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サエキけんぞう インタビュー

ROLLING STONES STORE

2010年6月1日 (火)

interview
サエキけんぞう インタビュー


 ローリング・ストーンズ『メイン・ストリートのならず者』デラックス・エディションの発売を記念しておくる、HMVスペシャル・インタビュー企画。題して「メイン・ストリートのならず者、もしくは、ローリング・ストーンズをはてしなく語る夕べ」

 第4回目のゲストは、かつては80年代東京ニューウェーブ・シーンの顔役として、現在は博識とユーモアにまみれたフレンチ・ミュージック・メンター、または、作詞家、プロデューサー、エッセイストとして八面六臂のご活躍をされているサエキけんぞうさん。実はかなりのストーンズ・フリーク、というのは世間的にあまり知られていないところかもしれませんが、小学生の頃から相当なロック・マニアとして地元近所でならし、早や中学生のときには ”サザンロック系のバー”に入り浸っていたというエピソードを訊けば、サエキさんのロック、ひいてはローリング・ストーンズへの並々ならぬ愛情や執念を推しはかれるというものでしょう。

 誰も謳うことのなかった『メインストリートのならず者』への希望と失望と、その峡谷。ストーンズ(ロック)は多角的に尺度、彩度をはかってこそ、初めてマルチなストーンズ(マルチなロック)であり得る、七色の発光体か? ふとそんなことを感じさせてもらった、当夜のインタビュー取材。スノッブなニュー・スタンダード志向なのではなく、全ては愛あるがゆえのものだね、なのです。


インタビュー/構成: 小浜文晶  



--- 本日は宜しくお願いいたします。まずは未発表ボーナス・ディスクのご感想からお伺いします。全体を通していかがでしたか?

 1曲目の「Pass The Wine(Sophia Loren)」に尽きますね。この曲の1発目の刻みで全てオーケーという印象を持ちました。似たような例で言えば、「Honky Tonk Women」のイントロ1発目。まぁ、あれは本当にゴージャスな録音で、リアルタイムに狙いに狙って作られたものですけど。これはボツ曲のデモ・テープをリファインしたものであるとは言え、「Pass The Wine」に全てがかかっていると思わせる、何か魔法のようなものがそこには含まれていると。

 ではなぜ、カッティング1発でここまで説得させられるのか? ということが、まず今回の『メインストリートのならず者』リニューアル・プロジェクトの全体の謎を解く鍵になっているんじゃないかなと思いました。

--- 未発表全11曲を通して聴くと、最終的に今回のプロジェクトの全体的なコンセプトというのがはっきりしてくるといった感じでしょうか?

 そうですね。インストの「Title 5」、あるいは「ダイスをころがせ」のオルタネイト・テイクもかなり印象的で、僕は本編よりもこちらのボーナス・ディスクの方が100倍好きですね(笑)。

--- 100倍ですか!?(笑)

 正直、僕は『メインストリートのならず者』はフェイヴァリット・アルバムではないんです。断言しますが。

--- そうだったんですね。ちなみにフェイヴァリットといいますと?

 ひとつ前の『Sticky Fingers』の方が好きですし、それよりも『Let It Bleed』の方が好き。さらに、『Let It Bleed』と同じぐらい『Beggars Banquet』が好きという嗜好なんですよね。

--- 年を追うごとに少しずつ嗜好から外れていくという。

 ようするに、ローリング・ストーンズの勝負曲および、その歴史を作る屋台骨になったのは、結局は“ファンク”であるという考え方があるからなんですね。「Jumpin' Jack Flash」でファンク回帰して、それが黒人音楽的なひとつの要素として『Beggars Banquet』全体に色濃く散りばめられ、その流れが完全に確立されたのが「Honky Tonk Women」。それから、新しい意味のジャンプ・ナンバーということで、ファンクの解釈をきちっと噛み砕いて全く新種のストーンズ・ファンクを生み出したのが「Brown Sugar」。

 そこから少し時代が跳んで、例えば(註)アイズレー・ブラザーズ(註)スライ&ザ・ファミリー・ストーンなんかのファンクの影響を受けて離陸したのが「Fingerprint File」で、それを予告にして「Hot Stuff」をはじめとする『Black And Blue』に至ると。さらにそれが、「Miss You」になり、「Start Me Up」になるということなんですよね。60年代マージー・ビート以降、つまり、バブルガムな要素を含んだヒット・シングル主義以降は、全て黒人音楽、特にファンクの感覚を屋台骨とした楽曲がストーンズのヒット曲になった。もっと言えば、ストーンズの音楽性の根幹をなしたと。


(註) ストーンズも腰を抜かしたであろうアイズレー、スライの代表アルバム

Isleys Live 3+3 Stand There's A Riot Goin On -暴動
Isley Brothers
『Isleys Live』
Isley Brothers
『3+3』
Sly & The Family Stone 『Stand』
Sly & The Family Stone 『暴動』



 実はストーンズはそれを根幹としながらも、ヒットを出さなきゃならないという使命の中では、色々なトライをし続けているということでもあるんです。例えば「Sex Drive」のように、シングル・ヒットを狙ったけど、結局はボーナス・トラックみたいになってしまった曲だったり。

--- 「Sex Drive」はきっちりとシングル・ヒットを狙って作られた曲だったんですか?

