許光俊 「アルトゥスのムラヴィンスキーは本当に音が悪いのか?」
Friday, June 23rd 2006
特別寄稿 許光俊の言いたい放題 第13回「アルトゥスのムラヴィンスキーは本当に音が悪いのか?」
ムラヴィンスキーの日本ライヴがアルトゥスから発売されている。HMVによれば、演奏についての不満は耳にしないが、録音について不満をもらす人がいるという。
とんでもない。チャイコフスキーの交響曲第5番を聴いたが、この録音を聴いて音が悪いと感じる人の耳は、CDのわざとらしい音質に汚染されているのだ。舞台上では絶対に聞こえないはずの楽器が聞こえるとか、楽器に耳をくっつけるようにしなければこうは聞こえないという次元の低い嘘に慣らされてしまっているのだ。
むしろ、このチャイコフスキー以上の音質の録音は、ムラヴィンスキーには存在しないとまで言いたいくらいである。オーケストラ全体が滑らかに呼吸し、自由自在に伸縮し、しかも優雅なまでに柔らかい歌すら歌っている。テンポは速くても、音楽はせせこましくならない。逆に、艶やかに流れ続ける。他の誰とも違う、だが絶妙の楽器バランス。オーケストラは1尾の動物のように生き生きとやすやすと動き回り、しかも無駄な動きがない。まるで最高級のシャム猫のようなたたずまいだ。このチャイコフスキーを聴いて、初めて、ムラヴィンスキーの音楽が単なる強烈さを越えた、異常なまでの美しさをもっていたことが理解できるだろう。
たくさんのマイクを用いて個々の楽器をクローズアップした録音では、確かに細部はよく聞こえる。だが、その細部がいかなる意図をもってそのように響かされているのかはわからない。楽器間の受け渡しや、メロディーの引継や、フレーズの連結といった、音楽の決定的な要素が破壊されてしまうのだ。また、「この楽器とこの楽器が重なってこの響きが出る」というオーケストレーションの魅力がわからない。「この楽器とこの楽器が鳴っている」しか聞こえないからだ。ゆえに、私は、そのような破壊を平然とやってのけているDGやメロディアの録音に対して決定的に疑問を抱いている。
今まで存在したムラヴィンスキーの録音のほとんどは、妙にせっかちだったり、ぎくしゃくしたり、瞬間的に大音量が鳴って暴力的に聞こえたりはしなかったか? 何か不自然なディテールばかりが目立たなかったか? 今回のチャイコフスキーを聴けば、そのように聞こえたのはすべて愚かな録音技師が作り出した虚妄のバランスのせいだったことがわかる。会場では、こんなにも自然に、自明のように響いていたのだとわかる。特に各楽器の鮮烈大胆でいてこれ意外はあり得ないと思わせるコントラストの付け方は、この録音だからこそ明瞭に伝わってくるのである。
もしあなたがまだ疑うなら、ただ一カ所、フィナーレだけでも店頭なりで聴いてみるがよい。私はこれを聴きながら、頭がクラクラした。こんな鬼気迫る疾走は、通常行われている録音では、絶対に生気を抜かれてしまう。トランペットやフルートやヴァイオリンの疾走は聞こえるかもしれないが、オーケストラ全体の疾走は見えてこないからだ。バーンスタインやヴァントのライヴ録音が残念ながらそれを証明している。
オーケストラは、個々の楽器の集積なのではなく、ひとつの楽器であるーーこの理念は、今日、思い上がった奏者と甘ったれた指揮者のせいで滅びてしまった。それゆえにこそ、ムラヴィンスキーのライヴは、かつての黄金時代に対する憧れをかき立ててやまないのだ。
以上、もっぱら音質について書いた。もちろん、演奏自体がすばらしいからだ。演奏がよくなければ、ここまで音質について書く気にはなれなかっただろう。いささかの緊張の緩みもなく、すさまじいばかりの勢いで青い火柱が立ちのぼっている。自分の耳で確認していただきたい。
最近出た1979年ライヴの「田園」や「ワルキューレの騎行」はまだ聴いていない。私は中学生のときにこれらを会場で聴いて、異常な衝撃を受けた。それゆえ、容易に聴くつもりになれないのである。
(きょみつとし 音楽評論家、慶応大学助教授)
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Sym.5: Mravinsky / Leningrad.po (1977.10.19 Tokyo)
Tchaikovsky (1840-1893)
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日本ムラヴィンスキー協会主宰企画
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Import Sym.6: Mravinsky / Leningrad.po (1979.5.21 Tokyo)+wagner
Beethoven (1770-1827)
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Glazunov (1865-1936)
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Tchaikovsky (1840-1893)
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Tchaikovsky (1840-1893)
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Sibelius (1865-1957)
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Schubert (1797-1828)
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Import Sym, 2: Mravinsky / Leningrad Po+wagner: Meistersinger Prelude(1977)
Brahms (1833-1897)
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