【特別鼎談】カフェ・アプレミディのコンピCDシリーズ20周年を記念した特別企画! 5年ぶりに新作コンピレイションが限定盤で登場!

2020年05月29日 (金) 21:30

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HMV&BOOKS online - ロック

カフェ・アプレミディのコンピ・シリーズの20周年を祝うスペシャル企画が実現しました。「午後のコーヒー的なシアワセ」――心を和やかにしてくれる、スタイリッシュで洗練されたカフェ・ミュージック/ライフスタイル・ミュージックの代名詞となった、大ヒット・シリーズの最新作が、2015年の『Cafe Apres-midi Orange』以来、5年ぶりのリリースとなります。

ポジティヴな輝きが胸を突く、選び抜かれた珠玉の名曲たち。優しい気持ちを持って、前を向いて歩いていこうと思わせてくれる、素晴らしい選曲です。アートワークやライナーも素敵で、ぜひ、多くの音楽ファンの皆さんに手に取っていただきたい作品です。今回は、そんな『Cafe Apres-midi Bleu』の発売を記念して、監修・選曲を手がけた橋本徹(SUBURBIA)さんと、アプレミディ・レコーズの担当ディレクターの稲葉昌太さんとの特別鼎談をお届けします!

※橋本徹さんと山本勇樹が執筆した『Cafe Apres-midi Bleu』全曲解説ページ もアップされました!

山本勇樹  

国内盤CD

Cafe Apres-midi Bleu【Loppi・HMV限定盤】

CD

Cafe Apres-midi Bleu【Loppi・HMV限定盤】

(1)

価格(税込) : ¥2,750

会員価格(税込) : ¥1,925

発売日: 2020年05月29日

2015年にカフェ・アプレミディ・シリーズの15周年を記念した特別企画として限定リリースされた『Cafe Apres-midi Orange』から5年を経て、シリーズ20周年を記念して最新作『Cafe Apres-midi Bleu』が登場します。

心に爽やかな甘い風を感じさせてくれる大充実のセレクション。印象的なブルーのジャケットに映された澄んだまなざし。2010年代に生まれたカフェ・アプレミディ・クラシックの中でも、特に愛された2020年代に伝えたいとびきりの20曲を収めた決定的な一枚で、オーガニック・メロウ・ソウルにフレンチ・アコースティック、AOR〜City Pop感覚のアーバン・メロウ・グルーヴにボッサでフォーキーなサウダージ・フィール、サマー・ブリージンなGood Mellowsに陽だまりメロウ・ビーツ、中南米やアフリカのハイブリッドSSWからアンビエント・バレアリカまで、ゴールデン・エラを彩った多様なジャンル/音楽スタイルから、それぞれを代表する選りすぐりが82分にわたって連なり、20年間かわらず愛されてきた「音楽のある風景」が、現在進行形の新たな息吹によって、いま再び、あの「午後のコーヒー的なシアワセ」を感じさせてくれます。

01. I Remember / Ady Suleiman

02. El Mundo Va A Cambiar / Banti

03. Balcony / Mae Defays

04. High Five / Irondale & BrandonLee Cierley feat. Jonny Tobin

05. Magazine / Lake

06. Ndivuele / Ami Faku feat. Sun-El Musician

07. PDA / Manatee Commune

08. Fight Or Flight Or Dance All Night / Kommode

09. I Can't Dance / Michael Seyer

10. Wings / Jamie Isaac

11. London London / Monica Vasconcelos

12. LSD / Jamila Woods feat. Chance The Rapper

13. Maracuja / Ge Luz

14. Be Like The Sea / Adron

15. If You Wanna / J.Lamotta Suzume

16. Untitled / Kate Bollinger

17. Spain / Sam Trump feat. SharmonJarmon!

18. Bless Ur Heart (Acoustic) / serpentwithfeet

19. Closer / Jim Alxndr feat. Marcus Prince

20. Camino De Flores / El Buho



  特別鼎談

山本勇樹(以下、山本):本日はよろしくお願いします。カフェ・アプレミディのコンピレイションCDがスタートして20年が経ちました。

橋本徹(以下、橋本):うん、時の流れは早いですねぇ。

山本:まずは橋本さんに、20周年を迎えるにあたっての心境をお訊きしたいのですが。

橋本:やっぱり15周年のとき以上に感慨はあるなと。それは2010年代っていう、90年代に負けないくらい音楽的に充実したディケイドが終わるのと同じタイミングだから、というのもあるのかもしれない。15周年記念に『カフェ・アプレミディ・オランジュ』を作ったころ以上に、カフェ・アプレミディだったり、カフェ・ミュージックだったり、街や空間のBGMだったり、そういったことへの関心が僕の中で高まっていたのは間違いなく言えることですね。

