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ゆーきゃん×岸田繁(くるり)」対談!

Tuesday, June 27th 2006

ゆーきゃん「sang」リリース記念特別対談企画
  「ゆーきゃん×岸田繁(くるり)」対談」

ゆーきゃん×岸田繁(くるり)くるり主催のレーベル、ノイズ・マッカートニーからリリースされた、ゆーきゃんのアルバム『sang』リリース!を記念して、大対談企画が決定!その相手は、なんと岸田繁(くるり)!彼の音楽にほれ込んだ岸田繁が、ゆーきゃんとの対談で彼の素晴らしさを語りつくす…。
都内某所で行われたこの対談。時には静かに真剣に。時には爆笑トークが満載という内容!みなさまから寄せられた質問があってこそ!あったからこそ盛り上がったこの対談!他では見れない彼ら2人の色々な姿があらわに!
最後まで楽しみながら目を通して下さい!
(司会進行:保坂壮彦)


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Axe Riverboy / Tu Tu To Tango ゆーきゃん / sang


 

ゆーきゃん
ゆーきゃん



-まず最初に、アルバム『sang』の中に封入されている岸田さんのライナーノーツを読ませていただきまして。岸田さんからのゆーきゃんさんに対するとてつもない愛情を感じたのですが、ゆーきゃんさん自身、このライナーノーツを見てどのように感じましたか?



ゆーきゃん「もう、恐縮です、としか言えないですね」



-岸田さんは、ゆーきゃんさんのライブを観た後に、アルバム『sang』の音を聴いてからライナーノーツを書こうと?



岸田「そうですね。アルバムを聴いて2曲目ぐらいからすぐに、誰に頼まれてもいないのにライナーノーツを書きはじめてしまいましたね(笑)。ほんとうはもうちょっと簡単なものに仕上げようとしていたんですけど、もうぶあ〜っと書いてしまいまして。僕はいつも音楽を“ながら聴き”しないんですけど、思わず“ながら書き”をしてしまいました(笑)」



-“ながら聴き”をしながら“ながら書き”ですか?



岸田「いや。“ながら書き”ですね。“ながら聴き”はしませんでした。書きながら、ゆーきゃんの音楽の世界にどっぷり入り込んでいましたからね。その世界の中にいながらの“ながら書き”でした」



-ゆーきゃんさんは、「くるり」というバンドの存在は当たり前のようにご存知だったんですよね?



ゆーきゃんだって、京都住まいですよ?知っていなかったらモグリですよ(笑)」
岸田「そうですか?京都といえば、村八分ではなくて?」
ゆーきゃんいやいや、村八分も知りつつ、くるりは京都じゃ“ロックの教科書”の一番新しいページじゃないですか」
岸田 「そうですか…。ありがとうございます(笑)



-それではファンの方から投稿された質問をお2人にお聞きして行きます。
「岸田さん、ゆーきゃんさん、こんにちは。お二人の大きなきっかけとなった『ボロフェスタ』『みやこ音楽祭』これらのイベントでのまだ知られざるエピソードがあれば教えて下さい。(ドド)」



岸田「実は、『ボロフェスタ』『みやこ音楽祭』よりもう少し前から知っていて。京都のライブハウス『磔磔(たくたく)』で僕らのライブがあったときに彼らが観に来てくれていて。そん時に彼から“イベントに出てくれへんか?”みたいなんを言われまして。けど、そん時は出られへんかって。その後、『みやこ音楽祭』のスタッフを彼がしてくれて。それと時を同じくして『ボロフェスタ』に出て。彼のライブを観て…という感じですね」



