書いていました。すみません....。
―― LisMは、ヒップホップから来たのとは少し違うブレイクビーツが特徴的だと思いますが、ご自身の中でビートに対して、どのようなこだわりを持っていますか?
LisM: 確かにヒップホップだけを意識しているという事はありません。元々、トリップホップ、ドラムンベース、ビックビート等もとても好きで、昔よく聴いていました。この頃、頭の中でビートはできていたんだと思うのですが、それからジャズを聴いたりするうちに、引っ張ったり、もたついたりする、あの人間らしい特有のリズムに魅せられてLisMのビートが形成されていったと思います。その人間らしさ、「ノリ」というものにはこだわっているつもりです。勿論、その影響はGo Hiyama名義の曲にも顕著に表れていると思います。
―― テクノからブレイクビーツへ、という過程で、自分の中で大きく変わったものはありますか?
LisM: 特に大きな変化はありません。それだけ自然につくる事ができたと思っています。
―― 自身のルーツと言える音楽を教えてください。
LisM: 90年代初期頃から始まった、Warp Records の Artificial Intelligenceシリーズは自分に大いなる影響を与えていると思います。これはLisMにもGo Hiyamaにも同様です。あのシリーズには Aphex Twin や Autechre 等の色々なアーティストが参加し多種多様の音楽がありました。しかし、不思議とそれらの音は強い一貫性があり、大きな世界観を持っていました。当時、高校受験中の自分はこのCDを何度も何度も聴きながら勉強してました。両親からは心配されてたようですけどね(笑)。その音楽は今でも色あせる事なく新鮮に感じ、自分に影響を与え続けています。
―― 最近個人的に好んで聴かれているCD、または今作を制作中に良く聴かれたCDを3枚ほど挙げていただくことは出来ますか?
―― これからLisMとしては、どんなことを試みてみたいと思っていますか? また具体的な活動予定について教えてください。
LisM: 今までは、ハードミニマルというフロアよりなアプローチが主だったので、それとは異なる方向へも活動したいと思います。何気ない普段の生活に溶け込むような。また、映像作品とも絡んでいったり、色んなジャンルと作品づくりができたらいいなと思っています。今後の活動予定としては、LisMでは今回のアルバム『reverso』のリリースイベント10月に予定しています。また、Go Hiyamaとしては11月にオランダの最大規模のテクノフェスティバル"AWAKENINGS"に出演予定です。Go Hiyamaだけでなく、LisMという名前もスタートし色々活動が増えていくと思います。これからも宜しくお願いします。
LisM リリースパーティ決定!
10月13日(土) 24:00〜 恵比寿 LIQUID LOFT
(info LIQUIDROOM 03-5464-0800
http://www.liquidroom.net/)
―― ありがとうございました!