ハーシュ・トリオ、聖地で至芸極まれり
2012年7月28日 (土)
不動のフレッド・ハーシュ・トリオ
聖地ヴィレッジ・ヴァンガードで至芸、極まれり!
フレッド・ハーシュというピアニスト。昨今彼を語る際、2008年の闘病からの復活劇にとかく話が集中しがちではあるのだが、これほどまでに素晴らしいピアニストを前にして、そんな過去の出来事をいつまでも穿り返していたって、それは不毛というもの。なにせハーシュ自身が、まるで何事もなかったかのように、今も昔も変わらない美しく精悍な音を紡ぎ続けているのだから。
2010年の11月30日から12月5日にかけて、丸々1週間、計12回のソロピアノ・セットをヴィレッジ・ヴァンガードで行なったハーシュ。このときの模様は、千秋楽の最終2ndセットを収録した『Alone At The Vanguard』として翌年アルバム・リリースされ、そのあまりにも生々しく美しいピアノの息遣いに一同言葉を失いかけたもの。
最近のハーシュは、ある種覚醒されたかの如くギラギラとした目つきで、精力的にライヴ活動を行なっているのだそうだ。そのことを訊くにつけ、申し分のないキャリアとスキルを持つ大宗匠が、まるでトイピアノに夢中になる赤子のように無邪気に八十八鍵と戯れる姿を想像してしまい、思わずニンマリ。
「老うごとに 無垢になりけり 芸の粋(すい)」と詠んだのは、かの持統天皇...でも何でもなく、パッと我が頭に浮かんだ低調な美辞麗句に過ぎないのだが、要するにそうした類の詩想醇正さを今のハーシュに強く感じずにはいられないのだ。
おそらく、傍らのジョン・エイベア、エリック・マクファーソンも同じような感覚を憶えたのではないだろうか? 三者が初めてスタジオで顔を揃えた『Whirl』、さらには『Everybodys Song But Our Own』という直近2枚のトリオ・アルバムとはまた質を違う凛々しさや深遠さ、あるいは愉しさや悦びというものが、ここ最近のハーシュの演奏には分かりやすいほどに溢れ出ている。といった具合に、彼らがそこにささやかな感動すら憶えていても全く不思議ではない。その位、ハーシュ、ひいてはハーシュ・トリオの現在のアンサンブルには、新味且つ神懸かり的な凄みを見ることができる。さてそれを、このたびリリースされるライヴ盤『Alive At The Vanguard』で、皆さんにしかと確かめていただきたく思う所存なのだ。
今年の2月7日から6日間に亘ってヴィレッジ・ヴァンガードで行なわれたフレッド・ハーシュ・トリオによるライヴ。その記録がいよいよ音盤化される。
収録曲
- 01. Havana
- 02. Tristesse (for Paul Motian)
- 03. Segment
- 04. Lonely Woman / Nardis
- 05. Dream of Monk
- 06. Rising, Falling
- 07. Softly As In A Morning Sunrise
- 08. Doxy
ディスク 2
- 01. Opener (for EMac)
- 02. I Fall In Love Too Easily
- 03. Jackalope
- 04. The Wind / Moon and Sand
- 05. Sartorial (for Ornette)
- 06. From This Moment On
- 07. The Song Is You / Played Twice
Fred Hersch (p) / John Hébert (b) / Eric McPherson (ds)
Recorded Live at the Village Vanguard, NYC
February 7th-12th, 2012
スタンダードに、アメリカン・ソングブック、そして、迸る才気が新しく開かれたチャクラからのエネルギーと結び付いて生まれた(かのような)息を呑む7曲のオリジナル・コンポジション。2枚組全15曲というヴォリュームにもハーシュの充実ぶりは顕れているのかもしれない。いずれにせよ、この瞬間を目の当たりにすることができたニューヨークのジャズ・ファンは相当な果報者だ。
冒頭のオリジナル「Havana」からトリオのグルーヴは大回転。柔らかい愛のさざ波情趣が一転、大海のようなお化けアンサンブルへと膨らみ広がっていく様は圧巻の一言。ボディ&ソウル全てを豪快になぶられ揺さぶられる。
昨年11月に亡くなったポール・モチアンに捧げられし「Tristesse」。2010年、ドリュー・グレス(b)を加えたトリオで、同じくここヴァンガードに出演していたのが、各位昨日の事のように想い出されるのではないだろうか。 ”生きる”ということに執着し今が在るハーシュだからこそ、その悲しみは深く果てない。ただし、ハーシュはその胸の内をこう表現するに違いない。「偉大なドラマーが月に還ったというだけなんだ」。祈りのような旋律がゆっくりと天の原に放たれる。
パーカーのビバップ・チューン「Segment」、1990年発表のエヴァンス・トリビュート・アルバム『Evanessence』に収められた「Lonely Woman / Nardis」、ロリンズのオリジナル・ブルース「Doxy」、同じくロリンズ所縁の「Softly As In A Morning Sunrise」、6日間の全セットに組み込まれた、愛しのモンク ”一期一会セッション” からの(ややマニアックな)名演「Played Twice」。
さらには、夢枕に立つモンクが曲作りに対しての金言を残したことで、わずか20分足らずで書き上げることができたというオリジナル「Dream of Monk」。ハーシュにとって永遠のアイドルである彼らのシルエットが愛を込めて描き出されれば、そこは”あの日のヴァンガード”へとあっという間にタイムスリップ。
「Opener」での”E-Mac”ことエリック・マクファーソンの立回りもお見事。エルヴィン〜トニー直系とも言える、力感と鋭さを弾力性で割った太鼓が縦横無尽に空間を奔走。鳥獣戯画シクヨロのミステリアス・ダンス「Jackalope」、オーネット・コールマンへのエレガントなオマージュ「Sartorial」はどちらもハーシュのオリジナルで、こちらもリズム陣の躍動ぶりが手に取るように伝わる逸演。耳タコかもしれないが、マクファーソンのシンバルはやはりスゴイ。正確無比なリズムを刻みながらも至極肉感的なのは、その芸の高さが成せる業でしかない。
ミュージカル・ソングでおなじみの甘い狂詩曲「The Song Is You」、そこに続く前述のモンク「Played Twice」にインプロヴィズしたセンセーショナルなアンサンブルをもって、春の予感漂う、至福のヴァンガード公演に幕が下りる。
「自分にとってベストのレコードになるかもしれない」と語るハーシュ。彼にはやはり、聖地ヴィレッジ・ヴァンガードの持つヴァイブスがよくフィットしており、またエイベア、マクファーソンとの波長にも、微塵のズレすら感じさせない、相思相愛のリレーションシップがある。そのどちらもが、ここで究極的なフェーズに達し、そして振り切れた。『Alive At The Vanguard』を聴けば、あらためてそのことを思い知らされるはずだ。
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2010年の11月30日から12月5日にかけ、丸1週間トータル12回のソロ・ピアノ・ステージが、ニューヨークの名門ジャズクラブ「ヴィレッジ・ヴァンガード」で行なわれた。ハーシュ曰く、アドレナリンがとめどなく溢れ出す所謂「ゾーンに入った」 千秋楽の最終2ndセットがそのまま収められることとなった、実況録音アルバム『Alone At The Vanguard』。一音一音が流れ、転がり、跳ね、揺蕩う・・・フレッド・ハーシュのピアノは、その瞬間をいじらしくも獰猛に生命を焦がす、生き物そのものだ。





