高嶋ちさ子 インタビュー

HATS UNLIMITED

2014年7月18日 (金)


高嶋ちさ子 インタビュー


年間100本に近いコンサートに加え、メディアでの活躍に執筆活動……。パワフルにトップランを続けるヴァイオリニスト、高嶋ちさ子さん。常に多くの共感と話題を創り出す彼女の新作『COLORS〜Best Selection〜』が誕生しました。葉加瀬太郎氏が在籍するハッツアンリミテッド移籍第一弾となる本作は、4曲のオリジナル楽曲を始め、大胆なアレンジでドレスアップしたクラシックの楽曲や映画洋楽カバーまでとバラエティに富み、まさにカラフルな世界観。様々な"COLORS"を内面に併せ持つ高嶋さんに、オリジナル楽曲の誕生秘話や一音一音に込めた想い、また二児の母としてのプライベートまで、豊かなお話を伺いました。彼女ならではのテンポのいいトークをお届けします。
取材/文 鄭 美和

─高い音楽性と楽しさを両立させたコンサートは年間100本近く。常に先を読み、企画力と行動力のキレが抜群の高嶋さんの新作を楽しみにしていました。

 次々と新しい挑戦をせずにはいられないのは、私がせっかちで飽きっぽいからなんですけど(笑)。確かに遠い未来より、半年後や一年後といった現実的な近い将来を見越して行動を起こすタイプではあります。その方が逆算しやすいんですよ。そんな自分をもってしても、今回のアルバム『COLORS〜Best Selection〜』は、賭けともいえる大きな挑戦でした。自分の中でずっとやりたくて模索していた演奏やアレンジ。殻を破って挑みたかった新しい表現。その糸口が、自分なりにですが掴めた感があります。

─クラシックの楽曲がポップスの要素を含む曲へと劇的に変貌していたりと、アレンジの妙は鮮やかで痛快。バラエティ豊かな選曲にも意表を突かれました。

 これほどまで選曲のジャンルに幅をもたせ、大胆にポップスの方角へも舵取りした作品は、本作が初です。どちらかというと、ポップスから、アコースティックな方向に進むパターンの方が多いと思うんです。私のように長いことアコースティックでやってきて、ポップスにトライする逆パターンは珍しい。クラシック以外の音楽を演奏する楽しさを実感したのは、ジョイントコンサートシリーズ"ライブイマージュ"に参加させて頂いたのがきっかけです。生楽器を軸にしながらも、そこにこだわり過ぎず、文明の利器も思いきり使ってみたり、アレンジで遊ぶのって純粋に楽しいなと。柔軟に楽しめばいいんだと、自分の中の視界がグンと開けましたね。

─高嶋さんの奏でるストラディ・ヴァリウス(愛称:ルーシー)の音色も、アルバムタイトルのようにまさにカラフル。耳新しさに惹きこまれます。

 「ヴァイオリンの美しい音色を、優しい音色を届けたい」。アルバム制作でもコンサートにしても、私はずっとアコースティックな音色にこだわって演奏してきました。でも、ここにきてヴァイオリンの音色の激しさやシャープさ、カッコよさを表現したいという気持ちが急激に高まってきたんです。そんな心境の変化も、本作には如実に表れていると思います。

─何といっても本作では、渾身のオリジナル楽曲が4曲収録されています。幕開けを飾る「オーシャン・ブルー〜ORCA〜」は壮大な展開で、"感動の超大作"とはまさにこのこと!

 ゴーストライターは一切使っていません(笑)。曲作りはハイカロリーを要する過酷な作業であることには違いないのですが、その分、自分の曲を弾く喜びや達成感はまた別格。9月から始まるコンサートで弾くのが、今からとても楽しみなんです。

─初回限定版には、高嶋さんが原案を手掛けた絵本の特典も。ファンにとっては嬉しいサプライズです。

 オリジナル曲「オーシャン・ブルー〜ORCA〜」のテーマにもなっている、シャチの家族の愛情を描いた絵本なのですが、原案になっているのは、私が二人の息子たちによくしている"日本作り話"(笑)です。これまでは、曲を書くということは五線譜に向かってするものだと思っていて、物語や情景に曲を付けるという発想が全くなかったんです。でもやってみたら意外と私に合っていた。羽毛田丈史さんの素晴らしいアレンジで仕上げて頂いた「オーシャン・ブルー〜ORCA〜」を、早速子供たちに聴かせたら、曲の場面ごとに物語の局面をズバリと当てていました。子供たちにもわかりやすい曲が書けたのは嬉しいですね。

