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【特集】 ”男たち”のドロくさい本音

ROLLING STONES STORE

2011年12月17日 (土)


SOME GIRLS



 『ライブ・イン・テキサス '78』でひとしきり盛り上がり、さてお次は”ナオンのデラ盤”へとスムーズに洒落込もうとしていた転石党....そうはいくかとキーフ・リフ・ハード・フロム・オンライン。鬼のストーンズ、73年「ブリュッセルでご乱心」のリマスター音源が公式ダウンロード販売という大事件発生。心臓が止まるかと思った転石党、しばし5年さかのぼる。ボブクリのこねくりがさらにサウンド・ディテールを際立たせまくり、美しき野獣の決壊にゴクリと息を呑む伝説の一夜、「ミッドナイト・ランブラー」が、「ストリート・ファイティング・マン」が今こそアタシに牙を剥く....とは言え、水を差されたワケではない。「プチ整形してキレイになった」とウワサの元カノにちょっと会ってきただけ。ま、たしかにコーフンしたけど、ソレはソレ、コレはコレ。   

 2011年師走の主役(ヒロイン)は、やはりコチラ。『女たち』 スーパー・デラックス・エディション。注目、冬のボーナスコンテンツは、さしずめ全身整形のごとく研磨されシェイプされ、一分のスキなくブラッシュアップされた、かつて知ったる別のカオ、別のキミ。「ドント・ビー・ア・ストレンジャー」とはむしろこっちのセリフだ。ミーハー装いヒタ隠しにしてきた、憂いと哀愁に満ちたプロフィール。いよいよもって、本当のオンナを知るときがきた。




 
Some Girls: 女たち【Super Deluxe Edition】

 
 Some Girls: 女たち【Super Deluxe Edition】
 ユニバーサル UICY91799 2011年12月14日発売 DVD付き 限定盤

【収録内容】
ディスク 1:CD
1. ミス・ユー 2. ホエン・ザ・ウィップ・カムズ・ダウン 3. ジャスト・マイ・イマジネーション 4. サム・ガールズ 5. ライズ 6. ファーラウェイ・アイズ 7. リスペクタブル 8. ビフォー・ゼイ・メイク・ミー・ラン 9. ビースト・オブ・バーデン 10. シャッタード

ディスク 2:CD
1. クロディーヌ 2. ソー・ヤング 3. ドゥー・ユー・シンク・アイ・リアリー・ケア 4. ホエン・ユーアー・ゴーン 5. ノー・スペア・パーツ 6. ドント・ビー・ア・ストレンジャー 7. ウィ・ハド・イット・オール 8. タラハシー・ラッシー 9. アイ・ラヴ・ユー・トゥー・マッチ 10. キープ・アップ・ブルース 11. ユー・ウィン・アゲイン 12. ペトロール・ブルース 13. ソー・ヤング [ピアノ・ヴァージョン] (日本盤のみのボーナス・トラック)

ディスク 3:DVD
1. リスペクタブル(プロモーション・クリップ)  2. ファーラウェイ・アイズ (プロモーション・クリップ) 3. ミス・ユー (プロモーション・クリップ) 4. ビースト・オブ・バーデン (ライヴ・イン・テキサス '78) 5. シャッタード (ライヴ・イン・テキサス '78) 6. ダイスをころがせ (ライヴ・イン・テキサス '78)

ディスク 4:7インチ・レコード
1. ビースト・オブ・バーデン(A面) 2. ホエン・ザ・ウィップ・カムズ・ダウン(B面)




Super Deluxe Edition
【Super Deluxe Edition】 仕様

・ 7インチ・シングル(発売禁止となった幻の米盤スリーヴを再現)
 A面:ビースト・オブ・バーデン
 B面:ホエン・ザ・ウィップ・カムズ・ダウン

・ ハードカバー・ブック(ヘルムット・ニュートンによる未発表写真をフィーチャーした
 カラー100P以上に及ぶ豪華本)

