サイケデリック･ムーブメントが吹き荒れた60年代後半の英国音楽シーンの中で狂気の天才＝シド･バレットを擁し全英チャート6位になったこのアルバムでフロイドはデビュー！フロントマンであるシドが作るポップ感覚溢れる作品はいわゆるプログレ作品ではないが、ポップアート感が全面に出たサイケデリックの傑作として非常に聴きやすい！ その後シドはドラッグにより精神を病み脱退を余儀なくされるのだが、彼の精神はその後のフロイドの中に生き続ける事になる。「シド･バレット＆ピンク･フロイド」…何をおいてもこの名盤を一聴する事をお薦めする！

サイケデリックなコズミック感覚が全体を覆うフロイドのセカンド。このアルバム製作途中で音楽的な支柱であったシド･バレットが過剰なドラッグ摂取により脱退を余儀なくされ、友人であったデイヴ･ギルモアが替わってフロイドに加入。アルバムはリック・ライトとロジャー･ウォーターズが中心となって製作が継続され、サイケから「プログレとしてのピンク･フロイド」に突き進んで行く事になる。「サイケデリックの新鋭＝フロイド」はこのセカンドにしてすでに実験的な楽曲を産み出しており、�@、�B、�Dは『神秘』と題されたこのアルバムに実に相応しい！特に12分に及ぶタイトル曲�Dでは、後の大作主義の予兆が見てとれる。

一応フロイドのサード･アルバムという事になるのであろうが、サントラという認識のせいか？フロイドのアルバムの中ではいちばんスルーされる傾向にある悲しい宿命のアルバム。その手の映画のサントラとしてごく短期間で製作された作品なのだが、アルバム全体はバラエティーに富んでおり比較的聴きやすい曲も多い。シングルカットもされたハードロック調の�Aや同傾向の�H、初期のステージでの定番曲でもある叙情性溢れる�Eはぜひ一聴をお薦めする。私は�Iを聴いて改めてギルモアはブルース系のギタリストなんだ〜と再認識した次第。

フロイドがもっとも野心的でバンドとしても均等なバランスで運営されていた時期に発表された二枚組大作！1枚はライヴ、そしてもう1枚はそれぞれの作品を平等に収録している変則アルバムなのだが、このスタジオ作品がフロイドの実験音楽の場と言える作品で、昔から圧倒的にもう1枚のライブの方が人気。特に�Aは人気が高い！ �@は1stに収録されたシドの曲で、�Bと�Cは2nd『神秘』から。今、改めてスタジオ作の方を聴くとメンバーそれぞれの個性が顕著に現れていて実に面白い。フロイド作品の中ではもっとも実験性の強く出たアルバムなのでとっつきにくい面は否めないのだが非常に重要な作品なのである。

70年発表の4作目。フロイドが現代音楽家のロン･ギーシンと共に作り上げたプログレのエポック･メイキングな作品！23分に及ぶオーケストレーションとロック･ミュージックの最も素晴らしい融合と言えるタイトル組曲�@の素晴らしさはまさに驚異であり、これこそプログレッシヴである。1970年という時代にこれが発表されたという事実だけでもいかにフロイドが凄いバンドであったのかが解かる。�Aはウォーターズ作のアコースティック佳曲、ライト作の�Bもいかにも彼らしいサイケチックな良曲。ラストの�Dはバンドのお遊び的な一面が垣間見える決して難解ではないコンクリート･ミュージック風作品。このアルバム、マジで名盤です！

ベース・リフのドライヴ感が印象的なフロイド流ハードロックのインスト『吹けよ風、呼べよ嵐』で幕を開け、アコースティックやジャジーな小曲を間にはさみ、ラストにこの時期のフロイドの集大成とも言える幻想的な名曲『エコーズ』を収録したこの作品は、『原子心母』と『狂気』という名盤とモンスター･アルバムに挟まれた気の毒な立ち位置なのだがこれまた素晴らしい名盤である。その中でもやはりハイライトは23分に及ぶ�E！ この1曲だけでも聴いて下さい。 その音楽形態を進化させ、サイケデリックから現代音楽、クラシック、ジャズ、フォーク、ブルーズ、そしてSEまでのあらゆる音を包括し、独自の解釈でその音世界を作り上げたピンク･フロイドの真のプログレッシヴな姿がここにある！

『おせっかい』と『狂気』という傑作の間に発表され、さらにサントラという事でほとんどまともに評価されていないのでは？と思える悲しいアルバム。まぁ、製作時間が短かったという事もあり、メンバーそれぞれの持ち合わせ曲を「せーのッ〜で録音しちゃいました！」的なノリの作品と言えなくもないが、実はフロイドの作品中、もっとも普通にバンドの一枚として作られたアルバムであり、本来もっともっと評価されるべき良い曲が詰まったアルバムなのである。特に穏やかな�Bや隠れた名曲として人気の高い�E、そしてライト作でヴォーカルも彼自身が取っている�Hはなかなかの佳曲。