だからそれがすごく選曲コンセプトに反映されているというか、今まで以上のモティヴェイションで、それこそカフェ・アプレミディ・シリーズの最初の4枚のコンピレイションを編んだ20年前に近い胸の高鳴りだったり心の高まりを感じながら、選曲や制作に臨めましたね。その理由はいくつかあるのでこれから順番に話していければと思うんだけど、まずはカフェ・アプレミディのお店が20周年を去年(2019年)の11月19日に迎えて、今年はカフェ・アプレミディのコンピレイション・シリーズとしての20周年を迎えるにあたって、15周年のときと同じようにHMVさんのアニヴァーサリーとのダブルネームで制作しようという提案があった中で2020年に入り、新年早々トランプとイランの問題があったりでとんでもないスタートだったんだけど、そんなときにマエ・デファイス(Mae Defays)の「Balcony」という曲に出逢って、ふっと爽やかな甘い風に吹かれるような気分を感じることができて、そこに救いを見出していた冬休みに、ああ、20年前の仲間から今の仲間まで含めてこの曲の素晴らしさを分かち合いたいなっていうことが一つのモティヴェイションになったんですね。2010年代が本当に豊作なディケイドだった中で、それを振り返るいい機会にもなったというか、2010年代にカフェ・アプレミディで愛された、2020年代に残したいカフェ・アプレミディ・クラシックをたくさん入れたコンピレイションを作りたいなっていう気持ちにもつながったし。

だから、いつになくといったらよくないのかもしれないけど、モティヴェイション高く選曲作業にも入っていって。新年明けてわりとすぐにアプルーヴァル申請リストを出したんだけど、usen for Cafe Apres-midiの選曲などで毎月アップデートしてきたカフェと音楽への感じ方を総括するタイミングにもなったし、新しいディケイドが始まるにあたって、ゴールデン・エラだった2010sを自分なりに振り返る こともできましたね。そんなときにこの「Balcony」という曲とそのMVに出逢って、ああ、自分が好きな感じの原点みたいだな、それこそ自分が好きな「音楽のある風景」だなと感じたことがとても大きくて。

山本:この曲の収録に、橋本さんがとてもこだわっていた理由がよくわかりますね。ところで、前回の『オランジュ』は振り返ると橋本さんにとってどんな作品でしたか?

橋本:「フリー・ソウル」の20周年が2014年にあって、年間に32枚もコンピレイションを作ったんだけど、2015年はその余韻が続いていて。20年前に「フリー・ソウル」と「カフェ・アプレミディ」をうまく住み分けていた感じよりは、両者が混ざっている感覚がある時期だったんですね。特に「フリー・ソウル」が20周年で盛り上がっていたからっていうのもあるんだろうけど、カールトン&ザ・シューズとか、DJでかけるとフロアが笑顔になったような曲とかも収録されていて、自分のリスニング・ライフの、80年代前半から音楽が好きになって聴いてきた、30年くらいの総括というような感じでしたね。ケニー・ランキンの「Haven't We Met」のカヴァーに始まって、ネオアコっぽい感じもあれば、ラヴァーズ〜ロック・ステディーも、フレンチやブラリジアンも、もちろんメロウ&グルーヴィーなソウルもあるというようなね。カリマやロンドン・ジャズ・フォーみたいな、DJでプレイしてきたようなジャズもあって。

