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「ベルリン・フィル・ラウンジ」第100号:2014/15年シーズンがラトル指揮で開幕! ベルリン・フィル・ラウンジへ戻る

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2014年8月29日 (金)

ベルリン・フィル&HMV提携サイト
 ベルリン・フィル関係ニュース

2014/15年シーズンがラトル指揮で開幕!ドイツ銀行サイトでストリーム無料視聴可能。
 8月30日、ベルリン・フィルの2014/15年シーズンがスタートします。開幕演奏会のプログラムは、サー・サイモン・ラトル指揮による、ラフマニノフ「交響的舞曲」、ストラヴィンスキー《火の鳥》。映像は、デジタル・コンサートホールで中継されますが、ドイツ銀行のサイトよりアクセスいただくと、無料でご覧いただけます。この機会に、ぜひご視聴ください(ライブ中継のみ無料。詳細は「今度のDCH中継」参照)。
 シーズンのハイライトは、ラトル指揮によるシベリウス、シューマン&ブラームスの交響曲全曲ツィクルス。またラトルは、ベルリンの壁開放25年演奏会で、ベートーヴェン「交響曲第9番《合唱付き》」も指揮する予定です。
 客演指揮者は、ベルナルド・ハイティンク、ヘルベルト・ブロムシュテット、ダニエル・バレンボイム、マリス・ヤンソンス、ペーテル・エトヴェシュ、リッカルド・シャイー、ヴァレリー・ゲルギエフ、ドナルド・ラニクルズ、クリスティアン・ティーレマン、パーヴォ・ヤルヴィ、アラン・ギルバート、エマニェル・アイム、キリル・ペトレンコ、トゥガン・ソヒエフ、アンドリス・ネルソンス、グスターボ・ドゥダメル。またジャナンドレア・ノセダが、ベルリン・フィルに初登場します。ダニエーレ・ガッティは14年ぶり、リッカルド・ムーティは5年ぶりに客演する予定です。
 ソリストでは、メナヘム・プレスラー、マルタ・アルゲリッチ、エマヌニュエル・アックス、クリスティアン・ツィメルマン、イェフィム・ブロンフマン、エレーヌ・グリモー、ラン・ラン、フランク・ペーター・ツィンマーマン、イザベル・ファウスト、レオイダス・カヴァコス、パトリシア・コパチンスカヤ、ハーカン・ハーデンベルガーが登場します。アルゲリッチの定期登場は、1996年のアバドとの共演以来、実に18年ぶり。アーティスト・イン・レジデンスは、クリスティアン・テツラフが務めます。またユジャ・ワンが、ベルリン・フィル・デビューを飾ります。

無料ライブ中継の視聴方法:
無料視聴には、アクセス権が必要です。以下の手続きを取って取得してください。
@下のドイツ銀行のサイトで、氏名とメールアドレスを入力します。
A入力したメールアドレスに、視聴リンク付きのメールが送られます。
Bライブ中継時間にリンクをクリックして、視聴します。
ライブ中継直前には、登録サーバーが混雑することが予想されますので、事前にアクセス権を取得されることをおすすめいたします。

シーズン開幕演奏会をドイツ銀行のサイトで無料視聴する
シーズン演奏会一覧(DCH中継分)を見る

ベルリン・ムジークフェストが開催!
 9月2日から22日まで、ベルリン・ムジークフェストが開催されます。2005年にベルリン芸術週間が改名してスタートしたこのフェスティヴァルは、今年で10年目を迎えますが、今年はフィルハーモニーを舞台に31回の催しを予定しています。
 客演オーケストラは、ベルリン・フィル、ベルリン・シュターツカペレ、ベルリン放送響、ベルリン・ドイツ響、コンツェルトハウス管の在ベルリン団体のほか、ロイヤル・コンセルトヘボウ管、ドレスデン・シュターツカペレ、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管、ミュンヘン・フィル、ロンドン響、クリーヴランド管、マーラー・チェンバー・オーケストラと豪華絢爛。指揮者も、サー・サイモン・ラトル、グスターボ・ドゥダメル、ダニエル・バレンボイム、マリス・ヤンソンス、クリスティアン・ティーレマン、フランツ・ヴェルザー=メスト、ジョン・エリオット・ガーディナー、ダニエル・ハーディングと多士済々です。