 間違いなく狙って作ったんだと思います。ただ、上手くいかなかっただけなんですよ。色んな事情で。あとは「Undercover Of The Night」もそうですね。(註)スライ&ロビーなんかの力を借りて、かなり狙っています。『Dirty Work』もいい例ですね。「Harlem Shuffle」は一応ヒットはしたんですが、やはりファンにとっては不満の残るサウンド処理で・・・しかし、これはストーンズのせいではなく時代のせいなんです。(註)スティーヴ・リリーホワイトのプロデュースでゲート・エコーが使われたりして、この時代の中では最善を尽くしているんですよね。しかし、最善を尽くしたにもかかわらず、結局上手くいったのは『Tattoo You』の「Start Me Up」のみ。だから、どんなに頑張ってヒットを狙っても上手くいかないときはいかないし、いくときはいく、という一例なんですよね。


  (註)スライ&ロビー・・・ドラムのスライ・ダンバーとベースのロビー・シェイクスピアによるジャマイカ・レゲエを代表するリズム・セクション。1970年代半ば、CHANNEL ONEレーベルで2人を中心としたスタジオ・バンド、レヴォリューショナリーズ名義で活動を開始。「ロッカーズ」リディムと呼ばれる激しいリズムを打ち出し、それまでワンドロップ・リズムが主流だったレゲエ・シーンに旋風を巻き起こした。80年、独自のTAXIレーベルを設立以降は、レゲエ・シーンのみでなく、ジャンル、国籍を問わず様々なセッションに招聘されるようになる。ローリング・ストーンズ作品では、83年の『Undercover』収録の「Feel On Baby」でダブ・ミックスを手掛け、その後はミック・ジャガーの初ソロ作『She's The Boss』にも参加している。彼らが制作に携わった楽曲は現在までに20万曲にものぼると言われている、まさに世界最高峰のリズム・セクション。


  (註)スティーヴ・リリーホワイト・・・80年代にピーター・ガブリエル『V』、XTC『Black Sea』、ポーグス『堕ちた天使』、U2『War』などを手掛け一躍トップ・プロデューサーとなったスティーヴ・リリーホワイト。「ゲート・エコー」と呼ばれるスネアの音をエフェクト処理で増幅させる特異なドラム・サウンドは、80年代ロックの象徴ともなった。ストーンズ作品には『Dirty Work』で登用され、「Hold Back」などでその定評ある「ゲート・エコー」サウンドを聴くことができる。ちなみにキースが歌うレゲエ・チューン「Too Rude」のエコー処理に関しては今もファンから賛否両論ある・・・。夫人はシンガーでもあるカースティ・マッコール。


 その上手くいった例を線でつなげると、「Jumpin' Jack Flash」以降は、全てファンク・ナンバーということになっているんですよね。

 で、その話をなぜ今ここでするのかというと、折にふれて僕は言い続けていることなんですが、まさにその延長線上に今回のボーナス・トラックがあって、長年考え続けていたその答えを、1曲目の「Pass The Wine」、さらにその1発目のカッティングだけで表現するに至っているんですよ。この最初の音が鳴った瞬間に、勝負は決まったようなもので、そこで、長年ストーンズに対して抱えていた問題が証明されるという結果になっているんですね。この「Pass The Wine」の役割としては。だから、ミックの声が入るまでもないという(笑)。


--- そうしますと、この「Pass The Wine」と『メインストリートのならず者』本編との直接的な関係性は薄くなるといいますか、むしろ、この曲を聴き込むほどに『ならず者』のアウトテイクでないのでは? という印象にもなってくるんですよね。

 そこからなんです。つまり、なぜ2010年にこれが出るのか? という問題。そして、『メインストリートのならず者』というのは何だったのか? ということになってくるわけなんですね。

 『メインストリートのならず者』は聴き直しましたけれど、やはり僕の中での印象は変わらなかった。リマスターを聴いても。昨年リリースされたビートルズのリマスターの中には、印象が変わった曲やアルバムがいくつかありました。『Revolver』がそうだったんですが、これは(註)「Taxman」によるところが大きかったんです。この曲ではベースが異様な分離を示し、そこで(註)ハービー・ハンコック・グループにおけるポール・ジャクソンのようなベースをポール・マッカートニーが弾いていた。21世紀型のファンク・サウンドをすでにやっていたという事実が明らかになり、『Revolver』の評価は塗り替えられたと。ここにもやはり“ファンク”が出てくるのですが、R&Bのような音楽というのは、非常に繊細な技術および、それに伴う録音技術が必要とされるということなんですよ。ずっとマスキングされていた『Revolver』の秘密が昨年のリマスタリングで明らかにされた。

 それがあって、今回のストーンズなんです。「Pass The Wine」のこのリズムは、何気なく聴いていると、「ストーンズって相変わらずだなぁ」って聴こえるのかもしれないんですが、逆に言えば、これは今じゃないとできなかったという感じでもあるんですね。実際のマスター・テープを聴いてみないと断言できない部分はありますが、すくなくとも現在の波形操作とダビングにおける彼らの技術がある上で、この曲はまさに“今”出現したんですよ。


  (註)ビートルズの「Taxman」・・・1966年に発表されたビートルズの通算7枚目のアルバム『Revolver』のオープニングを飾るジョージ・ハリスンが作詞・作曲を手掛けた曲。サエキ氏曰く「ポール・ジャクソンのような」というポールによる手数の多いファンク・ベースは、リマスター盤で是非ご確認を。またリード・ギターもポールが担当し、風変わりでエスニックなフレーズを盛り込んでいる。歌詞は、当時の高額な税金を富裕層から徴収していた労働党政権を皮肉っているもの。


