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サエキけんぞう インタビュー 2

Monday, May 24th 2010

interview
サエキけんぞう インタビュー



--- 「Pass The Wine」以外の曲に関してはいかがでしょうか?

 そのほかの曲にも、ストーンズに対する“ファンクの心の飢え”を満たすミキシングの曲が続いていますね。

--- ミキシングで飢えを満たす?

 つまり、現代のハード・ディスク・レコーディングによるサウンドの整理が、多分に功を奏しているということなんです。『メインストリートのならず者』が作られていた当時のアメリカ、イギリスのヒット曲というのは、コンプレッション・サウンドなんですね。ラジオ向けにコンプレッサーで音が潰されているんですよ。「Rocks Off」や「Rip This Joint」なんて特にそうですが。潰すとリズムの裏のニュアンスが消えてしまうんです。だからジャンプ・ナンバーが勢いがあるということになり、その反面、「Brown Sugar」などに顕れたようなファンク的な繊細な要素が実は後退していってしまうんですよ。それを取り戻すという意味で色んな試みがなされるわけですが、それが非常に惜しいところで決着しているのが「It's Only Rock'n Roll」なんですね。でも、それではやっぱり時代的に飽きられてしまっている、と踏んだ上で『Black And Blue』で完全にファンクの要素を全面に出したアレンジメントにしたわけなんです。

--- 『Black And Blue』は“これ見よがし”というか、判りやすい方法論でファンクを提示していますよね。

 完全に乾いた感じにもなって。ところがこの『メインストリートのならず者』は、そういう意味ではいちばん中途半端な出来。とびきり素晴らしい演奏なんですが、選曲的には妥協点的な仕上がりになっていると、感じてしまうんですね。一方で、評論家の方々が色んなところで書いておられるような「アメリカ南部サウンドの追求」という題目は、曲調やバンド・サウンドにもよく顕れている。その意味ではすごくまとまりのいいというか、ゴージャスなバンド・サウンドを一番楽しめるといえば、楽しめる・・・それはそれでいいんじゃいかなとは思います。ただ、僕は好きじゃないというだけです(笑)。シングル指向、ファンク的な意味では「ダイスをころがせ」がちょっと興味を満たしてくれるだけで、何度聴いても引っかかってくる曲がないんですね・・・って、今回のデラックス・エディションを宣伝する上で、ここまで貶していいものかという(笑)・・・

--- (笑)いえいえ、でも、そういった意見もあって当然だと思いますし・・・

 ただ、ボーナス・ディスクの方は間違いなく『Dirty Work』以降の最高傑作。

--- ダリル・ジョーンズによる差し替えのお話にしてもそうですが、“ファンク”、“ファンキー”というキーワードでストーンズ楽曲を語ろうとする際、ビル・ワイマンとチャーリー・ワッツのリズム隊ではかなり心許ないところがあるんじゃないかなと思ってしまうのですが。

 そこが実は謎。このボーナス・ディスクではベースを差し替えているのか否かという問題があって。僕はほとんど差し替えているような気がするんですね。なぜなら、例えば(註)『ワン・プラス・ワン』を観てもらえればお判かりのとおり、「悪魔を憐れむ歌」のベースはキースが弾いていて、元々ストーンズのアルバムのベースは、けっこうキースが弾いているのかもしれないという。で、そのキースが差し替えを承諾さえすれば、黒人グルーヴ的にはダリル・ジョーンズが弾いた方がもっといいサウンドになるわけですから。


  (註)『ワン・プラス・ワン』・・・1968年、五月革命の嵐が吹き荒れるパリを離れ、“スウィンギン・シティ”ロンドンにいたジャン・リュック=ゴダールが、ストーンズ『Beggars Banquet』のレコーディング風景を捉えた傑作音楽ドキュメンタリー。「悪魔を憐れむ歌」が完成に至るまでの興奮の一部始終と、バンドの核であったもののドラッグで徐々に心身を廃れさせていくブライアン・ジョーンズの寂しげな俯き顔、グループの陰と陽を要所で巧みに切り取りながら、カオティックで殺伐とした60年代の終わりを描いていく。当時の撮影風景とゴダールのインタビューを含むドキュメンタリーが特典映像コンテンツとして収録されている。


--- そうすると、ボーナス・ディスクのどの曲もダリル・ジョーンズが差し替えで弾いている可能性は高くなってくるということですね?

