please enable JavaScript on this site.
Guest
Platinum Stage
Gold Stage
Bronze Stage
Regular Stage
Buy Books, CDs, DVDs, Blu-ray and Goods at HMV&BOOKS online
Advanced Search
TOP > My page > Review List of つよしくん
Previous Page
Next Page
Showing 1261 - 1275 of 1958 items
%%header%%
%%message%%
1 people agree with this review 2010/11/14
ピアノ協奏曲第5番「皇帝」の冒頭からして、まぎれもない全盛期のカラヤンサウンドがさく裂する。こうしたゴージャスなカラヤンサウンドは、冒頭のみならず全曲を支配していて、ピアノ協奏曲ではなく、あたかも一大交響曲を指揮しているような圧倒的な迫力を誇っている。その重戦車の進軍するかのような重量感においては、古今東西の同曲のあらゆる演奏をわきに追いやるような圧巻のド迫力を誇っていると言える。このような演奏では、ワイセンベルクのピアノは単なる脇役に過ぎない。要は、いわゆるピアノ協奏曲ではなく、ピアノ付きの交響曲になっていると言える。それ故に、カラヤンのファンを自認する高名な評論家でさえ、「仲が良い者どうしの気ままな演奏」(リチャード・オズボーン氏)などとの酷評を下しているほどだ。しかしながら、私は、そこまでは不寛容ではなく、本演奏は、やはり全盛期のカラヤン、そしてベルリン・フィルでないと成し得ないような異色の名演であると高く評価したい。いわゆるピアノ協奏曲に相応しい演奏とは言えないかもしれないが、少なくとも、ベートーヴェンの楽曲の演奏に相応しい力強さと重厚さを兼ね備えていると思われるからだ。併録の小品は、いずれも、ワイセンベルクならではの研ぎ澄まされた技量と抒情を味わうことができる名演揃いだ。HQCD化によって、音質がかなり鮮明になっているのは素晴らしい。
1 people agree with this review
Agree with this review
3 people agree with this review 2010/11/13
ベートーヴェンのチェロソナタ全集には、世評では、ロストロポーヴィチ&リヒテル盤と、フルニエ&ケンプ盤が双璧の名演と言われ、これまで多くの評論家の間で、両盤の優劣について様々な批評の応酬がなされてきた。確かに、両名演は素晴らしい。どちらの名演にもそれぞれ素晴らしい点があり、私としても、どちらかに軍配を上げるということははっきり言って不可能だ。それ以外にも様々な名演があるが、やはり、この両盤に敵うものではないと言ったところではないだろうか。本盤は、録音がこの当時のものとしては悪いという難点はあるが、演奏内容だけをとれば、この両盤に何とか対抗し得るだけの名演と評価できるのではないかと考えている。それは、デュ・プレの命懸けの気迫溢れる演奏によるところが大きい。デュ・プレが、悪魔のような病を発症する直前の演奏であることもあり、何かに取りつかれたような底知れぬ情念のようなものを感じさせる。こうしたデュ・プレの驚異的なチェロを力強くサポートした、当時の夫であるバレンボイムも、重量感溢れる力強い演奏を行っている。そして、その後の、デュ・プレの悲劇を思うと、演奏以上の感動を覚えるのも、私だけではないと考える。本盤の欠点は、前述のように、録音がイマイチであるということ。これは、HQCD化によっても克服されず、それだけが非常に残念だ。
3 people agree with this review
10 people agree with this review 2010/11/13
チョン・キョンファの全盛時代の超名演だ。圧倒的なテクニックをベースとしつつ、女流ヴァイオリニストの常識を覆すような力強い迫力と、繊細な抒情の美しさが、いい意味でバランスがとれており、そうした表現力の幅の広さが、この録音当時のチョン・キョンファの最大の長所であったと言える。本盤でも、そうしたチョン・キョンファの長所がすべてプラスに出ていると言える。ベートーヴェンは、ベートーヴェンが作曲した最も美しい曲の一つと言われているが、チョン・キョンファは、同曲に満載の美しい旋律を実に情感豊かに歌い抜いて行く。それでいて、いささかも感傷に陥ることなく、常に高踏的な美しさを保っているのが素晴らしい。他方、力強さにも不足はなく、特に終楽章の迫力は圧倒的だ。ブルッフも超名演。ベートーヴェン以上に美しい旋律満載の同曲を、チョン・キョンファは、これ以上は求め得ないような情感豊かさで歌い抜いて行く。そして、これらのチョン・キョンファのヴァイオリンに勝るとも劣らない気迫溢れる指揮をしているのがテンシュテットだ。咽頭癌を発病した後、病と闘いながら指揮をしていたが、本盤でも、正に命がけの指揮を行っており、その気迫と力強さには、涙なしでは聴けないような深い感動を覚える。HQCD化による音質向上効果もかなりのものがあり、本盤の価値を高めるのに大きく貢献している。
