トップ > 音楽CD・DVD > ニュース > ロック > 【特集】 キース・リチャーズの初ベスト

【特集】 キース・リチャーズの初ベスト

ROLLING STONES STORE

2010年11月10日 (水)


キース・リチャーズ 初ベスト盤

 
 テレビを点ければミックの「Everybody Getting High」がけたたましく流れてくる今日この頃。2010年も早いものであと2ヶ月弱となりました。今年は、ロック・ファン、特にストーンズ・ファンのみなさんにとっては、かなり実り多き1年になったのではないでしょうか? それにしても、本隊の新作・ツアーがなかったにも関わらず、これだけの盛り上がりを見せたというのは、昨年のビートルズ・リマスター然り、いかにロックを中心としたヴィンテージ復刻市場が、良くも悪くもその本分とはまったく別なところで強力な磁力を放っているか、ということに他ならないわけで。ただ、ローリング・ストーンズに限って、彼らがいまだ現役バリバリであることを考えれば、こうした遺跡発掘による「ミッシング・リンク」の穴埋め作業というのは、ファンの娯楽〜研究の対象以上に、それこそ本人たちのこの先向かわんとする活動指針に多大な影響力をもたらすのでは、とかなり前向きな姿勢で解釈を拡大している所存。それだけ今年は、納得のいく(”意味がある”と思わせる慎重で丁寧な作りの)アーカイヴ・リリースが続いたんだと断言できるかもしれません。

 『メインストリートのならず者』リニューアル・プロジェクトに伴う拡張盤と映像版『ストーンズ・イン・エグザイル』、70年代以降のスタジオ・アルバムすべてがSHM-CD/紙ジャケ化と相成ったボックス・セット第2弾、一部ながら公式化された1976年ネブワース・ライヴ映像などが、つるべ打ち的にリリースされた三夏。秋の境からも、お待ちかねの『Ladies And Gentlemen』映像(輸入盤デラックス・エディションも!)に、1969〜2005年のオリジナル・スタジオ・アルバムのLPをまとめた2種類のLPボックス・セット、さらにはロニー・ウッドの9年ぶりのソロ・アルバムに、キース肝煎りのナイヤビンギ集団ウィングレス・エンジェルスの新作と、ファン垂涎のプロダクツがせっせせっせと届けられてきましたが、いよいよ真打ち登場! といったところでしょうか。2010年、歴史的なストーンズ・アーカイヴ×ソロ〜関連新譜 狂騒曲の大トリを飾る、我らがキース・リチャーズ、初のソロ・ベスト・アルバム『Vintage Vino』が登場してしまうのです!


キース・リチャーズ自伝「ライフ」
 この、背中で語る感じ、やはり画になります。右手にグッとつかんだ白鶴ワンカップもいいですね・・・タイトルから察するに中身は赤ワインなのかもしれませんけど。

 さて本ベスト・アルバム『Vintage Vinos』には、1988年の初ソロ・アルバム『Talk Is Cheap』、同年の1stソロ・ツアーの模様を収めた『Live at the Hollywood Palladium, December 15, 1988』(91年発表)、92年の2ndソロ『Main Offender』といった歴代のソロ、つまりは3枚のキース・リチャーズ&エクスペンシヴ・ワイノウズ作品から厳選された13曲が、何と! 初のリマスター収録。ワイノウズ始動から20余年、キースのソロ楽曲は一度もリマスタリングされていなかったことを考えると、それだけでもファンには大変価値のあるものになるでしょう。加えて、ボーナス・トラックがこれまた目玉。2005年当時、赤十字に「ハリケーン・カトリーナのための災害救助金」を寄付した人だけがストーンズのコンサート会場でフリーCDで入手できた「Hurricane」。ギターを爪弾きながらディラン風に一語一語を噛み締めながら唄うキースとロニーのスライドのみによる温かくフォーキーなバラード。キースの”Heart of Gold”のド真ん中に触れることができる1曲、まだ未聴の方はこの機会に是非どうぞ。

 また、去る10月26日に欧米で出版された自伝「Life:Keith Richards」(日本未発)には、読書好きが高じて図書館員になりたかったこと、大量のドラッグ摂取にも関わらず生き延びている秘訣(?)、80年代のバンド存続の危機、さらにはミックのイチモツを「ちっぽけ」と示唆したエピソードなど(記憶力にやや難があると自認していたキースですが)、赤裸々な修羅場の告白を含めたかなり興味深い内容が綴られているとのこと。現在エージェントは日本での出版先をあたっており、来春あたりには日本語翻訳版の発刊が見込まれているようです。こちらもお愉しみに。


 
 
Keith Richards
 Vintage Vinos
 Mindless 859704537196 2010年12月21日発売 限定盤デジパック 
 歴代のソロ・アルバム『Talk Is Cheap』(88年)、『Live at The Hollywood Palladium』(91年)、『Main Offender』(92年)から選曲された13曲のリマスター音源に加え、米ハリケーン被災者救済チャリティー・シングルだった「Hurricane」も収録した、キース・リチャーズ初のソロ・ベスト・アルバム。
(HMV レビュー)





 1988年、『Dirty Work』の発表以降、一向に動き出さないストーンズにしびれを切らしていたキース。当時を振り返るコメントでは「自分自身のために何かしなければ、気が狂いそうだった」とも吐露している。とにかくロードに出て音を出したいという一心で作り上げたのが、初めてのソロ・アルバム『Talk Is Cheap』。前々年に、チャック・ベリーの伝記映画「ヘイル! ヘイル! ロックンロール」の音楽プロデューサーを務めた際に見つけたスティーヴ・ジョーダン(ds)やチャーリー・ドレイトン(b)、そして70年代後半からロニーのソロ・レコーディング参加を通じてすでに交流のあったワディ・ワクテル(g)といった仲間を連れ立ってスタジオに入り、有意義なセッションを重ねる中で見つけ出した”第2の故郷”。音楽を純粋に愉しめる悦びに浸れる、それが、のちに「エクスペンシヴ・ワイノウズ」(=オレたち、高価なワインをガブのみしちゃうよ♪ 団)と命名される彼らと共に過ごす音楽三昧の時間だった。

 ベスト・アルバムの前半(M-1〜5)では、そんな”水を得た魚”のように、ギターに歌にピチピチと跳ねるキースにあらためて「フフッ」としてしまう。記念すべきアルバムからの1stシングル「Take It So Hard」のイントロを初めて耳にしたとき、特にストーンズ・ファンであればおもむろに「ガッツポーズ」をせずにはいられなかったに違いない。「キーフのご帰還だ!」と。