 そうですね。さらに、こんなことを言うと反感を持たれる方もいらっしゃるかと思いますが、僕は、ビル・ワイマンがベースを弾いているライヴに感激できなかったわけですよ。


--- 90年の初来日ですね。

 観たことそれ自体に感激はしましたけど、それ以上のものはなかったんです。逆に、ダリル・ジョーンズがストーンズのベーシストになって、回を重ねるごとにどんどん好きになっていったんですよ。ついには、1973年のチケットがムダになってしまったことさえも“よしとしよう”というところまで感激するようになった(笑)。どう考えても、ダリル・ジョーンズが参加したことでストーンズのサウンドはよくなったし、それに釣られてチャーリー・ワッツがどんどん蘇生していってる。それほどダリル・ジョーンズの貢献は大きい。だから、今のローリング・ストーンズというのは、白人黒人混成のファンクの実験バンドになっているんじゃないかと思っているんですね。

--- (註)アヴェレージ・ホワイト・バンドみたいな(笑)。

 そう、まさにそんな感じ(笑)。だから、詳細なクレジットに関しては判りませんが、ここでダリル・ジョーンズが活躍していても全く不思議ではないなと。ただ録音技術でその辺はいくらでもカヴァーはできますから、キースが弾いたものをエンジニアが微調整するだけでも追い込めるかもしれないんですね。でも、それすらもはやどっちでもいいんです。つまり、“ブランニュー・ストーンズ”を聴きたいということなんですよ。この期に及んでなお新しい「Brown Sugar」のような感激を得たいということなんです。初めてラジオで「Honky Tonk Women」を聴いたとき、まだ子供でしたが、明らかに衝撃でした。「なんだ、この一聴するとさえないサウンドの間は!?」と。


  (註)アヴェレージ・ホワイト・バンド・・・1971年にスコットランドで結成。73年に『Show Your Hand』でアルバム・デビュー。74年にニューヨークへ渡り2ndアルバム『AWB』を発表し、シングルカットされた「Pick Up The Pieces」は、翌年インスト曲としては異例となる全米1位の大ヒットを記録した。後に黒人メンバーが加入し白黒混合バンドになるが、結成当初は白人のみのラインナップで黒人顔負けの粘りのあるファンク・サウンドを標榜していたため、その音楽性は「ホワイト・ソウル」、「ホワイト・ファンク」と呼ばれていた。82年に解散するも、96年に再結成し現在も精力的に活動を続けている。70年代当時の白人メンバーを中心としたタイプのファンク・バンドとしては、コールド・ブラッドやココモなども有名。


--- さえないサウンドの間?

 ロックのイントロと言えば、例えば(註)スリー・ドッグ・ナイトの「Joy To The World」(註)ジョージ・ハリスンの「My Sweet Lord」みたいなものが当たり前だと思っていたのに、ギターのリフだけで「ジャーッ」って。音圧的には大したことない。だけど、とんでもなくかっこいい。なんでかっこいいのか理由を説明できないんですよ。なぜなら黒人音楽を子供はふだん聴いていないから。普段ブルース聴いている人だったら、「これはやるなぁ」って思うかもしれませんが、GSとか黛ジュンとか佐良直美とかをいつも聴いている身にとっては(笑)、「ジャーッ」っていう音がイントロで聴こえたからといって、本能的にかっこいいと思っても、形容することは到底できないですから。

 わずか1年足らずで、「Jumpin' Jack Flash」、「Street Fighting Man」、「悪魔を憐れむ歌」、そして「Honky Tonk Women」とシングルが続くんですが、この時点で、ビートルズ、ストーンズ両方好きな人間にとっても、かなりの人にとってビートルズが劣勢になってくるわけですね。イントロで言えば、(註)「ジョンとヨーコのバラード」(註)「Get Back」もかっこいいですが、圧倒的に「Street Fighting Man」や「悪魔を憐れむ歌」の方が扇情的。「悪魔を憐れむ歌」のイントロを初めて聴いたときの「何だこりゃ!?」っていう感じだったり、「Street Fighting Man」のすごく変わった音のカッティングだったり、ストーンズにはイントロで常に驚かされ続けていたわけなんですよ。「Satisfaction」、「Jumpin' Jack Flash」、「Honky Tonk Women」、「Brown Sugar」にしてもイントロで勝負が付いてしまうという。  


