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「レディジェン」 追加映像たっぷり!

ROLLING STONES STORE

2010年9月22日 (水)


ローリング・ストーンズ × レディース・アンド・ジェントルメン

 
 去る9月23日、フィルム・ライヴ「The Rolling Stones ”Ladies and Gentlemen” Film Live at Budokan」が行われた。ローリング・ストーンズの ”武道館擬似公演”。あの日のうらみを晴らすべく駆け付けた日本全国の紳士淑女は、いかなる想いでスクリーンに目を向けていたのであろうか? ストーンズ史におけるロスト・ジェネレーションの小僧にとっては大変興味深いところ・・・やはり、ジュリーは観に来たのだろうか? 座席によっては3D対応だったのだろうか? 色々と(わりとどうでもいい)細かい想像を張り巡らせてしまう。例えばW杯をパブリック・ビューイングで、お酒片手にみんなでワイワイと観戦することに慣れた実に我々らしい、誇り高き、健全で平等な娯楽文化への讃美だ。リビドーがおさえきれないのはステージの5人だけじゃない。「紳士淑女(平民のみなさん!)」とロック・スターに名指しされた我々だっておさえきれないものは、どう頑張ったっておさえきれない。おもらし寸前の激情と興奮。プラス、舌打ち連発のあまりある若さ。コレを観ているときぐらい、諸々が治外法権。先日の日本武道館は、そんな「約束された村落」と化した、はず。


 


 
Rolling Stones
 Ladies and Gentlemen
 WHD Entertainment IEBP10052 2010年10月13日発売 2.0ch (stereo) Dolby Digital/カラー 75分
 ストーンズのライブ絶頂期といわれている72年のライヴをとらえた幻のライブ映画「Ladies and Gentlemen」が40年の時を越えて遂に発売!最強のライヴ・バンドと言われているストーンズ、その歴史の中でもこの1972〜73年に行われたツアーは、まさに最強のライヴであったということはファンの間では有名で、ミック・ジャガーも後年この時期が最も音楽的に充実していた時期だったと語っている。そのため、翌73年に予定されていた日本公演がメンバーのさまざまなスキャンダル問題で中止になったことは、日本のファンにとっては悔やんでも悔やみきれない事件であった。まだ若く、いまやロックのスタンダードとなっている作品を彼らが数多く作っていたこの時代を収録した唯一と言っても良い正式なライブ映像がこの『Ladies and Gentlemen』である。映像・音ともに最新のリマスタリング技術によって蘇らせ、40年の時を越え、遂に公開されることとなった。ボーナス映像として、スイスはモントルーにおけるツアー・リハーサルの模様から「Shake Your Hips」、「Tumbling Dice」、「Bluesberry Jam」を収録。さらには、2010年のミック・ジャガー最新インタビューの映像なども併せて追加収録。





 アイ・シャドウを塗り、青シャツに白のジャンプ・スーツを纏う。纏うというよりは、そのいやらしき肉体を部分々々で出し惜しみするハーフ・ストリップのような誂えだ。29歳のミック・ジャガーはこんなにも美しかったのか。もはや、シンボルではなく、「セックス」そのもの。あるいは、文化系知的蛮行者の逆襲か?

 オープニングの「ブラウン・シュガー」で観るものを捉えて離さないのは、「ブラウン・シュガー、おまえはなんでそんなに美味いんだ」と美しく吼える淫獣のシルエット。まさにミックのためにある曲だろう。続けざま、ボビー・キーズ(sax)、ジム・プライス(tp,tb)のホーン・セクションが ”メンフィス・ロッキン・ソウル” なリフを煽動的にブロウする「ビッチ」で早やトップ・スピードに。「デッド・フラワーズ」、「ハッピー」、「無情の世界」ではミックとキースが1本のマイクを分け合う。中でも「ハッピー」における牛若丸キースの無茶ながなりっぷり、それを”危険”と判断したミックの強烈すぎるフォローが愉快痛快。本ツアーにおける見所のひとつでもある、ミック・テイラーのギター・プレイは、「むなしき愛」、「オール・ダウン・ザ・ライン」にてその饒舌さをたっぷりと味わえる。