・ ポストカード×5枚と、それを収める封筒

・ 横長ポスター

・ メンバーのポートレイト

・ 英文ライナー(アンソニー・デカーティス)訳
 解説(寺田正典)、
 歌詞対訳を掲載した日本語ブックレット






 
Some Girls: 女たち 【Deluxe Edition】

 
 Some Girls: 女たち 【Deluxe Edition】
 ユニバーサル UICY10027 2011年12月7日発売 

【収録内容】
ディスク 1:CD
1. ミス・ユー 2. ホエン・ザ・ウィップ・カムズ・ダウン 3. ジャスト・マイ・イマジネーション 4. サム・ガールズ 5. ライズ 6. ファーラウェイ・アイズ 7. リスペクタブル 8. ビフォー・ゼイ・メイク・ミー・ラン 9. ビースト・オブ・バーデン 10. シャッタード 

ディスク 2:CD
1. クロディーヌ 2. ソー・ヤング 3. ドゥー・ユー・シンク・アイ・リアリー・ケア 4. ホエン・ユーアー・ゴーン 5. ノー・スペア・パーツ 6. ドント・ビー・ア・ストレンジャー 7. ウィ・ハド・イット・オール 8. タラハシー・ラッシー 9. アイ・ラヴ・ユー・トゥー・マッチ 10. キープ・アップ・ブルース 11. ユー・ウィン・アゲイン 12. ペトロール・ブルース 13. ソー・ヤング [ピアノ・ヴァージョン] (日本盤のみのボーナス・トラック)







Some Girls Live In Texas '78

「女たち」発表後の1978年北米ツアー、そのライヴ映像が遂に公式化!
 ザ・ローリング・ストーンズの絶頂期ともいえる1978年北米ツアーのライヴをとらえた歴史的ドキュメントが、遂に世界初公開となる。同年7月18日、テキサス州フォート・ワースのウィル・ロジャース・メモリアル・センターでのライヴ・パフォーマンスを全曲収録! オリジナル16mmフィルムからデジタル・リマスタリング、さらにはボブ・クリアマウンテンによるリミックスを経て、未発表だったライヴ映像の封印が解かれたことは、ロック史に残るひとつの事件と言っていい。

レコードコレクターズ 2012年1月号

レココレ 2012年1月号 【特集】 ローリング・ストーンズ『女たち』
 『女たち』発表の1978年当時、イギリスではパンク〜ニュー・ウェイヴが台頭し、アメリカではディスコが猛威を振るっていた時代。ミックはニューヨークのクラブに通いながら、パンク・ムーヴメントも当然意識していたでしょう。ドラッグ問題でキースが逮捕されるなど、バンドを巡る状況が良いとはいえない中で、時代のエッセンスを強引に自分たちのものにしつつ、後にも繋がるスタイルを持ったアルバムを作り上げたのでした。この時代ならではのストーンズの魅力に迫ります。




 1977年10月から翌78年3月まで、パリはパテ・マルコーニにあるEMIスタジオで断続的に行なわれた ”サム・ガールズ・セッション” または ”ノーモア・ファスト・ナンバーズ・セッション”は、ロン・ウッドにとってストーンズ入団後初の公式セッションとなる。ゆえに、忙しなかった前作『ブラック・アンド・ブルー』のレコーディング時に比べてそのプレイには余裕やバリエの幅広さが感じられ、「ストーンズのロニー」(とは言え、正式なメンバー契約を結ぶのはここから約15年後となるのだが...)として、彼らと共にロックンロール極道人生をいよいよ歩まんとする、そんな決意表明とそこへの期待に満ちた踊姿が窺える。

 十八番のスライドやペダル・スティールは勿論、「シャッタード」では手数の多いベースを弾き、ライブにおいては酒とタバコで焼け爛れた最高のコーラスをキースと分け合うなど、全てを出し惜しみすることなく披露。「ビースト・オブ・バーデン」でも顕著な、「キースの双子の弟」とまで称されるアニキとのギター・コンビネーションは、この『女たち』において完成形をみることともなった。また、当時のレコーディングやツアーのサポート・ピアニストにイアン・マクレガンの起用をミックに推薦したのは言うまでもなくフェイセズの盟友ロニー、さらにサイモン・カークを「シャッタード」に参加するよう促したのもロニー。陽気で人なつっこいその人柄ゆえの顔の広さも、このセッションに一花添える結果になったということをきちんと付け加えておきたい。