さよならストレンジャー
 
くるり/『さよならストレンジャー』
「ランチ」収録アルバム
-なるほど。では次の質問。
 
「ゆーきゃんはくるりの音楽性をどう思っているか(どこが好きか)教えてください!(びんぼっちゃま)」


ゆーきゃん「くるりというアーティストは、アルバムごとにその時代の空気を吸って、曲にしているじゃないですか。だから、どのアルバムもどの曲も好きなんですが…。強いて言うなら、一番衝撃的だったのは、『ランチ』ですね。あの曲の最後のライン。“いつでも愛ある明日を信じていたい 珈琲は冷めてしまったよ”というあの2行は、僕が今まで聴いた日本語の曲の中で最も刺激を受けたものですね。その時は、歌詞の書き方とかがまだわからないというか、まだ音楽を始めたばかりの時期だったので。自分がやっていることに自信が持てない時に聴いた『ランチ』という曲は、影響を受けたというよりも、その後のゆーきゃんの歌詞の世界を肯定してくれたひとつの楽曲だったと思います」
岸田「いやぁ。なんか申し訳ないなぁ…。そん時、僕、珈琲飲めなかったんですよ(笑)。実は。苦いの嫌いで。やっと最近飲めるようになったんですけどね。あの、僕、あんま歌詞読まないんですよ。人の歌詞読んでも意味わからんから。自分のでさえも意味わからんのに。人の歌詞ほんまにわからへんから。でも、なんかわからんけど、ゆーきゃんの歌詞を聴いていると…。うん。彼、とても詩人やから。彼のブログを見ると凄くいいんですよ。僕オタクみたいに毎日チェックしているんですけど(笑)。でもそれと歌詞はまた違っていて。メロディーがあって自分が唄うという、もうちょっと肉体的な作業があって言葉を乗せるじゃないですか。それがあって、いい感じに言葉って適当になっていくから、それがいいんですけどね。最近のロックバンドの人って、 “リアルでなきゃあかん!”という思い込みで歌詞を書いている人が多いと思うんですよね。でも、“それは言わんでもわかってるから!”という感じで。ちょっと、ファンタジーが無いっていうか。そう考えると、ゆーきゃんの歌詞は、そういうものと対極にある感じがして。俺と同じでね。珈琲飲めへんけど、珈琲飲んでるという歌を唄ってるぐらいがちょうどええんちゃうかなと。なんか無理やりにまとめてしまいましたけど(笑)」



 

岸田繁、かく語りき。
岸田繁、かく語りき。
-先日、「MUSICA」編集長、鹿野淳さんがパーソナリティの東京FM「DISCORD」にくるりが出演していた生放送を聴いていた時に、番組の1曲目にゆーきゃんさんの「八月のブルー」が流れまして。その後に、くるりの「Jubilee」が流れてきたんですが。その流れが、リスナーとして聴いていてとても自然だったんですよ。そう考えると、今現在の岸田さんが生み出す音楽性と、ゆーきゃんさんの音楽性とリンクする部分、共通点がかなりあるのではないか?と思ったのですが…。



岸田「まあ、音楽自体は違うものかもしれませんので、その感覚はわからないですけれど…。くるりとゆーきゃんは、哺乳類と爬虫類だけど、同じサバンナに住んでいて、同じ食べ物を食べている別の生き物みたいな感じちゃうかな(笑)。別にお互い喰う喰われるの関係でもないと思うし。でも、一応、何かのニッチは共有しているんじゃないですかね。全然繁殖の方法は違うのかも知れへんけど」


-岸田さんがゆーきゃんさんの音楽を初めて聴いたときに沸いて来た感情はどんな感情だったんでしょうか? “凄い!”とか“悔しい!”とか?


岸田「とにかくライブが素晴らしいものだったんでね。ていうか、最近、僕、人の音楽を聴いて良いと思っても、逆に“悔しい!”とか思わなくなって来てるんですよね。前はどんな音楽を聴いていても“悔しい!”って思っていたんですけどね。それってなんでだろう…って考えると、おそらく、僕は音楽のことが以前よりも好きになっているからなのかなと。良い音楽は良い音楽だと思えるようになって、その音楽の中に入れるようになったから。だから、ライブを観たときも、このゆーきゃんのアルバムを聴いたときも、その世界の中にすっと入り込んでしまって。映画を観ているように、聴き終わるまで、時間が経ってるのか経ってへんのかわからんような感覚で。長いのか短いのかもわからないような…」
ゆーきゃん「いやぁ…。そんなことを言われるなんて、もう、びっくりです。実は僕、以前、ノイズ・マッカートニーに自分のCDを何度か送ったことがあるんですよ。くるり監修の『みやこ音楽』のコンピに入れていただきたいなと思って。でもリアクションが無かったというか(笑)。なので岸田くんも佐藤くんも僕の音楽のこと好きじゃないんやろうなって思ってたんですよ。なので、『ボロフェスタ』のライブを終えて、ステージから降りたときに、岸田くんが、“良かったよ”って言ってくれたんですけど、“へぇ?”って感じでした。その時の僕は、すごくきょとんとした顔をしていたと思います」
岸田 「あんときのライブはほんまに凄く良かったから。あそこに居てた人で、“ふ〜ん”って何も感じなかった人が居たとしたら、“俺がライフルで撃ってやる!”ぐらいイケテナイ奴ですよ、ほんと(笑)。あのライブは伝説です。フジロックでのニール・ヤングのライブぐらい良かったですから。あんなに良いライブは、自分でもやったことが無いくらい良いライブでしたよ」



-それは凄い…。では改めて、ファンの人からの質問を続けます!
「常日頃からお二人の音楽には大変お世話になっているので、今回の対談は非常に嬉しいです。ここ最近、音楽に限らず、お二人が感動した物事はなんでしょうか?映画、小説、人との交流、ほんのちょっとした出来事でも、何でも良いです。お二人が日々をどのような感性を持って過ごしていらっしゃるのか、興味があります。(ミネウチ)」


ゆーきゃん「なんでしょうねぇ…。僕、普通に空を見るだけでも簡単に感動するんですよね。今日、新幹線で京都から来たんですけど、ちょうど雨が上がった瞬間の空を目撃して。雨雲が空の半分くらいあって、逆の空が凄い青空で…。“早起きは三文の徳”っていうのはほんまなんやなぁって思って感動しました」
岸田 「ゆーきゃんて、景色をちゃんと見るよな?そしてそこでおっさん的な納得のしかたをするよな?それいいと思う。モテルと思う(笑)」



-岸田さんは空を見たときどのような納得の仕方を、感動をするんですか?



