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「ベルリン・フィル・ラウンジ」14号:ラトルのシーズン・オープニング・インタビュー、映像公開! ベルリン・フィル・ラウンジへ戻る

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2010年1月6日 (水)

ドイツ銀行 ベルリン・フィル
ベルリン・フィル&HMV提携サイト
 ベルリン・フィル関係ニュース

ベルリン・フィル・メディア、トビアス・メラーより新年のごあいさつ
 新年明けましておめでとうございます。HMV ONLINEのご協力により「ベルリン・フィル・ラウンジ」をスタートしてから、早くも約5ヶ月が経過いたしました。昨年は、多くの日本の皆様にデジタル・コンサートホールを通してベルリン・フィルの演奏会を体験していただき、たいへん嬉しく思っております。このサービスは、海外のお客様に当オーケストラをより身近に感じていただく目的で開始したものですが、現在日本はドイツに続き、最もアクセスの多い国です。これと平行して当ミニサイトでは、現地におけるベルリン・フィルの最新情報を、どのメディアよりも早く、生の声でお届けしております。今後もデジタル・コンサートホールと合わせ、ベルリン・フィルに親しむための情報ベースとしてご利用いただけますと、まことに幸いです。
 2010年が、わたくしどもにとって重要な日本の聴衆に、素晴らしい音楽体験をもたらす年となることを、心よりお祈りしております。Ein frohes Neues Jahr!

トビアス・メラー
ベルリン・フィル・メディア/マーケティング部長

ライナー・ツェペリッツ氏、79歳で死去
 12月23日、ベルリン・フィルの伝説的コントラバス奏者ライナー・ツェペリッツ氏が、79歳で亡くなりました。ツェペリッツ氏は、1930年ジャワ生まれ。51年にベルリン・フィルに入団し、57年から95年の退団まで、40年近くにわたって首席コントラバス奏者を務めました。66年から78年、81年から84年には、オーケストラ代表の任にあり、カラヤン時代のベルリン・フィルを代表する団員として広く活躍。日本においても、ベルリン・フィルの室内楽アンサンブルや、サイトウ・キネン・オーケストラにおける演奏により、広い人気を博しました。

 次回のデジタル・コンサートホール演奏会

ソヒエフがベルリン・フィルにデビュー!共演はグリモー
(日本時間1月11日早朝4時)


 北オセチア出身の若手指揮者トゥガン・ソヒエフが、ベルリン・フィルにデビューします。トゥールーズ・キャピトル国立管の音楽監督を務める彼は、日本にも客演して好評を博していますが、ドイツではこれまでベルリン・ドイツ響やフランクフルト放送響等で指揮していました。昨年のウィーン・フィル・デビュー(メータの代役)の後、ついにベルリン・フィルにも登場します。メイン曲目は、ラフマニノフの第2交響曲。同曲は、過去にキリル・ペトレンコがベルリン・フィル・デビューで取り上げていますが、ソヒエフの音楽作りにも期待が掛かります。
 一方ラヴェルのピアノ協奏曲では、エレーヌ・グリモーが2年半ぶりに登場します。グリモーは、90年代の初めからベルリン・フィルと共演していますが、前回はバルトークの第3協奏曲で名演を披露しました。ラヴェルのト長調コンチェルトは、すでに2000年の定期演奏会で取り上げており、今回が2度目の演奏となります(写真:Kasskara/Deutsche Grammophon)。

【演奏曲目】
ホリガー:リストの2作品のトランスクリプション
ラヴェル:ピアノ協奏曲
ラフマニノフ:交響曲第2番

ピアノ:エレーヌ・グリモー
指揮:トゥガン・ソヒエフ


放送日時:1月11日(月)午前4時(日本時間・生中継)

この演奏会をデジタル・コンサートホールで聴く!