Rolling Stones


 「ドゥー・ユー・シンク・アイ・リアリー・ケア」、「ノー・スペア・パーツ」、「キープ・アップ・ブルース」、「ホエン・ユー・アー・ゴーン」など、特に今回公式に蔵出しされるボーナス・ディスクの12曲(国内盤のみ13曲)を聴けば、このアルバム、ひいては”サム・ガールズ・セッション”におけるロニーのハッスルぶりや貢献というものがあらためて理解できるのではないだろうか。

 惜しくも当時の本篇アルバムからは外されてしまったが、のちに『刺青の男』に収録されることとなる「黒いリムジン」は本セッションで録音された曲であり、ロニーが作曲&ブルースハープで参加、またはシングル盤「シャッタード」のフリップサイドに収録される「ターニング・トゥ・ゴールド」においてもグリマー・ツインズと並んでその名がクレジットされているのは有名だろう。

 バンドのスチール(↑)を見れば一目瞭然。アニキの疲弊モードを尻目に、堂々”TRS78”のほぼセンターを陣取るほどモチベは高かった、ということ。その後、自身のソロ『ギミ・サム・ネック』ニュー・バーバリアンズ興行へとつながっていくことからもそれは明らかだろう。『女たち』 スーパー・デラックス・エディションおよびデラックス・エディション、ロニー・アングルで聴き込むのもまた一興。  


Rolling Stones


 今回の『女たち』 松・竹盤、最大の目玉、”サム・ガールズ・セッション”のアウトテイク蔵出し。昨年の『ならず者』デラックス同様、メンバー自らによるリワーク&ボブ・クリアマウンテンによるリミックスが施されている。大量のマテリアルが眠ったまま(あるいは地下流出)とされるこのセッションの特性を考えると、ここに蘇生された12曲はまさに厳選に厳選を重ねた音源だけを集めたもの、と捉えることができるかもしれない。

 大方の曲に関しては、地下流出によってその骨格・輪郭を大昔より人目に晒してはいるのだが、リワーク・レベルが大きいものに限っては、もはやピッカピカの新曲を聴いているかのような、不思議な気分にさせられてしまう。タイトルはおろか歌詞も大幅に書き換えられ、幾らかオフ気味だったシュガー・ブルーのハーモニカも全編クリアに響きわたり、さらにはドン・ウォズがベースを重ねている「ドント・ビー・ア・ストレンジャー」(ワーキング・タイトルは「Do You Get Enough」)などはその代表例だろう。メロディとリズムが据え置きであるにもかかわらず、一聴したときのこの鮮度の高さは一体何なのか? そこには、リニューアルという魔法がいかに効果絶大であるかをよく知るストーンズとボブクリの智恵と経験がふんだんに詰め込まれている。ストーンズの驚異のレコーディング・メソッドとその極意を窺い知るべし。


Rolling Stones


 一方で、キースのうねりまくるリフに燃える「Munich Hilton(Rotten Roll)」、「ビースト...」路線のセクシーなメロウ・ミディアム「What Gives You The Right」、キチンとした歌詞が乗ることを個人的にかなりたのしみにしていた「Muck Spreading」ほか、「I Need You」、「Everlasting is My Love」、「Jah is Not Dead」なんかも収録されていれば...と欲かきまくりの感想を密かに抱いていることも事実。

 ただ、それを言ったらキリがないのは確かなわけで、むしろ「パンクだディスコだ騒いでも、オレたちゃ結局ブルースやカントリーが大好きなんだ」という今昔ストーンズの意志を(勝手に)汲めば、今回のボーナストラックはかなりそこに準じた内容となっている、とそんな気がする。都合ブルース4曲に、カントリー(カントリー調含)3曲...まことしやかルーツ・ミュージックの宝庫ではないか! ニューヨーク仕込みの「女たち」を作った”男たち”のアーシーな本音が見え隠れする、まさかのエキセントリック・ディスク登場!? 

 さて、本篇10曲については、『レコードコレクターズ 2012年1月号』(チャーリーのインタビューは必読!)をはじめすでに各紙媒体の「サムガ特集記事」で事細かな解説が為されているためここでは割愛させてもらうが、ボーナス・トラックとして収録された、そんな ”アーシーな本音” 13曲についての簡単なノートを本稿末尾に添えさせていただこうかと思う。  









  • 【特集】 1978年のストーンズ

    【特集】 1978年のストーンズ

    『女たち』発表直後の78年北米ツアーを捉えたストーンズの歴史的ライヴ映像、ついに発売! ハンサムボーイズよ何処へ!?

