TOP > My page > Review List of kuzu2001

Review List of kuzu2001 

Showing 16 - 30 of 53 items

%%header%%

%%message%%

  • 6 people agree with this review
     2016/01/08

    ブーレーズの訃報を受けて聴かずにいられなくなったのが、このセットに収録された「ル・マルトー・サン・メートル」の最初の録音。実に60年前に前衛中の前衛として紹介された貴重な記録だ。その無骨なモノーラルのサウンドに慄然としながら、次は1964年ストラスブールでのステレオ録音を聴く。先程は狭い閉鎖空間で出口を探して暴れていた音が、突然自由に跳ね回り始め、そこかしこにエネルギーをぶちまけていく。こうなると、残る3回の録音も続けて聴いてしまうわけだが、最初の録音から最後の録音まで50年近い時間を2時間半で体験するような感覚を覚える。初期録音で音楽を支配していたストレスと呼んでいいほどのテンションが、時代とともに、あるいは作曲者の年齢とともに薄れていき、当たり前の音楽になっていくのが何とも不思議だ。
    このセットには、「ル・マルトー・サン・メートル」の初めの2つの録音が完全に収録されているばかりか、「ピエロ・リュネール」「兵士の物語」といった伝説的な演奏、そしてメシアンやシュトックハウゼン、ベリオらの実験の記録が詰め込まれている。半世紀前の現代音楽の領域を解雇するのに避けては通れない。
    それにしても、この時代の旗手がついに鬼籍に入り、尖った音楽との出会いがまた減ってしまうと思うと、たまらなく寂しい。

    6 people agree with this review

    Agree with this review

  • 1 people agree with this review
     2015/09/11

    演奏のフレッシュさは言うまでもありません。今回の再発売で嬉しいのは、アナリーゼの収録と、オリジナルジャケットのデザイン復刻です。LPでこのカバーに出会った時、そのコンセプトの秀逸さに、カッコイイ、と唸ったのを思い出しました。

    1 people agree with this review

    Agree with this review

  • 6 people agree with this review
     2015/07/17

    ロリン・マゼールの3度目のマーラー全交響曲録音の締めくくりに、これでもかと言わんばかりに引き延ばされた9番のアダージョを聞く。名残を惜しむ思いは彼の去った後にこの録音を聞く側だけで、演奏者はまだまだ未来を見ていたのかもしれない。実際のコンサートの開催順では8番が掉尾を飾ったのだから。
    それでもこの9番が、彼の音楽人生の到達点の一つとして恥じない、彼にしかなし得ない境地を達成していることは争いようがない。気安く持ち歩いて聞くことのできない録音作品に久しぶりに出会った。
    それにしても、これで本当に終わりなのだろうか。マゼールが最晩年に初めて指揮したという「ラ・ボエーム(キャッスルトン音楽祭)」のリリースは難しいだろうが、せめてこのフィルハーモニアとのマーラー・サイクルに彼が敢えて組み込んだ第10番のアダージョと大地の歌(いずれも2011年9月29日公演)は聞かせて欲しい。私のマゼールへの期待は、まだ終わっていないのだ。

    6 people agree with this review

    Agree with this review

  • 3 people agree with this review
     2015/06/11

    昨夜(2015年6月10日)、86歳のアンドレ・プレヴィンは、ロンドン交響楽団の指揮台に戻ってきた。プログラムは、自作のヴァイオリン協奏曲と、Tango, Dance and Song(ソロはもちろんアンネ-ゾフィー・ムター)、そして後半がラフマニノフの第2交響曲という、彼の総決算とも言える選曲。前半もその音楽の優しさが印象に残る演奏だったが、ラフマニノフは、音符の一つ一つを慈しむような丁寧な味わいに涙を堪えられない、かけがえのない音楽体験だった。舞台袖まで車椅子で登場するプレヴィンにかつての機敏な運動能力は望むべくもなく、結果として全体に落ち着いたテンポの中、アダージョだけが相対的に滞りのない印象で流れていた。つまり、明快なめりはりは退いていたのだが、一方で総じて暖かく優しい表情を浮かび上がらせる演奏だった。

    これまで、ロイヤル・フィル、ウィーン・フィル、そしてN響といった様々なオーケストラで、プレヴィンのこの曲の演奏に触れる機会があったが、やはりロンドン交響楽団(LSO)での演奏には特別な意味がある。1973年、初めて完全全曲版で録音されたレコードの解説に引用されていたプレヴィンの次の言葉を、私は忘れることができない。
    「私はこの作品を愛している。LSOもまた同様である。そして、われわれはそれから先も長い間この曲を演奏し続けるであろう。(三浦敦史氏訳)」
    その言葉は現実となり、40年以上経った今も変わらないことが証明された。もちろん40年前に在籍していたメンバーはほとんど残っていないわけであるから、同じLSOとは言えないかもしれない。だが、このコンビのこの曲が特別なのは、終演後の満場のスタンディングオベーションに加わった聴衆が一番よく知っている。