(註) 本文中に登場する楽曲を収録したアルバム

Naturally All Things Must Pass -Remaster Past Masters 1 & 2
Three Dog Night
『Naturally』
George Harrison
『All Things Must Pass -Remaster』
Beatles
『Past Masters 1&2』


--- 『メインストリートのならず者』には、さすがにそれらの曲と並ぶぐらい「イントロにパンチ力がある」ものは見当たらないかもしれないですね・・・

 ストーンズの楽曲の構造の場合、ビートルズと較べて、よりR&B色の濃いもので勝負しているわけですから、イントロでほとんどが決してしまうんですよ。ヴォーカルのアプローチなどでそれぞれの楽曲の毛色が異なるってことはないんで。そういったイントロに対する好奇心を「Pass The Wine」は満たしてくれているんです。

--- 「Brown Sugar」以降の70年代作品には、ほぼその好奇心を満たされることがなかったんですね?

 その後は本当にポツポツと。『It's Only Rock'n Roll』で、「Fingerprint File」や「Ain't Too Proud To Beg」なんかに少し感動したりはしましたが、『女たち』の「Miss You」、「When The Whips Comes Down」、「Beast Of Burden」、この3つのキラー・チューンを聴くまでは、約10年越しの飢えに苦しんだと。そこから『Undercover』までは良かったのですが、『Dirty Work』からまた、スタジオ録音における飢えが一向に満たされない状況が続くわけで・・・その中での今回のボーナス・ディスクということなんですよ。

 リズム隊は素晴らしいし、ヴォーカルも若々しい、ギターもいいんだけど・・・楽曲としてのアレンジが、「Jumpin' Jack Flash」、「Honky Tonk Women」、「Brown Sugar」のように耳を引くわけではない。そうした条件の中でこれだけいいと思えるということは、いかにこの時期やろうとしていたことが“難しかった”かってことなんですよ。だから、『メインストリートのならず者』本編の楽曲で妥協するしかなかった。2010年の今、全てをチャラにして、全く新しい『メインストリートのならず者』を作ろうとしたら、きっと怪物のようなアルバムができるはずだと思うんですよ。でも、それはできない(大笑)。だから、こういう“超・あだ花”なアルバムでその頃を偲ぶしかないということなんですね。

--- (笑)超が付くほどの “あだ花”ですか・・・

 例えば「1970年代のビートルズ」とか、ビートルズの新譜めいたものを無理矢理ねつ造するような考え方ってあるじゃないですか? それと似ていて。ローリング・ストーンズってそれができる時期は少ないんじゃないですかね・・・。でも、『メインストリートのならず者』ではできる。ちょっと考えれば、全ての欲求を満たした “宇宙ヴァージョン”のような完全版が空想的に楽しめる(笑)。


--- この時代、素材自体に良いものが多いということでもあるんでしょうね。

 これは完全な仮説になってしまうんですが、「Rocks Off」にしろ「Sweet Virginia」にしろ、アレンジやテンポなんかをもっと変えた、違う結論があるんじゃないかなと思ったぐらいですから。なぜならば、僕は「ダイスをころがせ」でさえ妥協策だと思っているぐらいで、ボーナス・ディスクのオルタネイト・テイク(「Good Time Women」)の方が全然好きなんですね。これは証拠になっている。

--- オルタネイト・テイクとしては、「All Down The Line」の完全未発表テイクが国内盤のみのボーナス・トラックとして追加収録されていますね。

 本編の「All Down The Line」というのは、ライヴでも毎回演奏されるほどのキー曲になっていますね。この曲にしても、今回のオルタネイト・テイクの感じでまとまって、その中でうまく位置付けられればよりよくなったんじゃないかと。つまり、『メインストリートのならず者』再建案としては、まずこの「All Down The Line」のオルタネイト・テイクを軸としてフィーチャリングすることかなとも思ったりするわけなんですよね。

