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Review List of つよしくん 

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  • 5 people agree with this review
     2010/10/25

    テンシュテットは、ベルリン・フィルとの相性は抜群であったが、他方、ウィーン・フィルとの関係は最悪だったと言われる。同じマーラー指揮者であるバーンスタインが、ウィーン・フィルとの相性が良く、ベルリン・フィルとは良くなかったというのと対照的である。バーンスタインは、ベルリン・フィルとマーラーの第9の一期一会の熱演(名演と言うには躊躇している)を遺したが、同じように、テンシュテットが、マーラーの第10の一期一会の熱演(こちらは超名演)を遺したというのは大変興味深い。本盤を聴いて思うのは、やはりテンシュテットは生粋のマーラー指揮者だということ。ウィーン・フィルも、おそらくはその点はテンシュテットに一目置いていて、マーラーの第10では、テンシュテットに必死についていっているのがよくわかる。アダージョだけで29分というのは、かのシノーポリの怪演と同様のテンポの遅さであるが、演奏の性格は正反対。テンシュテットの内なるパッションの爆発は凄まじく、ウィーン・フィルの鉄壁のアンサンブルにも乱れが生じているほどの劇的な爆演だ。これは、指揮者とオーケストラの極度の緊張感が生み出した奇跡的な超名演であり、おそらくは、マーラーの第10の中でも最高レベルの超名演と高く評価したい。これに対して、ベートーヴェンのエロイカ。これは、ウィーン・フィルのテンシュテットへの不満がありあり。マーラーでは譲歩しても、ベートーヴェンは俺たちの音楽。お前の言いなりにはならないよとばかり、テンシュテットの熱い指揮に対して、ウィーン・フィルの冷めた演奏が際立つ。第2楽章など、ベートーヴェンと言うよりはマーラーの葬送行進曲のようであるが、ウィーン・フィルの嫌々ながらの演奏が、余計にそうした演奏の性格を際立たせている。これは、マーラーの第10とは異なり、一期一会の出会いがマイナスの方に出た演奏と言えるだろう。もちろん、一期一会の記録としての価値は高いとは思うが。録音はいずれも超優秀だ。

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  • 1 people agree with this review
     2010/10/24

    マーラーの青雲の志を描いた交響曲第1番は、マーラー指揮者と称される指揮者でも敬遠する者が存在する。マーラーの直弟子であるクレンペラーがそうであったし、必ずしもマーラー指揮者とは言えないかもしれないが、朝比奈は、一度もマーラーの第1を演奏しなかった。他方、小澤は、何と3度に渡って同曲を録音しているが、その中で名演と評価できるのは最初の1977年盤のみ。それ以降の録音は、どこか構えたようなわざとらしさが目立つ。要は、この曲へのアプローチはなかなか難しいものと言えるのかもしれない。そのような中で、マーラーの直弟子であるワルターや、マーラーの化身とも言うべきバーンスタインの名演が存在するのだが、この二大巨頭に迫る名演というのは、なかなかなし得ることが困難と言える。それでも、このインバル盤は、前述の小澤盤と同様に、相当に健闘していると言えるのではなかろうか。インバルのマーラーの交響曲に対するアプローチは、有り余るパッションを出来るだけ抑制して、全体を純音楽的に、客観的に表現しようというものであるが、そうした大仰さのない、わざとらしさのないアプローチが、同曲の性格と見事にマッチングしていると思うからである。それにしても、フランクフルト放送交響楽団の何と言う巧さ。そして、同オーケストラに、これだけの見事な演奏をさせたインバルの統率力にも高い評価を与えるべきであろう。Blu-spec-CD化によって、そうした演奏の特色が更に鮮明に表現されており、本盤の価値を高めることに大いに貢献している点も忘れてはなるまい。

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  • 8 people agree with this review
     2010/10/24

    ムーティの円熟を感じさせる素晴らしい名演である。シカゴ交響楽団の音楽監督への就任を控え、幸先のいい名演とも言えるだろう。ムーティは、ヴェルディのレクイエムを得意としており、約20年前の1987年にもミラノ・スカラ座管弦楽団等とともに同曲をスタジオ録音しており、それも生命力溢れる劇的な名演であったが、やはり、この間の20年間のムーティの円熟の歩みは非常に重いものと言わざるを得ない。冒頭の数小節の静寂の音楽からして、これまでのムーティには見られなかった奥行きの深さを感じさせる。怒りの日は、テンペラメントに溢れたいつものムーティ調ではあるが、これまでとは異なり、威風堂々たる重厚さが際立つ。同曲特有の場面毎の変化の激しさについても、ムーティは極端に陥ることなく、いい意味でのコントロールの効いた大家の巧みな表現で一環している。終結部の静寂は、冒頭部と同様であり、全曲を彫りの深い表現で感動的に締めくくっている。ムーティの統率の下、シカゴ交響楽団、更には、独唱陣や合唱団も最高のパフォーマンスを示していると言える。そして、何よりも素晴らしいのは、SACDマルチチャンネルによる極上の高音質録音。ヴェルディのレクイエムのような作品は、こうした臨場感溢れる録音によってこそ、その真価を味わうことができるのではないかと考える。