    前置きが長くなってしまった。プレヴィンが少なくともその人生の半分をかけて、LSOとともに愛し続けたこの曲の、2度目の録音であるこのCDは、私にとって「無人島の一枚」であり、「最期に聞きたい一枚」であり、多くの人にとってそれだけの価値を訴えられる価値を持っていると信じる。
    私は、演奏比較という行為は決して好まない。音楽体験の一つ一つは、他の演奏との関係に妨げられず、絶対的に存在すべきだと思うからだ。それでも、昨夜の演奏にこの上ない感動を味わった後でさえ、私は1973年録音のこのCDを聞かずにはいられなかった。今日、(かつで100回と言わず聞いた)このCDを聞き、そこにある音楽に対する生々しいパッションに再び涙がこぼれた。プレヴィンは決して情熱に駆られた演奏をする人ではないが、ここには「止むに止まれぬ」熱さがあった。私自身がこの録音に出会った頃のパッションへのノスタルジーがあることは否定しないが、この演奏でこの曲に出会う人は(私を含めて)幸せだと思う。

    3 people agree with this review

    Agree with this review

  • 5 people agree with this review
     2014/07/07

    長年追いかけ続けたレニーファンにとっては、やっと待ちに待った「ジプシー男爵」序曲のCD化。1958年録音のラヴェルも、オランダArcadeレーベルでのCD化以来久方ぶりにようやく本家での登場となります。いっぽう、ヨハン・シュトラウスのワルツ・ポルカ集は、残念ながらRoyal Editionと同じ反復カットの編集版のようですね。
    現在発表されている曲目リストでは、なぜか自作の第2交響曲「不安の時代」が、新旧両録音で収録される模様。「イタリアのハロルド」などと同様協奏的作品扱いなのでしょうか。これほど徹底した収録となると、Symphony Editionに含まれなかった交響曲の別録音(ベートーヴェン第7、チャイコフスキー第4、ベルリオーズ「幻想交響曲」、マーラー第2、プロコフィエフ第5、ショスタコーヴィチ第5)はどうなるのか、気になります。そして、声楽曲編の登場が待たれてなりません。

    5 people agree with this review

    Agree with this review

  • 2 people agree with this review
     2014/07/04

    ちょうど35年前の7月、レニーはNYPを率い、東京文化会館でシューマンとショスタコーヴィチの2曲のプログラムを指揮した。私はまだ子供で、このコンサートが初めての外来オーケストラ生体験だった。

    それまで私が知るショスタコーヴィチは、レニーが1959年に録音した5番だけで、その猛烈なスピードで疾走する終楽章から得る快感がこの曲の全てのように思っていた。当然のようにその快感を期待して席に着いたのが今思うと可愛かったものだ。
    ところが、この日聞いた5番は全く違っていた。テンポが遅いのは子供でもすぐわかる。そしてそれ以上に、曲の最初から1音ごとの重みがひしひしと伝わってくる。今までさらさらと流れていたフレーズを一つ残らず丹念に噛みしめるうち、あの終楽章だ。駆け抜ける勢いではなく、踏みしめる足取りで音楽が進んでいるようだった、と当時家族に話したのを思い出す。

    その翌日、独立記念日のことだ。私はレニーの著書にサインをもらいながら、前夜のショックを伝えた。レニーは顔を上げ、「あのコンサートは録音したから、是非また聞いてくれ」と言った。そして、分厚い著書の冒頭にある自分のポートレートページに私の名を書き添えながら、「子供なのに勉強熱心だ」と褒めてくれたのが、飛び上がるほど嬉しかった。

    ライヴのレコードが珍しかった当時、録音した、という意味が十分わかっていなかった私は、秋にLPの発売を知ってようやく事情を理解し、真っ先に聞いた。今思うとレニーは別居中だった妻フェリシアを亡くして間もなく、またドイツグラモフォンとの録音などヨーロッパ拠点の活動を本格化させ始めた時期。発刊直前だった「ショスタコーヴィチの証言」を読んでいたとは思いにくいが、今や偽書とされる「証言」に依らずとも、還暦を迎えたレニーの内面が、20年前の録音と全く異なる演奏に繋がることは、今なら容易に想像できるし、事実この後の彼の演奏はますます重みを増していった。