 こちらも記念すべき、アルバムのオープニングを飾る「Big Enough」には、メイシオ・パーカー(as)、ブーツィ・コリンズ(b)、バーニー・ウォーレル(key)というJBズPファンク総家の親玉連を迎え、キース流の洒脱でダンサンブルなファンキー・アプローチを聴かせてくれている。アル・グリーン「Let's Stay Together」あたりのニュー・ソウル系メンフィス・サウンドを軽々想起させる「Make No Mistake」、メランコリックなアコースティック・バラード「Locked Away」、キースの「美メロ家」ぶりをしかと伝える代表曲を収録しているのもうれしいかぎりだ。ことさら、「Locked Away」を後半に持ってきた演出、これはなかなか心ニクい。 「You Don't Move」「Struggle」は、いかにもなリフが扇動し、「キースらしさ」をより明快に提示したロックンロール。代表曲の「How I Wish」、「Whip It Up」などを抑えて堂々のトップ14 入り。

 ベスト中盤(M-6〜9)には、『Talk Is Cheap』リリース後に行なった13ヵ所の中規模全米ツアーから、1988年12月15日のL.A.はハリウッド・パラディアムでのギグを収録したライヴ盤からの4曲が。ちなみにこのライヴ盤、同公演から3年が経過しようとしていた1991年、同音源の大量のブート流出を偶然知ったワイノウズ・メンバーが「オフィシャル化を検討したほうがいいぞ」と発案したことにより急遽その年の暮れに公式リリースに踏み切られたのだそう。当時は、CD+VHSビデオ+ツアーTシャツのボックス・セットを最高位に何種類かのフォーマットでリリースされていた。初めてのソロ・ツアーということで、この時期は何しろキースをはじめバンド・メンバー全員(担当楽器を持ち替えたりも)のモチベーション、テンションが半端なく高く、ショウ自体の素晴らしさはもとより、セットリストにおいてもファンならば勃起確実のスペシャルなものが用意されていたことは有名。今回収録されている「Happy」「Too Rude」、そして「Before They Make Me Run」、「Little T&A」(後述2曲はライヴ盤未収録)といった馴染みのある持ち曲ならまだしも、まさか「Time Is On My Side」(サラ・ダッシュが副唱)、さらにはキース最古のリード・ヴォーカル・ナンバー「Connection」が披露されるとは誰が予想していただろうか? おまけにこの日はビートルズの「I Wanna Be Your Man」(こちらも未収録)も飛び出すはじけっぷり。このライヴを観て聴いて、「是が非でもワイノウズを日本で観たい!」と今も心の中で叫び続けている転石党キース派はさぞかし多いことだろう。

  そんな充実のツアーを経て、1989年いよいよストーンズ本隊が再始動。ニュー・アルバム『Steel Wheels』の発表、それに伴う日本を含む大規模なワールド・ツアーと、多忙を極める中においてもキースは、ヒマを見つけてはジョーダンやドレイトンらとフラリとスタジオに入ったり、バーニー・ウォーレルのレコーディング・セッションなどに顔を出したりしていたという。生家ストーンズとしての活動が活発化するのに比例して、”第2の故郷”ワイノウズを想う気持ちはますます強くなる。バンドとしての絆がさらに強まる気配をみせた時期だった。ストーンズが「アーバン・ジャングル・ツアー」の千秋楽を迎えた1990年8月25日以降も、束の間のオフに入ったメンバーを尻目にキースはワイノウズらとつるみながら、ジョン・リー・フッカージョニー・ジョンスン(「Key To The Highway」のカヴァーはここが初出)のレコーディング・セッションなどに参加しながら、またしても音楽三昧の日々を送っていた。

 よりソリッドで強固となったワイノウズのグルーヴは、キース+ジョーダンにワディが半数以上の曲でプロデュースに加わった1992年の2ndアルバム『Main Offender』(邦題:主犯)で明らかになった。前作のような派手なゲスト陣の参加はなく、あくまでバンドだけの音で勝負したといえる1枚。ダビーなオリジナル・レゲエ「Words of Wonder」、コンテンポラリー・ファンク「Body Talks」、独特の浮遊感を漂わせる「Yap Yap」、ハープシコードの音に惹かれる「Runnin' Too Deep」など、チャート/セールス的な部分では前作にはるか及ばないものの、思わず唸らされるキース節がワイノウズの生み出す音のウネリに乗りながら疾駆し、闊歩し、遊泳し、潜水する。 ベスト盤後半(M-10〜12)には3曲とやや少ないながらも、アルバムのハイライト曲がきっちりと収められている。「ワル」という邦題に苦虫を噛つぶすも、キースらしい”間”の連続にいつしか顔が綻ぶリード・シングルの「Wicked As It Seems」、ジョーダンの抜けのよいスネアとキースのリフのコンビネーションがこの時点で確固たる世界を作り出したと言える「Eileen」、サザン・ソウル風味のミディアム・バラード「Hate It When Love Leave」。また、「Wicked As It Seems」は、翌年から制作に入るストーンズ本隊の『Voodoo Lounge』に収録された「Love Is Strong」に大きなインスピレーションを与えた曲ということも付け加えておきたい。

 ラストの「Hurricane」は、先述のとおり、2005年にニューオーリンズを襲った「ハリケーン・カトリーナ」による被害に対し、同年10月30日のシアトル公演からストーンズのコンサート会場で救助金を寄付した人だけが入手できた音源。1分半ほどの楽曲だが、キースのディラン風ホーボー歌唱と万感の思いを込めた歌詞に胸を締めつけられてしまう。録音は、キース(vo,g)とロニー(g)のみで2002年に行なわれたものだ。

 かけ足でご紹介してきた全14曲。収録曲に関しては、「アレがない」「コレがない」と指摘・指南する声も多々あるだろう。が、ひとまずは20年ぶりのリマスタリングが施されたというだけでも、密かなる事件だ。現在のところ、ご存知キースの自主レーベルであるMindless Recordsからの輸入盤リリースのみ。歌詞対訳・解説に、願わくばボーナス・トラックなぞを追加した日本盤の登場も心待ちにしたい。