あと、2010年代の前半ってアプレミディ・レコーズで「FM」コンピ・シリーズをたくさんリリースしていてとても好評で、わりとその延長という雰囲気もあるかな。特にシリーズ1枚目の『Seaside FM 80.4』が象徴していて、自分の周りでも僕自身の中でもすごく高まりがあったし。FMシリーズが人気を得ていたっていうことの反映は『オランジュ』にはすごくあったと思う。FMシリーズは現在進行形の音楽に寄せていたんだけど、少し古いものも含めて作れたのが『オランジュ』だったんじゃないかな。「フリー・ソウル」や初期の「カフェ・アプレミディ」のシリーズでは許諾OKが来なかったり原盤元がわからなかった音源で、実際には現場でとても愛されていて、僕自身も何度となくプレイしていたものをまとめて収録できた感じがしますね。サリヴァンズとか、ジャクリーヌ・タイエブしかり、すごくジャンルの幅が広く、いちばん大きく言ってしまうと「サバービア」なんだけど、その総合力というか、いろんな色彩感豊かな曲が入っていたようなイメージがあって。そこから今回すごく意識して打ち出そうと思った、カフェ・ミュージックの再定義みたいなものが始まっていたのかな、とも思います。

山本:『オランジュ』では選曲のラスト近くにベッカ・スティーヴンスとかCOS/MESとか入っていて、今回の『ブリュ』を予見させるようなものがあったように思います。

橋本: COS/MESのSoft Rocksによるリミックスのような「Good Mellows」的な要素は入れたかったっていうのはすごく当時意識していましたね。その次を予見させるような曲を入れていくっていうのはできるだけ常にしていきたいと思っていて。今回の『ブリュ』でジム・アレクサンドルからエル・ブオで終わるのもそうなんだけど、サバービアでもフリー・ソウルでもなんでもそうなんですが、続いていく運動体として見てもらいたいっていうのは常にあって。やっぱり2000年当時、カフェ・ブームが巻き起こったこともあって、カフェ・アプレミディ・コンピレイションの最初のころのイメージ、カフェといえばボサ・ノヴァやサロン・ジャズっていうイメージがあまりにも鮮やかだったから、それが長い間引っ張られているところがあると思うんだけども、それに対して、現在進行形感というかアップデート感がないと、僕も、リスナーも、お店に来てくださる方もリアルなものとして感じられないと思っていて。そういう意思表示を、それまでを総括する感じでわかりやすくやったのが『オランジュ』だったのかもしれませんね。

オランジュ

山本:今回の『ブリュ』は2019年の年末に最初の打ち合わせをして、年明けてすぐに橋本さんから選曲リストがあがってきましたね。まるで橋本さんの中でイメージはできていたかのように早かったですが。

橋本:そうだね。というのは、今はusen for Cafe Apres-midiの選曲をずっとやっていることで、曲のデータベースがあるんだよね。それは選曲作業としては記憶力がどんどん薄れていく中でとてもありがたいことで(笑)。そして少なくとも年末には一年を振り返って自分にとって重要な曲をセレクトしたりリストアップする機会があるから、それを順番に見返していくことでアプルーヴァル申請リストは非常に作りやすくなっていて。だからこそ日々の選曲がとても大事だなとも思っているんだけど。だからusen for Cafe Apres-midiがあるから6週間に一回は、自分にとって重要なもの、もっと言っちゃえば今はdublab.jpのsuburbia radioがあるから、ひと月に一回は必ず自分にとっての大事な曲っていうのを残せるようになっているのが大きくて。もしかしたら見落としている曲もあるかもしれないけど、その選曲リストだけ見直せば、入れたい曲は山ほどでてきちゃう。そういう意味ではアプルーヴァル申請リストを作るのは以前に比べると容易くなっていて。でも絞りきれなくてディレクターの稲葉さんには大変な思いをさせてしまっているかもしれないけど(笑)。そんな感じで、今までみたいにレコード棚やCD棚を見直して選曲するだけじゃなく、データベースを見て思い出すことができるようになったから、仕事早いですよ。それがこの5年で大きな違いじゃないかな。だって5年前は僕はパソコンやインターネットに全く対応していなかったから(笑)。

山本:橋本さんは半年に一回、アプレミディのブログとかでベスト・アルバムやベスト・トラックを挙げていらっしゃるじゃないですか。僕もあれはずっとチェックしているんですけども、今回の収録曲リストを拝見したときに、これは橋本さんのここ数年の集大成なんじゃないかと。

橋本:そう、そうやって忘れないように、備忘録として記してきた曲目のベスト・オブ・ベストだよね。だからいろんな好奇心がある中で、UKソウルの代表、アルゼンチンの代表、フランスの代表、南アフリカの代表、チルアウト/アンビエントの代表、メロウ・ビーツの代表、アーバン・メロウ・グルーヴ/シティー・ポップの代表、サウダージ/フォーキーの代表とか、あるいはシカゴのチャンス・ザ・ラッパー周りの代表とか、まあ春の選抜とも言えるし、各ジャンルの予選を勝ち抜いてきた代表が集まった夏の甲子園とも言えるっていう(笑)。