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  • 3 people agree with this review
     2010/10/23

    シマノフスキは、ショパン亡き後のポーランドを代表する作曲家であり、本盤の作品番号を見てもわかるように、各ジャンルに渡って相当数の楽曲を作曲した。しかしながら、シマノフスキの楽曲は、演奏されること自体が稀であり、その作品の質の高さに鑑みると、きわめて不当な評価しかされていないと言えるだろう。そんなシマノフスキに、ラトルという現代最高の指揮者の一人が、数々の録音を行っているというのは、何と言う幸福と言えることだろうか。本盤におさめられた歌劇「ロジェ王」などは、素晴らしい傑作オペラだ。音楽の素晴らしさや作品の内容の意味深さといい、同時代の隣国ヤナーチェクのオペラにも匹敵する稀有の作品と言える。録音自体が殆どないだけに、本盤のラトル盤は、そのまま同曲演奏の玉座を占める至高の名演ということになる。ラトルの彫りの深い表現は、シマノフスキに対する敬意と愛着に満ち溢れて素晴らしいの一言であるし、ロジェ王役のハンプソンを始めとする独唱陣や少年合唱団を含むバーミンガム市合唱団もきわめて優秀だ。ラトルの薫陶の下、鍛え抜かれたバーミンガム市響も最高のパフォーマンスを示していると言える。交響曲第4番も、アンスネスのピアノともども同曲最高の名演と言える。Blu-spec-CD化によって、音質がさらに鮮明になったことも、本盤の価値を大いに高めている。

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  • 2 people agree with this review
     2010/10/23

    インバルのマーラーはやはり素晴らしい。インバルのマーラーの交響曲に対するアプローチは、ありあまるパッションを出来るだけ抑制して、可能な限り客観的な表現を心がけようというものである。ただ、それだけでは、四角四面の面白みのない演奏になりがちであるが、インバルの場合は、抑制しきれなかったパッションが随所に散見されるところであり、そうしたはみ出てしまったパッションに聴き手が大いなる感銘を受けるのだ。本盤の第5の場合、随所に、抑制しきれなかった溢れんばかりのパッションが散見されるところであり、もちろん、バーンスタインやテンシュテットなどに比較すると抑制的ではあるが、インバルとしては相当に劇的な演奏に仕上がっていると言える。もちろん、インバルならではの厳しい造型、精緻さ、そして各楽器群の整理し尽くされた響きも健在であり、これらを総括すれば、いい意味でのバランスにとれた名演と言うことができるだろう。当時のフランクフルト放送交響楽団もインバルの確かな統率の下、最高のパフォーマンスを示していると言える。そして何よりも素晴らしいのは、ワンポイント録音による極上の高音質。これほどナチュラルな音場で、マーラーの交響曲を味わえるというのは、本盤以外にはなかなか存在しないのではないか。Blu-spec-CD化によって、音質は更に鮮明さを増しており、本盤の価値を高めることに大きく貢献している。

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  • 7 people agree with this review
     2010/10/23

    本盤は小澤の30代の録音であるが、70歳を超えた現時点においても、これまでの数多い小澤のディスコグラフィの中でも、トップの座に君臨する至高の超名演と高く評価したい。とにかく、この当時の小澤のとてつもない力強い生命力と、作品の本質にぐいぐいと切り込んで行く鋭いアプローチは、凄いの一言。メシアンのトゥーランガリラ交響曲にしても、武満のノヴェンバーステップス等にしても、いずれも難曲であるとともに、本盤の録音当時は、他にも録音が非常に少ないということもあり、演奏をすること自体に大変な困難を伴ったことが大いに予想されるところだ。そのような厳しい状況の中で、30代の若き小澤が、これほどの自信と確信に満ち溢れた堂々たる名演を繰り広げたというのは、小澤の類まれなる才能とともに、現代の大指揮者小澤を予見させるのに十分な豊かな将来性を感じさせられる。メシアンにしても、武満にしても、若き小澤を高く評価したのも十分に理解できるところである。トゥーランガリラ交響曲やノヴェンバー・ステップス等には、本盤の後、様々な指揮者の手により相当数の録音が行われたが、未だに本盤を凌駕する名演が登場していないというのは、本盤の演奏の水準の高さに鑑みれば、当然のような気がする。録音であるが、新たなリマスタリングとBlu-spec-CD化によって、驚異の高音質に生まれ変わった。本当は、SACDで発売して欲しいところであるが、それでもこれだけの高音質でこの歴史的な超名演を味わうことができるのだから、文句は言えまい。