 
《収録曲》

01. Take It So Hard
02. Big Enough
03. You Don't Move Me
04. Struggle
05. Make No Mistake
06. Too Rude
07. Time Is On My Side
08. Happy
09. Connection
10. Wicked As It Seems
11. Eileen
12. Hate It When You Leave
13. Locked Away
14. Hurricane


Keith Richards


Take It So Hard


Keith Richards & X-Pensive Winos


Eileen


Keith Richards


Hurricane フリーCD






 
キース・リチャーズのソロ・アルバム


 
Talk Is Cheap
 
 Talk Is Cheap
 Virgin 1988年発表 USA盤
 ストーンズのデビュー以来24年間バンド一筋だったキース・リチャーズが、1988年についに発表した初のソロ・アルバム。スティーヴ・ジョーダン、ワディ・ワクテル、ブーツィ・コリンズ、バーニー・ウォーレルなど一流のミュージシャンを起用しつつ、ミックのソロとは異なり「ストーンズの本質そのもの」といったロックンロールを聴かせファンを喜ばせた。
(HMV レビュー)








 
Live At Hollywood Palladium
 
 Live At Hollywood Palladium
 Virgin 1991年発表 USA盤
 1stソロ・アルバム『Talk Is Cheap』で手ごたえを感じたキースとそのバンド・メンバー。キースはあらためて彼らを「エクスペンシヴ・ワイノウズ」と命名しツアーに出た。ツアーの終盤1988年12月15日、L.A.はハリウッド・パラディアムで行なわれたライヴの模様を収めた1枚(発表は91年)。最古のキースのリード・ヴォーカル曲「Connection」をはじめ、「Time Is On My Side」、「Happy」、「Too Rude」とストーンズ作品中でおなじみの楽曲も並ぶ。同発でVHSビデオ、のちにDVDのリリースもあったが、現在はどちらも廃盤となっている。
(HMV レビュー)






 
Main Offender
 
 Main Offender
 Virgin 1992年発表 USA盤
 キース2作目のソロという名義ながら、実際には「エクスペンシヴ・ワイノウズ」の面々らによるバンドとしてのアプローチがとられている1992年度作。共同プロデュースのスティーヴ・ジョーダン、ワディ・ワクテルとのコンビネーションもばっちり決まり、決してハズすことのないキースの底力をアピール。1stソロには作品の緊張感という点で譲るものの、味わいの深さではこちらも堂々たるもの。
(HMV レビュー)






 
【応用編】 キース・リチャーズ、自分なりのベストをつくろう


 キース・リチャーズ、初のベスト・アルバムを目の前にして、このひとり戯びをやらないわけにはいきません。小1時間もあれば、あっという間にできあがり。

 つくりかたは簡単。 『Vintage Vinos』収録曲以外のキース関連曲を選んで、MP3プレイヤーに放り込む、あるいはCD-Rに焼き付けるだけ。CDの収録可能時間を考えて、15、16曲ほどを選んでみましょうか。ストーンズ、もしくはストーンズ作品に駐在するキースの楽曲は・・・とりあえずは「5曲ぐらいまで」というルールを設けてみましょうか。さすがにキリがないので。それから、他のアーティストへのゲスト参加曲に関しても同様にそれぐらい、そしてできるだけ「歌入り」のものを優先して選ぶ、という一応のキマリを用意しておきましょう。

初のソロ・シングル「ザ・ハーダー・ゼイ・カム」日本盤
日本盤は「ハーダー・ゼイ・カム」がA面

 [1] いざ、着手。オープニングは、コレで決まり。コレしかない。1978年のクリスマスにリリースされた、キースの記念すべき初めてのソロ・シングル「Run Rudolph Run」(チャック・ベリーのカヴァー)。そのB面に収められた「The Harder They Come」。ジャマイカの国民的レゲエ・シンガー、ジミー・クリフの代表曲を、キース、そしてゲスト参加のロニーが、アクの強い ”バーバリアンズ・アイリー・ブイヨン” を溶かし込み、ルーディに料理。そろそろきちんとCD化されても・・・という思いも込めて、まずはどアタマに。

 [2] 続いてもレゲエ・チューンでいってみましょうか。こちらもジャマイカを代表するレゲエ・シンガー、”JAのオーティス”ことトゥーツ・ヒバートとザ・メイタルズの2004年のアルバム『True Love』に収録された「Careless Ethiopians」を。ますますソウルフルになったトゥーツの歌唱に絡む、キースのいい湯加減の唄と六味線。富士のペンキ画をバックに、銭湯で二人が気持ちよさそうに鼻歌を並べているかのような風情に乾杯。

 [3] コマゲン。どうせならもういっちょ。『Bridges To Babylon』収録の「You Don't Have To Mean It」。ここでは『Live Licks』に収められているライヴ・ヴァージョンを。スタジオ・ヴァージョンよりも大らかな歌唱を聴かせるキースに、南海の風を想わせる緩やかなホーン・アンサンブル。とてもライヴ映えする曲だと思うのですが、どうでしょう? レゲエにおけるリズム・ギターの常套句をこれでもかと詰め込むキース、かわいいです。スタジオでは、クリントン・クリフォードという鍵盤奏者がピアノ、ハモンド・オルガンを弾いているのですが、実はライヴでは、ロニーがピアノのバッキングを担当しているんです。


  • True Love

    Toots & The Maytals
    『True Love』
    (2004)

    ジャマイカン・レジェンド、トゥーツ&ザ・メイタルズによる前代未聞の超豪華コラボレート・アルバム。キースのほか、クラプトン、ベック、ノー・ダウト、シャギー、ザ・ルーツ、スカタライツ、ブーツィ・コリンズなど、各界のビッグ・ネームが大集結...

 
  • Live Licks

    Rolling Stones
    『Live Licks』
    (2004)

    全世界を熱狂の渦に巻き込んだ「フォーティー・リックス・ツアー」の模様を収録した2枚組ライヴ・アルバム。ライヴを行なった世界各地から選りすぐった音源を収録。それぞれのディスクにコンセプトが設けられており、ディスク1は、「ストーンズ・ビギナー向け」の知名度の高い楽曲を中心に収録。ディスク2は、ライヴで演奏されることの少ない「ストーンズ・マニア向け」の楽曲を中心に収録。キースによるカントリー・カヴァー「The Nearness Of You」も収録...