 「All Down The Line」のオルタネイト・テイクというのは、いわゆる彼らの十八番の音をシンプルにやっているだけのようでいて、ほかの録音曲を引き離す仕上がりになっている気がするんですよ。こういう音をずっと聴いていたいという気にさせる感じもあって。彼らは、こういう音をステレオで普通に鳴らせるようにしたかったけど、長年それができなかったんじゃないでしょうかね。ヴォーカルにしても、最近のミックにない艶があるにもかかわらず、今追及しているものがここにある感じもするし・・・すくなくとも当時聴いたことがない感じはするんですよね。

 逆に、本編の「All Down The Line」は、一丸となっているようで、『Let It Bleed』なんかに較べると、ひょっとしたら、少しだけ自分たちに飽きているんじゃないか? みたいな(笑)。ほんのちょっとだけそんな感じもします。

--- どこか平面的なサウンドですか?

 う〜ん・・・やはりキースとミック・テイラーの関係がよくない気も・・・。むしろ、オルタネイト・テイクの方は、お互いが好奇心を持ちながらやっているように聴こえるんですよね。それは、時空を超えたメンバーのセッションだからなのかもしれませんけどね。「この頃こんなスゲェことやってたんだ」とか、「この頃のチャーリーとやれるなんて」とかね。

--- ある意味でストーンズは、「All Down The Line」のオルタネイト・テイクのようなことを現時点で最もやりたい、ということでもあるのでしょうか?

 やりたいと思っているはずです。でも、できないかもしれない。何分若さが足らなくて(笑)。やったとしてもこういう感じにはならないと思います。実際、何年か前の来日公演をセンター・ステージのすぐ脇の席で観ることができたんですね。そこで数曲聴いて、アンプからの生音とPAから出ている音とが全然違うことに驚かされたんですよ。PAの音は、ブラッシュ・アップされた耳鳴りのいい音になっているんですが、生音は、何と言うか・・・くぐもったようなすごい泥くさい音を出していたんですね。だから、もうちょっとダウン・トゥ・アースな感じというか。それがとてつもなくかっこよかったんですがね。「21世紀のストーンズ」です。しかしその生音と、この1973年の方向性は全く違うように思いました。ここまでパキッとした音にはならないんじゃないかなと思います。

 「Rocks Off」にしても、この方向性での仕上がりにかなり違和感を憶えているんですよ。「ダイスをころがせ」が「Good Time Women」のような仕上がり方を見せることができるわけなので、きっと「Rocks Off」、「Rip This Joint」、「Happy」にしろ、全然違う聴こえ方がする着地にできるような気がしますけどね。「Happy」は、とにかく音が塊になり過ぎ。全体がコンプレッションされ過ぎていて、当時からあまり好きではなかったんですが、違う形で録音すれば、もっと違うものになるのでは? この曲もリミックスしてほしい。でも、さすがにリミックスすると全く違うものになってしまうので、『メインストリートのならず者』のまとまりがグチャグチャになってしまうと思いますが(笑)。

--- そんな「Happy」の向こうを張るかのように、キースの歌う「Soul Survivor」のオルタネイト・テイクなんていう楽曲もありますね。

 これもいいですよね。『Let It Bleed』をブラッシュ・アップしたような感じにも聴こえて。後半の部分は、ちょっとテンポを速めた「無情の世界」みたいだし。「無情の世界」に似ているけど、聴こえ方はまるで違うと。とにかく今、こういうロックを聴きたいんですよね。

--- 比較的『Beggars Banquet』や『Let It Bleed』と録音時期が近いとされているものには、「Loving Cup」のオルタネイト・テイク「Give Me A Drink」があります。

 例えば 『Beggars Banquet』の「Stray Cat Blues」が、70年代的なレイドバックした感じにコンバートされると「Give Me A Drink」になるのではないかと。 と同時に、この2曲を較べた場合、彼らが60年代末にやろうとしていたブルース・ロックの感覚と70年代にやろうとしている感覚の大きな差をも顕しているんですよ。

 それから、インスト曲の「Title 5」は、ストーンズをずっと聴いてきた人間にとっても新機軸で、モッズの連中が好むタイプのR&Bインストなんですよ。それがこういう聴こえ方で仕上げられたというのはかなり驚きで。これは完全なるクラブ・ナンバーで、相当なキラー・チューン。この仕上がりは、当時では到底不可能じゃないのでしょうか?