    このショスタコーヴィチは、レニーのCBSコロンビア時代最後の時期の録音で、日本で制作されたためか海外ではあまり出回っていないようだ。それでもヨーロッパの知人が「あれを生で聞いた君が羨ましい」と言ってくれたのが、この録音の価値を教えてくれる。もちろん後に発売された海外版DVDともどもずっと私の大切な宝物だが、プライベートなコンテクストを抜きにしても、後年のレニーにみられる極端な表現もなく、率直に曲に向き合うのに最適の演奏だと思う。

    2 people agree with this review

    Agree with this review

  • 0 people agree with this review
     2014/03/30

    シングルになっている’I Fall in Love Too Easily’の冒頭から、バリーの声の変化に愕然としてしまいました。聞く側ばかりが歳をとっているわけではないのは当たり前ですが、’Weekend in New England’を絶唱していたバリーはもういないのだな、と改めて気づかされたのです。しかし、その代わりに、人生の折々に訪れる戸惑い、苦悩、そして喜びを淡々と振り返りながら、聞き手に切ない想いを呼び起こす、味わい深い歌声を聞かせてくれます。

    ’I Fall in Love Too Easily’は、かつてシナトラが歌った、青春真っただ中の恋心溢れるバージョンが印象に残っていますが、今のバリーは青春時代に思いを馳せつつ、後悔や喜悦を超えた静かな充足感を伝えてくれます。キャリア後半はシナトラの歩みを追ってきた感のあるバリーですが、ヴォーカリストとしてはシナトラと全く異なる境地を示しているようです。

    このアルバムは、ミュージシャンとしての成功を経て、そのキャリアの原点であったピアノバーの日々を懐かしむような優しい雰囲気に満ちています。バリーの歌に涙し癒されてきたファンにとっても、若かった、あるいは幼かった日々の思い出を呼び覚ましてくれる、とてもパーソナルなスタンダード集でした

    0 people agree with this review

    Agree with this review

  • 1 people agree with this review
     2014/03/16

    シングルになっている’I Fall in Love Too Easily’の冒頭から、バリーの声の変化に愕然としてしまいました。聞く側ばかりが歳をとっているわけではないのは当たり前ですが、’Weekend in New England’を絶唱していたバリーはもういないのだな、と改めて気づかされたのです。しかし、その代わりに、人生の折々に訪れる戸惑い、苦悩、そして喜びを淡々と振り返りながら、聞き手に切ない想いを呼び起こす、味わい深いシンガーになりました。
    ’I Fall in Love Too Easily’は、かつてシナトラが歌った、青春真っただ中の恋心溢れるバージョンが印象に残っていますが、今のバリーは青春時代に思いを馳せつつ、後悔や喜悦を超えた静かな充足感を伝えてくれます。キャリア後半はシナトラの歩みを追ってきた感のあるバリーですが、ヴォーカリストとしてはシナトラと全く異なる境地を示しているようです。
    このアルバムは、ミュージシャンとしての成功を経て、そのキャリアの原点であったピアノバーの日々を懐かしむような優しい雰囲気に満ちています。バリーの歌に涙し癒されてきたファンにとっても、若かった、あるいは幼かった日々の思い出を呼び覚ましてくれる、とてもパーソナルなスタンダード集でした

    1 people agree with this review

    Agree with this review

  • 6 people agree with this review
     2013/11/26

    シュトラウスの厚塗りなオーケストレーションを聞くとき、その中の繊細な細工をストレスなく聞くことは録音では難しい。ケンペのセットは、その収録作品の多さでは有難い存在ですが、従来の1987年から1992年のリマスターではどうしてももどかしい思いが残り、結果としてプレイする機会は稀でした。

    今回のリマスターは、そのもどかしさが大幅に減り、シュトラウスのリファレンスとして堂々たる存在になったと思います。私が手にした今回のCDセットは、もちろんSACDとは比較すべくもありませんが、従来のCDリリースに比べると、いくつもの微細な職人芸が聞き取れます。

    リファレンスとしての価値をさらに高めてくれたのが、「カプリッチョ」の月光の音楽が収録されたこと。その発見はすでにSACD発売時のレビューでも話題になっていますが、今回は独立したトラックとしてディスク1の最後に収められました。クレジットも明示されており、ボックス裏面のコピーでもその収録がアピールされています。協奏作品も新リマスターで収録、私には申し分のないセットです。