  (註)ポール・ジャクソン・・・1973年にハービー・ハンコック率いるヘッドハンターズのベーシストとして入団以降、およそ10年にわたりエレクトリック・ハンコックのボトムを、その太く切れ味鋭いベース・プレイで支えている。ライブ盤の『洪水』や『ニューポートの追想』でのファンク・ベースは圧巻。70年代はフェンダー・テレキャスター・ベースを愛用。現在はESP社製のオリジナル・モデルを使用中。日本人女性との結婚を機に、85年から日本に在住している。


 もうひとつは、偶然にもほぼ同時期にリリースされることとなった(註)小坂忠の『HORO2010』。この『HORO2010』の中でなされていることと、かなり似ているんですよね。このボーナス・トラック集は、どこまで手を加えられているか定かではありませんが、リ・ヴォーカルされている、あるいはリ・ギターだったり色んなことがなされている。ストーンズが “当時やりたかったこと”と、“今できるようになったこと”とが混ざっているんですよね。あるいは、彼らがやったつもりでいたけど、それでは売り物にならなかったこと。つまり、当時の結果としては、ストーンズ的ファンク・サウンドというのは、この時代なぜかうまく売り物にできなかったということなんですよ。ところが、本当は彼らはそれを悪戦苦闘して実験していた。これはポール・マッカートニーの「Taxman」における所業が、長年認識されてなかったこととかなり似ているんですね。ここでは、「Brown Sugar」のようなファンク・サウンド曲をストーンズがやってみたはいいが、うまく完成させられなかったという苦い現実。 「Pass The Wine」などの代わりに「Rip This Joint」や「Let It Loose」みたいな曲でとりあえずやり過ごそうか、という印象を『メインストリートのならず者』には持ってしまうんです。


  (註)小坂忠の『HORO2010』・・・ジャパニーズ・ソウル/R&Bの原点としても知られる1975年の名盤『ほうろう』。その16chのマルチ・トラックが発見されたことを機に、新たに小坂忠がヴォーカルを新録音したニュー・エディションがこの『HORO2010』。当時のレコーディング・メンバーは、細野晴臣、林立夫、鈴木茂、松任谷正隆、矢野顕子、吉田美奈子、山下達郎、大貫妙子、矢野誠といった錚々たる面々。35年前に燃え上がった若き日本のソウルの情熱に、いまの小坂忠が歌で応える。前例のないリニューアル・アルバムとして、これまでにない懐かしくも新しい名盤が誕生した。


--- (笑)若干お茶を濁していたということですか?

 あの頃のストーンズの技術と、ヒット曲を生み出さなくちゃならない現実の中では、「Rocks Off」や「Rip This Joint」のようなわりとストレートな仕上がりの曲を作ることで妥協点を得るしかなかったんだと思います。この冒頭2曲の流れからして、早くも“超マンネリ的”というか(笑)。ボビー・キーズのサックスが入るところなんか、どう考えても既知感がありすぎるし。例えば、同じジャンプ・ナンバーでも、「Brown Sugar」の場合は、サックス・ソロがそれまでになかったから「突然の攻撃にアタマぶっ飛びました」みたいな突き抜けた感じがあるんですが、それに較べると「Rocks Off」は、どうしても“置きにいってる”感じが否めないんですよね。

 やはり僕が聴きたかったのは、「Brown Sugar」の続編だった。「Brown Sugar」の続編と呼べるような画期的なリズム構造でありながら、ジャンプ・ナンバーとしての曲の良さを兼ね備えているというものを聴きたかったんです。

 「Brown Sugar」のリズム構造に関しては、おもしろい話がありまして。これは(註)加藤和彦さんから伺った「Brown Sugar」のお話なんですが。2007年に、(註)越谷政義さんのプロデュースで『Respect The Stones 2』というトリビュート・アルバムを制作する際に、僕がコーディネート役として色々と動いていたんですね。そこで、(註)サディスティック・ミカ・バンドによるカヴァー曲を収録しようと考えていて、加藤さんからも半分オーケーが出ていたんです。予算内でのやりくりも色々と考えてくれて、「わかった、やり方がある」と。「実は、<タイムマシーンにおねがい>のリズムは、<Brown Sugar>を参考にして作っているから、<Brown Sugar>が、あの曲のリズムにそのまま乗るんだ」って言うんですよ。つまり、バンドを集めてイチから録り下ろすのではなく、「タイムマシーンにおねがい」のマルチを使って「Brown Sugar」を録音するっていうことなんですよね。


  (註)加藤和彦 / サディスティック・ミカ・バンド・・・愛称「トノバン」として多くのファン、音楽仲間たちから愛され、尊敬された稀代の名ミュージシャン/プロデューサー、加藤和彦。60年代後半にフォーク・グループのフォーク・クルセダーズでデビュー。その後70年代初頭からは、ソロ活動と並行してロック・バンド、サディスティック・ミカ・バンドを加藤ミカ(vo)、角田ひろ(つのだ☆ひろ:ds)らと結成し、高中正義(g)、高橋幸宏(ds)小原礼(b)をメンバーに加えながら、75年に解散するまで多くの名曲を残した。73年にデビュー・アルバム『サディスティック・ミカ・バンド』を発表するも、発売当初はほとんど売れなかったという。ほどなくして、まずはロンドンで人気に火がつき「逆輸入」という形で日本でも高く評価されるようになったエピソードは有名で、いかに加藤和彦の当時の英米ロックなどに対する高感度や昇華のセンスが優れていたかを物語っている。ミカ・バンドは、89年に桐島かれん、2006年に木村カエラをそれぞれボーカルに迎え、二度再結成をはたしている。