ベルリン・ムジークフェストの演奏会一覧を見る

DCHでユニテル映像によるカラヤン・シリーズがスタート
 2014年7月16日、ヘルベルト・フォン・カラヤンが没後25周年を迎えます。デジタル・コンサートホールでは、これを記念してカラヤンが60〜70年代に残したユニテル制作の映像を連続公開します。
 内容はユニテル・アーカイブの全容で、約40のタイトルが網羅されています(コンサート映像およびドキュメンタリー)。オリジナルのほとんどが35ミリフィルムで収録されており、それをHDクオリティで起こしたものがアップされます。HDの高画質でカラヤンのユニテル映像を数多く観られるのは、DCHが初めてです。
 嬉しいのは、DCHユーザーであれば、通常のチケットでこのシリーズも自由に観られること。特別なチケットを追加購入する必要は、ありません。DCHでは、現在200本以上の映像が視聴可能ですが、カラヤン・シリーズは、それをさらに魅力的にするものと呼べるでしょう。
 デジタル・コンサートホールでは、2008年よりベルリン・フィルの演奏会を定期的に中継していますが、2年前から90年代のアバド時代、2000年代初頭のラトルの映像(ユーロアーツ)もアップされています。今回さらに、60〜70年代のカラヤンの映像が加わることになり、80年代を除いたベルリン・フィルの映像作品が、ほぼ網羅される形になります。
 第1段は7月4日にアップ。新しいライブ中継のないオフシーズン中を利用して、8月末までに8回22タイトルが公開されます。秋以降には、残りの約20タイトルが数ヵ月にわたって公開される予定です。具体的なスケジュールは、「今後のDCH中継」をご覧ください。

カラヤン・アーカイブ:スケジュールと詳細内容はこちらから

内容:
ベートーヴェン:交響曲全集(67〜71年)
ベートーヴェン:交響曲第5番《運命》(66年。インタビュー、リハーサル、演奏)
ベートーヴェン:交響曲第9番《合唱》(77年)
ベートーヴェン:ミサ・ソレムニス(79年)
ブラームス:交響曲全集(1973年)
チャイコフスキー:後期三大交響曲(73年)
チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番(67年。ピアノ:ワイセンベルク)
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番(73年。ピアノ:ワイセンベルク)
ドヴォルザーク:交響曲第9番《新世界》(66年。インタビュー付き)
R・シュトラウス:《ドン・キホーテ》(75年。チェロ:ロストロポーヴィチ)
フランス管弦楽曲集(78年。《海》、《牧神の午後への前奏曲》、《ダフニスとクロエ》第2組曲)
バッハ作品集(67〜68年。ブランデンブルク協奏曲第3番、管弦楽組曲第2番)
序曲集(75年。《エグモント》、《コリオラン》、《魔弾の射手》、《ウィリアム・テル》、《タンホイザー》の各序曲)
ジルベスター・コンサート1978

ヴェルディ:《オテロ》(73年)
ワーグナー:《ラインの黄金》(78年)

ドキュメンタリー「ヘルベルト・フォン・カラヤン〜セカンド・ライフ」(2012年)
ドキュメンタリー「ビューティ・アズ・アイ・シー・イット」(07年)
ドキュメンタリー「ヘルベルト・フォン・カラヤン」(1978年)
ドキュメンタリー「マエストロ・フォー・ザ・スクリーン」
新作ドキュメンタリー(2014年。ベルリン・フィル制作)

ラストチャンス:8月31日まで!シューマン交響曲全集をお求めの方に、非売品DVD「ラトル指揮マーラー交響曲第3番」をプレゼント

 レーベル・スタートを記念して、HMVオンラインでシューマン交響曲全集(輸入盤・国内盤不問)をお求めの方から、抽選10名様にベルリン・フィルの特別DVD「ラトル指揮マーラー交響曲第3番」をプレゼントいたします。

【演奏曲目】
ブラームス:《ハープが豊かに響きわたる》
ヴォルフ:《妖精の歌》
マーラー:交響曲第3番

ソプラノ:アンケ・ヘルマン
アルト:ナタリー・シュトゥッツマン
ベルリン国立大聖堂少年合唱団
ベルリン放送合唱団女声団員
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
指揮:サー・サイモン・ラトル