10 people agree with this review
2 people agree with this review 2010/11/13
クレンペラーならではのスケール雄大な名演だ。1957年というステレオ初期の録音ということもあり、クレンペラーの芸術が完成期を迎える(1960年代以降)少し前の録音ではあるが、ここでは、晩年のクレンペラーの堂々たる至芸を味わうことが可能である。ゆったりとした微動だにしないインテンポは、沈み込んでいくような深みがあるが、それでいて、いわゆる田園ならではの明瞭さにいささかの不足もない。むしろ、こうした深みのアプローチが、演奏に潤いとコクを与えている点を見過ごしてはならないであろう。ワルターやベームの田園のような独特の愉悦感や優美さには欠けているかもしれないが、演奏の有する深みにおいては、ワルターやベームと言えども一歩譲ると言える。併録の「献堂式」序曲や「シュテファン王」序曲も、ゆったりとしたテンポによるスケールの壮大な超名演だ。そもそも、これらの楽曲には他に競合する名演が少ないこともあり、クレンペラーの独壇場とも言うべき名演と評価することも可能である。HQCD化によって、音場は著しく広くなるとともに、音質がかなり鮮明になったのも、本名演の価値をより一層高めることに大きく貢献している。
2 people agree with this review
0 people agree with this review 2010/11/12
モーツァルトのハイドンセットは、その後のベートーヴェンの弦楽四重奏曲にも大きな影響を与えた傑作であるが、その中でも、最後の2曲である第18番と第19番は、大傑作と言えるだろう。モーツァルトならではの哀感も加味された優美な音楽が、熟達した作曲技法の下、精緻に表現されているからである。これだけの傑作であるが故に、これまで数多くの弦楽四重奏団によって演奏・録音が行われてきたが、近年でも群を抜いた名演は、やはり本盤におさめられたアルバン・ベルク弦楽四重奏団による二度目の録音ということになるであろう。第18番と第19番は、ベートーヴェンにも多大な影響を与えた独特のリズムや精緻な対位法などが満載であるが、アルバン・ベルク弦楽四重奏団は、ウィーンの団体ならではの優美な音色をベースとして、切れ味鋭い現代的な解釈で、テンションの高い熱い演奏を繰り広げている。卓越した技量も聴きものであり、四人の奏者が奏でるアンサンブルの鉄壁さも、技術偏重には陥ることなく、情感豊かな温もりさえ感じさせて感動的だ。本演奏は、まぎれもなく、アルバン・ベルク弦楽四重奏団によって再現された現代の新しいモーツァルト像を確立したと言えるところであり、本盤をして、両曲の最高の名演の一つと評価するのにいささかも躊躇しない。HQCD化によって、音質がさらに鮮明になった点も評価に値する。
0 people agree with this review
0 people agree with this review 2010/11/10
アルバン・ベルク弦楽四重奏団は、ウィーン音楽大学の教授によって構成されているだけに、ウィーンの伝統的な演奏様式をベースとしつつ、そこに現代的なセンスを加味した新鮮味溢れる解釈で、様々な名演を成し遂げてきた。数年前に解散したのは、音楽界にとっても大変な損失であると思うが、それまでに数々の名演を遺してくれたのは、素晴らしい遺産であると言えるともに、現代の様々な弦楽四重奏団に大きな影響を与えるという立派な足跡を遺したと言える。本盤の、いわゆるモーツァルトのハイドンセットは、アルバン・ベルク弦楽四重奏団の得意のレパートリーであり、これは2度目の録音であるが、実に素晴らしい名演だ。有名な第17番は、明朗で自由闊達とも言うべき生命力溢れる力強さが見事であるし、あまり有名でない第16番も、同曲の持つ魅力を聴き手に知らしめる実に素晴らしい名演と評価すべきであろう。いずれも、卓越した技量と抜群のアンサンブルを誇っているが、それでいて、ウィーンの音楽家による演奏ならではのセンス満点の情感豊かさがあらわれており、いい意味でのバランスのとれた名演に仕上がっている点が、いかにもアルバン・ベルク弦楽四重奏団の長所と言えよう。HQCD化による高音質化も成功している。