  • 【解剖】 『メインストリートのならず者』

    【解剖】 『メインストリートのならず者』

    『ならず者』豪華箱の登場で血沸き肉踊るのはファンだけじゃない。ミックもキースもあの夏のコートダジュールにタイムスリップ。やはり本編18曲のスルメぶりがあってこその未発表コンテンツだということ・・・・・・

  • 「レディジェン」 追加映像たっぷり!

    「レディジェン」 追加映像たっぷり!

    ボーナス・コンテンツたっぷり追加の1973年絶頂転石実況映像・・・・・・

  • ストーンズ シングルBOX!

    ストーンズ シングルBOX!

    70年代以降、ローリング・ストーンズ・レーベルより発売された45枚のシングルをまとめてボックス化!初CD化を含む貴重楽曲も収録・・・・・・

  • スーパーヘヴィ アルバム発売!

    スーパーヘヴィ アルバム発売!

    ミック・ジャガー、デイヴ・スチュワート、ジョス・ストーン、ダミアン・マーリー、A.R. ラフマーンによる「スーパーヘヴィ」登場・・・・・・

  • 【特集】 キース・リチャーズの初ベスト

    【特集】 キース・リチャーズの初ベスト

    待ってましたのリマスターに加えて、あの「Hurricane」も収録。キーフ初の公式ベスト盤リリースを祝し、もう1枚の ”自己満ベスト” の密造法もこっそり伝授・・・・・・

  • スチュに届け、友愛のブギ

    スチュに届け、友愛のブギ

    転石サウンドの屋台骨を支えたピアニスト、イアン・スチュワートのトリビュート盤が到着。ストーンズ・メンバーをはじめ、ベン・ウォーターズの呼びかけに集った心の友たち。ビル・ワイマンも参加・・・・・・

  • 【特集】 ピーター・トッシュ

    【特集】 ピーター・トッシュ

    ピーター・トッシュの『解禁せよ』、『平等の権利』が、ダブ・プレート、別テイクなどを追加した2枚組レガシー盤で登場。せっかくなので盛り上がってみました・・・・・・

  • SHM-CD アンコールプレス!

    SHM-CD アンコールプレス!

    洋楽名盤紙ジャケSHM-CDの939タイトルが、初回限定出荷のアンコールプレス・・・・・・



 


 1977年、麻薬所持容疑によってトロントに拘留されていたキースが、裁判の合間にプライベート・レコーディングしていたブルース、カントリーの愛奏曲。録音はピアノやギターの弾き語り、もしくはイアン・スチュワートのピアノ伴奏付き、という至ってシンプルな形態で行なわれ、そのしみじみとしたムードが当時のキースの言われない心中を物語っているかのようで、多くのファンが胸をえぐられた。このときの音源は「A Stone Alone」と題されたブートレグとなって81年頃に出回り、その内容のあまりの生々しさから「これぞキースの真のファースト・ソロ・アルバムだ!」と声を大にする者も多数現れた。

 なお裁判終決および北米ツアー終了後、『Emotional Rescue』のためのコンパス・ポイント・スタジオ・セッションに入ってもしばらくの間キースは精力的にソロによる楽曲を録り貯めていき、その中の「Let's Go Steady」、「Apartment No.9」は、79年のロン・ウッドとのニュー・バーバリアンズ興行でも披露された。また同年のクリスマスには、ジミー・クリフのレゲエ・カヴァーとなる記念すべき初ソロ・シングル「The Harder They Come」を発表している。

 こちらでは、この時期にキースがその嗜好を丸出しにして採り上げたブルース、カントリー、ポピュラー・スタンダードの古典曲をご紹介。今回のデラックス盤ボーナス・トラックに収められた「We Had It All」をはじめ、デビュー当時から、いやむしろ音楽に熱中し始めた頃から少しも変わらないキースのルーツ・ミュージックへの傾倒ぶりをあらためて窺い知る、そんなアイテムがズラリと並んだ。

 まずはその「We Had It All」。マッスル・ショールズのスワンプ系シンガー・ソングライター、ドニー・フリッツが書いたカントリー・バラードだが、キースのヴァージョンは、「Drift Away」(地下音源ながらストーンズもカヴァー済)でおなじみの黒人シンガー、ドビー・グレイによるカヴァーを参考にしていると言われている。