 「ミッドナイト・ランブラー」でショウは、最初のエクスタシーを迎える。1969年のマジソン・スクエア・ガーデンとはまた種類の異なるアクメだろう。「きたら、すぐいる?」 どころの騒ぎではない。キースがゴリゴリともみ刻み、ミックが半裸の肢体を反り返せば、すべてが世界。涎まみれの舌も乾かぬうちに、「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」、「ストリート・ファイティング・マン」が首尾よく放り込まれる。本編最後のエクスタシーは、徐々に加速するハードボイルドな「ストリート・ファイティング・マン」だ。ミック・テイラーのえげつないほどのギター・ソロは翌1973年の欧州ツアーでその完成形をみる。それにしても、ミック・ジャガーは薄暗いステージ上で終始淫らなのだ。それはまちがいなく、ロックの歴史上最も美しい淫行であり、男女問わず誰もがその濃厚なグレコローマン・スタイルの演舞歌唱に性的興奮をおさえきれず、身悶えるはず。1972年のミック・ジャガー、セックスよりも淫靡、ドラッグよりもハイ也。


 
《収録曲》

01. ブラウン・シュガー
02. ビッチ
03. ギミー・シェルター
04. デッド・フラワーズ
05. ハッピー
06. ダイスをころがせ
07. むなしき愛
08. スイート・ヴァージニア
09. 無情の世界
10. オール・ダウン・ザ・ライン
11. ミッドナイト・ランブラー
12. バイ・バイ・ジョニー
13. リップ・ディス・ジョイント
14. ジャンピン・ジャック・フラッシュ
15. ストリート・ファイティング・マン


Mick Jagger

 ボーナス映像には、ツアーが開始される直前の5月21日スイス・モントルーで行われたリハーサルからのものが3曲収められている。ドイツのテレビ番組「ビート・クラブ」の放送用ソースなので、古くから地下流出市場でよく知られている ”アレ” と言えば、コア・ファンには判りやすいだろう。

 シンプルな12小節ブルース・インスト「ブルースベリー・ジャム」は、咥えタバコで気持ちよさそうに愛器ミカウバーを鳴らすキース、さらにイアン・スチュワートの勇姿にニヤリ。レコード以外に公式な演奏が存在しない「シェイク・ユア・ヒップス」のブギー加減も相当にかっこいい。ここでもキースはイケイケ。当時の放映には組み込まれていた「ラヴィング・カップ」の未収がかなり残念だが、ほか「ダイスをころがせ」など当時の彼らのリハの様子がかなりリアルに伝わる貴重な映像ばかりだ。

 さらには、1973年に英BBC2のラジオ音楽番組「オールド・グレイ・ホイッスル・テスト」にミック・ジャガーが出演した際のインタビュー、また2010年の同じくミックの最新インタビューが収録されており、本編に負けず劣らずの魅力的な内容となっている。
 
《ボーナス収録曲》

01. シェイク・ユア・ヒップス
02. ダイスをころがせ
03. ブルースベリー・ジャム

・BBC2 「オールド・グレイ・ホイッスル・テスト」出演時のミック・ジャガー・インタビュー (1973)
・ミック・ジャガー・インタビュー (2010)

Rolling Stones @Montreux






「ならず者」特需。BBC制作のドキュメンタリー・ムーヴィー

 
ストーンズ イン エグザイル 〜「メイン ストリートのならず者」の真実
 
Rolling Stones
 ストーンズ イン エグザイル 〜「メイン ストリートのならず者」の真実
 ヤマハミュージックアンドビジュアルズ YMBA10160 2010年7月28日発売 2.0ch (stereo) Dolby Digital
 ローリング・ストーンズの最高傑作と謳われる「メインストリートのならず者」のBBC制作のドキュメンタリー。メンバー自身の言葉、数多くの関係者のインタビュー、お蔵入りしている「レディース・アンド・ジェントルマン」「コックサッカー・ブルース」や未公開映像、そして当時のメンバーを捉えた豊富なスチール写真によって描かれている。BBCで放映された本編に加えて、貴重な映像やインタビューをボーナス・トラクとして収録。ミック・ジャガーとチャーリー・ワッツがオリンピック・スタジオや当時のジャガーの別荘スターグローヴスを訪れ、語られるエピソードも興味深い。









