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Review List of つよしくん 

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  • 2 people agree with this review
     2010/12/05

    ムラヴィンスキー盤と並ぶ、素晴らしい名演だ。ザンデルリングは、後年にも、クリーヴランド管弦楽団と同曲を録音しているが、オーケストラの音色や楽曲への共感度を考慮すると、本盤の方をより上位に置きたいと考える。同曲は、過去の大作曲家の楽曲からの引用や、打楽器の効果的な活用など、一筋縄ではいかない内容を有している。また、ショスタコーヴィチの最後の交響曲ということで、自伝的な要素を持った交響曲と言えるだけに、内容においては、他の交響曲以上に深いものがあると言えるところであり、楽曲に対する深い理解がないと、単なる旋律の品評会のような演奏に陥ってしまう危険性がある。しかしながら、ザンデルリングにはそのような心配は御無用。同じ社会主義国家であった東独出身で、しかも、ムラヴィンスキーの薫陶を直接受けたこともあって、ショスタコーヴィチへの深い理解と共感が感じられる素晴らしい演奏に仕上がっていると言える。特に、同曲の終楽章の主旋律は、ほとんど黄泉の国に旅立っていくような至純の美しさを誇っているが、ザンデルリングは、いささかも感傷に陥ることなく、荘重たるインテンポで、高踏的な表現を行っている点を高く評価したい。本盤は、SACDハイブリッド盤がかつて出ていたが、今般のハイパー・リマスタリング盤はそれを大きく上回る。特に、この曲の肝である打楽器が鮮明に再現されているのは実に素晴らしい。

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  • 2 people agree with this review
     2010/12/05

    ドイツ風の重厚な名演だ。ザンデルリングは、旧東ドイツ出身の指揮者ではあるが、旧ソヴィエト連邦において、ムラヴィンスキーの下、レニングラード・フィルの客演指揮者をつとめていたこともあり、ショスタコーヴィチの演奏について、ムラヴィンスキーの薫陶を得ていたものと思われる。もちろん、ムラヴィンスキーの演奏とはその性格を異にするが、それでも、その演奏に通低する精神性においては、共通するものがあるのではないかと考える。ショスタコーヴィチは、現在の北朝鮮のような国において、粛清の恐怖に耐えながら、したたかに生き抜いてきた。そうした死と隣り合わせの恐怖が、各交響曲の根底にあると考えられる。だからこそ、ムラヴィンスキーの演奏には、単に、初演者であるからというのにとどまらない、強い説得力があるものと言える。ザンデルリングも、前述のように社会主義政権下にあった東独出身であり、こうした恐怖には強く共感するものがあったと考える。本演奏には、前述のような、厳しい造型美を旨とするドイツ風の重厚なたたずまいに加えて、ショスタコーヴィチの交響曲の本質を鷲掴みにした凄みのある深い共感に満ち溢れている。終楽章も、単なる苦悩から歓喜へというようなお祭り騒ぎにはなっておらず、ムラヴィンスキーの演奏と同様に、テンポを落とした幾分控えめな終結が印象的である。本盤は、かつてSACDハイブリッド盤が出ていたが、このハイパー・リマスタリング盤は、さらに音質が鮮明になっており、本名演の価値をより一層高めることに大きく貢献している。

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  • 4 people agree with this review
     2010/12/05