2011年2月11日、ベルリン・フィルハーモニーでの収録
演奏時間:162分

 この録音は、2011年2月にマーラー全曲演奏ツィクルスの一環として行われた演奏会の収録映像で、これまで一般に発売されたことがない貴重なDVDです。ラトルの指揮のもと、ナタリー・シュトゥッツマン(アルト)、ベルリン放送合唱団女声団員、ベルリン国立大聖堂少年合唱団が参加。ラトルの曲目解説映像も付いた、ファン垂涎のタイトルとなっています。
 この演奏について、『レコード芸術』誌海外レポートでは、「ベルリン・フィルは、ラトルを信頼して素直に身を任せた結果、自らの能力を最大限に出し切っていた。さり気ないフレーズに込められる表現密度が並ではなく、聴いていて“まぎれもなく世界一のオケだ”と震撼させられる。その演奏精度、響きの豊麗さは、両者が1段上の次元に達したことを伝えていた」と評されています。
 応募方法は以下の通り。メールにお客様の住所、氏名、またシューマン交響曲全集(輸入盤・国内盤不問)をご購入になった際の注文番号をご明記の上、hmv@berliner-philharmoniker.deまでお送りください。必ず実名でご応募いただけるよう、お願いいたします(お預かりした個人情報は、当キャンペーンのためだけに使用され、他の目的には当てられません)。締切は、8月31日。皆様のご応募をお待ちしております。

応募はこちらから

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発売日: 2014年06月30日

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 最新のDCHアーカイブ映像

カラヤン・シリーズ第6弾:ベートーヴェン《運命》
2014年8月8日

【演奏曲目】
ベートーヴェン:交響曲第5番《運命》(1972年収録)
ドキュメンタリー「カラヤン、あるいは私の見る美」(2007年制作)

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン

 カラヤンによるベートーヴェン全集の最後のタイトルは、《運命》です。1972年フィルハーモニーでの収録ですが、全9曲のなかでも、最も自然な映像に仕上がっているようです。第4番と同じ状況での収録らしく、フィルハーモニーで観客が入った状態で撮影されています。しかし、もちろん完全にライブではなく、多くの部分が演奏会後に観客なしで追加収録されており、その雰囲気は部分的に感じ取れると言えるでしょう。
 ドキュメンタリー「カラヤン、あるいは私の見る美」は、2007年に制作されたドキュメンタリーで、彼に接したアーティストや関係者の証言を網羅しながら、カラヤンの姿に迫ります。数々の当時の映像、リハーサル光景なども紹介されています(英語字幕付き)。

ベートーヴェン:交響曲第5番《運命》をDCHで聴く
ドキュメンタリー「カラヤン、あるいは私の見る美」をDCHで観る
カラヤン・シリーズ第7弾:ワイセンベルクとのチャイコフスキー&ラフマニノフ
2014年月8月15日

【演奏曲目】
チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番(1967年収録)
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番(1973年収録)

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
ピアノ:アレクシス・ワイセンベルク
指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン

 アレクシス・ワイセンベルクとのチャイコフスキーとラフマニノフのピアノ協奏曲は、このシリーズのなかでも白眉と言えるものでしょう。とりわけ後者は、カラヤンの美意識がもっとも徹底したもので、純粋のその映像美に酔わされます。人工的ではありますが、その人工性が一種の芸術性と感じられるところが、この魅力の秘密。何か非現実的で、神聖な儀式に参加しているような気分にさせられます。ワイセンベルクも、ソリストというよりは「カラヤンの楽器」というイメージです。

チャイコフスキー&ラフマニノフのピアノ協奏曲をDCHで聴く

カラヤン・シリーズ第8弾:指揮と演出を両方担当した代表作、ヴェルディ《オテロ》

【演奏曲目】
ヴェルディ:《オテロ》

オテロ:ジョン・ヴィッカース
デスデモナ:ミレッラ・フレーニ
イヤーゴ:ピーター・グロソップ
エミリア:ステファニア・マラグー
カッシオ:アルド・ボッティオン

ベルリン・ドイツ・オペラ合唱団
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン


 ザルツブルク音楽祭でのカラヤンの《オテロ》は、1970年から72年の間に計14回上演されました。ローベルト・ドルンハイムのドキュメンタリー「カラヤン、あるいは私の見る美」でマリス・ヤンソンスはその印象をこう語っています。「それは信じられない演奏でした。私は眠れませんでした。私は夜中じゅう、ザルツブルクの街を歩き回っていました。夢遊病に掛かったようでした」
 カラヤンにとっては、ジョン・ヴィッカースは最高のオテロでした。彼はここで、役柄の心理に深く入り込み、神がかり的な演技を見せています。とりわけミレッラ・フレーニのデスデモナとのシーンでは、その迫真ぶりに息を呑まされます。一方フレーニは、可憐かつ清廉な美しさが強い印象を与えます。
 ピーター・グロソップのイアーゴは、名ヴェルディ・バリトンが揃っていた70年代初頭としては意外なキャスティングと思われます。しかしカラヤンは、彼の鋭い眼差しと演技上のインテリジェンスを高く評価していたそうです。