Drift Away / Loving Arms
Dobie Gray
「Drift Away / Loving Arms」


 シカゴ・ブルース・ピアニスト、ビッグ・メイシオの戦前ブルース・クラシック「Worried Life Blues」では、「友達はみんなオレを置いてどこかに行ってしまった...」という切ない歌詞に、当時トロントで足留めを強いられていたキースの心境を否が応にも重ねてしまう。ピアノはイアン・スチュワートによるもので、相も変わらずの達者なブルース・ピアニストぶりにほろ酔い必至。


King Of Chicago Blues Piano
Big Maceo
「King Of Chicago Blues Piano」


 カントリー畑出身の兄弟コーラス・グループ、エヴァリー・ブラザーズのレパートリーもキースのお気に入り。「All I Have To Do Is Dream」で当時彼らのことを知った輩もきっと多いはず。独特のタメの効いた節回しで唄われるそのカヴァーは、非公式ながらキース・ヴォーカル・ナンバーにおいて五本の指に入るソウルフルな仕上がりと言えるだろう。のちの81年には「Oh, What A Feeling」、「Cathy's Clown」なども吹き込んでいる。


Essential Everly Brothers
Everly Brothers
「Essential」


 「Worried Life Blues」と同じくニュー・バーバリアンズ興行でも披露された「Apartment No.9(悲しみのアパート)」はタミー・ウィネットの1967年のデビュー・ヒット。さらに「Sing Me Back Home」はマール・ハガード、「Say It's Not You」はウィネットの夫君でもあるジョージ・ジョーンズをそれぞれオリジナルとするカントリー&ウエスタンの有名曲だ。「Say It's Not You」は、94年にジョーンズのトリビュート・アルバムに参加した際にも再び採り上げており、「キースのことを知らなかった」というご本人との滋味深いデュエット・セッションを堪能することができる。


Your Good Girl's Gonna Go Bad
Tammy Wynette
「Your Good Girl's
Gonna Go Bad」


20 Greatest Hits
Merle Haggard
「20 Greatest Hits」


Best of
George Jones
「Best of」


 ホーギー・カーマイケルとネッド・ワシントンによって1938年に書かれたポピュラー・スタンダード「The Nearness of You」は、古くはグレン・ミラー楽団から、ボブ・マニング、シーナ・イーストン、近年ではノラ・ジョーンズに至るまで多くのシンガーに唄い継がれている名曲。ストーンズにおいては、トロントのキース・ソロ・レコーディングから四半世紀を経た2004年の「リックス・ツアー」の際に突如披露され、その音源は”レア・ナンバー”として『Live Licks』にも収録された。

 そのほかこの時期に録音されたものとしては、ジェリー・リー・ルイス「She Still Comes Around」ジュディ・ガーランドの歌唱でも知られるミュージカル・スタンダード「Somewhere Over The Rainbow」、エルヴィス・プレスリー「Don't Be Cruel(冷たくしないで)」、さらにトロント音源ではないが、こちらもバーバリアンズ興行のセットリストに食い込んだニール・セダカのヒットでおなじみの「Let's Go Steady」(サム・クックではなくアーサー・コンレイのヴァージョンを習作としている説が多数)などがある。いずれのマテリアルも発掘音源として公式に蔵出しされる見込みはかなり低そうだが、キース自身のMindless Recordsから何かのタイミングに合わせて突如リリースされることを願って....



The Hits
Jerry Lee Lewis
「The Hits」


I'm Living Good 1964-1974:The Soul Of Arthur Conley
Arthur Conley
「The Soul of Arthur Conley」


 
1. Claudine クロディーヌ
   (Jagger / Richards)

 「クロディーヌは刑務所に逆戻り」という地下流出時代からおなじみのリリック。フランス人女優・歌手のクローディーヌ・ロンジェの恋人射殺事件をミック流に茶化して唄ったこのロックンロールは、『女たち』はおろか次作『エモーショナル・レスキュー』に収録される寸前においても、当然ながら「待った」がかかった、謂われある1曲。スチュのスイングしまくる玉転がしピアノをサポートに得て一気にトップスピードに乗るバンド・アンサンブル。キースのガチャガチャ・ギターにもエグられる。今回のデラックス国内盤のボートラ解説を執筆された元レココレ編集長・寺田正典さんも指摘しているが、この曲は当初『エモーショナル・レスキュー』制作用のコンパス・ポイント・セッションで録音されたものと見做されていたが、このたびの蔵出しで、実は”サム・ガールズ・セッション”で作られていたということが明らかにされた。