─羽毛田丈史さんを始め、日本を代表するサウンドプロデューサーである今野均さんと、本作でも強力タッグを組まれています。

 10年以上ずっとお仕事をさせて頂いている今野さんは、私の好き嫌い、得意不得意、心の声や弱い部分、集中力の具合など全てを熟知している人。見透かされますから、小細工は通用しません。というか、私が余計なことを考えずに、演奏にだけ集中すればいい状況を先回りして用意してくれる。指導の鬼軍曹っぷりはハンパないのですが(笑)、私も遠慮なくやりたいこととその理由を伝えられるので、すごくやりやすいし助けられています。パブリックイメージでは、圧倒的にSと思われている私ですが、まっ、実際日常生活ではそうなんですけど(笑)。音楽制作に関しては従順なドMですね。

─今野均さんと緻密にアレンジを練り上げた楽曲群の中で、自信作を挙げるとするならば?

 曲順的に「カプリス第24番」、「カルメン・ファンタジー」、「カノン」。本作の "カ"から始まる曲は必聴です(笑)。デビュー前からずっと弾き続けてきた曲ばかりですが、私が何回弾いても同じものをなぞるようになってしまうところを、"男組"の演奏によって"聴き映え"が冴えわたる、驚きの変貌を遂げました。特にパガニーニの「カプリス第24番」は、ヴァイオリニストにとっては避けては通れない茨の道。眉間にしわを寄せて弾いてしまいがちな曲なのですが、原曲のカッコよさとスピード感は活かしつつ、エンディングは「トムとジェリー」のフレーズさながらの小気味いいスリル感もあって。"男組"との共演で真剣に遊べだアレンジは、自分でもとても気に入っています。

─"男組"といえば、高嶋さんがプロデュースされている男性チェロユニット、"ドルチェッロ"のお二人も参加されています。

 ドルチェッロの古川展生さんと江口心一さんは、今をときめく東京都交響楽団のトップ奏者。彼らをゲストに迎えて収録したのが「She」です。ドルチェッロの音色は、私からすると「エロい!」の一言に尽きるのですが(笑)、その特有の色気は私には足りないもの。自分がリーダーシップをとるのではなく、他の演者のテンションに便乗することで面白い化学反応が起きることがあるのですが、「She」は、まさにドルチェッロに導かれることによって、凄くいい方向に向いた曲です。

─前半に伺った「オーシャン・ブルー〜ORCA〜」以外の、他の3つのオリジナル楽曲についても、高嶋さんによる解説を是非伺いたいです。「カイルア」は、ボサノヴァの調べが心地よく、これからの季節にぴったりです。ボサノヴァとの相性は昔から良かったのですか?

 それが全く(笑)。よく周りから「ボサノヴァもやってみたら」と薦められることが多くて、初めて作ってみたんです。小学一年の長男に何気なくこの曲を流してみたところ、シャカシャカ筆箱を振りながらいいリアクションだったので、「おっ、これはイケるかもしれない」と。コンサートというよりライブにふさわしい感じの曲ですね。

─「ダイアリー」は、ノスタルジックな旋律が魅力的です。

 長男には、毎日日記を書かせているんですね。ある時彼が、日記を書きながら目に涙を浮かべ「担任の先生と一年でお別れなんて寂し過ぎる」と言ってきたんです。彼の担任の先生は、厳しい中にも愛情に溢れる方なので、私もとても寂しくて。息子を成長させて下さった先生への感謝の気持ちも込めて、この曲を書きました。当初は先生のお名前をそのままタイトルにしていたぐらい。さすがにそれはイカンでしょうと(笑)、「ダイアリー」になりました。