 アーティスト・インタビュー

サー・サイモン・ラトル
「私は、ベルリン・フィルがドイツを代表するナショナル・オーケストラであるべきだと思います」
聞き手:クラウス・シュパーン(『ツァイト』紙音楽記者)

 前回に続き、ラトルのシーズン開幕演奏会におけるインタビューをお届けします。前半と同様、ここでもシュパーン氏のきわどい質問を巧みにかわすラトルの弁舌が見ものです。とりわけ「ベルリン・フィルはベルリンの聴衆のものではなく、デジタル・コンサートホールの聴衆のものになってしまうのではないか?」という問いに対して、「ドイツの聴衆のものです」と答える機転には唸らされます。スマートさを崩さず、常にユーモアを保つ姿勢には、ラトルの温厚なキャラクターが表われているでしょう。カラヤン時代からの首席指揮者自室(兼楽屋)が見れることも、この映像の魅力です。

シュパーン 「チェリビダッケは、CDを“音のするパンケーキ”と呼び、“音楽はライヴにおいてのみ伝達され得る“と主張しました。彼のこの意見は間違っているでしょうか?」

ラトル 「いいえ、彼は間違っていません。もちろん同じ空間を共にする人々の関係の方が、良いに決まっています。しかし我々は誰でも、チェリビダッケの録音が世に残されていて本当に良かったと思っているのです。彼は録音が大嫌いだったわけですが、私はこれらがなかったら何かが欠けていると思うでしょう。つまり録音とは、セカンド・ベストなのです。今日の情報社会では、人々は芸術や文化が物として手に入ることを期待しています。家に電気や水道があるのと同じくらい普通のことです。音楽の分野において、それをしない理由はないでしょう。もちろん音楽は単なる道具や機器ではありませんから、集中して聴くことが必要です。デジタル・コンサートホールの映像がオーソドックスな理由も、ここにあります。聴き手が音楽に集中できるシンプルなものしたいと思うのです。いずれにしても、CDや配信という音楽伝達の形式を無視することはできません。音楽を何らかの形で聴衆に伝えていくことは、本当に重要だからです」

シュパーン 「チェリビダッケに対してカラヤンは、音楽と技術の統合を過大評価としたと言えるでしょうか?」

ラトル 「カラヤンについては、時代性もあったと思います。彼のコンサート映像には、既存の録音にオーケストラが合わせて演奏する、というものがあります。それはある時代のスタイルだったのです。私個人にとっては、カラヤンがやっていたことを直接見ることができるのは、非常にありがたいことです。事実、私が初めてベルリン・フィルに来たとき、オーケストラはその映像の撮影をやっていたのです。何人かのメンバーが舞台に座って、何年も前の録音に合わせて音楽を演奏している格好をする(笑)。もちろん奇妙な体験でしたが、それは当時の趣味だったと言えるでしょう。本物のカラヤンは、ちゃんと指揮していましたよ」

シュパーン 「かつてレコードとは、オーケストラにとって絶大な収入源だったわけですが、今日では状況が厳しくなっています。デジタル・コンサートホールは、将来お金の稼ぎ口になると思いますか?」

ラトル 「お金稼ぎを目的にする、という風には考えていません。ひょっとすると50年後、100年後にデジタル・コンサートホールが新しい収入源になるということはあるかもしれません。いつか投資したお金が返ってくる、というのであれば、それに越したことはないでしょう。しかし現時点では、とにかく人々に音楽を提供したい、ということに尽きます。同時に、過去の演奏も見聴きできるようにすること。そして映像がどんどん貯まっていって、世の音楽学生やファンがいつでも観れるようにすること。そしてどこからでもアクセスできるということが、重要なのです」

シュパーン 「将来、スポンサーなしでデジタル・コンサートホールを続けてゆくことは、可能だと思いますか?」

ラトル 「ドイツ銀行が最初の投資をしてくれたおかげで、このプロジェクトが実現したのは事実です。しかし将来的には、経済的にも自立して運営することが可能だと思います。もちろん時間は掛かるでしょう。しかし私は、デジタル・コンサートホールがきちんと機能してゆくと思います。なぜならこれは、今後の音楽体験のあり方を先取りしているからです。好きなときにどこからでもベルリン・フィルにアクセスできるというのは、インターネット時代そのものです」

シュパーン 「ベルリン・フィルはベルリン州の資金で運営されていますが、ベルリン・フィルは我々ベルリン市民のものでしょうか?それともデジタル・コンサートホールで観る世界の聴衆のものでしょうか?」