全世界を裏切らなかった、珠玉の箱式「ならず者」

 
Exile On Main Street: メイン ストリートのならず者【スーパー・デラックス・エディション】
 
Rolling Stones
 Exile On Main Street 〈スーパー・デラックス・エディション〉
 ユニバーサル インターナショナル UICY91557 2010年5月26日発売
 ストーンズ・ファンの夢が実現! 全盛期の未発表曲がついに登場。ストーンズ1972年の傑作アルバム『メイン・ストリートのならず者』が最新リマスター化。ボーナス・トラックを10曲追加して、LPサイズのボックスに2SHM-CD + 2LP + 1DVD、それに貴重な写真(約60枚)が満載の、トータル92ページにわたる本を同梱した、スーパー・デラックス・エディション!日本盤のみSHM-CD仕様、DVDには日本語字幕付。5,000セットオンリーの超プレミア・ボックス。






リアルタイムに涙を呑んだ、紳士淑女たちへ

 すでに各種音楽雑誌で特集が組まれているので、あらためて『Ladies and Gentlemen』というプロダクツ自体への事細かな言及は必要ないかとは思うが、ようするにローリング・ストーンズが最もハリとツヤを誇示した肉体を有し、それを少々の悪知恵とともに酷使しながら自己のブルースを吐き出していたときのパフォーマンス映像、ということだ。各々のドラッグ過多に加え、グラム・ロック全盛期という時節柄もあり、ひとくちに「デカダンス」なシーズンだったと片付けられそうな1972年のストーンズ。しかし実は、あくまで真面目に音楽創作活動に勤しんでいたことは、先発の『メインストリートのならず者』リニューアル盤や、ドキュメント映画『ストーンズ・イン・エグザイル〜ならず者の真実』を聴いて、観た方には十分すぎるほど伝わったはずだ。と、ここまではあくまでスタジオ・ワーク、あるいはそこに至るまでのプリ・プロやセッション過程などの範疇に限った話。問題はそう、ライヴ、そして”狂気の沙汰”とも恐れられたツアーなのである。

 『メインストリートのならず者』の発表後に行われた1972年の北米ツアーから、ほぼ中日に位置した6月24日のフォートワース公演、翌25日のヒューストンでの昼夜2回の公演を撮影し編集した『Ladies and Gentlemen』。絶頂期との呼び声高い70年代のストーンズのライヴをほぼ丸々収めた唯一の公式映像として、その作品化が長らく待たれていたものだ。1974年にはニューヨークをはじめアメリカのいくつかの都市で劇場公開され、日本でも同年に銀座のヤマハ・ホールでごく小規模なマスコミ試写会が行われたが、結局はお蔵入りの一路を辿ってしまった。この当時は、前年の来日公演土壇場中止事件もあり、わが日本とストーンズとの間にはよほど神がかり的な相性の悪さが存在するのか、と自嘲する声も多かったとか。

 そんな35年来のうらみを晴らすべく訪れた今回の「The Rolling Stones ”Ladies and Gentlemen” Film Live at Budokan」という、1日限定全3回上映のフィルム・コンサート企画。600インチの超巨大ワイド・スクリーンにあの日のストーンズの躍動する肉体が映し出されるというだけで、その当時を知らない(この世に生すら受けていない)現在のロック少年たちにも掛け値なしで愉しめそうなものだが、やはり当時リアルタイムに涙を呑んだ紳士淑女たちに死ぬほど愉しんでもらいたい、というのがお節介ついでの個人的な思いだ。

1972年のローリング・ストーンズ
 さて、1972年、その問題のライヴ。スタジオ・ワークを神経質なほど慎重で綿密に進める彼らにとって、またハードなドラッグに手を染めはじめたばかりの彼らにとって、やはりライヴにおける楽曲演奏(再現)という行為は当然ながら愉しみでもあるが、むしろ鬼門でもあり、逆にそこでしくじってしまえば「何もかもが台無し」と言っていいほど、バンドの行く末を左右する本来の現場であったに違いない(ツェッペリンはきっとそうではなかったんだと思う)。だからして、31都市51公演において、一瞬たりとも気を抜くようなリラックスしたステージはなく、その反動としてオフ・ステージでは、ロバート・フランクがカメラに収めた「Cocksucker Blues」(ヤラセ説も濃厚だが)のような乱痴気騒ぎにまで決壊し、発展してしまったのではないだろうか? 人間くさいストーンズならではの「オン / オフ」の温度差だと勝手に捉えてみるのも面白い。