0 people agree with this review 2010/11/09
数年前に惜しまれながら解散したアルバン・ベルク弦楽四重奏団による名演。アルバン・ベルク弦楽四重奏団は、ウィーン音楽大学の教授で構成されているだけに、ウィーンの音楽家ならではの非常に美しい音色を奏でるが、併せて、現代の弦楽四重奏団ならではの、卓越した技量を基にした切れ味鋭いアプローチを行っている。要は、いい意味でのバランスが持ち味であり、様々な楽曲において、新鮮な解釈を示してくれた。このようなアプローチならば、ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲などに最適とも思われるが、残念ながら、全集を完成させないまま解散してしまった。しかしながら、バルトークの弦楽四重奏曲全集などでは超名演を成し遂げており、2度にわたるベートーヴェンの弦楽四重奏曲全集(特に旧盤)でも、斬新な解釈で至高の名演を聴かせてくれた。本盤のモーツァルトも素晴らしい。アルバン・ベルク弦楽四重奏団によって生み出される驚異的なアンサンブルは、卓越した技量の下、完璧なハーモニーを奏でているし、加えて、ウィーンの音楽家ならではの美しい音色も実に魅惑的であり、単なる技術偏重に終始していない点が素晴らしい。HQCD化によって、音質は相当に鮮明になっており、本盤の価値をさらに高めることになっている点も高く評価したい。
9 people agree with this review 2010/11/08
両曲ともに素晴らしい名演だ。ドヴォルザークのヴァイオリン協奏曲は、テンシュテットとしては、スタジオ録音もなく、極めて珍しいレパートリーと言えるが、交響曲第8番や第9番の名演を遺していることを考えると、必ずしも意外な演目とは言えないのかもしれない。新進のヴァイオリニストのザゾフスキーをしっかりとサポートするという点に重点を置いているような気もするが、ベルリン・フィルを巧みに統率して、シンフォニックで重厚な名演を成し遂げている点を高く評価したい。このような名演を耳にすると、テンシュテットの指揮で、ドヴォルザークのチェロ協奏曲を聴いてみたいと思った聴き手は私だけではあるまい。シューベルトは、テンシュテットとしても、スタジオ録音を遺しているし、ライブ録音も存在する得意のレパートリーと言える。本盤で見られるアプローチも、そうした他の演奏におけるアプローチと殆ど変化はない。ただ、ベルリン・フィルとのライブ録音ということもあり、本演奏には凄まじい気迫と生命力を感じさせる。早めのテンポで一気呵成に突き進んでいくような演奏であるが、随所に盛り込まれた最晩年のシューベルトならではの暗い抒情の歌い方も素晴らしく、知情兼備の爆演と高く評価したい。録音も、非常に鮮明で素晴らしい。
9 people agree with this review
4 people agree with this review 2010/11/07
まず、コンサートの演目に驚かされた。ブルックナーの第8に、他の曲目を組み合わせることは、基本的には考えられないところであるが、ライナーノーツによると、カラヤンのキャンセルによるとのことであり、漸く納得がいった。カラヤンのプログラムでは、ブルックナーの第9を予定していたようであるが、テンシュテットは、第9の代わりに第8に切り替えたのであろう。テンシュテットは、マーラーとは異なり、ブルックナーについては、特定の曲だけを指揮してきた。ライブ録音を含めると、録音されたのは第3、第4、第7、第8のみであり、特に、第4と第8は、スタジオ録音も行うなど、得意のレパートリーとしていたようだ。要は、自信のある曲しか指揮しないという、テンシュテットの芸術家としてのプライドが感じられる事実と言える。ただ、第4はともかく、第8については、スタジオ録音も含め、既発売のCDはどこか食い足りない点が多々あるように考えてきたところだ。やや、テンポをめまぐるしく変化させるなど、ブルックナーを聴くよりは、マーラーを聴くような印象を与えがちな点に違和感が感じられたのだ。しかしながら、本盤の第8は素晴らしい名演だ。テンポは早めであるが、いつものテンシュテットにように、テンポを激変させるのではなく、できるだけインテンポを維持することによって、ブルックナーの本質をいささかも損なうことのない演奏に仕上げることに成功している。ベルリン・フィルの管楽器群の優秀さや、弦楽器の重量感溢れる合奏の力強さによる点も大きいとは思うが、ベルリン・フィルを統率して、ここまでの演奏を成し遂げた点は、テンシュテットの力量によるところも大きいと考える。バッハは、ブランディスをしっかりとサポートする点に力点を置いているように思うが、こちらも素晴らしい名演だ。音質も非常に鮮明で、見事なものだ。