 
  • Bridges To Babylon

    Rolling Stones
    『Bridges To Babylon』
    (1997)

    こちらには「You Don't Have To Mean It」のスタジオ・ヴァージョンが収録されている。ほかキース・ナンバーは、「Thief In The Night」と「How Can I Stop」。後者では、マイルス・グループ、ウェザー・リポートでの活動で知られる名ソプラノ・サックス奏者ウェイン・ショーターとの共演が実現。キースにとってもこの共演はとても感慨深いものがあったという...



 [4] そんな弟分ロニーの1stソロ・アルバム『俺と仲間』所収の「Sure The One You Need」もハズせませんね。「Happy」で自信をつけた”味噌っ歯”の牛若丸が、そのカン高いトーンで直線的なリード・ヴォーカルをとるチャック・ベリー直系のロックンロール。ロニーがサポート・ギタリストとして迎えられた1975年のツアーにおいても、2公演だけ「Happy」に替わってセットリストに加えられていました。余談ですが、アル中のリハビリ・プログラムを終え最近もっぱら断酒状態のロニーを、キースはこうばっさり。「ちっ、退屈な野郎だ」。

 [5] では、ニュー・バーバリアンズのメリーランド公演盤『Buried Alive』から「Apartment No. 9」を。女性カントリー・シンガー、タミー・ウィネットの1967年のデビュー・シングルにして大ヒット曲。キースが、この時期あたりからグラム・パーソンズと親交を深めることによってカントリーにどっぷりと浸かりはじめたことは有名。その頃からことあるごとにキースはこの曲をフェイヴァリット・ソングとして挙げていたそうです。それにしても、このバーバリアンズ音源、早くきちんとしたマスターから再CD化してほしいもの。

 [6] 引き続きカントリーを。業界の大御所ジョージ・ジョーンズが、自らの代表曲を様々なアーティストと共演したアルバム『The Bradley Barn' Sessions』。そこでキースは御大と「Say It's Not You」でがっぷり四つ。古くから知られる地下流出盤(「The Nearness Of You」、「Apartment No.9」、「All I Have To Do Is Dream」なども入っているアレ)では、キースのピアノの弾き語りのみで歌われるヴァージョンなんていうのもありましたね。

 [7] カントリー古典の流れを受けながら、お待ちかねのストーンズ楽曲。2002年4月14日にナッシュヴィルで行なわれたウィリー・ネルソンを”囲む夕べ”的なイベントに出演した際に披露した「Dead Flowers」(当夜は「The Worst」も披露されました)。ウィリー御大やライアン・アダムスらとのフック大合唱の中でも、キースのこぶし効きまくりの演歌歌唱は否が応でも目立っており、ニヤつくこと必至でしょう。ちなみに、2004年に行なわれた同趣旨のイベントでは、主役とのデュエットで「We Had It All」を演っています。こちらも音盤化されていますので機会があれば聴いてみてください。また、その「We Had It All」は、未発表ながら、1979年にキース(ピアノ)、ロニー(ギター/ペダル・スティール)、シュガー・ブルー(ハーモニカ)+@という編成で録音されており、なかなかの完成度を誇っていると西新宿辺りではもっぱらのうわさ。そちらはいずれ公式に世に出ることを願いつつ。


  • I've Got My Own Album To Do

    Ron Wood
    『I've Got My Own Album To Do』
    (1974)

    フェイセズ在籍中の1974年に発表されたロニーの初ソロ・アルバム。ゲストには、キースとミックのストーンズ・コンビに、ロッド・スチュワート、デヴィッド・ボウイ、さらにリズム隊にはアンディ・ニューマーク、ウィリー・ウィークスといった千両役者が顔を揃えた。キースは全11曲中の8曲に参加。リード・ヴォーカルをとる「Sure The One You Need」(キースとミックの共作)は、同年のロニーのソロ・ツアー(=ファースト・バーバリアンス)でも披露された...

 
  • Live From Kilburn

    First Barbarians
    『Live From Kilburn』
    (1974)

    左掲アルバムのリリースに伴って行なわれたロニーの1stソロ・ツアーは、キースをはじめ、ロッド・スチュワート、イアン・マクレガン、ウィリー・ウィークス、アンディ・ニューマークを伴い、のちの「ニュー・バーバリアンズ」結成のきっかけともなった伝説的なライヴ。映像・画質ともに良好とは言えないが、発売元であるロニー・ウッド自身のウッデン・レコーズは「映像の歴史的価値を考えてリリースに踏み切った」としている...

 
  • Buried Alive: Live In Maryland

    New Barbarians
    『Buried Alive』
    (1979)

    ロニー&キースに、スタンリー・クラーク、イアン・マクレガン、ボビー・キーズ、ミーターズのジガブーらで結成されたニュー・バーバリアンズの79年メリーランド公演完全盤。元々はロニーの『Gimme Some Neck』リリースに伴うツアーであったが、豪華なメンバー、キースのスキャンダルなどもあり当時かなり話題を呼んだ。ロニーのレパートリーはもちろん、「むなしき愛」、「Honky Tonk Women」、「Jumpin Jack Flash」などのストーンズ楽曲も披露。キースは「Before They Make Me Run」、「Sure The One You Need」のほか、「Let's Go Steady」、「Apartment No.9」、「Worried Life Blues」といったオールディーズ、カントリー、ブルースのカヴァーなどもレパートリーに加えている...

  • Bradley's Sessions

    George Jones
    『Bradley's Sessions』
    (1994)

    カントリー界の大御所シンガー、ジョージ・ジョーンズのコラボ・アルバム。キースが参加した「Say It's Not You」は、1968年のジョーンズ自身のヒット曲の再演。当時キースはこの曲をおそらくグラム・パーソンズに教えてもらったのだろう。また同日に共演録音された「Burn Your Playhouse Down」は、後発の『Burning Your Playhouse Down: The Unreleased Duets』に収録されている...

 
  • Willie Nelson & Friends -Stars and Guitars

    Willie Nelson
    『Stars and Guitars』
    (2002)

    今なおカントリー・シーン、そのエッジのきわを歩き続けるウィリー・ネルソン。2002年にナッシュヴィルのライマン・オーディトリアムで行なわれた「ウィリーと心の友」イベント。ライアン・アダムス、ハンク・ウィリアムスVといった若手勢との大合唱となった「Dead Flowers」では、キースのこぶしの効いた歌唱に酔える。この夜はシェリル・クロウをバック・コーラスに「The Worst」も演奏している...