  (註)越谷政義・・・Mike M. Koshitaniこと越谷政義氏は、1966〜69年まで日本のローリング・ストーンズ・ファン・クラブ会長を務めていたことでも著名な音楽評論家/DJ/MC。ストーンズ、エルヴィス・プレスリーをはじめ、ロック、ブルース、ソウルなどのアルバム・ライナーノーツ、雑誌・新聞への執筆、ラジオDJ、イベントMC/プロデュースなどを手掛けている。主な著書には「STONES COMPLETE」(双葉社)、「ローリング・ストーンズ大百科」(ソニー・マガジン)、「ワークス・オブ・エルヴィス」(共同通信社)、「ストーンズそこが知りたい」(音楽之友社)、監修/主著に「ジャパニーズ・ロック・インタビュー集 〜時代を築いた20人の言葉」(TOブックス)、「キース・リチャーズ・ファイル」(シンコー・ミュージック)などがある。現在も、ミュージック・ペン・クラブ・ジャパン事務局長、ローリング・ストーンズ・ファン・クラブ顧問、エルヴィス・プレスリー・ファン・クラブ顧問として他分野で幅広く活動を続けている。



--- 言われてみれば、という気もほんの少ししますが・・・やはり意外というか、そのお話を伺うまではこの2曲をつなげる発想は全くありませんでした。

 にわかにはよく理解できないところもあるんですが、おもしろい話ですよね。で、その方向でお願いはしたんですが、結局、締め切りの関係などで実現はしませんでした。

 もうひとつ、加藤さんのお話になるんですが、以前「レコード・コレクターズ」誌上の「サディスティック・ミカ・バンドのサウンドの秘密を解く」という特集の中で、僕が加藤さんにインタビューを行っているんですね。さらに、「ミカ・バンドが参考にした音楽」というようなテーマで原稿を書くことにもなって。当時『Narkissos』というアルバムが出たばかりで、そこに僕が詩を提供していたということもあり、メールで加藤さんと直接やりとりをしていたので、先に僕が「こういうのはどうでしょうか?」と少し“ひねった”選盤でリストを送ったんですよ。そうしたら、今でも忘れられないんですが、とてつもない怒りのメールが加藤さんから返ってきまして(笑)。ワードに筆書体で「サエキくんへ 君のそういう勘違いは許せない。まるで判ってない」みたいなことが書かれていて、さらに加藤さんから「参考にした音楽」として返ってきたものが、(註)デヴィッド・ボウイの『Ziggy Stardust』や、(註)モット・ザ・フープルの『すべての若き野郎ども』や、(註)フェイセズの『馬の耳に念仏』をはじめとする、ものすごく当たり前の10枚だったんですよ。レゲエにしても(註)ジミー・クリフの『The Harder They Come』で、こちらとしてはSTUDIO ONE作品の突っ込んだところを聴いていたんじゃないか? と思っていたのですが、そうではなくて・・・用意したものは全部却下(笑)。


(註) 本文中に登場するアルバム

Ziggy Stardust All The Young Dudes Nod Is As Good As A Wink To A Blind Horse: 馬の耳に念仏 The Harder They Come -soundtrack
David Bowie
『Ziggy Stardust』
Mott The Hoople
『All The Young Dudes』
Faces
『馬の耳に念仏』
Jimmy Cliff
『The Harder They Come』



 その中で加藤さんは『Sticky Fingers』を挙げていて、「<Brown Sugar>という曲がグラム・ロックを生み出す元になっているんじゃないか」ということをおっしゃっていたんですよ。それ以前に、「Brown Sugar」に対しそこまで重要視した発言をしている人はいなかったし、僕自身も意外だと感じていたのですが、「レコード・コレクターズ」編集長の寺田正典さんはピンときたらしいんです。僕も後で気が付いたことなんですが、この曲のドラミングの裏拍の取り方というものには画期的な要素があって、それまでストーンズが実践してきたバック・ビートを完成させた趣きがあるということなんですね。アップ・ビートでありながら、バック・ビートが効いている。だからコピーが非常に難しくて、当時の高校生コピー・バンドなんかも、単純に “前のめり”なコピーは多くても、微妙にバック・ビートを効かせたコピーをしているバンドはまずなかったんですよね。あたかも「Rocks Off」のような直線的なコピーになっている場合がほとんど。特にドラマーがその辺の感覚をきちんと理解していないと、「Brown Sugar」のリズムの持つニュアンスは出せないんでしょう。

 だから、「タイムマシーンにおねがい」が「Brown Sugar」を参考にしているということを全く理解できないのには、そこに秘密があるわけで、本当に目から鱗のお話なんです。加藤さんと(高橋)幸宏さんは1970年代初頭で、リズム的な音楽性において「Brown Sugar」を正しく参考にしていた! 分析力が究極過ぎます。実際一聴すると全く違う世界ですからね。