    あまりの凄まじい高音質に、ただただ圧倒されるのみ。XRCDとSHM−CDを組み合わせただけで、これだけの高音質になるとは、ほとんど信じがたい思いだ。下手なSACDなどを凌駕する高音質であり、本盤が、1960年代初頭の録音であることなど、まるで信じられない。さすがに、トゥッティの箇所においては、やや音場が狭くなるなど、若干の音の古さを感じさせるが、その他の箇所においては、あたかも最新の録音のような鮮明な音質に生まれ変わっていると言える。これだけ音質が素晴らしいと、演奏内容もより一層引き立つことになる。両曲ともに、ミュンシュ&ボストン交響楽団の黄金時代を象徴する名演と高く評価したい。ミュンシュは、スタジオ録音であろうが、ライブ録音であろうが、生命力溢れる熱演を繰り広げるが、本盤でも、そうしたミュンシュの燃えに燃えた爆演を聴くことができる。もちろん、抒情的な箇所の歌い方もいささかの不足もなく感動的であり、ミュンシュの表現力の幅の広さを感じさせてくれる。それにしても、当時のボストン交響楽団は、何と言う巧いオーケストラであったことか。特に、ティルにおける金管楽器や木管楽器の名技にはほれぼれするほどで、ティンパニの雷鳴のようなとどろきも圧巻の迫力である。

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  • 4 people agree with this review
     2010/12/05

    素晴らしい高音質CDだ。XRCDとSHM−CDという、高音質アイテムの組み合わせによる理想的な媒体の登場であるが、正直言って、これほどまでの高音質とは聴く前にはとても信じられなかった。下手なSACDよりもよほど素晴らしい音質に仕上がっており、これが1950年代後半の録音であるとは信じられないほどだ。トゥッティの箇所においては、さすがに音の古さを感じさせないわけではないが、その他の箇所においては、あたかも新録音のような鮮明さに唖然とするほどだ。演奏も素晴らしい。というか、これほどまでの高音質であると、俄然、演奏内容も輝きを増すと言った方が正しいのかもしれない。ミュンシュは、独仏間で領土が何度も行き来したエルザス・ロートリンゲン州の州都であるストラスブールの出身であり、ドイツ系の人も多く住んでおり、そうしたこともあって、フランス音楽だけでなく、ドイツ音楽にも数々の名演を遺してきた。特に、ブラームスなど、定評ある名演が多いが、本盤のエロイカも凄い。ライブ録音であるかのような生命力溢れる力演であり、それでいて、勢い一辺倒には陥らず、例えば第2楽章など、テンポを落として感動的に歌い抜くなど、内容豊かな演奏を繰り広げている。当時の手兵のボストン交響楽団も実に巧く、その重厚な音色は、後年の小澤時代のものは別次元の圧巻の迫力だ。

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  • 0 people agree with this review
     2010/12/05

    まずは、マルチチャンネル付きのSACDによる極上の高音質録音を高く評価したい。R・シュトラウスのような大オーケストラによる楽曲の場合、演奏内容の前に、録音の良さが勝負になるが、本盤の場合は、いささかの不足もない、極上の高音質に仕上がっていると言える。マルチチャンネルによって、あたかもコンサートホールで聴いているような臨場感があり、各楽器の分離も完璧だ。やや弱音がはっきりしない箇所(例えば、英雄の戦いの場面の冒頭のトランペットなど)も散見されるが、これは、録音のせいと言うよりも、後述のように、ヤンソンスの表現によるところが大きいと思われる。そして、演奏内容であるが、ヤンソンスのコンセルトへボウ管弦楽団首席指揮者就任記念コンサートであるだけに、指揮者もオーケストラも一丸となって、熱のこもった演奏を繰り広げているのが特徴だ。それ故に、ヤンソンスもある種の気負いがあるせいか、強弱をあまりにも強調するあまり、弱音が不自然に弱く、やせて聴こえる箇所も出てきているが、それでも、総体としては、この両者の実りの多い関係を予見させるだけの、なかなか水準の高い佳演を繰り広げていると評価したい。コンセルトへボウ管弦楽団は、さすがに技量の水準が高く、最高のパフォーマンスを示していると言える。

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  • 11 people agree with this review
     2010/12/05