 
  • Willie Nelson & Friends -Outlaws and Angels

    Willie Nelson
    『Outlaws and Angels』
    (2004)

    左掲イベントの2004年版のライヴ音源。こちらでは、「たしかドビー・グレイの歌で有名になった曲だったな」とMCを挟んで、「We Had It All」を主役とデュエットしている。2000年代のキースには、ホンモノのカントリー・シンガーのような風格が漂っている、と感じた人は結構いるはず...



 [8] なんだか少しばかり”ひなびた”感じになってきてしまいましたので、ここらでドライヴ感のある曲を挟んでおきましょう。ということで、「Little T&A」。しかも映画『シャイン・ア・ライト』のヴァージョン。純白のギブソン・セミアコでキメたキース。劇場版本編に収められなかったのが不思議なぐらい、メタクソにかっこいい。ダリル・ジョーンズのベースにも吹っ飛ばされます。

 [9] 「Can't Be Seen」と迷いもしましたが、お次はやはり「Wanna Hold You」。この曲が収録されている『Undercover』発表後に人生の伴侶として選んだパティ・ハンセンへの想いが詰まったロックンロール・ナンバー。ここまでストレートだとかえって潔い、という良い見本。2人の娘さん(どちらもモデルだそうです)を交えて家族仲睦まじく寄り添う写真をタブロイド誌などで最近よく目にすることがありますが、3年前にパティが膀胱癌を患ったときは、さすがにキースの落ち込みようは激しかったようです。しかし、キースはそんな姿を微塵も見せず、いつも笑顔で傍にいて、パティを励まし続けていたそうで、「キースと私は、ただいっしょに寝転がって、カウチポテト族みたいに、ターナー・クラシック・ムービー(米国の古典映画を放送するケーブル・テレビ番組)をたくさん観ていたの」とパティは当時を振り返っています。彼女にとってキースは、ロックそのもの。そして、キースにとってパティは、ロールする原動力。お金持ちでも、貧乏でも、夫婦鶴とはこうありたいものですな。


  • Shine A Light

    Rolling Stones
    『Shine A Light』
    (2008)

    2006年の10月29日と11月1日に、N.Y.のビーコン・シアターで行なわれたストーンズのライヴ・パフォーマンスを2日に渡り撮影したマーティン・スコセッシ監督によるライヴ・ドキュメンタリー映画『Shine A Light』。そのサウンドトラック盤。”キース・コーナー”では、「You Got The Silver」でのトム・ウェイツのような酔いどれ歌唱、「Connection」でのキレ味と、共に文句なし。「Little T&A」も、劇場版本編には組み込まれなかったものの、かなり充実したパフォーマンスで、実は当夜のベストとの声も...

 
  • Tattoo You

    Rolling Stones
    『Tattoo You』
    (1981)

    言うまでもなく「Little T&A」のスタジオ・ヴァージョンはこちらに収録。「Happy」、「Before They Make Me Run」と並ぶキース・ソロの人気曲。ちなみに本家ライヴ・ツアーでは、1981年のUS、82年欧州の各ツアーで頻繁に演奏されていたが、88年に1stソロ・ツアーのレギュラー・セットリストに組み込まれたのを最後に、2005年の「ビガー・バン・ツアー」(4枚組DVDボックス『The Biggest Bang』に収録)で久方ぶりに登場するまで、およそ20年近く封印されていた。イントロは、5弦開放Gによる典型的なリフなのだが、ライヴではこれを思いっくそハズすことがあるため、1コーラス目が歌われるまではわりと冷や冷やもの ...

 
  • Undercover

    Rolling Stones
    『Undercover』
    (1983)

    キースとミックの軋轢が徐々に作品に表面化してきた時期のアルバムだけに、全体的なバランスを重視して聴くと、かなりとっ散らかった印象はあるが、ひとつひとつの曲のクオリティは高いのでは? キース主導の楽曲は特に。ロビー・シェイクスピアを迎えて大胆なダブ・フィーリングを取り入れた「Feel On Baby」や、従来のロックンロール路線を頑なに死守した「She Was Hot」、「Too Tough」、当時の恋人(アルバム発表後すぐに結婚)、パティ・ハンセンへの想いを詰め込んだリード・ヴォーカル・ナンバー「Wanna Hold You」など、ストレートな作りな分、現在も飽きずに聴けているような...



 [10] キース自らがプロデューサーを務めたチャック・ベリーの伝記映画『ヘイル! ヘイル! ロックンロール』。そのタキシード姿をそらで思い出しながら作業を続行したい1曲を。チャックのピアニストとして活躍し、彼のヒット曲のほとんどを作曲したにもかかわらず、その印税を受け取れず不遇な生活を送っていたジョニー・ジョンスン。見かねたキースは、『ヘイル! ヘイル! 〜』にジョンスンを登場させました。そうしたことをきっかけに1991年に制作された本格的なカムバック作『Johnnie B. Bad』にはキースが2曲で参加。そのうちの1曲、「Key To The Highway」は、のちにキース名義として『Main Offender』の国内盤ボーナス・トラック、あるいは「Eileen」のシングルのカップリングで収録された、キースがリード・ヴォーカルをとるトラディショナル・ブルース。主役のジョンスンを差し置くつもりはないのでしょうけれど、まぁちょっとした独壇場といったところでしょうか。

 [11] キースのブルース主義は、当然ながらそのソロ活動においても顕著且つフル・スロットル。ハウリン・ウルフのバンドで活躍したことでも知られるブルース・ギタリスト、ヒューバート・サムリンの2005年発表のアルバム『About Them Shoes』(録音は2000年)には3曲で参加し、以前にストーンズでのレコーディング経験もある「Still A Fool」で、リフ作りの名人でもあるサムリン先生をバックにリード・ヴォーカルをとっております。「Key To The Highway」ともども、キース自身もその出来の良さに非常にご満悦とのことです。  

 [12] キースもジョン・レノンのようなロックンロール・レコードを作ってほしいな、とTwitterにぼんやりとしたつぶやきを投稿しつつ、お次へ。エルヴィス・プレスリーのバックを務めたスコッティ・ムーア(g)とD.J. フォンタナ(ds)によるアルバム『All The King's Men』では、ザ・バンドレヴォン・ヘルムリック・ダンコガース・ハドソンらと参加。「Deuce & A Quarter」では、2コーラス目からリード・ヴォーカルをとり、ギター少年に戻ったかのように溌剌としたバッキング〜ソロも聴かせてくれます。ちなみに録音はウッドストックにあるレヴォンの自宅で行なわれ、プレスリー没後20年にあたる1997年8月16日にリリースされました。