 そういうことがあって、70年代ロック・シーンにおける「Brown Sugar」の重要性とその後隆盛するグラム・ロックとの関係性、さらには、サディスティック・ミカ・バンドが「Brown Sugar」のリズム構造をいかに細部まで把握し、それを自らのサウンドに生かそうとしていたか、ということ全てがつながったんですね。


--- 「Brown Sugar」のリズム構造などにいったん魅せられてしまうと、その後に続くものに簡単には満足感を得ることができなくなってしまう恐れもありそうですね。

 それもありますし、長年聴いてきて「Start Me Up」以降ヒット曲が生まれないことも判ってしまった。だから、「Sex Drive」を聴いてもいまいち興奮できない(笑)。その後の『Voodoo Lounge』では、ストーンズっぽい判りやすさや説得力があるということで、「Love Is Strong」なんかが妥協点になって、しかもそれを引き出すのはプロデューサーの(註)ドン・ウォズ、ということになる。『Steel Wheels』には残念ながらそういう曲はありませんでした。「Mixed Emotions」がギリギリ妥協点として仕上がっているぐらい。『Bridges To Babylon』も空振りでした。「Rough Justice」だとか、『A Bigger Bang』はわりとイイ線いっていましたが、やっぱりヒット曲は生まれていませんからね。


Don Was   (註)ドン・ウォズ・・・本名ドナルド・フェイグソン。80年代には、いとこのデヴィッド・ウェイスと結成したデトロイトのファンキー・バンド、ウォズ・ノット・ウォズで斬新でカラフルなダンス・サウンドを生み出し一世を風靡した。そのカラフルぶりは、ウェイン・クレーマー(MC5)、メル・トーメ、レナード・コーエン、ミッチ・ライダー、オジー・オズボーン、ハービー・ハンコック、マール・ハガード、シーラ・E らとの共演歴にも顕著。「12インチ・リミックス」の制作に積極的だったダンス・パイオニア的な側面の一方で、プロデュース作では、主役のカラーを重んじるかなり職人気質な役回りに徹する。ボニー・レイット『Nick of Time』にしろ、ボブ・ディラン『Under The Red Sky』にしろ、ストーンズ『Voodoo Lounge』にしろ、主役たちのコンセプトを十分理解しながらシンプルで理にかなった方法論でサポートし、全体を巧くまとめ上げている。



 ちなみに「Jumpin' Jack Flash」の前は、「(I Can't Get No)Satisfaction」なんですね。「Satisfaction」(1965年)が公に言われているのは、(註)マーサ&ザ・ヴァンデラス「Dancing In The Street」(1964年)を参考に作られた。さらにその後(註)スティーヴィー・ワンダー「Uptight」(1965年)は、その返礼で作られたと言われています。そんなモータウンとの、”いきつもどりつ”のやりとりがある。いずれにせよ、どう考えてもモータウンよりストーンズの方が“据わりの重いリズム” だということ。


  (註)マーサ&ザ・ヴァンデラス「Dancing In The Street」・・・1962年にマーサ・リーヴスを中心に結成されたマーサ&ザ・ヴァンデラスによる最もモータウンらしさが全面に出た1964年のヒット曲「Dancing In The Street」は、それまで黒人層向けのマーケットとされてきたR&Bが次々に白人主導のポップ・チャートへと送り込まれた、そんな時代の過渡期を如実に象徴している。また、この曲のプロモーション・フィルムは、デトロイトの自動車工場でロケされたもので、隆盛を誇った”モーター・シティ”の黄金期を覗き見ることもできる。85年にアフリカ飢餓救済チャリティ・コンサート「ライヴ・エイド」で実現したミック・ジャガー&デヴィッド・ボウイによる共演カヴァーがストーンズ・ファンにはおなじみなところで、その他にもキンクス、ママス&パパス、ローラ・ニーロ、グレイトフル・デッド、ヴァン・ヘイレンらが秀逸なカヴァーを残している。ほか、「Heat Wave」、「Nowhere To Run」、「Jimmy Mack」などもモータウン・クラシックス!


  (註)スティーヴィー・ワンダー「Uptight(Everything's Alright)」・・・ベニー・ベンジャミン(ds)とジェイムス・ジェマーソン(b)によるアタマ打ちで躍動するリズムが、声変わりをちょうど終えたばかりのリトル・スティーヴィー・ワンダーのたくましくなったノドに煽られる。66年のヒット曲「Uptight」と、ストーンズ「(I Can't Get No)Satisfaction」との近親性が語られることはしばしば。ある意味で巷の議論にケリを着けたのは、『ならず者』興行の72年7月ニューヨーク、マジソン・スクエア・ガーデン公演。前座を務めたスティーヴィー・ワンダー・レビューとの共演も実現し、「Uptight」からの「Satisfaction」という、”この2曲は同じ染色体を持つ”ということを暗に両者が公認したメドレーを披露。その模様はお蔵入りフィルム「Cocksucker Blues」にも収められている。