4 people agree with this review
2 people agree with this review 2010/11/07
クレンペラーのスケール雄大な演奏スタイルが確立したのは1960年代に入ってからというのが一般的な見方であるが、楽曲によっては、その前の時代にも、そのような演奏スタイルを見せるようになってきたと言えるものがある。本盤の録音は1957年であるが、これはクレンペラーのスケール雄大なアプローチによる超名演と高く評価すべきものと考える。第2など、何と全体を約37分もかけており、テンポも非常にゆったりとしたものであるが、それ故に、ベートーヴェンがスコアに記した音符の一つ一つを徹底的に鳴らし切り、あたかも重戦車の進軍のような重量感溢れる力強い演奏に仕立て上げたのは、さすがの至芸という他はない。ベートーヴェンの交響曲の演奏スタイルとして、偶数番の交響曲は柔和に行うとの考えも一部にあるが、クレンペラーにはそのような考えは薬にしたくもなく、エロイカや第5に行うようなアプローチで第2に臨むことによって、同曲をスケール雄大な大交響曲に構築していった点を高く評価すべきであろう。第4も、第2と同様のアプローチで、スケール雄大な演奏を繰り広げており、特に終楽章は、巨象がのっしのっしと歩くような重厚なド迫力に圧倒されてしまう。併録の序曲も名演であり、HQCD化による高音質化も目覚ましい成果をあがていると言える。
0 people agree with this review 2010/11/07
私事で恐縮であるが、大学生の頃、ヤンソンスの指揮でチャイコフスキーの第5をコンサートで聴いたことがある。オーケストラは、レニングラード・フィル。本来は、ムラヴィンスキーが指揮するはずであったが、病のために来日できず(その後に明らかになったムラヴィンスキーの指揮の記録によると、当該年である1986年に2回、1987年に1回しか指揮しなかったので、来日などとても出来る状態ではなかった)。そのコンサートの際に代わりの指揮をしたのがヤンソンスであった。当時は、次代を担う新進気鋭の指揮者ということもあって、ムラヴィンスキーの影響を受けつつも、気迫ある力強い演奏で、それなりに満足したことを覚えている。その際のコンサートと比較すると、本盤の演奏は、円熟の演奏と言ったところであろうか。どこも立派でケチをつけるところは皆無であるが、他方、かつて耳にした生命力溢れる力強さとか、個性と言ったものがいささかも感じられないのが、難点とも言える。立派な演奏であることは認めるが、ヤンソンスならば、今一歩レベルの高い演奏を望みたいところだ。むしろ、併録のフランチェスカ・ダ・リミニの方が素晴らしい。これは、かつての若き日のヤンソンスを思わせるようなパワフルで力強い迫力が持ち味であり、同曲演奏史上最高の名演の一つと言っても過言ではないと高く評価したい。SACDマルチチャンネルによる極上の高音質録音も見事である。
4 people agree with this review 2010/11/06
いずれも素晴らしい名演だ。ベートーヴェンのピアノ協奏曲第2番はスタジオ録音もなされていない演目であるが、テンシュテットは、マーラーを指揮する時に垣間見せるような劇的な指揮ではなく、ドイツ正統派の正攻法のアプローチで、堂々たる名演を成し遂げている。ゲルバーの巨匠風のピアニズムによるところも大きいとは思うが、こうしたゲルバーのピアノを包み込むようにサポートしたテンシュテットの指揮もまた見事であったと言える。他方、ブルックナーの交響曲第4番は、既にスタジオ録音を行うとともに、来日時のライブ録音も発売されている、テンシュテット得意のレパートリーの一つだ。テンシュテットと言えば、どうしてもマーラー指揮者のイメージをぬぐい去ることは出来ないが、ブルックナーの第4番に関しては、テンシュテットのアプローチと同曲の相性が抜群に良いこともあって、これまで発売されたCDはいずれも名演だ。しかしながら、本盤の登場によって、既発売のCDは、太陽の前の星のように存在感を殆ど失ってしまった。それくらい、本盤の出来は群を抜いている。テンシュテットは、マーラーを指揮する時とは異なり、ゆったりとしたテンポで曲を進めている。それでいて、いささかも冗長には陥ることなく、随所で独特のスパイスを利かせた解釈を示しているが、それがいわゆるブルックナーの本質から逸脱することがないのは、テンシュテットの同曲への深い理解と愛着の賜物と言える。金管の最強奏も、ベルリン・フィルの卓越した技量もあって、圧倒的な迫力を示すが、無機的に陥ることがないのは、さすがの力量と言えるだろう。録音も非常に鮮明で素晴らしい。