    この晩秋はシュトラウス三昧になりそうです。

    6 people agree with this review

    Agree with this review

  • 2 people agree with this review
     2013/05/20

    音楽家の知られざる心中や率直な思いを伝えるべく、自らペンを執ったり、インタビューを文字に起こしたりした書物はこれまでにも数多ありました。しかしこの本が誰にも受け入れられる大きな要因は、対談の相手に、文章力は言うに及ばず、音楽に対する並外れた洞察力を持ち、それでいて音楽評論家とは全く異なる知識と視点をもつ村上春樹さんという人を当てたこと。彼が、音楽家が音楽を創造あるいは再創造するにあたって胸に抱く思いを、巧みに引き出して伝えてくれます。

    小澤さんの言葉は、音楽を愛する人に対する敬意を絶やさず、それでもあくまで作品と作曲家とともに立ち続ける演奏家の至上命題を貫く者のそれです。これまでの小澤さんの活動を聞き続けた身には、頷くことだらけでした。

    そうした中に、「僕はもともとレコード・マニアみたいな人たちがあまり好きじゃなかったんです。」という小澤さんの一言がでてきます。もちろんこの発言のコンテクストを読み取らないと、音楽家の真意を誤解するのかもしれません。しかし私がとりわけこの一言を興味深く思ったのは、この本の読者レビューで日本の典型的なクラシックファンとおぼしきレビュワーからこの言葉への反発が示されたことからです。図らずも、音楽家の思いと、日本の典型的なクラシックファンの姿勢とのずれに気づかされた瞬間でした。

    演奏という行為を通じて、音楽には多種多彩な表現が可能であり、演奏家はそれぞれの信念に従って作品の再現を試みます。それぞれの演奏は、ですからそれぞれに絶対的な存在であって、それを過去あるいは未来の他の演奏と比較の中で聴かれることは、いかなる音楽家も望まないでしょう。演奏を録音して商品化する場合であってもそれは「自分の演奏を求める人に届ける」手段のひとつであり、他の演奏への対抗意識が動機であるわけではないのです。そして、どんな聞き手にとっても、演奏との出会いは本来、美術作品を見るのと変わることなく、見知らぬ土地への旅や新たな人との出会いのように、それぞれの機会にそれぞれ独立した喜びや失望を感じるはずです。

    ですからこの言葉は、録音された演奏の比較を音楽鑑賞の目的にしてしまったり、ランキングに血道を上げたり、といった屈折した聴き方にこだわるレコード・マニアと、それを育ててきた音楽ジャーナリズム、とりわけ演奏の好き嫌いを声高に叫ぶ文章力稚拙な音楽評論家もとい音楽比較家たちに対し、そして誰よりも私自身に、そもそも純粋に音楽に向きあっていたときの本来の姿勢を思い起こさせるための警鐘にしておきたいと私は思っています。もちろん小澤さん自身にとっては、思わず口をついた音楽家の気軽な本音にすぎないでしょうけど。

    書籍そのものの印象もさることながら、このような考察の契機となった言葉に対して(さらにはその言葉への反発を示したレビューにも)敬意を表し、そしてHMVの読者レビューを目にする多くの人にその言葉のコンテクストに触れ真意を読み解いて欲しい思いから、星5つの推薦マークを献上します。

    2 people agree with this review

    Agree with this review

  • 12 people agree with this review
     2013/03/22

    「嘆きの歌」は1898/99年版最終改訂稿による演奏ということで、「吟遊詩人」と「婚礼の出来事」のみの演奏です。40年以上前のブーレーズ/LSOの録音では、このバージョンに初稿版の「森のメールヒェン」を別途録音してカップリングしていましたが、初稿版全曲が出版された1997年以降は、初稿版=3部、改訂版=2部それぞれで一貫した演奏が定着し、ここでブーレーズは、改めて最終改訂稿を取り上げたわけですね。
    私のこの曲の原体験はブーレーズ/LSOでしたから、丹念に音を追って全てをつまびらかにしていく演奏が印象に強く残っています。それに比べると、今回は概してテンポも早く、こってり感は薄まった一方で、やはり隅々のパートまで大切に鳴らすブーレーズらしさは健在なのを感じました。
    思うに、アナログの時代は音の混濁を避け敢えてテンポを落とすことですべての音を聞かせようとしていた彼が、より分離の良い録音技術を得て、音楽の勢いを抑えなくなったのかも知れません。「嘆きの歌」に先立ってブーレーズがやはりLSOと録音していた「幻想交響曲」と、90年代クリーヴランドでの再録音との関係にも全く同じものを感じます。「嘆きの歌」に「森のメールヒェン」をカップリングしたように、「幻想交響曲」に「レリオ」をカップリングしたことに象徴されるブーレーズの当時のスタンスが、あのユニークな演奏を生んでいたのでしょう。
    昨今「丸くなった」などと言われがちなブーレーズですが、録音再生テクノロジーの変化とあわせ、ある意味聴き手の耳も彼の耳に追いついてきたのかもしれません。「ブーレーズの時代がようやく来た」と喜べばいいのか、「ブーレーズの音楽に摩擦や抵抗を感じられなくなってしまった」と嘆くべきなのか、そんなことを感じた「嘆きの歌」でした。
    もちろん、ベルクについても、もはや驚きも抵抗もありません。振り返ってみれば、何だ、私が年齢を重ねたからか、とも。