--- そうですね。そこまで極端にリズムは跳ねていないような気はします。

 ストーンズの方がヘヴィに聴こえるんですね。つまり、ロックがヘヴィになっていく上でポイントとなっている曲なんです。白人のロックは黒人音楽ほど切れ味や重みというものを持っていないのがそれまで普通だったんですが、「Satisfaction」は黒人を驚かす曲となるわけなんです。「R&B=黒人の方が優れていてエラい」という図式が続いているのではなく、黒人の側も常にストーンズやビートルズから影響を受けていたんです。とは言っても、「Yesterday」から強い影響を受けていたわけではなく、やはり「Satisfaction」に驚いて「白人ってときどきコワいな・・・」と感じていたと思うんですよね。ビートルズにしても「抱きしめたい」とか「She Loves You」には一目置いていたと思うんです。だからこそ、ビートルズ楽曲の黒人によるカヴァーも多いわけですから。「Satisfaction」に関しては、(註)オーティス・レディングの返答もありますし、黒人にとっては特に驚かされた曲だったんじゃないかなと思うんですよ。


  (註)オーティス・レディングの返答・・・ミック・ジャガーを骨抜きにしたソウルの大巨人、オーティス・レディングの1966年発表の3rdアルバム『Otis Blue』(2枚組全40曲のコンプリート盤もリリースされている)に収録された「Satisfaction」。「I've Been Loving You Too Long」への返答か否か定かではないが、「こんな歌い方の<Satisfaction>は、今までになかった・・・」と本家を唖然とさせた名唱で、『Live In Europe』、『In Person At The Whisky A Go Go』、『Live In Paris And London』といった各種ライヴ盤でも聴くことができる。ほか、アレサ・フランクリン、スモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズ、サム&デイヴ、メリー・ウェルズらにもカヴァーされており、ソウル巨人たちにことのほか同時代的に愛され続けている理由を今こそ知りたい・・・


 そういう意味でも、この「Pass The Wine」はヒットこそしないかもしれませんが、長年の飢えを満たしてくれるリズム構造を持っているんです。ただ、いい曲であれば絶対に当時リリースされているわけですから、残念ながらボツになったということは、メロディ的に標準以下だったということなのかもしれません。しかしながら、リズム構造という点において今回のボーナス・ディスクは、『Dirty Work』以後最も僕の興味を満たしてくれるアルバムと言っても過言ではないんですよ。

--- サエキさんにとっては、このボーナス・ディスクありきの『メインストリートのならず者』になるということですね?

 ひどい言い方をすれば、本編がオマケですね(笑)。ボーナスがメインで。好奇心を満たしてくれるという意味では、間違いなくストーンズ史上始まって以来のアルバムになるんですよ。しかもこの20年間、スタジオ録音では本当に満たされていなかったので・・・この20年間においても間違いなくナンバー・ワンのアルバムです。


--- このボーナス・ディスクが世に出ていなければ本編は・・・

 僕にとって、残念ながら永遠に二軍です(笑)。だから、世の中にはこういったようなケースがどのぐらいあるのか? と思ってしまいますよね。全く果たせなかった野望というものがあって、それが果たせたときに、世の中って何回でもひっくり返るんだろうなって。それを考えると恐ろしくなってしまいますけどね。

--- ストーンズ、ビートルズ以外で、今回のような体験をしたアルバムなどはありましたか?

 アルバムではないんですが、この間の(註)ジェイムス・テイラーとキャロル・キングの公演には、少しそんな印象を持ちました。全ての歴史を塗り替えて、この人たちを見直そうという気がしたんですね。認識が完全にリセットされたとでも言いますか、もちろん70年代当時から好きではありましたが、バックのザ・セクションの演奏を含めてここまで人を感動させる音楽であったかということを感じたんです。


  (註)ジェイムス・テイラーとキャロル・キング・・・70年代の米シンガー・ソングライター・ブームの火付け役にして、エバーグリーンな歌(と演奏)で今も多くの人々を魅了する至高のメロディ・メイカー、ジェイムス・テイラーとキャロル・キング。彼ら青春時代を過ごしたL.A.の伝説のライブハウス「トルバドール」の50周年記念ライブでの再集結&共演(写真CD)をきっかけに、2010年に「トルバドール・リユニオン」ツアーを開始。4月には日本武道館公演も実現した。ダニー・コーチマー(g)、ラン・カスケル(b)、リー・スカラー(ds)ら旧知のザ・セクションをバックに、自然体ながらエネルギッシュなステージを披露した。


--- ちなみに、この72、3年あたりのストーンズのライヴにはどういった印象をお持ちですか?

 来日公演が観れなかったということもあるので、この時期のライヴにある種の“幻想”を抱いているところはありますね。それ以前の『Get Yer Ya-Ya's Out』において完全に乗り切れていなかったところがあり、それが73年に最盛期を迎える。そういう意味でも、たまらないものはありますよね。

 でも、この頃のライヴDVDを観ていると、ミックの体の動きなんかは圧倒的に現在の方がいいんですよ。裏のニュアンスだったりに対する “修練の賜物”は、2000年代の方がひょっとしたらいいのかもしれないし・・・もちろん若さはないですけどね。


--- “裏”を意識したダンス・パフォーマンスに、まだぎこちなさがあると。

 う〜ん、ぎこちなさというか、やはり時代的にも、まだこれからの部分があったんですね。初々しさと表裏。だから、73年のライヴだけでなく、『Get Yer Ya-Ya's Out』にしろ、『Love You Live』にしろ、『Still Life』にしろ、全体的にどれも一長一短かな? という気がして。意外と(註)『A Biggest Bang』に入っていたリオでのライヴが好きだったりするんですよ。