─二人の息子さんたちの言葉や反応がダイレクトに、高嶋さんの創作に反映されているのですね。

 それはもう、今の私のプライベートの全ては子育てなので。彼らから受ける影響は図りしれないですね。ラストに入れた「サンビスタ」も、4歳の次男から「踊れる曲を作って!」とせがまれて作った曲。うちの次男は口が悪くて、ホントに親の顔が見てみたいんですけど(笑)。彼は葉加瀬太郎さんの「情熱大陸」が大好きで、いつも家の中で聴きながら踊りまくってるんですよ。「ママの曲じゃ踊れねェ!モジャモジャさんみたいな曲がいい」と言われ、創作意欲に火が付きまして。結果、弾くのが超難しいこの曲が誕生しました(笑)。

─「サンビスタ」は、コンサートでも相当盛り上がるのでしょうね!個人的には、ハイライトで聴きたい曲です。

 激し過ぎやしませんか(笑)?!ハイライトというよりもはやオーラスのような盛り上がりをみせる曲ですが、ノリノリで一体感があり、もの凄く楽しい収録でした。コンサートでは、お客様にも踊りながら楽しんで頂けたら嬉しいですね。


絵本「オーシャン・ブルー〜ORCA〜」より


─9月からはツアー『COLORS』がスタートします。12人のヴァイオリニストによる驚きの演出を始め、客席をワッと沸かせ笑顔にする高嶋さんのコンサートは、多くのファンが心待ちにしています。

 お客様にどんな気持ちになって頂きたいかを考えることは大好きで、得意だとも思います。演出の全てを一新させることも大切かもしれませんが、お客様が喜んで下さった過去の演出や楽曲も残しつつ、さらにグレードアップした内容でお届けします。会場が沸く、12人のヴァイオリニストならではのアノ演出も仕掛けたいですね。それまでは本作を聴いて頂きながら(笑)、楽しみに待っていて下さい!

─ツアーの他にも、10月にはバギーコンサートも。高嶋さんのコンサートになかなか行けないママにとっては嬉しいお知らせですね。

 "0歳児から楽しめる親子のための音楽フェス"がコンセプトで、今年で6回目を迎えます。子育て真っ最中のママたちは、どうしても自分の楽しみは後回し。忙しいママ達も、ぜひお子さんと一緒に気軽に音楽を楽しんで下さい。親とは、我が子の才能や適性を見つけてあげたいと願うもの。「あら、ウチの子音楽聴いて嬉しそう」だったり、「ウチの子ずっと寝ているわ」でもいい(笑)。お子さんの反応を見るのも楽しいと思いますよ。

─それにしても、仕事と子育てを両立させる高嶋さんの日常はフルスロットル!Twitterやブログから伝わってくる、ふり幅の大きな日々と分刻みのスケジュールに驚愕です。

 もうホント、驚愕のふり幅ですよ(笑)。サントリーホールなどでのコンサートの1時間後には、自宅で息子たちのお弁当用にから揚げ揚げていたりしますからね。でも結局、手も頭も心も休めない性分なんでしょうね。昔から「大統領のように働き、王様のように遊ぶ」主義でいきたいものだと考えていて。今は専ら仕事に傾いていますが、子供といれる時は全力で遊んでいます。息子たちとテニスやドッヂボールする時も容赦しないので、長男からは「大人げない」とよく言われます(笑)。

─走り続けながら常にベストを尽くす高嶋さん。最後に高嶋さんが描く "近い未来"のビジョンを教えて頂けますか?

 本作『COLORS〜Best Selection〜』を作るにあたり、レーベルを移籍して環境が変わったことも含め、今の自分にとってベストの挑戦ができました。オリジナル曲を生む苦しみと喜びを改めて実感できて、アイディアと可能性も広がりました。これまでは、ヴァイオリンの美しくて優しい音色を追及したいと考えていましたが、激しさや強さを思い切って表現したことで、ヴァイオリンに対する向き合い方も変わりました。自分なりに表現の殻を破れたなって。お客様の反応が直接的にわかるコンサートと違い、不特定多数の方の耳に届くCDというものは、皆さんが普段どんな音楽を好むのかも、どんなシチュエーションで私の作品を聴いて下さるのかもわからない。不安も大きいのですが、もしアルバムの中でこの曲なんかいいなって感じて頂いたり、コンサートに行ってみたいなと思って頂けたら、こんな嬉しいことはないです。本作に対する皆様からの声を受け止めて、さらにアイディアを広げ、なおかつ自分に合ったスタイルを突き詰めながら、前へ進んでいきたいです。

 公演情報


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