 スタンダートなセット・リストにおいては、「Rocks Off」、「Happy」、「Tumbling Dice」、「Sweet Virginia」、「All Down The Line」、「Rip This Joint」といったところが『ならず者』からレギュラー・セットとして演奏されており、「Torn And Frayed」、「Sweet Black Angel」、「Ventilator Blues」、「Loving Cup」がまだセットが固定されていない手探り状態のツアー初日、2日目などに”お試し的”に披露されている。『ならず者』というアルバム自体が、様々なタイプの楽曲を擁した2枚組だったということから、聴き手の第一印象における一様の混沌を生んだという話は有名だ。ただ、ライヴにおいてこの「様々なタイプ」の楽曲は、「演奏可」「不可」、あるいは「盛り上がる」「盛り上がらない」という二極に事務的に振り分けられて当然。そうなればごく自然に 「Rocks Off」、「Tumbling Dice」、「All Down The Line」というような、いくらか既知のあるストーンズ節楽曲が残るというもの。つまり、当時における演奏技術やアンサンブルの未熟さを含め、本番一発で再現できそうにもない楽曲を『ならず者』は多分に含んでいたことが言え、むしろ今回の『ならず者』リニューアル盤の登場は、何十年か後の本人自らによる楽曲解釈の更新作業そのものが至極スムーズな流れの中にあったことを逆説的に強く感じさせる。

 1972年の北米ツアーは、スティーヴィー・ワンダーのレビューを前座に迎え、しばしばアンコールでは「Uptight〜Satisfaction」のメドレーが競演されていたのはおなじみだろう(「Cocksucker Blues」にも一部収録されている)。実は、この音源を含めてこの年のツアーの模様は2枚組のライヴ・アルバムとして公式にリリースされる予定があった。ブート市場では『Philadelphia Special』や『Welcome To New York』といったタイトルのブツで有名だろうか。オーバー・ダビングはもとよりジャケットまで決定していたが、直前でアブコ権利曲に対するアレン・クラインの”待った”がかかり、結局は『Ladies and Gentlemen』同様に陽の目を見ずに終わっている。

 つまるところ、この時期のストーンズのライヴは、どうなのか? もちろん若く危なっかしい肉体を見せびらかしながら、60年代末とはまた異なるゴージャスな妖気を漂わせているのだから、第三者的にはかっこいいに決まっている。ただ、2010年にあらためてこの「Ladies and Gentlemen」というパンドラの函(玉手箱?)をストーンズ連中自らがこじ開けたとき、まだまだ現役真っ只中の彼らはどういう想いに駆られるのであろうか? ・・・なんてつまらないこと微塵も思っていない! とにかく、70年代当時のストーンズの動く映像がたっぷり拝めるだけでこの上なき幸せと悦び。みんなもそうでしょうに。2010年ストーンズ・アーカイヴ・リリースのセット・アッパー、満を持して登場!!


 

 
レコードコレクターズ 2010年 10月号
 
 レコードコレクターズ 2010年 10月号
 ミュージックマガジン 2010年9月発刊
【特集】 1972年のローリング・ストーンズ
ローリング・ストーンズは1973年1月に初来日し、1月28日から日本武道館で五日連続公演を行なう予定でした。しかしご存じのように、ミック・ジャガーが入国拒否に遭い、この公演は幻となってしまいます。それから約38年弱…。その半年前、つまり名作『メイン・ストリートのならず者』を引っ提げて行なった絶頂期の72年米国公演の、こちらも幻だった映画『レディース・アンド・ジェントルメン』が初めて正式DVD化。そしてこの9月には、その作品が因縁の武道館で公開されることが決定しました。ストーンズの武道館公演はすでに2003年に実現していますが、ミック・テイラー在籍時、ミック・ジャガーやキース・リチャードもまだ二十代という全盛期の彼らの「演奏」を武道館で堪能できる……これは日本のロック史の失われた1ページを取り戻すかのような、ひとつの事件です!








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