    12 people agree with this review

    Agree with this review

  • 2 people agree with this review
     2013/03/04

    シュトッツマンは、今や私の愛する「指揮者」になりました。ステージで歌いながらアンサンブルを率いる彼女は、棒を持たずに流麗な身のこなしで音楽に彩りを加えていきます。今回のアルバムでは渡邉さとみさんをコンサートミストレスに、きびきびした中に優しい表情を醸し出しています。シュトッツマンのコントラルトは決して古楽らしくない歌声だと思いますが、本当に心穏やかに聴くことができます。とはいえ、時々はっとする瞬間も仕込まれていて、退屈することはありません。

    選曲もユニーク。管弦楽組曲を含めばらばらな出自の曲を集めた、言わば「バッハ・アンソロジー」なのですが、それを「想像上のカンタータ」として、あたかも一つの作品のようにまとめているので、通して聴かないともったいない。この念入りな事前研究によるプログラム構成は、前回のヴィヴァルディとも共通したコンセプトなのでしょう。

    私は、先日のシュトッツマンの来日ではマーラーしか聴くことができませんでした。それはそれで彼女の豊かな表現力に感心しましたが、ぜひ次回はオルフェオ55と共にやってきてその実力を見せて聴かせて欲しいと思いつつ、今日はこのバッハに繰り返し聴き入っています。

    2 people agree with this review

    Agree with this review

  • 2 people agree with this review
     2013/03/04

    遂に、これまでCDで入手できなかったレニーのレア録音が登場!彼のキャラクターが最高に生きるトピックで、楽しい楽しいプログラムです。あとは「ジプシー男爵」序曲のCD化を切に願うばかりです。

    2 people agree with this review

    Agree with this review

  • 2 people agree with this review
     2013/01/02

    ウェルザー=メスト2度目のニューイヤーは、2年前の初登場よりいっそう表情が豊かになりました。演奏の滑らかさを活かした演出でもこなれた技が光ります。過去2回の映像監督担当でも新しい視点の映像を提供してくれたカリーナ・フィビッヒが、得意の移動俯瞰カメラに加え、バックステージにまでカメラを持ち込んでいます。オーストリアの景色を捉えた特典映像の美しさも素晴らしく、特にインターミッションの「ハネムーン」と「美しく青きドナウ」での風景には見とれるばかり。
    選曲面ではやや無名曲が多い中にワーグナーが飛び込んでくるといった目新しい趣向ですが、それでも楽しさを忘れないのはさすがです。ノーブルな風貌のウェルザー=メストが見せるユーモラスな表情が、いつもながらとても心を和ませてくれる。2014年再登場のバレンボイムと好対照の、爽快さを前面に出したコンサートでした。

    2 people agree with this review

    Agree with this review

  • 1 people agree with this review
     2012/12/06

    バリーがリリースした3枚のクリスマス・アルバム、1990年のBecause It’s Christmas、2002年のA Christmas Gift of Love、2007年のIn the Swing of Christmasからのセレクションによる究極のホリデイ・クラシックス。スウィンギーな味付けを施した名曲の中に、しっとりとインティメットなオリジナル曲をバランスよく配した選曲だし、Because It’s Christmas ではイントロに入っていたメサイアの一節をカットしているし、まとまりのいい1枚。

    と思っていたら、一つサプライズが待っていました。It’s Just Another New Year’s Eveは1990年のスタジオ版ではなく、1977年のBarry Manilow Live!からのセレクション。ニューヨークのUris Theater (現Gershwin Theater)でのライブテイクは、個人的には大好きなのだけど、今回のアルバムの中では音場感が全く異質で、流れを損なっていました。これがスタジオテイクの方だったら、アルバムも星5つなのですが。

    とはいえ、誰にでもわかりやすいホリデイ・クラシックスのアルバムとしてはお勧めできる1枚です。

    1 people agree with this review

    Agree with this review

Showing 16 - 30 of 53 items