ハデで深刻なサイの交響曲
Tuesday, September 16th 2014
連載 許光俊の言いたい放題 第236回
ファジル・サイはこのコラムにおいてもっとも頻繁に取り上げている音楽家のひとりだ。彼のピアノが、人が言うほど名技的なものとは私は思わないけれど、きわめて個性的な演奏をすることは間違いない。
そのサイが、実は作曲にも熱心で、大作を次々に書いていることがようやく日本でも知られてきたのではないか。今回も交響曲第2番と3番のCDが発売された。どちらも一昨年の初演だという。
どちらも民族楽器を用い、いかにも中東風の味が濃い。映画音楽的とも言えるような明快なストーリーやイメージを持ち、常套的なオーケストラの表現力を駆使している。要するに誰が聴いてもわかりやすい。3,4分程度の各部分が次々に転換していくので、長大な交響曲に慣れていない人でも楽しめるだろう。
案外、18世紀におけるハイドンの交響曲の娯楽性もここから遠くないのかもしれない。ハイドンは、録音が存在しない時代の聴衆のために、一度聴けばわかるおもしろさを持つ作品を書いた。サイが今度はどんな曲を書いたのだろう、ふむふむずいぶん大げさな名前がついているけどどんなだろう、そんな感じで聴いて楽しめばよいのではないか。
こういうのを、西洋からの視線を内在化したオリエンタリズムと呼ぶべきなのか。わかりやすく言えば、異国情緒を売りにした、西洋に媚びた音楽なのか。かつてなら、そういう批判がされただろう。だが、たぶん時代はもうひとつ先に進んでいるのではないかというのが私の見立て。西洋は東洋を利用し、東洋も西洋を利用している。片方がもう片方を一方的に支配しているわけではない。作用・反作用のごとく互いに無関係ではない。

交響曲第2番は「メソポタミア」と名づけられている。メソポタミア、すなわちイラク。古代文明より戦乱が絶えなかった土地。歌謡性が強く、リズムといい、はでな色彩といい、このままでダンス作品に転用できそうだ。言い換えれば、視覚的なイメージ性が強いということ。
第3番は「ユニヴァース」、つまり宇宙という名を持つ。サイは子供のときから天文学が好きだったという。そういえば、テンシュテットの趣味も天文学だった。
これらの作品を深遠とか崇高とか呼ぶつもりは私にはないけれど、21世紀の今の感覚をよく捉えてはいると思うし、こういう音楽があってよい。何より、こうした作品が書かれた背景には、イスラムと世界をめぐる難しい問題がある。実際、サイ自身、イスラム国家の中ではもっとも西洋寄りで自由なトルコにあって、さまざまなトラブルに巻き込まれた人物である。カラフルな響きのエンターテインメント風の見せかけをとりながらも、作曲者の思いは十分以上に重い。

ベートーヴェンの作品を集めたアルバムもおもしろい。「月光」は粘っこく開始される。憂鬱な堂々巡りをしているようだ。幻想的というより、情念的である。第1楽章の終わりのほうの、あたかも底なし沼の中にはまりこむような風情は独特だ。
もしかしたらかつてのフー・ツォン、今のサイやクン・ウー・パイクといったピアニストたちは、本場ヨーロッパの人々よりはるかに情念的で暗い音楽を奏でているのではないか。本場の人々が、そこまで感情をあらわにしてはいけないと思うところを、とことんやってしまうのではないか。外国人力士が、勝ったとたんに思わずガッツポーズをしてしまうようなもの。なるほど伝統や習慣からすれば違和感があるかもしれないが、その喜びの表現に嘘はない。
彼らの演奏はベートーヴェンやショパンが考えた音楽とはずれるかもしれない。が、こうした作品を土台にして自分の真実を語っているとしたら、それはそれで敬意を払われてしかるべき仕事だろう。
「月光」第2楽章は明るく転じるかのようでいて、足取りがところどころで揺らぐ。その不安定感がユニークだ。やはり印象的な終わり方。そこから、暗い情熱に憑かれたフィナーレが導き出される。
この「月光」と自作の交響曲を立て続けに聴くと、サイの特徴がいっそうはっきりする。作曲と演奏、オーケストラとピアノという違いはあれど、やはりその底には通じる感覚がある。
ピアノ協奏曲第3番もたいへん情熱的な演奏。特に自作の第1楽章カデンツァは強烈だ。まさに天翔けるような勢いで突き進む。そのくせ第3楽章は実に楽しく開放的だ。
(きょみつとし 音楽評論家、慶応大学教授)
for Bronze / Gold / Platinum Stage.
featured item
"Sym, 2, 3, : F.say / Borusan Istanbul Po"
Say, Fazil (1970-)
Price (tax incl.):
¥2,750
Member Price
(tax incl.):
¥2,530
Multi Buy Price
(tax incl.):
¥2,337
usually instock in 2-3days
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Istanbul Symphony, Hezarfen Concerto: Aykal / Borusan Istanbul Po Karadag(Ney)Ettinger /
Say, Fazil (1970-)
Price (tax incl.):
¥3,850
Member Price
(tax incl.):
¥3,542
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Deleted
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Piano Concerto, 3, : Fazil Say(P)noseda / Frankfurt Rso+sonata, 14, 32
Beethoven (1770-1827)
Price (tax incl.):
¥2,750
Member Price
(tax incl.):
¥2,530
Multi Buy Price
(tax incl.):
¥2,337
usually instock in 2-3days
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Import Violin Conerto, etc : Kopatchinskaja, Axelrod / Lucerne Symphony Orchestra, etc
Say, Fazil (1970-)
Price (tax incl.): ¥3,069
Member Price
(tax incl.): ¥2,824Release Date:31/March/2009
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Deleted
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Piano Solo : Fazil Say
Say, Fazil (1970-)
Price (tax incl.): ¥2,750
Member Price
(tax incl.): ¥2,530
Multi Buy Price
(tax incl.): ¥2,337Release Date:24/September/2014
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