 [13] チャック、プレスリーと続けばこの人、まだまだ本物の ”火の玉” にはならない、生けるロックンロール・レジェンド、ジェリー・リー・ルイス。今年の夏にリリースされたジェリー・リーの最新アルバム『Mean Old Man』には、キースをはじめストーンズ・メンバーが、前作『Last Man Standing』に続いてしっかり参加。キースはストーンズのカントリー・ジャム「Sweet Virginia」で、”らしさ”全開のハーモニーとギターを先輩に謙譲し、微笑ましいロックの縦社会が成立。その他ストーンズ・メンバーは、ミックがヴォーカル/コーラスで「Dead Flowers」に、ロニーがギターで「Mean Old Man」にそれぞれ参加しています。


  • Johnnie Be Bad

    Johnnie Johnson
    『Johnnie Be Bad』
    (1991)

    チャック・ベリーのヒット楽曲のほとんどを手がけながらも、印税の未払いにより不遇を強いられていたピアニスト、ジョニー・ジョンスン。”間接的な恩師”のそんな姿を見かねたキースは、映画「ヘイル! ヘイル! ロックンロール」にジョニーを引っ張りあげる。その付き合いがきっかけとなり制作された本作は、見事メジャー・レーベル(MCA)からリリースされることに。キースがリード・ヴォーカル&ギターで主演を張る「Key To The Highway」のほか、冒頭の共作ブルース「Tanqueray」では、より人情味溢れた師弟関係のようなものを窺うことができる...

 
  • Hail! Hail! Rock 'n'Roll

    Chuck Berry
    『Hail! Hail! Rock 'n'Roll 』
    (1987)

    1986年10月に、キースの提案でセントルイスで行われた、チャック・ベリー生誕60周年スペシャル・ライヴの模様を記録した映画『ヘイル! ヘイル! ロックンロール』のサウンドトラック盤。ゲスト・ギタリスト&プロデューサーのキースをはじめ、スペシャル・ゲストには、エリック・クラプトン、リンダ・ロンシュタット、ロバート・クレイ、ジュリアン・レノンといった顔ぶれが並ぶ。フィルム本編では、自尊心旺盛なチャックの扱いにかなり手こずっているキースの悪戦苦闘ぶりも。「ミックと同じぐらいやっかい」とのこと...

 
  • About Them Shoes

    Hubert Sumlin
    『About Them Shoes』
    (2005)

    ハウリン・ウルフのChess諸作品のバックで、怒涛のブルース・ギターをかき鳴らし、シカゴ・ブルース・ファンのほとんどをノックアウトしてきた重鎮ヒューバート・サムリン。キース、クラプトン。レヴォン・ヘルムといったその手のスター・プレイヤーとの共演盤ということもあり、かつてのような粗野でヒップなサムリンの往年のプレイをたっぷりと味わうまでには至らないが、教え子たちの成長著しい姿に目尻を下げながらギターを担ぐサムリン先生、そんな充実した時間を過ごしていることが想像できて、かなり微笑ましい...

  • 「All The King's Men」は現在廃盤となります。

    Scotty Moore / D.J. Fontana
    『All The King's Men』 (1997)

    エルヴィス・プレスリーのバック・メンバーとしてその名を知られるスコッティ・ムーア(g)とD.J. フォンタナ(ds)による ”キング・トリビュート” 作。キースほか、ザ・バンドのメンバー、チープ・トリックらをゲストに迎え、エルヴィス所縁のヒット曲をオールスター共演というスタイルで再演したもの。キースとレヴォン・ヘルムが交互にヴォーカルをとる「Deuce & A Quarter」が何と言っても白眉。また、ロニー・ウッドもジェフ・ベックと共に「Unsung Heroes」に参加している...

 
  • Mean Old Man

    Jerry Lee Lewis
    『Mean Old Man』
    (2010)

    現在のところ(2010年11月)最新となるキース客演曲。ジェリー・リー・ルイスの最新アルバムは、ストーンズ連をはじめ豪華アーティストが数多駆けつけた共演集。キースが「Sweet Virginia」、ミックが「Dead Flowers」、ロニーが「Mean Old Man」にそれぞれ参加。ほか共演陣は、エリック・クラプトン、リンゴ・スター、ウィリー・ネルソン、ソロモン・バーク、シェリル・クロウ、スラッシュ、ジョン・メイヤー、キッド・ロックと完全に世代を超越したものとなっている...

 
  • Last Man Standing

    Jerry Lee Lewis
    『Last Man Standing』
    (2006)

    ジェリー・リー・ルイスの豪華共演集の2006年版。ここでもキースはじめストーンズ勢は張り切って参加。キースはカントリー・ナンバー「That Kind Of Fool」で主役火の玉とのデュエットを披露している。キースとジェリー・リー・ルイスの共演と言えば、1983年に米音楽テレビ番組で放映されたスタジオ・ライヴにおけるイケイケのパフォーマンス(ドラムはミック・フリートウッド!)が印象に残っているという人も多いのではないだろうか? ...



 [14] この流れで、2004年7月のグラム・パーソンズ・トリビュート・ライヴ「Return To Sin City」で演奏された「Wild Horses」にしゃれ込もうと思っていましたが、琴線を弄る度合いからいってこちらに軍配が。ノラ・ジョーンズとのデュエットとなった「Love Hurts」。グラムも『Grievous Angel』の中でエミルー・ハリスとのデュエット・ソングとして取り上げていたカントリー・クラシック。キース&ノラ版は、完全におじいちゃんと孫娘が陽だまりの下でポケット歌集を嗜む図と化していますが、天国のグラムもこれにはホッコリ、といったところでしょう。国内盤のDVDもリリースされていますので、キースの長めのMCを日本語字幕で愉しみつつ、だるま片手にゆったりとご覧あれ。

 しかしまぁ、こうして見ると、キースのカヴァーやオリジナル楽曲には、純粋なカントリー・ソングはもちろん、その手の要素を色濃く反映させた楽曲が実に多いということが判りますよね。2001年にはハンク・ウィリアムズトリビュート盤に参加して「You Win Again」を哀愁たっぷりに歌っていたり、カヴァーではありませんが、トム・ウェイツとの共演曲(「Blind Love」、「That Feel」)などにしてもカントリーとアイリッシュの ”あいのこ” のような感じに仕上がっていたりと、90年代以降の「キースとカントリーの関係」。これは大変興味深い検証対象でもあります。