--- 「Title 5」は、最初からインストを意図して制作されたものなのでしょうか?

 いや、絶対にヴォーカルを入れて仕上げようと考えていたはずです。だけど、きっと当時は古くさい曲に聴こえたんですよ。今はモッズが見直されてますから。その意味でも、70年代ってはるか昔ですよね・・・。

--- あらためて今回も歌ナシで出てしまっていますが。

 きっと、歌を上に乗せてもわざとらしくなるだけだったんでしょうね。であれば、「もうインストでもいいや」となったんだと思いますが、むしろ、ヘタに歌を入れないほうがいいですね。エフェクトもまたいいし。結局ストーンズもモッズ・バンドだったんだな、と思ってしまいますよね。本人たちも、64、5年にクラブに出入りしていた頃を思い出すんじゃないですか? ロンドンっ子の血が騒ぐというか。とにかくこの曲は、全てを補って余りあるほど、かっこいい。僕は「Pass The Wine」とこの「Title 5」が大好きなんですよ。しかしながら、きっと「Title 5」をせーのでやるほど、ストーンズにはもう若さがない(笑)。

 ボーナス・ディスクの全体の流れとしては、まず1曲目の「Pass The Wine」でガツンときて、その後ももちろんいいんですが少し落ち着いた感じがあり、8曲目あたりからまたガーッとあがっていく。それがこのボーナス・ディスクの完成度を高めているわけなんですよ。いわくつきではあるけど、後半は仕上がりで勝負している曲がずらっと並んでいる。「Good Time Women」なんか元曲(「ダイスをころがせ」)よりいいですよ。ストーンズ・ファンの大半にとっては恐くて「元曲よりいい」なんて言えないですからね(笑)。 

--- 定説をどんどん覆していくぞ、と(笑)。

 「<メインストリートのならず者>は良くない」だなんて、絶対言っちゃいけないようなセリフですから(笑)。当時『メインストリートのならず者』を否定することは来日するストーンズ全体の盛り上がりにつながらなくて、困ったことになった。『メインストリートのならず者』を “持ち上げて”おかないと、流れが終わって、大変なことになる。『It's Only Rock'n Roll』がいいとは言ったって、そちらの場合『メインストリートのならず者』と較べた場合に、時期的にはそこまで重要ではなかった。個人的に好きだということが言えても、みんなにそれを押し付けるような話じゃないと思ったんですね。『メインストリートのならず者』の時代的重要性はハンパなかった。だから、『メインストリートのならず者』が好きじゃないということはずっと黙っていたんですよ(笑)。

 さらに言えば、『メインストリートのならず者』から『It's Only Rock'n Roll』までは不調の時期であると。なにしろその前に『Beggars Banquet』、『Let It Bleed』、『Sticky Fingers』という鉄壁の3枚が続いているわけですから。さらに個人的なことを言えば、『Their Satanic Majesties Request』と『Between The Buttons』は、世間で言われるほど駄作とは思えない。

--- それについては僕も同じ意見です。

 特にメロディや発想においては、すごく目を見張るべきところがある。ブライアン・ジョーンズ最後の貢献と見てもいいですしね。ましてや、『December’s Children』なんかのヴォルテージに較べたら、『メインストリートのならず者』の楽曲の”ハジケ方”がいまいちという考え方は、”あり”だと思います。

 ただまぁ、バンドとしての勢いはありましたから、演奏は素晴らしいですよね・・・。だが、アルバムからのシングル・ヒットはいまいちだったんですよね。

--- チャート入りしたシングルとしては、「ダイスをころがせ」と辛うじて「Happy」というところですね。

 その辺は大衆の反応に素直に出ているんですよ。「心をわしづかみにされる曲がないだろ」と(笑)。音楽雑誌への“ネタ提供”に近いところもあって、「南部ロックを追及していてすごい」とか、「ストーンズ黒人音楽至上主義の代弁」的な言説を提供する機能のためのアルバムだと。暴言をいえば(笑)。でも、こうしてボーナス・トラックがここ20年で最高のアルバムだと判った今、本編を安心して貶せるかと(笑)。ですから、ちょっとオーバーに言っています。もちろん、愛してるストーンズだから、『メインストリートのならず者』だって好きには決まってますよ!