  (註)ブラジル、リオ・デ・ジャネイロのコパカバーナ・ビーチに於けるフリー・コンサート・・・「Bigger Bang World Tour」の一環として、2006年2月18日夜、ブラジルはリオ・デ・ジャネイロのコパカバーナ・ビーチにて行われたストーンズのフリーコンサートには150万人を超える聴衆が集まった。サンバの国ブラジルの街を上げてのお祭り騒ぎに、ストーンズ側が用意したコンサート・セットも巨大でド派手。22m×57mのメイン・ステージと55mのサブ・ステージ、さらに16本のタワーと8つのビデオ・スクリーンとかなり大掛かりなもの。当日の会場設置、メンバーのオフショット、ライヴの模様をドキュメント風に追った映像は、DVD『The Biggest Bang』に詳細に収められている。


 あと、73年当時のライヴでミック・テイラーが果たしている役割が圧倒的に大きい。実はそこが問題で、ミック・テイラーとはストーンズにとって何だったのか? と。完全な推測ですが、ライヴでこれだけ頼られている人が、スタジオではキースの仕切りで大変な目に合っていると(笑)。そのバランスがすごく悪い。ミック・テイラーは、ストーンズのアルバムをアレンジメントできるだけの地位もなければ、おそらく、メンバーに溶けこんでリードする状況もない。ライブでは重宝されてるのにね。すくなくとも「Time Waits For No One」のようにミック・テイラーのキャラクターが生かされている曲っていうのは、むしろさかのぼって、『Let It Bleed』にあるんじゃないかなと。『Let It Bleed』の方がミック・テイラーっぽさが出ている。『Let It Bleed』は、ミック・テイラーに対する“サービス・アルバム”なんじゃないかと思うんです。「ストーンズに入れば、これだけいいことがあるんだからさぁ」って(笑)。でもストーンズの体質というのは、推測ですが、入ったが最後きっと地獄を見るんですよ(笑)。長い間徒弟制度で鍛え上げられて、20年目ぐらいでやっと正式メンバーになれるっていうバンドじゃないですか? まぁ、ロン・ウッドのことですが。 だとしたら、ミック・テイラーは相当ひどい目に合っているんじゃないかとつい勘繰ってしまうんですよね。

 ところが、ロン・ウッドはキースと兄弟のようにサウンドを作ることができる。(註)『Now Look』(註)ニュー・バーバリアンズのライヴ盤などを聴けば判るとおり、キースとの類似性は明らか。ただ、それだけ似ていたがために、ものすごい苦労をすることになったのではないかとも思えるんですね。ミック・テイラーに対する“サービス・アルバム”が『Let It Bleed』だとしたら、ロン・ウッドに対する “サービス・アルバム”は『女たち』だと思うんですね。あのアルバムにおいてのロン・ウッドの個性の出方は、かなり突出している気がします。「この新入り最高だぜ」というのをバンドがアピールしている上に、「ローリング・ストーンズにいれば、すごくいいことがあるんだぜ」というのをロン・ウッドに味わわせてあげているようなアルバムなんじゃないかなと思います(笑)。

 しかし、それ以降は新譜を作るということは“修羅場”であり、“最前線”でもあるから、そうすると「いい目を見させてあげよう」というような心遣いも減ってきてしまって。


(註) 本文中に登場するロン・ウッドのソロ・アルバム+@

I've Got My Own Album To Do Now Look Live From Kilburn Buried Alive
Ron Wood
『I've Got My Own Album To Do』
Ron Wood
『Now Look』
First Barbarians
『Live From Kilburn』
New Barbarians
『Buried Alive』


--- 構っている場合じゃないというか、むしろ「いつまでもお客さんヅラしてるなよ」ぐらいの詰め方はされていそうですね(笑)。

 とにかく作らなきゃならない、と(笑)。それで、ロン・ウッドはどんどん辛い立場になっていくし、ローリング・ストーンズ自体のポテンシャルも何だかワケが判らなくなっていく・・・という感じなのではと勝手に想像しています。

 話を戻すと、ミック・テイラーの役割の整理というのもおぼつかず、だんだんワケが判らなくなっていって、最終的には、サンタナみたいな『Time Waits For No One」のような曲で「はい、さよなら」と。あのアルバム(『It's Only Rock'n Roll』)にしても結局は、ロン・ウッドをフィーチャーした「It's Only Rock'n Roll」がメイン曲になっていますから、“外部入力”で蘇生させるという “ステップ・アルバム”ですよね。だからこそあのアルバムはちょっと元気がある。『山羊の頭のスープ』なんかは本当に混沌として、『メインストリートのならず者』とは全く違う局面を見せているわけですから。

 極端な言い方をすれば、『メインストリートのならず者』と『山羊の頭のスープ』は、ミック・テイラーをはじめとする、サウンド状況を整理しきれていないアルバムと言えるんじゃないかなと思っています。ところが、2009〜10年ともなりますと、ミック・テイラーはとっくの昔に辞めているし、ハード・ディスクで自由に整理ができるし、差し替えも自由にできるとなると、やりたい放題のことができる。それを受けて、「こうあるべき」という信念に向かって一直線に、ミックとキースがエディットしていったんじゃないかと思うんですよ。まぁ、チャーリーはああいう人ですから「好きなようにやってくれ」としか言わないでしょうけど。でもチャーリーも、この結果は、かっこいい! と思ってるはず。  

--- ドラムを新しく差し替えたり、足した感じはなさそうですよね。

 空間が違うとどうにもならないので、足せないですよね。ドラムがいちばん空間を支配する楽器なので。その分、ベースをそっくりそのまま差し替えてしまえば、印象はだいぶ違いますけどね。

--- ベースがダリル・ジョーンズに替わるだけでここまで変わるかという。

 やはり全く違うものになりますよね。あくまで推測ですが、仮にキースがこんな感じのベースがいいと思っても、弾けないんじゃないでしょうかね。ビル・ワイマンが弾いているという前提を完全に無視して話していますけど・・・(笑)

--- 今回のストーンズや小坂忠さん『HORO2010』のようなリニューアル・アルバム作りが、これからひとつのスタンダードになる可能性はありそうですか?