  • Return To Sin City: A Tributeto Gram Parsons

    V.A.
    『Return To Sin City』
    (2005)

    死後30年以上が経過した現在もカントリー・ロックの創始者として数多くのミュージシャンからリスペクトを集めるグラム・パーソンズを偲んだトリビュート・コンサートのDVD映像。グラムの愛娘ポリーが企画したこのコンサートには、キースをはじめ、スティーヴ・アール、ノラ・ジョーンズ、ドワイト・ヨーカムらが参加している。キースは、ノラのあとを受けて盛大な拍手の中ご登場。ノラとのデュエット「Love Hurts」とオーケストラをバックにした「Hickory Wind」、さらにはグラムとの思い出の1曲「Wild Horses」をしみじみと聴かせてくれる...

 
  • Timeless -Tribute To Hank Williams

    V.A.
    『Timeless』
    (2001)

    50年代に活躍し、不慮の事故で29歳で夭逝した伝説のカントリー・シンガー、ハンク・ウィリアムズの2001年トリビュート盤。キースは、ストーンズのツアー・サポート・メンバーとしておなじみのブロンディ・チャップリン(p)を伴って参加し、ハンクの1952年のヒット曲「You Win Again」を朗々と歌い上げている...

 
  • Rain Dogs

    Tom Waits
    『Rain Dogs』
    (1985)

    トム・ウェイツがストーンズの大ファンだったことにそもそもの親睦のきっかけはあったが、今ではキースの方がトムの世界にどっぷり。最近のソロ楽曲での歌唱などではそれがモロに窺える。トムの1985年発表の本作にキースは3曲で参加。カントリー調の「Blind Love」では、ギターに加え、渋柿のようなコーラスを添えている。ゲスト陣は、キースのほか、ロバート・クワイン、マーク・リボー、クリス・スペディングといった個性派が顔を揃えている。ふたりはトムの92年『That Feel』の表題曲でも再度共演を果たしている...



 [15] いよいよゴールが見えてきました。キースの現在の演歌バラード路線の起点になった「All About You」とかなり迷ったのですが、「Slipping Away」の1995年東芝EMIスタジオにおけるアコースティック・テイク。つまり『Stripped』からのチョイスということですね。この練れまくった味わい・・・いやはや言葉になりません。

 [16] さぁ、オーラス。これも候補は色々ありました。「Memory Motel」、「Sleep Tonight」、「Thru and Thru」、「This Place Is Empty」・・・どれも座りのよい感じがしたのですが、結局選んだのは、2002年の結成40周年記念ベスト『Forty Licks』に当時の新曲として収録された「Losing My Touch」。ピアノ、アコースティック・ギター、ブラシのみが鳴る空間の中で、悟りの境地のごとく、いわれなき煩悩世界に教えを説き伏せ、まずは自らが解放されゆくキース・・・もしかしたらこれはアカペラでもよかったはずでは。ロック、ひいてはポピュラー音楽シーンの最前線とは一体何なのか? そもそもそんな概念自体が存在するのか? ということをも思わず考えさせられてしまう、まさに涅槃寂静の一編。 これにて一旦幕引き、です。 


  • Stripped

    Rolling Stones
    『Stripped』
    (1995)

    ボブ・ディラン「Like A Rolling Stone」のライヴ・カヴァーや、来日公演中に訪れた東芝EMIスタジオで録音された5曲を含む企画盤的要素の強い「アコースティック・アルバム」。ライヴとスタジオ録音が半々だが、タイトルどおりどれも「裸の」ストーンズ・サウンドが味わえる。ジミー・リード、ハウリン・ウルフ・カヴァーなどと並び、キースの練れた歌声にシビれる「Slipping Away」は、本盤のハイライトではないだろうか...

 
  • Steel Wheels

    Rolling Stones
    『Steel Wheels』
    (1989)

    「Stripped」のスタジオ・ヴァージョンを収録。ご存知90年代ストーンズの出発点となり、日本のファンにとっては、初の”邂逅”を約束してくれた思い出深き1枚。キースはまず「Can't Be Seen」でシンプルなロックンロールのセントラル・ドグマを追い詰め、オーラスの「Slipping Away」ではやさしく心のヒダを撫であげる。「締め」に置かれたキースのバラード曲ということで、右掲の「All About You」同様またしてもその感慨深さはひとしおとなった...

 
  • Emotional Rescue

    Rolling Stones
    『Emotional Rescue』
    (1980)

    バハマのコンポスト・スタジオで録音されただけに、「Send It To Me」、「Emotional Rescue」に顕著なレゲエ、ワールド・ミュージック臭がほのかに香り立つ1枚。ダンス・ミュージック、パンク、ニューウェイブ、カントリー、ブルースと様々なエッセンスが直接的に組み込まれているがゆえに、バンドの多面性やメンバー個々の当時の嗜好が手に取るように判る作りとなっている。そんなロックならではの華々しい諸々のフィクションをよそに、キースは静々と当時のもやもやした心境を、辛辣な詞に換えて語り始める。「All About You」。「You」とは、アニタでありパティであり、そしてジャガーである。この時期のキースにしてはめずらしく甘く感傷的なメロディに包み込まれている...

  • 「Forty Licks」は廃盤となります。

    Rolling Stones
    『Forty Licks』 (2002)

    2002年に結成40周年を迎えたストーンズ。60年代Abkco音源から70年代以降のVirgin音源まで、代表曲36曲+新曲4曲を2枚組で収録した初のオールタイム・ベスト。ドン・ウォズがプロデュースを手がけた新曲では、やはりキースがリード・ヴォーカルをとる「Losing My Touch」に注目されたし。「枯れた歌声が哀愁を誘う」などといったポップ過ぎる常套句はもはや通用しない。これは深い皺に刻み込まれた人生の年輪。血と汗と涙と、涎と油とがキースの歌の原材料になっているのである。現在廃盤なのが残念だ...