    素晴らしい名演だ。エルガーのヴァイオリン協奏曲は、イギリスの詩情溢れるエルガー最晩年の傑作であるが、それにしてはあまりにも録音点数が少ない。作品の質を考えると、四大ヴァイオリン協奏曲は別格として、ブルッフの第1番、シベリウス、サン・サーンスの第3番、ラロのスペイン交響曲などが続いているが、それらのヴァイオリン協奏曲と同格の名作と言えよう。同曲には、数年前に、同じくSACDマルチチャンネル付きの名演である、ヒラリー・ハーン(コリン・デイヴィス&ロンドン交響楽団)盤(DG)が世に出たが、本盤は、それと同格の名演と言える。何よりも、タスミン・リトルのヴァイオリンが素晴らしい。ヒラリー・ハーンのように個性的なアプローチは薬にしたくもないが、女流ヴァイオリニストならではの情感溢れる抒情美においては、タスミン・リトルの方に軍配をあげたくなる。アンドルー・デイヴィス&ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団も、これ以上は求めないような表現で、イギリスの詩情を感動的に歌いあげており、ヴァイオリン協奏曲のバックとしては、最高の理想像の具現化と言える。併録の小品も、いずれも名演であるが、特に、100年前のヴァイオリン協奏曲のカデンツァをおさめているのは貴重であるし、タスミン・リトル、、アンドリュー・デイヴィス、ひいてはシャンドス・レーベルの同曲への深いこだわりと愛着を感じさせる。録音も、SACDマルチチャンネルによる極上の高音質であり、本名演の価値を高めるのに大きく貢献している。

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  • 9 people agree with this review
     2010/12/04

    ザンデルリングは、ショスタコーヴィチのすべての交響曲を録音したわけではないが、録音した交響曲はいずれも素晴らしい名演だ。本盤の2曲も、ザンデルリングならではの名演と高く評価したい。ザンデルリングは東独出身の指揮者であり、特に独墺系のブラームスなどに数々の名演を遺したが、ムラヴィンスキーの指導の下、レニングラード・フィルにおいて、相当数の演奏を行ったことを忘れてはなるまい。したがって、ムラヴィンスキーが得意としたショスタコーヴィチやチャイコフスキーにおいても、名演の数々を遺したのは必然の結果と言えるだろう。前述のように、本盤におさめられた第1番、第6番ともに名演であるが、特に、私は第6番に感銘を受けた。同曲の初演者であるムラヴィンスキーの演奏もいくつか遺されており、いずれも名演ではあるが、特に、第1楽章において、スコアリーディングは完璧ではあるものの、いささか物足りない感があるのは否めないところ。ザンデルリングは、この第1楽章が感動的だ。ロシア的な美しい抒情が満載の楽章であり、ザンデルリングはゆったりとしたテンポで進行させていくが、例えばバーンスタインのように演出過多な大仰さもなく、高踏的な美しさを保っているのが見事だ。第2楽章や第3楽章になると、師匠ムラヴィンスキーにはさすがにかなわないが、それを除けば、間違いなくトップクラスの演奏であることは否定できない。

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  • 1 people agree with this review
     2010/12/04

    シベリウスの7つある交響曲(クレルヴォ交響曲を除く)のうち、最高傑作は、衆目の一致するところ、第4番と言えるのではないだろうか。もちろん、第7番も傑作ではあり、私としては、両者劣らぬ傑作であると考えるが、楽曲の深みという点においては、第4番の方に軍配があがるのではないかと考える。この傑作交響曲は、必要最小限の音符で書かれているだけあって、オーケストラの扱いもきわめて控えめで、トゥッティの箇所はわずか。したがって、指揮をするに際しても、オーケストラに対する圧倒的な統率力と表現力を要求される難曲と言えるだろう。もちろん、自信がある指揮者しか同曲を採り上げることはないが故に、これまでに遺された演奏は、名演であることが多かった。そうした数々の名演の中でも、ザンデルリンクの演奏は、ドイツ風の重厚なものだ。これほどまでに全体の造型を意識した演奏は、珍しいとも言える。しかしながら、オーケストラに対する統率力は抜群のものがあり、簡潔なスコアから、実に豊かなハーモニーを作り上げることに成功している。併録の「夜の騎行と日の出」も名演。傑作でありながら、なかなか録音される機会の少ない同曲の魅力を、これまた重厚なアプローチで完璧に表現し尽くしている。本盤には、かつてSACD盤が出ており、それもかなりの高音質であったが、今般のハイパー・リマスタリング盤も、それに勝るとも劣らない素晴らしい音質だ。