 必要性があれば、という感じでしょうけど。例えばスライの『Fresh』以降の作品を、今手を加えて作り直して、もっといいものにするとか。それはかなり興味ありますよね。「作り直してほしいアルバム」をベスト10形式で募集するのもいいんじゃないですかね(笑)。

--- それはかなりおもしろそうですね(笑)。

 僕が今思い当たるところでは、(註)ジョン・レノン『Mind Games』(註)スライ『Heard Ya Missed Me, Well I'm Back』(註)ジョニ・ミッチェル『夏草の誘い』。それから、(註)サンタナ『Welcome』。サンタナのこのアルバムに関しては、発表当時の来日公演はすごくよかったんですが、同じメンバーであるにもかかわらず、そのよさがアルバムのサウンドには顕れていないと思っていましたから。一方で、(註)ボズ・スキャッグスの『Silk Degrees』(註)イーグルスの『Hotel California』なんかは、絶対に作り直す必要がないアルバムだと思いますが。


(註) 本文中に登場するアルバム

Mind Games Heard Ya Missed Me, Well I'm Back Hissing Of Summer Lawns Welcome
John Lennon
『Mind Games』
Sly & The Family Stone
『Heard Ya Missed Me, Well I'm Back』
Joni Mitchell
『Hissing Of Summer Lawns』
Santana
『Welcome』
Silk Degrees Hotel California
Boz Scaggs
『Silk Degrees』
Eagles
『Hotel California』
   




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サエキけんぞう ライヴ&トークイベント・スケジュール


サエキけんぞう&Club Je t'aime ライブ
「歌心に集え!Real French Night! 2」


会場:渋谷 青い部屋
日時:2010年6月24日(木)開場18:00 開演19:00
料金:(予約)2500円/(当日)3000円
出演:日比谷カタン
      サエキけんぞう&Club Je t'aime <NANASE(p)、木恵つよし(g)>
      「les cocottes」(レ・ココット) <YUCA(from 東京キャ☆バニー)(vo,dance)、
      MIHO(from hi-posi)(vo,dance)、ゲイリー芦屋(p)>
      田ノ岡三郎(アコーディオン)
      ヨコシマ姉妹(from Pecombo)<横島ペ子、横島リエ(vo)、中西文彦(g)>
      *ヴォーカルグループ「ペコンボ」から生まれた横島ペ子・横島リエの姉妹ユニット。
      フレンチ・ボサノバから昭和歌謡まで・・・ヨコシマながらボーダレスな選曲を極上なハーモニーでお届 けします♪

      DJ KOKI
お問合せ/ご予約:03-3407-3564
メールでのご予約:inquiry@aoiheya.com
                        pearlnet@nifty.com



サエキけんぞうのコアトーク vol.79
「追悼:加藤和彦を語ろう」


会場:新宿ロフトプラスワン
日時:2010年7月23日(金)18時30分開場 19時30分開演
料金:(前売)2000円/(当日)2300円 共にドリンク代別
出演:【特別ゲスト】小原 礼(サディスティック・ミカ・バンド)
      【ゲスト】小川真一
      【司会】サエキけんぞう
お問合せ:03-3205-6864
      ロフトプラスワン

※前売は6/5(土)よりローソンチケット、イープラスで発売
【Lコード:37893】

profile

サエキけんぞう (さえき けんぞう)

 1958年千葉県出身。1980年、ハルメンズのヴォーカリストとして『ハルメンズの近代体操』でデビュー後、83年に窪田晴男、中原信雄らとパール兄弟を結成。86年『未来はパール』でアルバム・デビュー。90年に窪田晴男の「勘当」(≠脱退)で事実上の活動停止を余儀なくされるも、2003年に窪田の復帰で活動を再開。アルバム『宇宙旅行』とスタジオ・ライブDVD『真珠とモノクロ』(ドラムに、ROVO、デートコース・ペンタゴン・ロイヤル・ガーデンでおなじみの芳垣安洋、ベースには、宮間利之とニューハード、梅津和時グループで知られる立花泰彦を迎えた4人編成バンド)をリリースしている。ソロとしては、2003年にフランスでアルバム『スシ頭の男』をリリースし、フランス・ツアーも行った。また、沢田研二「ポラロイドGIRL」、ムーンライダーズ「9月の海はクラゲの海」、西城秀樹「Rock Your Fire」、モーニング娘。「愛の種」など多数のアーティストに作詞提供を行いながら、テレビ、ラジオ出演、さらには、エッセイスト、プロデューサーとしても幅広く活動中。2009年には、総合プロデュースを手掛けたアキバ系ガールズ・ポップ・コンピ『TOgether SONGS Neo girls 2010』を自身のPearlnet Recordsからリリースしている。