【全曲解説】 ゼリ→『+×』

2020年01月06日 (月) 19:45

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全曲解説テキスト by YAFUMI(Vo)


1. 世界と自分の本当の距離

11年ぶりのアルバムの1曲目。
ここで僕が何を歌っているかはとても大切でした。
この曲はトラックが先にできて、そのトラックを聴きながら自宅の録音ブースの中に入って、今思ってる事をまずは包み隠さず話してみる所から始めていきました。
最初の語りの部分はその時思いのままに喋った言葉をそのまま採用しました。
ゼリ→の物語の続きを描くために、あの事件が起きてから自分が自問自答していた事、自己嫌悪と理想論の狭間でもがいてきたその気持ちは避けて通れなかった。
俺は結局やっぱりあいつの事を嫌いになんてなれなかったんです。

“バランスとりすぎてきた
気を使いすぎてきた 俺が前にでるために歌う ”

この曲でこの言葉を歌えたことは自分の中では大きくて、
今このなんとなく息苦しさを増す時代の中で
色んなことが気になりすぎて動けなくなっちゃってる君。
大丈夫だよいいから1歩前に出してみろよ。
俺も前に進むからさ!ってやっと歌えた気がするんです。
今までだったら「君が前にでるために」って歌って
問いかけているふりをしてお茶を濁していたと思うんです。
この曲ができて+×のメッセージのスタンスがはっきりしました。


2. キミのヒビ


2019年10月13日 赤坂BLITZでの再始動LIVEで唯一歌った新曲です。
生きている中で時間が経つと言葉というものは意味を変えていくことがあって、
その喪失感でとてもやりきれなくなる時があります。
僕はいつからか「ヒビ」という言葉を見たときに直感的に感じることが変わっていました。
振り返ると僕らはいつも「このままではだめなんだよ」って指導されてきました。
飛び出すことの是を左耳から囁かれながら、
協調性のなさの非を右耳からどやしつけられるように。
僕らの迷いや僕らの努力はいつか僕らを何者かにしてくれるのだろうか
僕らのヒビは僕ら自身をもいつか飲み込んでしまうんではないか
そんなことを考え過ぎてどうしようもなかった夜に書いた曲です。
この曲のドキュメンタリーMVでも話しているように
赤坂BLITZのLIVEはこの曲を歌うために開催したのかもしれません。
キミに届くといいなと思っています。


3. 悪魔の証明


今回のレコーディングにはたくさんの素晴らしいミュージシャンに
参加していただいたのですが、この曲は
GUITARにKuboty、BASSにはHisayo(tokyo pinsalocks/GHEEE/a flood of circle)、DRUMSにYU-KI(dustbox)が参加してくれて、
レコーディングしている中でとてもかっこよく成長していった曲です。
ゼリ→は日本のロックの世界の裏道を歩いてきたバンドだと思っています。
決して手放しで褒められることはなかったバンドです。
今回のレコーディングにはサウンドプロデューサーとしてKAZUKIも参加
してくれて、たくさんのミュージシャンとのやりとりをしている中で、
僕らの音楽に向かう姿勢やこだわりに驚いてくれたことが多くあり、
20年間本気でやってきたことを認めてもらえているようでとても嬉しくなりました。
悪魔の証明をしている時間は僕らにはありません。
とにかくこの思いがけず追加された1年間を死ぬ気で生き抜くのです。


4. 風よ教えて

このミニアルバムはBPM180以上でメジャーキーのエイトビートの曲が
前半に並んでいるのですが、最初に曲を作り出した時はBPMももう少し遅く、
リフ主体で少し影のあるこの「風よ教えて」のような曲が10曲ぐらい並んでいました。その中でだんだん歌詞を載せていくうちそういう曲には今回歌いたい感情があまり乗っていかないことに気づき、
アルバム前半の曲のような前つんのめりで早急なビートの曲が増えていきました。
その中で唯一残ったのがこの曲でした。
僕が今回ゼリ→の看板を掲げて表現したかったものはPUNK ROCKです。
結局僕の音楽人生はずっとPUNK ROCKとの距離感で構築されているようなもので、そういう意味でアティチュードの部分では今回のアルバムでほとんど達成できていると思っているのですが、音楽的なところでは今回はSEX PISTOLSやRAMONES、THE BLUE HEARTSが作ってきたPUNK ROCKのイメージを間借りさせてもらっている印象はどうしても否めません。もしこの1年の間にもう1枚音源を出すことができるなら、その先に行ってみたいという願望が強くあります。
次の音源のタイトルは「うんち」にしたいなぁ(笑)。