あらゆる意味で「金字塔」となったモンスター・アルバム！所謂プログレのアルバムがここまで一般的に受け容れられた事実が驚異なのだが、このアルバムが超ベストセラーに成り得た要因は、フロイドが意識したかどうかは別にしても「プログレッシヴ･ロック」という作品中に恐ろしく質の高いヒーリング要素、つまりBGMと言い切ってしまえる一般性を持たせた故であろう！前作ラストの大作『エコーズ』をより進化＆発展させ、遂には40分を超える組曲「狂気」としてアルバムをまとめあげたこの時期のフロイドの恐るべきエナジーには脱帽もの！またクリス･トーマス、アラン･パーソンズたち製作陣の仕事ぶりもお見事！

モンスター・アルバムである『狂気』の次に発表された、これまた傑作中の傑作と評されるアルバム！が、しかし…75年の発表当初は壮大なシンセサイザー使用によるオープニングからしてそれまでのフロイドとは趣きが異なった作風に評価が分かれたのも事実。前作のとんでもない成功により、自身の音楽が怪物として自分たちに牙を剥いてきた事実に対して彼らが救いを求めたのはシド･バレット…その人であった。赤裸々な一人に人間に対する彼らの想い、求め、救いが込められたリアルなアルバム…それがこの『Wish You Were Here〜あなたがここにいてほしい』なのである。

評価の高い前後の傑作アルバムの中に埋もれ、イマイチ一般的な評価は高くないアルバムなのだが、このアルバムは決して駄作、失敗作の類でない！全体にハードな曲調の楽曲が多いアルバムなのだが、それは今作がインテリ、資本家、労者を犬、豚、羊に見立てた社会批判を根底としたコンセプト･アルバムだからであろう。この作品以降、ウォーターズがほとんどの詞、曲を手掛けるようになり徐々にバンドの空気が怪しくなるが、4人のメンバーによるバンドとしてのフロイドの最後の耀きとも言える作品なのかも知れない。このアルバムにおいてもギルモアの色気のあるギターワークは実に素晴らしく特筆に価する！　

�Dの全米シングル･チャート1位もあり、全世界で驚異的なセールスを記録した二枚組のコンセプト･アルバム。ロジャー･ウォーターズ主導によるワンマン的なアルバム構成が見え始めた作品で、当時の社会問題を主軸に置いた歌詞と過剰なまでの演劇チックなボーカル･スタイルが強く前面に出てきたアルバムでもある。大ヒットはしたもののこのワンマン的な作りが好き嫌いを分け、フロイド･ファンの間でも両極端に評価が分かれるアルバムとなった。しかしながら、やはりこの作品はウォーターズのコンセプチャルな作品への想いを他の3人との微妙な位置関係中で創り上げられた奇跡的な名盤として語られるべき作品なのであろう。

「ウォール」の続編、もしくはアウトテイクと揶揄される83年作のフロイド最終作。確かにロジャー･ウォーターズのソロ的色合いがアルバム全体を覆っている為、正直フロイドのアルバムとしては評価しづらい。内省的でやや暗い作風は人によってまったく評価が分かれるのである。しかしながら、ここで聴けるギルモアのギターはまさしくフロイド･サウンドのそれであり、情感たっぷりのギターソロは聞き逃せない。この作品ではすでにリック･ライトは参加していなかったが、この後ウォーターズは他の3名と袂を分かちプログレッシヴロックの偉大なる巨人「ピンク･フロイド」は終焉を迎えるのである。

ギルモアとメイスンによって発表された87年の復活作！（この時点ではライトはゲスト参加しているが曲作りには参加していない）ウォーターズの独裁体制により崩壊したフロイドがこのアルバムで復活したのはギルモアの「意地」なのであろう。（これは86年にウォーターズが起こしたピンク･フロイドのバンド名使用禁止を巡っての訴訟が影響している。）ウォーターズのコンセプトが存在しないピンク･フロイドのアルバム…果たしてこれはフロイドのアルバムと呼ぶべき作品なのか？フロイドの名前を冠したギルモアのソロ作品？賛否両論である。が、しかし…間違いなく言える事がある。フロイド・サウンド…つまりそれはギルモアのギターに行き着くと言う事である。

ウォーターズを除く3人によるフロイド、いわゆるギルモア･フロイドによる復活第二弾アルバム。コンパクトで良く練られた楽曲は悪くない。モンスター化したロック･ビジネスの中のバンドとして見るとこの作品も納得出来る。つまり非常にレベルの高いロック･アルバムなのである。だが、もはや往年のプログレ･バンドとしてのフロイドとは無縁の立ち位置で存在する作品であるのも事実。産業ロックと言えなくもないこのアルバムをどう評価するかはこの先まだ時間が掛かるのかも知れない…。