Mick Jagger(vo,acoustic g)/Keith Richards(electric g,harmony vo)/Charlie Watts(ds)/Ronnie Wood(acoustic g)/Bill Wyman(b)/Ian Stewart(p)
2. So Young ソー・ヤング
   (Jagger / Richards)

ミック・ジャガー
 1994年の「ラヴ・イズ・ストロング」ヨーロッパ盤CDシングルに「Non-LP Track」としてカップリング収録されていた本曲。クレジットにもある通り、チャック・リーヴェルのピアノをオーバーダブしており、ソロおよび前面で聴かれるブルース・ピアノはそのリーヴェルによるもの。歌詞とにらめっこしていると「彼女とデパートで買い物 バーニーズでブーツを買った.....彼女は若過ぎる.....心を奪われたら最後、きっと取り戻せない」という一節。マンハッタンの高級デパートで買い物デートをするミック、そのお相手こそ当時の新恋人ジェリー・ホールに違いない。摩天楼で無敵のロックンロール・ライフを謳歌するミックにとって当時唯一振り回されたと思しき”女”、その心中お察し申し上げたい”男”の本音ブルース。もうひとつの「女たち」物語としても秀逸。

Mick Jagger(vo)/Keith Richards(electric g,harmony vo)/Charlie Watts(ds)/Ronnie Wood(electric g)/Bill Wyman(b)/Ian Stewart(p)/Chuck Leavell(p)
 
3. Do You Think I Really Care
   ドゥー・ユー・シンク・アイ・リアリー・ケア
   (Jagger / Richards)

 ブルース同様、”もうひとつの「女たち」”の世界を築く上で重要なファクターとなっている「カントリー」という、男の本音。ペダル・スティールをテキパキ弾きこなせるロン・ウッドの加入によって、ストーンズはアル・パーキンスなどの外部発注に頼ることなくメンバーのみで素晴らしいカントリー・テイストを仕込むことができるようになった。「Yellow Cab」というワーキング・タイトルが付いていた本曲は、「デッド・フラワーズ」をよりピッチの速い8ビートで演奏したかのような、スカッと爽やか! カントリー・ロック。ロニーのスティール・ギターが例に漏れず大活躍。くわえタバコでラップ・スティールを渋くキメる、あるいはストリング・ベンダー付きのテレキャスから味わい深い音を鳴らすロニー。その姿はもはやストーンズには欠かせないシルエット....そんなことみんな百も承知之助。

Mick Jagger(vo,acoustic g)/Keith Richards(acoustic g,harmony vo)/Charlie Watts(ds)/Ronnie Wood(electric g,pedal steel)/Bill Wyman(b)/Ian Stewart(p)
4. When You're Gone ホエン・ユー・アー・ゴーン
   (Jagger / Richards / Wood)

 シカゴ・スタイルでザックリと刻み合うバーバリアンズのギター・コンビネーションに、ミックのブルースハープが絡めば全てが世界。一聴してすぐに「黒いリムジン」との双生児であることは判るが、こうした折り目正しきブルース・チューンがなぜ1曲も本篇に収められることがなかったのか? そこが「女たち」最大の謎でもある。77〜78年という時代、ブルースに訴求力がなかったということは全くない。むしろストーンズにとっては、俗世とかけ離れた処に建つ神聖な母屋のようなものであるハズなのに。

Mick Jagger(vo,g,harp)/Keith Richards(g)/Charlie Watts(ds)/Ronnie Wood(g)/Bill Wyman(b)
 
5. No Spare Parts ノー・スペア・パーツ
   (Jagger / Richards)

ローリング・ストーンズ
 まさしく「愚か者の涙」直系、70年代半ば以降要所で作られてきた、泣きのミディアム。よく耳を澄ませていると、フックのコーラスは、当時のミックと現在のミックによる多重コーラスとなっているのが判る(...いや待てよ、キースか?)。イントロで裏拍から哀愁たっぷりにすべり込んでくるロニーのスティール・ギターもニクい。こちらもまたカントリー・テイストがたっぷりしみ込まれたミディアム・バラード。