岸田 「感動するんですけど、僕、目悪いから。あんまり景色とか人を見てないんですよね。たぶん、 “綺麗やな”と思っても違うところで見てると思うんですよね。なんかここらへん(といって肘を触る)で見てる気がするんですよね(笑)」





-それでは、岸田さんが最近感動したことは?

岸田繁
 

岸田「最近ねぇ…。怒ってばっかですからねぇ…。感動、あったかなぁ…」



-ならば最近怒ったことの話でもいいので教えてもらえますか?



岸田「もうなんか凄く機嫌が悪くて怒っていた時があって。一人で渋谷の夜の街を暴れまわったことがあったんですよ(笑)。あのねぇ、僕、あんまりその怒らないんですよ。怒りの感情というか…。まあイラちなんで、すぐイライラするんですけど。その時は凄く怒っていて。この怒りの感情をなんとか処理せなあかんな、と思って。久しぶりにゲーセンに行ってパンチング・マシーンをバーンって殴って。独占して15分ぐらい殴り続けましたね(笑)。まあ、最近あんまり怒ってなかったから、“ここで怒れてよかったかな”って。そこで俺が勝手に思ったのは、よくスポーツとかでストレス解消とかをする人がいるじゃないですか?ゲームとかなんでもいいんですけど。僕、普段そういうことしないですから。でもみんなしてるってことは、みんな普段凄く怒ってんのかな?って(笑)。まあ、その日、大量に酒を飲んでたっていうのもあったからなんですけどね。はい。でまあ、そんなこともあり。一人で納得して。朝、家に帰ろうと思って朝焼けを見たら、“ああ、綺麗やなぁ”っと思って。これは感動やないな(笑)」



-(笑)。逆にゆーきゃんさんは普段怒ったりするんですか?



ゆーきゃん「たぶん普通に怒っていると思うんですけど、忘れるんですよ。怒っていたこと自体を忘れるんですよ。それか、本当に怒ったことがないのかなんですよね…」



-ということはあまり怒りの感情、負の感情で曲を作ったりすることはないんですか?



ゆーきゃん「そうですね。でも悲しいことは多いですね。何かにつけて悲しいとか。何かにつけて楽しいとかですね。それで僕は曲を作ってるんやないかなと思います」



-その悲しい感情と楽しい感情の落差は激しいほうですか?それともバランスが取れているほうですか?



ゆーきゃん×岸田繁
 

ゆーきゃん「バランスが取れているときもあるし、取れてないときもありますね。あの、カラスを見て悲しくなるときもあるし、楽しくなるときもあるんですよね。ゴミを突っついて空を飛んでいっている姿、その生きている姿を見て、悲しい気持ちになるときもあるし、楽しい気持ちになるときもあるという感じですね」



-隣で岸田さんがニヤニヤしながら話を聞いているんですけど(笑)



岸田「いやぁ、おもろいなぁと思って(笑)」
ゆーきゃん「(笑)。僕、人と感動するポイントが違うんじゃないかな?って思うときが多いですからね。上手く説明できないんですけど」
岸田「いやぁ、そのね。カラスを見て、俺も悲しいと思ったり楽しいと思ったりするときがあるんですよ。でもその具体的に何かっていうのが全然違うのでおもしろいなぁって思ったんですよ。僕の場合、悲しいときはカラスが眼中にないんですよ。カラスが居るっていう景色自体が悲しいBGMみたいな存在というか…。自分が悲しくて、カラスがそれを彩っているという感じなんですよ。で、楽しいときは、カラスの動きを見て楽しんじゃうんですよね。変な動きをしているのを見て。生物としてすごく見てしまうんですよね。そんな僕の感動と比べると、ゆーきゃんの方が綺麗やなぁと思って(笑)。なんか人のそういう想像力を聞くのっておもしろいんですよね。最近ね、というかいっつもそうなんですけど、倫理とか、自分が置かれている環境とか関係なく、“もしなんでも許されるなら、一番やってみたいイヤラシイことってなにか?”という話をするんですよ(笑)。“それほんま、性欲か?”っていうのが出てきたりして(笑)」そういう話をすると人それぞれで。本音を言い合うとほんまに面白いんですよ。



―続く―
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