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  • 8 people agree with this review
     2010/10/23

    ブロムシュテット&シュターツカペレ・ドレスデンによるブルックナーの交響曲の録音は、何故か第4と第7にとどまったが、いずれも名演だ。特に、本盤の第7は、シュターツカペレ・ドレスデンのいぶし銀の音色を十分に活かした稀有の名演として高く評価したい。ブロムシュテットは、北欧の出身でありながら、ドイツ音楽を得意とするとともに、オードソックスなアプローチをする指揮者であると考えているが、本演奏でも、そうしたブロムシュテットの渋い芸風が曲想に見事にマッチングしていると言えるだろう。いささかも奇を衒うことなく、インテンポによる自然体のアプローチが、第7の魅力を聴き手にダイレクトに伝えることに大きく貢献している。加えて、前述のように、シュターツカペレ・ドレスデンのいぶし銀のジャーマンサウンドが、演奏に潤いを与えている点も見過ごしてはならない。ドレスデン・ルカ教会の豊かな残響も、同オーケストラの音色をより豊穣なものとしている点も大きなプラスだ。第4については、既にHQCD化されており、より素晴らしい名演である第7については、HQCD化されないのは実に不思議な気がしていたが、今回のBlu-spec-CD化によって、長年の渇きが漸く癒されたと言える。さすがにSACDにはかなわないが、従来盤と比較すると鮮明さが相当に増しており、本演奏の価値は大いに高まったと考える。

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  • 2 people agree with this review
     2010/10/22

    ロシアのピアニズムと言うと、リヒテルやギレリスなど、ロシアの悠久の大地を思わせるような圧倒的な技量と重量感溢れる演奏を旨とするピアニストによるスケール雄大な演奏が思い浮かぶ。これらの重量級のピアニストに対して、トロップの演奏は、ある意味では柔和とさえ言えるものだ。ロシア音楽は、重量感溢れる力強さとともに、メランコリックな情感の豊かさが持ち味と言えるが、トロップのアプローチは、どちらかと言うと、後者のロシア的な抒情を情感豊かに歌いあげることに主眼を置いたアプローチであると言える。特に、チャイコフスキーの四季に顕著であり、静謐ささえ感じさせるような詩情豊かな演奏は、これまで何度も聴いてきた同曲の知られざる魅力を感じさせるのに十分である。これに対して、ラフマニノフの幻想的小品集も、あくまでも基本的なアプローチは、チャイコフスキーと変わらないとは思うが、例えば、有名な「鐘」などにおける、ここぞと言う時の力強い打鍵による圧倒的な迫力の凄まじさ。こうした激しい感情の起伏と豊かな歌謡性を兼ね備えた演奏は、トロップがロシアのピアニストであることをあらためて認識させてくれる。Blu-spec-CD化によって、音質により鮮明さを増した点も評価したい。

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  • 1 people agree with this review
     2010/10/21

    我が国の伝統文化に深い敬意を表して、そうした伝統文化に根ざした傑作の数々を世に送り出した黛敏郎には、頭が下がる思いである。音楽のレビューと直接の関係がなくて恐縮であるが、現在の政権の、日本の伝統文化や日本人としての誇りを蔑にするかのような嘆かわしい状況にかんがみれば、今こそ黛敏郎の音楽を深く味わうべき時にあるのではないかとさえ考える。本盤におさめられた両曲ともに素晴らしい傑作だ。曼荼羅交響曲は、涅槃交響曲と同様に、仏教の世界観をとりいれた作品であるが、どちらかと言えば、涅槃交響曲よりもわかりやすいと言えるかもしれない。ライナーノーツによると、NHK交響楽団初の世界演奏旅行の際に、各地で演奏したとのことであるが、正に世界に誇る現代曲の傑作と言えるのではないか。バレエ音楽「舞楽」も、西欧音楽の楽器を活用した日本古来の音楽と言った趣きであり、バレエ音楽と言うよりは、能や歌舞伎の舞を思わせるような、独特の魅力に満ち溢れている。演奏は、これらの両曲の初演者である岩城宏之&NHK交響楽団によるものであり、黛敏郎も生前において認めていた演奏だけに、現時点においても、最も権威ある名演と評価しても過言ではあるまい。Blu-spec-CD化による高音質化も、本盤の価値を大いに高めている。