ラトル 「両方、そしてドイツ全体のものだと思います。私はベルリン・フィルが、ドイツを代表するナショナル・オーケストラであるべきだと思います。我々はドイツの一部であるべきであり、国内のあらゆるところへ行って演奏すべきです。ベルリン・フィルはあらゆる人々のものであるべきですが、ハートはベルリンに、そしてドイツにあるのです」

シュパーン 「今シーズンの重点は、どのような点にありますか?」

ラトル 「いくつかの重点が用意されています。フェスティヴァル的なことを考えていまして、2月にはシベリウスの全交響曲をベートーベンの全ピアノ協奏曲と組み合わせて演奏します。ソリストは内田光子さんです。もうひとつのラインは、ブラームスとシェーンベルクです。シェーンベルクは、ブラームスのようでありたいと思っていました。彼はブラームスを、19世紀の作曲家のなかで最もモダンで革新的だと考えていたのです。さらにハイドン、リスト、クルターク、リゲティ、バルトークを総括するハンガリー音楽のラインがあります。というわけで、様々な方向性をフォローしてゆくつもりです。オーケストラにとっても、新しい曲がたくさんあります」

このインタビューの前半を読む
シーズン開幕演奏会の予告編映像を観る(無料)
シーズン開幕演奏会をデジタル・コンサートホールで聴く!

 ベルリン・フィル演奏会批評(現地新聞抜粋)

今が旬!ヤンセンのヴァイオリンに絶賛続出。ハーディングには辛めの評
定期演奏会(2009年10月15〜17日)

【演奏曲目】
バルトーク:弦楽のためのディヴェルティメント
ブリテン:ヴァイオリン協奏曲
R・シュトラウス:死と変容

ヴァイオリン:ジャニーヌ・ヤンセン
指揮:ダニエル・ハーディング


 ハーディングが8年ぶりに登場した10月の定期演奏会では、ブリテンのヴァイオリン協奏曲を弾いたヤンセンが圧倒的な評価を得ています。どの新聞を見ても、手放しの大絶賛。彼女の情熱的なパフォーマンスが、聴衆の心をつかんだことが強く伝わってきます。日本では宇野功芳氏ご贔屓のヴァイオリニストとして知られるヤンセンですが、今後ベルリン音楽界のアイドルとなることは間違いないでしょう。
 これに対し、ハーディングには相当に辛い点が付いている印象です。現在ヨーロッパでは、彼に対する風当たりが強くなっている傾向がありますが、それは「早熟の天才」以上の個性が問われる時期にあることと関係しているのかもしれません。ライバルとしてドゥダメルとネルソンスの名前が挙がっていることにも、興味をそそられます。

「今回もヤンセンは、実に素晴らしいセンスでブリテンを弾いた。それはまるで野獣が獲物に飛び掛る姿さえ連想させ、彼女は作品を好きなように翻弄するという感じであった。ヤンセンはリスクをものともせず、まさに情熱的に弾きまくったが、この晩はすべてが成功していたと言える。(略)これに対して、後半は少々落胆させられる内容だった。ハーディングの《死と変容》は、全体にポエジーがなく、オーケストラには豊かな色彩が欠けていた。ベルリン・フィルは自動運転に切り替わった感じで、ルーチンな演奏に始終した(10月17日付け『ベルリナー・モルゲンポスト』フェリックス・シュテファン)」

「当夜のスターは、まぎれもなくジャニーヌ・ヤンセンであった。彼女はお気に入りの曲であるブリテンのコンチェルトを弾いたが、それはまさに作品の世界に飛び込むという感じであった。最初のソロ・パッセージを弾いただけで、彼女は弓にまとわりついた髪を振りほどかなければならなったのである。その燃えるようなパッションたるや、聴いていて胸が苦しくなるほどであった。激しい弾きぶりは3楽章を通して変わらず、彼女は最終音までモルト・エスプレッシーヴォで弾き抜いたのである。しかしこの真のライヴ・アーティスト、ヤンセンに対して、ダニエル・ハーディングの何と生彩のなかったことだろう。彼はかつて神童としてスタートしたが、今やドゥダメルやネルソンスに追い越されてしまった観がある。バルトークでは内的緊張は部分的にしか生まれず、シュトラウスではこれはという個性が不在だった(10月17日付け『ターゲスシュピーゲル』フレデリック・ハンセン)」