Mick Jagger(vo,electric p,g,tambourine)/Keith Richards(acoustic p)/Charlie Watts(ds)/Ronnie Wood(electric g,pedal steel)/Bill Wyman(b)
6. Don't Be A Stranger
   ドント・ビー・ア・ストレンジャー
   (Jagger / Richards)

ローリング・ストーンズ
 タコライスをむさぼるサボテン野郎に愛想よく手を振ったかと思いきや、気付けば常磐ハワイアンセンターで湯上がりの風情。「ラグジュアリー」「スウィートハーツ・トゥゲザー」をコネクトする見事なパイプ役にして、ストーンズ流ワールド・ミュージック昇華術のハイセンスぶりをしっかりと見せつけられる、本ディスク中唯一のリズム絞りとなる1曲。シュガー・ブルーの伸縮自在のハーモニカ、ドン・ウォズの後のせサクサク・ベース、共にジャストであるのは言うまでもないが、最もこの極楽ムードに拍車をかけているのは、何を隠そうロニーの頭出しカウント。ウキウキしている様子がたちどころに目に浮かぶ。

Mick Jagger(vo,per)/Keith Richards(electric g,acoustic g,per)/Charlie Watts(ds)/Ronnie Wood(acoustic g)/Bill Wyman(marimba)/Don Was(b)/Sugar Blue(harp)/Matt Clifford(per)
 
7. We Had It All ウィ・ハド・イット・オール
   (Troy Seals / Donnie Fritts)

 一転、シュガーのハーモニカが郷愁感を煽り、キースの朴訥としたピアノの弾き語りが涙を誘う、ストーンズ流儀の ”夕やけ小やけ”。オリジナルは、マッスル・ショールズのシンガー・ソングライター、ドニー・フリッツが73年頃に書いたスワンピーなカントリーバラードで、10年程前に日本でも「名盤探検隊」シリーズの1枚としてCD化され話題になった(現在廃盤)。一説によると、キースが参考にしたのは、「Drift Away」の大ヒットでおなじみのドビー・グレイが73年に発表したヴァージョンということだ。こうしたキース主導のカントリー音源は、77年3月12、13日にカナダはトロントのサウンズ・インターチェンジ・スタジオでソロ・レコーディングされたものが中心となっているが、この曲に限っては、その後79〜80年のコンパス・ポイントでのセッションにおいても吹き込まれている。キースがアニタに贈った、最後のラブレター。

Keith Richards(vo.p,acoustic g,electric g)/Charlie Watts(ds)/Ronnie Wood(pedal steel)/Bill Wyman(b)/Sugar Blue(harp)
8. Tallahassee Lassie タラハシー・ラッシー
   (Slay / Crewe / Picariello)

 フレディ・キャノンの1959年デビュー・ヒットのカヴァー。元々のセッション・ソースは、 ”サム・ガールズ・セッション”ではなく、78年の北米ツアー終了後にハリウッドのRCAスタジオでレコーディングされたものになるという。この時期のショウでは、「レット・イット・ロック」、「スウィート・リトル・シックスティーン」、「ハウンド・ドッグ」といったアッパーなロックンロール古典をレギュラーセットに組み込んでいた(「ハウンド・ドッグ」は2公演のみ)だけあって、キレのよいアンサンブルがそのまま封じ込められている。「スウィート・リトル・シックスティーン」の代わりに本曲がセットリストに組み込まれていた可能性も大? オーバーダビングのハンド・クラッピンはドン・ウォズと、何とあのジョン・フォガティ! 手タレよろしく、そこに資本的価値アリ。   

Mick Jagger(vo,handclaps)/Keith Richards(electric g)/Charlie Watts(ds)/Ronnie Wood(electric g)/Bill Wyman(b)/Ian Stewart(p)/John Fogerty(handclaps)/Don Was(handclaps)
 