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  • 3 people agree with this review
     2010/10/20

    これはヤナーチェクの弦楽四重奏曲中の最高の名演であるとともに、スメタナ四重奏団の様々な演奏の中でもトップの座を争う超名演と高く評価したい。本盤をそうした超名演たらしめたのは、ライブ録音であるということによるのではなかろうか。スメタナ四重奏団は、本盤の3年前にも、両曲をスタジオ録音している。それもスメタナ四重奏団の名を辱めることのない名演ではあるが、本盤を前にすれば、太陽の前の星のような存在に過ぎない。それぐらい、本盤はダントツの出来と言えるだろう。第1番の第1楽章の冒頭からして、凄まじい緊迫感だ。この冒頭の悲劇的な主題は、同曲の全体を支配しているが、スメタナ四重奏団は、終楽章に至るまで、冒頭の緊張感を保っており、それでいて随所に見られるモラヴィアの民謡風の旋律の情感豊かな歌い方にもいささかの抜かりはない。第2番は、第1番をさらに深く、そしてスケールを雄大にした作品であるが、スメタナ四重奏団の鬼気迫る演奏は、他の弦楽四重奏団の追随を許さない至高・至純のレベルに達していると言える。とある小説の登場によって、ヤナーチェクの様々な楽曲の録音は増える傾向にあるが、弦楽四重奏曲のについて、本盤を超える演奏を成し遂げるのは決して容易ではないと考える。Blu-spec-CD化によって、音質は更に鮮明さを増しており、本盤の超名演の価値をより一層高めることに大きく貢献している。

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     2010/10/19

    ドヴォルザークは、恩人である先輩作曲家ブラームスと同様に、管弦楽曲もさることながら、むしろ室内楽曲において数多くの傑作を遺したと言えるのではないか。その中でも、本盤におさめられたピアノ三重奏曲の第3番と第4番は、最上位にランクされるべき名作であると思う。しかしながら、これほどの名作であるにもかかわらず、ピアノ三重奏曲のCDは意外にも少ない。弦楽四重奏曲「アメリカ」の数多いCDと比較すると、あまりにも不当な気がする。そのような中で、ピアノ三重奏曲第3番と第4番に、チェコの名奏者で構成されるスーク・トリオによる名演があるのは何と言う幸せであろうか。スーク・トリオの演奏は、奇をてらうことなく、作品の素晴らしさ、魅力を愚直なまでに自然体のアプローチで描き出していくもの。その誠実であり、なおかつ作品への深い共感が、本盤で聴くような、いい意味でのオーソドックスな名演を生み出したと言えるだろう。両曲に内在するスラブ的な民族色の描出も見事であるし、ドヴォルザークの晩年に顕著な人生の哀感とも言うべき深い抒情の描き方も実に巧みだ。緩急自在のテンポ設定も、透徹したアンサンブルの下、名人芸の域に達していると言える。Blu-spec-CD化によって、音質がさらに鮮明になったことも、本盤の価値を高めることに大きく貢献している。

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     2010/10/18

    カルミナ四重奏団は、現代における気鋭の弦楽四重奏団である。その前衛的とも言うべき切れ味鋭い演奏は、品格をいささかも失うことなく、高踏的な芸術性を維持している点が素晴らしい。本盤のドビュッシーとラヴェルというフランス印象派の二大巨頭による弦楽四重奏曲についても、そうしたカルミナ四重奏団ならではの前衛的とも言うべき切れ味鋭い名演と高く評価したい。ドビュッシーの弦楽四重奏曲は、作品番号は10番という若い番号ではあるが、かの牧神午後への前奏曲という最高傑作と同時期の名作である。それだけに非常に充実した書法で作曲されているが、カルミナ四重奏団の手にかかると、第1楽章の緊張感溢れる演奏の凄まじさからして圧巻だ。第3楽章の抒情も、哀嘆調には陥らず、どこまでも現代風の知的な表情を失うことがない。終楽章の締めくくりのテンションも異常に高く、いかにもカルミナ四重奏団らしい革新的とも言うべき名演に仕上がっている。ラヴェルの弦楽四重奏曲も名演。特に、第2楽章のリズミカルな楽想や、終楽章の異常なテンションの盛り上がりは、正にカルミナ四重奏団の真骨頂とも言うべき前衛的な表現と言える。Blu-spec-CD化によって、音質が更に鮮明さを増したのも嬉しい。