9 people agree with this review 2010/11/06
シモーネ・ヤングは、今や女流指揮者のフロントランナーのような存在である。既に、ブルックナーの交響曲の名演によって、広く知られているところであるが、ついに、ブルックナーと同時代の大作曲家、ブラームスの交響曲録音を開始した。本盤は、3年前の録音であるが、素晴らしい名演と高く評価したい。冒頭、男性指揮者顔負けの重量感溢れる堂々たる進軍で開始する。主部に入っても、テンポはゆったりとしたもので、微動だにしない風格に満ち溢れている。繰り返しも行われているが、いささかも冗長さを感じさせないのは、シモーネ・ヤングの自信と確信に満ち溢れた堂々たる指揮によるところが大きい。第2楽章の抒情豊かさは、女流指揮者ならではの情感溢れるもので、ブラームス特有の枯淡の境地を表現できるのは、シモーネ・ヤングの表現力の幅の広さの証左と言える。第3楽章は、普通の出来だと思うが、感動的なのは終楽章。第1楽章と同様に、ゆったりとした微動だにしないインテンポで、楽曲を進めていく。そして、終結部のファンファーレで、誰よりも極端にテンポを落とし、若干のゲネラルパウゼを挟むが、ここははじめて耳にするような新鮮さであり、シモーネ・ヤングの抜群のセンスの良さを感じさせる。SACDマルチチャンネルによる高音質録音も素晴らしいものであり、本盤の価値を高めることに大きく貢献している。
8 people agree with this review 2010/11/06
驚天動地の極上の超高音質CDの登場だ。ユニバーサルによるSACD&SHM−CD化の第三弾であるが、今回の第三弾の3枚の中で、最も音質がいいのは本盤ではないかと考える。本演奏については、既にマルチチャンネル付きのSACDが発売されているが、あまり問題にならない。むしろ、マルチチャンネルが付いていないのに、本盤が、これほどまでの臨場感を感じさせることに殆ど驚異を覚える。レーベル面をグリーンにコーティングしたり、SHM−CD化を図っただけで、これほどまでに音質が激変するというのは、正直信じられない思いがする。バッハのヴァイオリン協奏曲は、後年のモーツァルトやベートーヴェン以降の作曲家の手によるヴァイオリン協奏曲とは異なり、ヴァイオリンの技巧を披露する箇所は少なく、むしろ、独奏楽器とオーケストラ(と言っても、室内楽的な編成であるが)の調和を旨とした楽曲であると言える。それだけに、本盤のような高音質SACDは、相当のアドバンテージがあると言える。というのも、高音質SACD化によって、ヴァイオリン等の独奏楽器とオーケストラの分離が鮮明に表現できるからであり、特に、本盤の場合は、それが目覚ましい効果をあげていると言える。このような調和型のヴァイオリン協奏曲でありながら、ハーンのヴァイオリンの弓使いさえ聴こえてくるのは、驚異ですらある。演奏は、ハーンならではの繊細にして、気迫溢れる名演。
8 people agree with this review
2 people agree with this review 2010/11/06
小澤のベートーヴェンは、特に古株の評論家からは著しく評判が悪い。確かに、音楽に精神的な深みを求める聴き手からすれば、いささか物足りない気がするのも事実である。しかしながら、本盤のような極上の高音質のSACDを聴けば、評判を落としているのは、これまで発売されたCDの音質によるのではないかと思えてくる。それくらい、本盤は、これまで発売されたCDと比較して、音質の差が著しいと言える。本演奏については、既にマルチチャンネル付きのSACDが発売されているが、本盤の方がはるかに上を行くと言える。本演奏が浅薄な演奏と言われていた所以は、特に第3楽章のせかせかとした進行や、終楽章の歓喜の主題の直前の2つの和音の無機的な響きなどによると思われるが、前者については、本盤を聴くと、必ずしも浅薄なものではないことがよくわかる。テンポは早いが、歌うべきところはよくうたい、楽曲全体での本楽章の位置づけをよく考え抜いたアプローチをしていることが理解できる。終楽章の無機的な和音については、本盤を持ってしてもごまかすことはできないが、他方、合唱とオーケストラの分離なども鮮明に捉えられていて、本演奏を非常に素晴らしく、感動的なものに仕立て上げているのに大きく貢献していると言える。他のベートーヴェンの諸曲についても、仮に本盤のような高音質SACD化をすれば、小澤のベートーヴェンに対する評価も、相当に違ってくるのではなかろうか。
Back to Top