《オテロ》をDCHで聴く

 これからのDCH演奏会

ラトル指揮によるシーズン開幕演奏会。ドイツ銀行のサイトより無料視聴可能!
2014年8月31日日本時間午前2時

【演奏曲目】
ラフマニノフ:交響的舞曲
ストラヴィンスキー:《火の鳥》

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
指揮:サー・サイモン・ラトル


 「ロマン派最後の作曲家」とクラシック音楽の革命児。2012年11月、サー・サイモン・ラトル指揮ベルリン・フィルが、ラフマニノフの合唱交響曲《鐘》とストラヴィンスキーの《春の祭典》を取り上げたコンサートは、大きな評判を呼びました。この2人のロシア人作曲家の生涯は、非常に対照的です。1917年、ラフマニノフはロシアの10月革命の前にアメリカに亡命し、そこでピアノのヴィルトゥオーゾとして第2のキャリアを歩み始めます。生涯の最後になって、彼はこう告白しました。「全世界は私に対して開かれていた。だが、祖国のロシアだけは、扉を閉ざしていた」と。
 ラフマニノフより9歳若いストラヴィンスキーは、26歳だった1909年、ロシア・バレエ団より依頼を受け、グリーグやショパンのピアノ作品のオーケストレーションを任されます。その1年後、バレエ音楽《火の鳥》がパリのオペラ座で初演され、大成功を収めたのでした。彼はホームシックとは無縁の、コスモポリタンとしての道を歩んだと言えるでしょう。2014/15シーズンのオープニングに、サイモン・ラトル指揮ベルリン・フィルは、再びこの2人の作曲家に焦点を当てます。

シーズン開幕演奏会をドイツ銀行の無料ストリームで聴く
カラヤン・シリーズ第9弾:ドビュッシー、ラヴェルのフランス・プログラム
2014年月9月5日

【演奏曲目】
ドビュッシー:《牧神の午後への前奏曲》
《海》
ラヴェル:《ダフニスとクロエ》第2組曲

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
ピアノ:アレクシス・ワイセンベルク
指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン


 1978年2月収録のこの映像は、ドビュッシーとラヴェルというフランスもののレパートリーを取り上げています。カラヤンの洗練された音響に対する美意識は、フランス音楽とは近い距離にありました。彼はこの3曲を度々取り上げ、《海》は計4回、《牧神》は計3回、《ダフニス》は計2回録音しています。カラヤンは同年の12月に《ペレアスとメリザンド》も録音していますが、ドビュッシーへの取り組みが熟してきた時期の映像と呼べるかもしれません。
 映像作品としては、実験的な側面は影を潜め、むしろオーソドックスな方向に近づいています。

ドビュッシー&ラヴェルのプログラムをDCHで聴く

 アーティスト・インタビュー

ダニエル・ハーディング(前半)
「シューマンの『ファウスト』からの情景は、私にとってレパートリーなかでも最も重要で偉大な作品のひとつです」
2013年12月15日
聞き手:マシュー・ハンター(ベルリン・フィル、ヴィオラ奏者)

【演奏曲目】
シューマン:ゲーテの『ファウスト』からの情景

ソプラノ:ドロテア・レッシュマン
バリトン:クリスティアン・ゲルハーヘル
バス:ルカ・ピサローニ
指揮:ダニエル・ハーディング


 昨年12月のハイライトは、ニコラウス・アーノンクール指揮のシューマン「『ファウスト』からの情景」となるはずでした。これは、彼のベルリン・フィルとの最後の演奏会となる予定でしたが、2ヵ月前にアーノンクール自身がキャンセル。代役として、ダニエル・ハーディングに白羽の矢が立ちました。彼は、おそるべき過密スケジュールの合間を縫って受けて立ち、先シーズンで最も素晴しい演奏会のひとつを実現しました。ここでは、2回連続でその際のインタビューをお届けします。

マシュー・ハンター「今日の朝、オーストラリアのヴィオラの友人(ブレット・ディーン。ベルリン・フィルの旧団員で、現在は作曲家として活躍。ハーディングとも旧知の間柄)と電話したのですが、彼にこのインタビューのことを話したのです。最初に何を聞いたらいいか、と尋ねたところ、彼は“マンチェスター・ユナイテッドは一体どうしたんだ”と聞いてみれば、と言いました(笑。ハーディングは、同チームの熱心なファンである)」