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  • 4 people agree with this review
     2010/12/04

    ヤンソンスの進境の著しさをあらわす素晴らしい名演である。本演奏は、何か特別に個性的な解釈で聴き手を驚かすような性格のものではない。中庸のテンポでオーケストラを無理なく鳴らし、ラヴェルの華麗なオーケストレーションを鮮明に再現しようと言うオーソドックスなアプローチだ。それでいて、各組曲の描き分けは完璧。随所に出現するプロムナードについての変化の付け方は、円熟の至芸に達しているとも言える。キエフの大門の終結部における盛り上がりは、圧倒的な迫力だ。ヤンソンスの統率の下、手兵のコンセルトへボウ管弦楽団も最高のパフォーマンスを示していると言える。金管楽器も木管楽器も実に巧く、弦楽器の北ヨーロッパならではのくすんだ音色も魅力的だ。シャイーの時代に、コンセルトへボウ管弦楽団ならではの伝統の音色が失われたと言われたが、ヤンソンスの時代になって、幾分復活したのではないだろうか。録音も素晴らしい。SACDマルチチャンネルは、鮮明さと臨場感において、向かう敵はない存在であり、展覧会の絵のような作品を再現する際においては、理想の媒体であると言えよう。展覧会の絵のみしか収録されていないという点もあるが、値段も安く、コストパフォーマンス的にも素晴らしいCDだ。

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  • 2 people agree with this review
     2010/12/04

    最近では、SACDとSHM−CDを組み合わせた盤が登場したことから、やや影が薄くなった面もあるが、従来CDということになれば、やはり、このXRCDとSHM−CDを組み合わせたCDがダントツの高音質と言えるだろう。本盤については、数年前にXRCD盤が出ており、それも高音質であったが、鮮明さや音場の広がりにおいて、本盤の方に一日の長があると言える。1950年代後半という、ステレオ録音初期の音源を、これほどまでに鮮明に再現されるのには大変驚かされた。マスターテープの保存状態もかなり良かったものと拝察されるが、この時代の後のCDでも、音質の劣悪なものが出回っているのを見るにつけ、それらのCDも、マスターテープに遡ったリマスタリングを実施して欲しいと願う聴き手は私だけではあるまい。演奏も、超をいくつも付けたくなるような名演だ。コンドラシンが、ソヴィエト連邦の国外ではいまだ無名の時代のものであるが、後年の発展を予感させるに十分な圧倒的な指揮ぶりと言えるだろう。両曲ともに、曲想が目まぐるしく変化するが、各場面毎の描き分けも見事で、終結部に向けての猛烈なアッチェレランドの激しさは、スタジオ録音とはとても思えないほどだ。

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  • 25 people agree with this review
     2010/12/04