「ジャニーヌ・ヤンセンの演奏は、情熱的であると同時に真摯で、圧倒的な説得力を放っていた。すべての音に熱がこもり、フレーズは雄弁な語り口を見せて、大きな情熱の孤を描いていたと言える。彼女ほど、技巧が音楽的内容と表現の一部であることを見せてくれる器楽奏者は稀だろう(10月17日付け『ベルリナー・ツァイトゥング』マルティン・ヴィルケニング)」

この演奏会をデジタル・コンサートホールで聴く!

 ドイツ発最新音楽ニュース

本コーナーでは、ドイツおよび欧米の音楽シーンから、最新の情報をお届けします。

ベルリン国立歌劇場の改装と音響改善
 ベルリン国立歌劇場は、今年9月より改装を予定しているが、それに際して反響空間が拡大されることになった。これは音響改善をねらってのもので、天井を1階分上げ、4階席の上に(座席のない)スペースが増設されるという。当初改築は、客席をモダン化することになっていたが、世論の反対により戦後再建時の現デザインが維持されることになった。現在反響は調整装置なしの状態で1.1秒だが、改装後には1.6秒になるとのこと。国立歌劇場は、来シーズンより2013年秋まで閉鎖され、公演は3シーズンの間、西側の旧シラー劇場で行われる(写真:©Marion Schöne)。

ウィーン・フィル・ニューイヤー・コンサート、2011年の指揮者はヴェルザー・メスト?
 ウィーンの日刊紙『スタンダード』は、2011年ウィーン・フィル・ニューイヤー・コンサートの指揮者がフランツ・ヴェルザー・メストになると報じている。ウィーン・フィル側の公式発表は、現在のところなし。しかしウィーン国立歌劇場の新音楽総監督に就任するヴェルザー・メストの登場は、ほぼ確実と見られている。一方、今年のニューイヤー・コンサートは概ね好評で、ジョルジュ・プレートルの指揮は「最高に詩的な表現を実現」(同紙)。テレビ中継におけるバレエでは、ヴァレンチノの華麗な衣装、エレオノラ・アッバニャート、ニコラ・ルリッシュ(パリ・オペラ座)のエレガントな踊りも話題となった。

リュック・ボンディ「演劇界は荒涼たるもの」
 演出家で、ウィーン芸術週間の総監督リュック・ボンディが、ドイツ語圏の演劇を批判している。「現代の演劇界(注:ストレート・プレイ)は荒涼たるもので、ブラックホールに陥っている。ハンブルク、ベルリン、フランクフルトに特定の演出家のグループがいて、メインストリームを形成。舞台は大抵のものが型にはまっており、創造性に欠ける。」昨年夏には、作家のダニエル・ケールマンが、ルーチン化したレジーテアーターを批判してスキャンダルとなったが、ボンディも似たような状況を指摘していると考えられる。

ライプツィヒ・ゲヴァントハウス、2011年5月にマーラー・チクルスを開催
 ライプツィヒ・ゲヴァントハウスでは、2011年5月18日のマーラー没後100周年に際し、マーラー・フェスティヴァルを開催するという。ゲヴァントハウス管をはじめ、世界的オーケストラが14日間にわたり、交響曲全曲と周辺作品を上演。客演オケには、ウィーン・フィル、ロイヤル・コンセルトヘボウ管、バイエルン放送響、ニューヨーク・フィル、ロンドン響、ドレスデン・シュターツカペレ、マーラー室内管、チューリヒ・トーンハレ管等が予定されている。指揮者はシャイー、ゲルギエフ、ガッティ、ハーディング、ルイージ、サロネン、ギルバート、ジンマン、準メルクル他。チケットの発売は、1月4日にスタートしている。www.gewandhaus.de/mahler2011


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