9. I Love You Too Much
   アイ・ラブ・ユー・トゥー・マッチ
   (Jagger / Richards)

ローリング・ストーンズ
 「I Can't Help It」というタイトルで地下界隈で知られていたハイ・スピード・ロックンロール。ストーンズにとっての王道というよりは、ストーンズ・チルドレンの「模倣的王道」とも言えそうな寸法に仕上がっているのが逆におもしろい。イントロのギター・コンビなどはまさしくストリート・スライダーズのそれに比類、とまで言い切ってしまったらファンから石を投げつけられるだろうか? 地下時代のミックスでは、フック・コーラスで瞬間的に”キースがミックを追い越す”箇所があるのだが、残念ながら今回それは確認できず。クレジットを見るかぎり、キースはピアノも弾いているらしいが...アコギの間違い? 

Mick Jagger(vo)/Keith Richards(electric g,harmony vo,p)/Charlie Watts(ds)/Ronnie Wood(electric g)/Bill Wyman(b)
10. Keep Up Blues キープ・アップ・ブルース
    (Jagger / Richards)

ローリング・ストーンズ
 「Some People Tell Me」が大幅リニューアル。ミックのヴォーカル・パートおよびハーモニカがオーバーダブされ、かつて知ったるドロだらけの大王ナマズ、このたびややアカ抜けた印象。それにしても、”男”の本音ブルース第三幕を耳にするにつけ、「いやはや『女たち』は大したブルース・アルバムだぜ」と爽やかに吐き捨てたい気分だ。もし、ブルースとカントリーだけで四方を固めた『女たち』というものが世に出ていたら....妄想は尽きない。

Mick Jagger(vo,harp)/Keith Richards(electric g.electric p)/Charlie Watts(ds)/Ronnie Wood(slide g)/Bill Wyman(b)
 
11. You Win Again ユー・ウィン・アゲイン
    (Hank Williams)

 2001年にキースもそのトリビュート・アルバムで唄っていた、ご存知ハンク・ウィリアムズの名カントリー・バラード。70年代後半のニューヨーク市井には、急進のディスコ/ブラコン、パンク、ヒップホップだけではなく、伝統的なカントリー&ウェスタンがポピュラー・エラのヒットソングなどに混じって数多垂れ流されていたのではないだろうか? また同時期、ドリー・パートンロレッタ・リンタミー・ウィネットリン・アンダーソンエミルー・ハリスドナ・ファーゴといった美人カントリー・シンガー百花繚乱の時代であったことも、ミック、キースの ”ナオン論”に火を点けた一因となっているのかもしれない。

Mick Jagger(vo,acoustic g)/Keith Richards(electric g,p)/Charlie Watts(ds)/Ronnie Wood(pedal steel)/Bill Wyman(b)/Ian Stewart(p)
12. Petrol Blues ペトロール・ブルース
    (Jagger / Richards)

 ライター・クレジットは「Jagger / Richards」となっているが、おそらく即興気味にピアノを弾きながら唄を乗せたミックの単独作と解釈してもさしつかえないだろう。ニュアンス的にはソノシート盤「Exile on Main St. Blues」に近いものと言えそうだが、当時の米大統領ジミー・カーターに物申すようなリリックなど、かなり社会風刺の強い曲になっている。タイトル通り、78年のOPEC による原油価格引き上げに端を発した「第二次オイルショック」に触れ、大手ガソリン会社を名指しでチクリ。ノベルティ寄りな小唄ではあるものの、スインギンなミックのピアノも含め楽曲そのもののクオリティは極めて高い。

Mick Jagger(vo,p)
 
13. So Young ソー・ヤング (ピアノ・ヴァージョン)
    (Jagger / Richards)

グリマー・ツインズ
 日本盤ボーナス・トラックにのみ収録(欧米はダウンロード配信)されている「ソー・ヤング」の別ヴァージョン。ピアノ&リズム隊の音だけを残し、ギターを完全オフにした「ピアノ・ヴァージョン」は、スチュとリーヴェルによる”擬似連弾”が聴きドコロ。今春リリースされた『Boogie 4 Stu』も本ヴァージョン制作のひとつの足がかりになったのではないだろうか。スチュ好きの多い日本のファンへ、ひと足早いストーンズからのクリスマス・プレゼント☆

Mick Jagger(vo)/Charlie Watts(ds)/Bill Wyman(b)/Ian Stewart(p)/Chuck Leavell(p)