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  • 2 people agree with this review
     2010/10/17

    ため息がでるような詩情溢れる極上の美演である。例えば、版画のグラナダの夕暮れの何と言う情感豊かさ。ドビュッシーのピアノ曲を演奏するための鉄則として、安定した技量をベースとしつつも、各楽曲の有する詩情豊かさをいかに巧みに表現できるのかが必要となってくるが、べロフの手にかかっては、いささかの心配は要らないということになる。映像の第1集や第2集の各小曲の描き分けも実に巧み。各小曲ともにこれ以上は求め得ないような高踏的な美しさを誇っており、これを超える演奏は不可能ではないかと考えられるほどだ。特に印象に残ったのは、映像第1集の水の反映であり、ゆったりとしたテンポで、ドビュッシーのあらゆるピアノ作品の中でも最もみずみずしい美しさを湛えた名作の一つとされる同曲を、これ以上は考えられないような情感豊かさで弾き抜いており、実に感動的だ。忘れられた映像や、喜びの島、マスクも、卓越した技量をベースとしつつ、フランス風のエスプリ漂う詩情に満ち溢れており、正に至高・至純の名演と高く評価されるべきものと考える。Blu-spec-CD化によって、音質は通常盤よりさらに鮮明さを増しており、本盤の価値をより一層高めることに大きく貢献している。

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     2010/10/17

    ドビュッシーの前奏曲集や子供の領分は、その作曲家としての天才性を発揮した名作であるが、それ故に、あまたのピアニストがこれまで様々な名演を成し遂げてきた作品でもある。そうした中で、べロフの演奏も、それら古今東西の名演の中でも十分に存在感のある名演と高く評価したい。ドビュッシーは、印象派と称される作曲家でもあるだけに、前奏曲集や子供の領分を構成する各小曲において、安定したテクニックだけでなく、味わいのある詩情が必要となる。この詩情を情感豊かに表現できなければ、それこそ単なるピアノ練習曲の世界に陥ってしまう。しかしながら、べロフについてはそのような心配は全く御無用。べロフは、卓越した技量をベースとしつつも、フランス風のエスプリ漂う詩情豊かな演奏を行っている。どの曲も見事な出来栄えであるが、特に、前奏曲集の中でも最高傑作とされる沈める寺の情感豊かな演奏は圧倒的だ。有名な亜麻色の髪の乙女は、表情過多のあまりいささか身構え過ぎのような気もしないでもないが、単なるムード音楽に堕していない点は評価したい。子供の領分の各楽曲の描き分けも、べロフ自身も楽しんで演奏しているような趣きがあり、その芸術性の高さは、さすがと言うべきである。Blu-spec-CD化によって、音質により鮮明を増した点も高く評価したい。

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  • 4 people agree with this review
     2010/10/16

    ラトルが、ベルリン・フィルの芸術監督に就任する頃に、ウィーン・フィルと録音したベートーヴェンの交響曲全集からの一枚だ。私は、どうもこの当時のラトルをあまり評価していない。バーミンガム市響(一部はフィルハーモニア管)と数々の録音を行っていた若き日のラトルは、生命力に満ち溢れた名演の数々を生み出して素晴らしいし、ここ数年のラトルも、大指揮者の風格を漂わせた円熟の名演を聴かせるようになっており、これまた高く評価している。しかしながら、ベルリン・フィル就任後数年間は、気負いもあったのだとは思うが、意欲が空回りするケースが多く、数々の凡打を繰り返していたのではないかと思う。このベートーヴェンの全集も、私は、筋の通っていない演奏であると考えている。各交響曲によってアプローチの仕方が全く変わるのだ。そうしたやり方もあるのかもしれないが、私に言わせれば、ラトルのベートーヴェンの交響曲に対する考え方、見解が固まっていないのではないかと思われる。本盤の第9も、総体としては巨匠風のアプローチだ。しかしながら、終楽章の合唱(特に終結部)に見られるような不自然なアクセントなど、見方によっては個性的とも言えるが、私に言わせれば、単なる恣意的なあざとさしか感じさせない。新機軸を打ち出そうという焦りなのかもしれないが、少なくとも芸術性からは程遠いと言える。もちろん、私は、ラトルの才能など微塵も疑っていない。もし、現在、ベルリン・フィルとベートーヴェンの交響曲全集を録音すれば、間違いなく素晴らしい名演を成し遂げるものと固く信じている。

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