ダニエル・ハーディング「少なくとも彼は、イギリスのクリケット・チームのことを茶化したのではないわけですね(苦笑)。残念ながら、スポーツ界は最近あまりいい話題がありません。絶望的です。でも、マンチェスター・ユナイテッドを引き合いに出すのは、間違っていないかもしれない。彼らは長い間、非常にうまくいっていました。過去20年間は、一番強いチームで、我々ファンにとっては、幸福な時代だった。アレックス・ファーガソンは素晴しいトレーナーでしたが、トレーナーと指揮者は似ています。端っこで腕を振り回し、叫んでいるわけですが、それは指揮者も同じでしょう?チームは同じ顔ぶれなのに、トレーナーが変わったら、突然泣かず飛ばずです。今の彼らの状況は喜ばしくありませんが、少なくとも“トレーナーと同様、指揮者が良ければ演奏も良くなる”と教えてくれますね。というわけで、ブレットによろしく。彼がクリケットの話をしない限りは、仲良しですから」

ハンター「あなたは今週、ベルリン・フィルに代役登場しますが、この時期、もともとベルリンに居る予定だったのですね。ダニエル・ハーディングが理由もなくフラフラしているわけがない、と思って調べたら、ベルリン国立歌劇場で《さまよえるオランダ人》を振る」

ハーディング「そうです。昨日の晩がゲネプロで、木曜日が第1回公演です。ベルリン・フィルのシューマン初回が、土曜日。金曜日に、スカラ座で別の演奏会の最初のリハーサルがあり、1日だけミラノに飛びます。こういう週には、ダニエル・バレンボイムになったみたいな気がしますね(両者笑う)。もちろん彼は、私よりもずっと頭が良くて、才能があるわけですが。
 この演奏会に出演することになった経緯は、ニコラウス・アーノンクールがキャンセルしたことです。私は昨年9月に、マーラーの交響曲第10番でベルリン・フィルに客演しました。その直後に、アーノンクールが降板。そして、私のところに代役の話が来ました。このオファーには、何か強く心を動かされました。私はもともとこの週、ベルリンに来ることにしていて、自由時間もありました。《ファウストからの情景》は、私にとって、最も重要で偉大な作品のひとつです。過去に何回か指揮しましたが、オーケストラの事務局長がこの曲をオファーしてきたら、どんなに忙しくてもノーとは言えない。もちろん今週は、本当にパンパンの予定ですが、ひょっとしたら、それも悪くないのかもしれない。ひとつのオーケストラと根を詰めてリハすると、充実する一方で、煮詰まってしまう恐れがあります。国立歌劇場で《オランダ人》をやって、ベルリン・フィルで《ファウスト》をやる、というのは、気持ちを創造的に切り替えられる、という気がします。もちろん、普通はこういうことはするべきではないでしょうが、今回は本当に楽しいです」

ハンター「今月末には、スカラ座で《エリア》をやるのですね」

ハーディング「そうです。そちらもクリスティアン・ゲルハーヘルの独唱です。彼とたくさん仕事ができて、ラッキーです」

ハンター「12月の予定はすごいです。最初にスウェーデン放送響とワーグナーで始まって…」

ハーディング「実は、直前にロンドン響と《トリスタン》第2幕をやったんです。その後、ストックホルムで《ワルキューレ》の第3幕。これは私にとっては、初めての《ワルキューレ》でした。そしてベルリンで『ファウスト』と《オランダ人》をやって、最後にスカラ座で《カヴァレリア・ルスティカーナ》のリハーサルをします。というわけで、本当に狂気の沙汰ですが、もし25年前、いや5年前でも、誰かが“2013年12月にこれらの作品をここで指揮してください”と言ってきたら、私は飛び上がって喜んだでしょう。ですから、私は今週はいい子になって、毎日早く寝ることにしています。ワイン1杯だけは、飲みますけれどね(笑)。

ハンター「1850年頃のライプツィヒとドレスデンは、あなたにとっては今月のキーワードですね。今おっしゃった作品の多くは、この時期にザクセンで書かれています。シューマンは、『ファウスト』を書いている時に、メンデルスゾーンと文通していました。彼は、『ファウスト』を作曲することについて、不安があったようです。というのはゲーテが…」