5. 作り雨

このアルバムの中で一番好きな曲。
「作り雨」は俳句などの季語で、屋根やひさしから水を流してまるで雨が降っているかのように見せる演出のことを示します。この曲はSTANCE PUNKSのギターの欣也(勝田欣也)くんとの「ゼリ→はサビでユニゾンで歌う曲ないよね」という会話から欣也くんにどうしても一緒に歌って欲しく作った曲です。
実は赤坂BLITZのライブで自分的に一番グッときていたのは、
「VOLVO PUNK」のサビの前のくだりを欣也くんが血管ブチ切れそうになりながら
歌ってくれてたシーンだったりもしたんで(笑)。
そしてちょうどこの曲のギター録音をしていた2019年10月11日は
地球史上最大の台風と言われた台風19号が近くまでやってきていて
赤坂BLITZのライブの開催を心配しながら空を何度も眺めているような時でした。
心配事や失敗はできるだけ少ない方がいいけど
何も起きない人生よりはいいのかな?と僕は思うようにしています。
こんな風に考えているからきっと色んな出来事が僕らを襲ってきました。
そして様々な困難を僕らはいつも僕ららしい僕らだけのやり方で乗り越えてきました。
その中で感じてきた事を曲にできてきたからゼリ→は特別でいられたような気がするんです。


6. STAY DREAM


MVを発表してからこの「STAY DREAM」という曲には僕自身もすでにたくさん救われています。
僕が今回ゼリ→を一人で動かすことになったのはある一つの問題がきっかけでした。そこにまつわること、あの事件からの僕らの全てを言葉にして話してしまおうと思った時間帯もありましたが、
このSTAY DREAMのMVを発表した時にみんながくれた反応が、
俺がやるべきことはそういうことじゃないなと思わせてくれました。
その思いが赤坂BLITZのMCにつながっていき、この+×の全ての曲の歌詞にも浸透していきました。
この曲の歌詞はまさに僕の音楽人生の全てです。
クリエイターはいつも自分にしか作れないものを追いかけていますが、
まさにこの曲は僕にしか書けない人生の1曲になっていると思います。
ひょっとしたらこれ以上の曲はもう作れないんじゃないかと思うほどです。
でも今日これが限界だと思っている事を
明日軽々と笑いながら超えていくことがPUNK ROCKじゃないかとも思います。
ゼリ→を愛してくれていた人も、そうでない人も、
是非 1度手に取って、本気で20年間ROCKと戦い、その魅力に翻弄されてきた男の
魂の叫びを感じてもらえると幸いです。
そしてゼリ→というバンドがどれだけ美しいものだったかを
この活動により伝えていけたならそれ以上のことはないと思っています。


ゼリ→『+×』

GENRE:PUNK ROCK
YAFUMI単独プロジェクトとしてゼリ→が期間限定復活!
悪童パンクス20年の軌跡を表す錚々たるメンバー参加のニュー・アルバム

無鉄砲でハチャメチャで、それゆえロック・キッズからの信奉がことさら厚かった悪童パンクスの20年後とはこれいかに。今作に音や歌詞として集約されているのは、YAFUMIというひとりのロッカーが辿ってきた軌跡そのものにほかならない。と同時に、Sxun(ex-Fear, and Loathing in Las Vegas)や真太郎(UVERworld)をはじめとして錚々たるメンツが参加することにより具現化が叶った今作は、ゼリ→にとっての正規ゲーム時間内に作られたものではなく、ある種のアディショナル・タイム=plustimesだからこそ生まれたものだと言える。そこにこそ劇的展開が待ち受けていることも多いなか、我々もまたこの機に得られた貴重な時間と音楽を存分に満喫すべきであろう。
杉江 由紀 【ライター推薦】


+×

CD

JELLY→

価格(税込) : ¥2,000

会員価格(税込) : ¥1,840

まとめ買い価格(税込) : ¥1,701

発売日: 2019年12月18日


ゼリ→ ライブ情報


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