 迷路のようになってしまった『メインストリートのならず者』ですが、今回のボーナス・トラックは、そこで本当にやりたかったことに近付いているか否かという中で、ストーンズがたどり着くべき姿のひとつの答えを導き出したのでは、ということを感じましたね。ギターのフレーズにも目を見張るものがあって、ミックのヴォーカルに掛け合うように入ってくる夫婦随唱のようなフレーズの嵐(笑)。ものすごく繊細で、“間”もすごい。僕にとっては、ある種ストーンズの究極の姿を味える、“スルメ”のようなサウンドであるという結果になっているんです。




【取材協力:(有)パールネット】







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サエキけんぞう ライヴ&トークイベント・スケジュール


サエキけんぞう&Club Je t'aime ライブ
「歌心に集え!Real French Night! 2」


会場:渋谷 青い部屋
日時:2010年6月24日(木)開場18:00 開演19:00
料金:(予約)2500円/(当日)3000円
出演:日比谷カタン
      サエキけんぞう&Club Je t'aime <NANASE(p)、木恵つよし(g)>
      「les cocottes」(レ・ココット) <YUCA(from 東京キャ☆バニー)(vo,dance)、
      MIHO(from hi-posi)(vo,dance)、ゲイリー芦屋(p)>
      田ノ岡三郎(アコーディオン)
      ヨコシマ姉妹(from Pecombo)<横島ペ子、横島リエ(vo)、中西文彦(g)>
      *ヴォーカルグループ「ペコンボ」から生まれた横島ペ子・横島リエの姉妹ユニット。
      フレンチ・ボサノバから昭和歌謡まで・・・ヨコシマながらボーダレスな選曲を極上なハーモニーでお届 けします♪

      DJ KOKI
お問合せ/ご予約:03-3407-3564
メールでのご予約:inquiry@aoiheya.com
                        pearlnet@nifty.com



サエキけんぞうのコアトーク vol.79
「追悼:加藤和彦を語ろう」


会場:新宿ロフトプラスワン
日時:2010年7月23日(金)18時30分開場 19時30分開演
料金:(前売)2000円/(当日)2300円 共にドリンク代別
出演:【特別ゲスト】小原 礼(サディスティック・ミカ・バンド)
      【ゲスト】小川真一
      【司会】サエキけんぞう
お問合せ:03-3205-6864
      ロフトプラスワン

※前売は6/5(土)よりローソンチケット、イープラスで発売
【Lコード:37893】

profile

サエキけんぞう (さえき けんぞう)

 1958年千葉県出身。1980年、ハルメンズのヴォーカリストとして『ハルメンズの近代体操』でデビュー後、83年に窪田晴男、中原信雄らとパール兄弟を結成。86年『未来はパール』でアルバム・デビュー。90年に窪田晴男の「勘当」(≠脱退)で事実上の活動停止を余儀なくされるも、2003年に窪田の復帰で活動を再開。アルバム『宇宙旅行』とスタジオ・ライブDVD『真珠とモノクロ』(ドラムに、ROVO、デートコース・ペンタゴン・ロイヤル・ガーデンでおなじみの芳垣安洋、ベースには、宮間利之とニューハード、梅津和時グループで知られる立花泰彦を迎えた4人編成バンド)をリリースしている。ソロとしては、2003年にフランスでアルバム『スシ頭の男』をリリースし、フランス・ツアーも行った。また、沢田研二「ポラロイドGIRL」、ムーンライダーズ「9月の海はクラゲの海」、西城秀樹「Rock Your Fire」、モーニング娘。「愛の種」など多数のアーティストに作詞提供を行いながら、テレビ、ラジオ出演、さらには、エッセイスト、プロデューサーとしても幅広く活動中。2009年には、総合プロデュースを手掛けたアキバ系ガールズ・ポップ・コンピ『TOgether SONGS Neo girls 2010』を自身のPearlnet Recordsからリリースしている。