ハーディング「“『ファウストを作曲できるのは、モーツァルトだけだ”と書いているから。メンデルスゾーン、シューマン、ワーグナーという当時のザクセンの作曲家たちは、個人的に知り合いで、よく会っていました。そしてゲーテは、彼らにとって非常に重要なテーマだった。『ファウスト』の音楽を書く、というのは、誰にとっても、誘惑的なアイディアだったでしょう。ゲーテ自身が自信たっぷりの発言をしているわけですから(笑)。
 しかし、私自身の正直な気持ちはこうです。シューマンは、このテキストに本当に偉大な音楽を付けました。場面の選択からして、彼の考えが伺えます。彼は物語のすべてを語ろうとしません。部分的なシーンが続くのです。いつも問題になるのは、次の問いでしょう。つまり、《ファウストからの情景』を理解するためには、ゲーテを知っている必要があるのか、ということ。当時の聴衆は、皆『ファウスト』を知っていました。現代では状況は違いますが…。シューマンの作品では、ゲーテを知り、各場面の意味が理解できていればいるほど、作品の素晴らしさがよく分かるようになります。
 シューマンは、シーンを非常に意識的に選んでいます。それによって、彼自身のゲーテ解釈を盛り込んでいるのです。彼がここに見ているのは、“罪と贖い”のテーマです。グレートヒェンの誘惑と、彼女が狂気に陥ることがファウストの罪。そしてファウストが、自然の場面で自然と光と響きについて思いを馳せ、死にます。しかし彼は、最後に罪を許されて、救済されるのです。興味深いことに、シューマンは宗教的な色彩を持ったシーンを選んでいます。そして、ゲーテの詩を1ヵ所だけ変更しているのです。ファウストが死ぬと、合唱が“時計の針が落ちた”と歌いますが、その後に来るゲーテの原詩は、“すべては終わった”です。しかしシューマンは、ここを聖書の言葉“すべては成し遂げられた”(注:イエスが死ぬ時の最後の言葉)に変更しているのです。これは興味深いと同時に、重要な変更です。シューマンはゲーテのテキストを忠実に作曲していますが、部分的に自分の考えを加えている。場面を選んだり、言葉を変えることで、“自分の読み”にしているのです(後半に続く)」

ハーディングのシューマン「ゲーテの『ファウスト』からの情景」をDCHで聴く

 ドイツ発最新音楽ニュース

本コーナーでは、ドイツおよび欧米の音楽シーンから、最新の情報をお届けします。

ノセダがトリノ王立劇場音楽監督を離任宣言
 ジャナンドレア・ノセダが、トリノ王立劇場の音楽監督契約を延長しないことを発表した。背景は、インテンダントのヴァルテル・ヴェルニャーノとの確執。ノセダは、新しいインテンダントが着任しないかぎり、トリノに客演しないことを宣言している。『ニューヨーク・タイムズ』紙によると、彼はヴェルニャーノが(上演の質が急激に上がっているにもかかわらず)劇場の国際的名声を高める策を講じていないことに不満を漏らしているという。
 対してヴェルニャーノは、ノセダの批判が理解できないと反論。彼はイタリアのプレスに対して、「自分は国際的なツアーや同種のプランに反対したことはない。しかし、劇場の経済面を優先しなければならない側面がある」と語っている(写真© Ramella & Giannese)。
チョン・キョンファがヨーロッパでの活動を再開
 故障のため長期間休養していたヴァイオリニストのチョン・キョンファが、11月にヨーロッパで演奏活動を再開することになった。彼女は、11月22日にリヴァプール、12月2日にロンドンでモーツァルト、プロコフィエフ、フランクによるプログラムのリサイタルを行うという。
 なおチョンは、昨年日本をはじめとするアジア諸国で、カムバックを果たしている。
エスファハニがドイツ・グラモフォンと専属契約
 イランのチェンバロ奏者マハン・エスファハニがドイツ・グラモフォンと専属契約を結んだ。1984年にテヘランで生まれたエスファハニは、まず父よりピアノを学んだが、やがてチェンバロとオルガンに転向。2009年にロンドン・ウィグモア・ホールにソロ・リサイタル・デビューし、評判を呼んだ。2011年には、BBCプロムスで史上初のチェンバロ・ソロ・リサイタルを開催。2012年には、バッハ《フーガの技法》のオリジナル・オーケストラ版をプロムスで初演している。

次号の「ベルリン・フィル・ラウンジ」は、2014年9月19日(金)発行を予定しています。

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