山本:さっき橋本さんが20年前の気持ちの高ぶりに今回は近いものがあるっておっしゃったのは、今回の収録曲にかなり手応えがあったということですよね。

橋本:そうですね。手応えはあるよね、やっぱり。溜まりに溜まっていたものを出せるっていう楽しさというか。昔みたいにコンピレイションCDのオファーがたくさんあるわけではないし、選曲でもプレイリストじゃなくてCDを作りましょうという話はずいぶん減ったわけで。だからこうやって山本くんと稲葉さんのおかげで出せるっていうのは、すごく幸せなことだなって思ってます。

山本:しかもインディー・レーベルの音源だけで、ここまでクオリティーの高い一枚が仕上がるのは、やっぱりここ数年の音楽シーンの充実ぶりも表れているのではないかと。

橋本:いや本当にそうなんだよね。今回はメジャー・レーベルの音源は一曲もないけど、それぞれのシーンを代表する名曲が集まっている。

稲葉昌太(以下、稲葉):欧米でのレーベルやアーティストの活動の仕方も大きく変わりましたよね。

橋本:実際、本人のSNSとかに直接コンタクトしてアプルーヴァルを取っているケースも増えてるんじゃないですか。

稲葉:はい、増えてます。あと今回は、配信でしか聴けなかった曲で初めてフィジカル化される曲も多いです。世界初CD化ということでは、バンティ、マエ・デファイス、アイロンデイル&ブランドンリー・シアリー、アミ・ファク、マイケル・セイヤー、ケイト・ボリンジャー、サム・トランプ、サーペントウィズフィート、ジム・アレクサンドルなどがそうです。

橋本:サム・トランプなんて、このコンピの収録のためにわざわざミックスをやり直してくれて、配信されている音源より段違いに音が良くなっていますからね。嬉しいことです。

山本:話は変わりますが、最初の打ち合わせで、タイトルもその場ですんなりと決まりましたよね。橋本さんが『ブリュ』でいこうと。

橋本:今回のプロジェクトはあまり悩んだり迷ったりするものじゃないなと思っていて。選曲もそうなんだけど、タイトルもジャケも、前回がオレンジだったから、今回はブルーでしょっていう。それくらい力強く決まるものじゃないと駄目だっていう思いもあるし。あと、もちろんスタイル・カウンシルの『カフェ・ブリュ』(『Cafe Bleu』)への思い入れはすごくあるから。

アプレミディのコンピを始めたころに、スタイル・カウンシルっていうプロジェクトのあり方っていうのが学生時代から好きで、その要素をかたちにしたっていうのもあって。象徴的なのはサイモン・ハルフォンのジャケットを僕もデザイナーのNANAの小野英作くんも好きだってこととか、カプチーノ・キッドをもじってムッシュ・エスプレッソという名でライナー・エッセイを始めたっていうのも大きいし。

だから、カフェ・アプレミディのコンピレイションというプロダクトを作るときに、いろんなインスピレイションの源となったのがやっぱりスタイル・カウンシルだったんですね。20年目に「カフェ・ブリュ」っていうのを、種明かしというか、誰でもわかってるかもしれないけど(笑)、アイディアのソースというか布石を回収する作業の一つというかね。

カフェ・ブリュ

山本:でも「ブリュ」はこれまで使っていなかったのが意外でしたね。

橋本:たくさんリリースしているときに一つだけ贔屓して使えないから。逆に、一枚だけしか出ないようなときにしか使えないよね。あと、ネイヴィーとオレンジっていうのはスタイル・カウンシルの広告とかアートワークの基本となるカラーリングで。『Free Soul. the classic of Paul Weller』というコンピのライナーでも僕は、自分の関わっているプロダクトのアートワークにネイヴィーとオレンジが多いのはスタイル・カウンシルの影響だって書いているし。だからオレンジが出ちゃったら次はブルー系でしょって。

稲葉:実際、今作のジャケットの青色のイメージをデザイナーさんに伝えるときに、『カフェ・ブリュ』を意識してほしいと伝えましたしね。

橋本:そうそう。もちろんまったく同じでなくてもいいけど、意識してもらわないとね。




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