 
  • Voodoo Lounge

    Rolling Stones
    『Voodoo Lounge』
    (1994)

    ビル・ワイマン脱退の穴を、百戦錬磨の黒人ベーシスト、ダリル・ジョーンズで補ったストーンズ。ボトム・ライン、リズム・セクションに余裕ができた分、グリマー・トゥインズは、よりバラエティに富んだ楽曲の制作をすすめることができた。特にキースは、これまで以上にバンド全体でグルーヴを生み出すことの悦びを噛み締めているかのよう。しかし一転、リード・ヴォーカル楽曲では、「The Worst」、「Thru And Thru」と、弾き語りに程近いアコースティックなコンテンツを用意し、自らの根っこにあるブルージーで幻想的な普遍の世界観をきっちりとキープ。本作が、ことキース派に「90年代ストーンズの最強アルバム」と呼ばれる所以はそこにある...

 
  • Bigger Bang

    Rolling Stones
    『Bigger Bang』
    (2005)

    ソロ曲「Hate It When Love Leave」の邦題はご存知「お前がいなけりゃ」だが、この「This Place Is Empty」の方がむしろしっくりくる。悲哀と後悔の念にくれる男の背中を唄わせたらやはり銀河系一。「Memory Motel」のキース・パートにも匹敵する ”泣き節” の泉、溢れんばかり。でも、オレ男のコだから泣かないぞっ...




 かっこつけて、ボーナス・トラックをば。1992年のワイノウズのロンドン公演から、「Eileen」シングルのカップリングにも収められた「Gimme Shelter」のライヴ・テイクなんて、いかがでしょう? 『ならず者』リニューアル盤ボーナスに入っていた「Soul Survivor」の別テイクや、シェリル・クロウとの「Happy」、アレクシス・コーナーとの「ひとりぼっちの世界」じゃ、ちょっと消化不良気味ですしね。 最後の最後は、ガッツンと。

 追伸: 惜しくも次点で落選したものの中には、元ロネッツロニー・スペクターとキースが、本家アイク&ティナ・ターナー顔負けの掛け合いをみせる「(It's Gonna)Work Out Fine」や、異色なところでは、ハル・ウィルナーのプロデュースで制作されたチャールズ・ミンガスのトリビュート・アルバム『Weird Nightmare - Meditations On Mingus』に収録された、ジャズ(っぽい)ギターと神妙なヴォーカルが聴ける「Oh Lord, Don't Let Them Drop That Atomic Bomb On Me」なんかがありました。また、2ndソロ・ツアーからドイツ・ケルン公演を収めたDVD『Live & Wicked 1992』所収の「Something Else」に関しては、ハーフ・オフィシャル臭が強烈に漂っているということで、残念ながら見送られる結果に・・・それにしても飽きないですよね、この手の自慰行為って。それでは、また。



 

≪ロックをころがせ!STONES NITE!!Vol.3≫
Happy Happy Birthday KEITH!

 シーンのトップをころがり続ける世界最強ロックンロール・バンド、ザ・ローリング・ストーンズ。『レディース&ジェントルメン』の武道館上映、DVDリリースで今年の秋は大盛り上がり。そして2011年、ストーンズは新たなる動きに入ろうとしている。そんなムーヴメントに大きな期待をよせながらのキース・リチャーズ・バースディ・パーティー ≪ロックをころがせ!STONES NITE!! Vol.3≫。

 ストーンズ・トリビュート・バンド、THE BEGGARSは新たなキース・ソングスにも挑戦。キースのX-ペンシヴ・ワイノウズを再現してくれるのは筌尾正が率いる X-Rayted Movies! Mike KoshitaniがMC、2011年ストーンズの極秘情報も・・・、トーク・ショーでは40年前にストーンズに単独インタビューした元「ミュージック・ライフ」編集長の星加ルミ子が登場。抽選でストーンズ・グッズ・プレゼントも。ストーンズ・フリーク忘年会で盛り上がろう!!


 
日時:2010年12月18日() 18時00分開場/18時30分開演
会場:吉祥寺ROCK JOINT GB
出演:THE BEGGARS(我が国を代表するストーンズ・トリビュート・バンド)
    X-Rayted Movies(エクス-レイテッド・ムービーズ)
    KEEP ON ROCKS (ジャパニーズ・ストーンズ・ナンバー!)
    星加ルミ子(元ミュージック・ライフ編集長)

ゲスト:ポール岡田(元カーナビーツ)
     チャック近藤(ビートルズ・アナリスト)
     ブライアソ健雄ジョーソズ(Jajouka)
     and more・・・お楽しみに!

MC:Mike Koshitani

料金:前売り ¥4000+1DRINK ORDER/当日券 ¥4500+1DRINK ORDER

主催:吉祥寺ROCK JOINT GB
協力:日本ローリング・ストーンズ・ファン・クラブ
    ユニバーサルミュージック
    WHDエンタテインメント
    Nasty trick (Fjo Records)

チケット: ROCK JOINT GB店頭/ROCKJOINT GB HP予約受付中
お問い合わせ: ROCK JOINT GB 0422-23-3091



 

 
キース・リチャーズ ファイル
 
 キース・リチャーズ ファイル
 シンコーミュージックエンタテイメント 2003年12月発刊
 越谷政義・監修。究極のロックン・ロール・サヴァイヴァー“キース・リチャーズ”のすべてを1冊に! インタビュー/ストーリー/ストーンズ&ソロ・ディスコグラフィー/素顔を知る人達の証言/音楽性、ギター・プレイ/未発表作品/ファッション/女性と家族など、豊富なデータを交え、あらゆる角度からキース・リチャーズに徹底アプローチ。







ローリング・ストーンズ関連記事はこちら

> ローリング・ストーンズ 特集ストア
> ストーンズ LPボックスセット!
> 「レディジェン」 追加映像たっぷり!
> 『メインストリートのならず者』の真実
> 『メインストリートのならず者』 豪華盤
> 【解剖】 『メインストリートのならず者』
> 【スペシャル・インタビュー企画 第1回】 仲井戸”CHABO”麗市
> 【スペシャル・インタビュー企画 第2回】 ピーター・バラカン
> 【スペシャル・インタビュー企画 第3回】 寺田正典 (レコード・コレクターズ編集長)
> 【スペシャル・インタビュー企画 第4回】 サエキけんぞう
> 【スペシャル・インタビュー企画 第5回】 中川敬 (ソウル・フラワー・ユニオン)
> ストーンズ 真夏のネブワーズ祭 1976
> ロニー・ウッド 9年ぶり新作! Wオリ特も!
> 【特集】 フェイセズの紙ジャケ