    某有名誌の高名な評論家には酷評されている演奏であるが、私としては、ブロムシュテットならではの名演と評価したい。ブロムシュテットのブルックナーと言えば、ドレスデンシュターツカペレを指揮してスタジオ録音した第4や第7が思い浮かぶ。今から30年以上も前の演奏ではあるが、オーケストラのいぶし銀の音色を活かした美しい名演であった。ブロムシュテットは、今や80代も半ばであるが、本盤におけるアプローチも、前述の第4や第7とはあまり変わっていない。ややゆったりめのインテンポで、オーケストラを愚直に鳴らしていくというものだ。ある意味では職人肌の演奏と言うべきものであり、ヴァントなどのアプローチと共通するものがあると言える。ヴァントと異なるのは、厳格なスコアリーディングに基づく徹底したこだわりとか、凝縮とも言うべき厳しい造型の構築などが見られないという点であると思われる。それでも、オーケストラを無機的には陥ることなく、壮麗に鳴らし切るというアプローチは、ブルックナー演奏の王道を行くものであると言える。加えて、本盤は録音が素晴らしい。マルチチャンネル付きのSACDは、鮮明さに増して臨場感があり、正にブルックナーのCDの理想像と言える。最後に一言。前述の某評論家は、特に、終楽章において、ヴァント&ベルリン・フィルのみを比較の対象に採り出してきて、本盤の演奏の程度では存在意義はないと切り捨てていた。高名な評論家に対して申し訳ないが、これは批評には値しない暴言と言える。ヴァント&ベルリン・フィルは、そもそも次元の異なる歴史的な名演なのだ。これに勝る演奏など、これまで名演の評価を勝ち得てきた演奏の中には皆無である(朝比奈&東京交響楽団、ヨッフム&コンセルトへボウ・アムステルダムなど)。にもかかわらず、ブロムシュテット盤だけが、なぜ、他の名演を差し置いて比較の対象にされないといけないのか、はなはだ理解に苦しむ。プロの評論家は、それでお金を稼いでいるのであり、好き嫌いを書けばいい、こうしたレビューサイトとは全く性格を異にするものである。この場を借りて、苦言を呈しておきたい。

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  • 7 people agree with this review
     2010/12/04

    本盤におさめられた両曲の名演中の名演として、世評が著しく高いだけに、これまで数々の高音質化が試みられてきたが、本盤は、究極の高音質CDとして高く評価したい。これまで発売された高音質CDとしては、SHM−CD盤、SACDハイブリッド盤、そしてDVD−audio盤があり、特に、後者の2つにはマルチチャンネルが付いていることもあって、臨場感溢れる音質が見事であったが、本盤は、それらを凌駕する高音質と言える。重量感においてはいささか足りない気もしないではないが、各楽器の分離や鮮明さがダントツに増している。クライバーは、ダイナミックレンジを幅広くとる指揮者であるが、本盤の場合、通常CDでは殆ど聴き取れないような繊細なピアニシモから、最強奏のトゥッティに至るまで、完璧に再現されている。マルチチャンネルは付いていないものの、臨場感においても不足はなく、眼前にクライバーの颯爽とした華麗な指揮ぶりが浮かぶかのようだ。演奏は、トスカニーニやカラヤンの系列に連なる、いわゆる音のドラマに主眼を置いたものであるが、高音質のスタジオ録音という条件を付ければ、現在においてもなお、トップの座に君臨する名演、名盤と言えるだろう。ライブ盤にまですそ野を広げれば、カラヤンの名演(第5は、先般発売された来日時の77年盤、第7は同時期のパレクサ盤)にはさすがに劣るが、それでも、この若武者ならではの勢いのある名演は、いささかの存在価値を失うものではないと考える。

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     2010/12/03

    両曲ともに名演だ。ザンデルリンクは、シベリウスの交響曲全集を完成させた唯一の独墺系の指揮者であるが、いずれの交響曲も、造型美を重視したドイツ風の重厚なものであり、イギリスや北欧の指揮者の手による演奏とは性格が大きく異なるが、シベリウスの交響曲の知られざる魅力を知らしめた異色の名演として高く評価したい。本盤の両曲も、そうしたザンデルリンクならではの重厚なアプローチを見せてくれているが、特に、ゆったりとしたテンポで、シベリウスがスコアに記した数々の美しい旋律を精緻に演奏している点が素晴らしい。弦楽器のトレモロや、金管・木管の響かせ方にもユニークなものがあり、はじめて耳にするような場面が散見されるなど、演奏に新鮮なみずみずしささえも感じさせるのには大変驚かされた。こうした点に、ザンデルリンクのシベリウスに対する深い理解と愛着を感じさせられる。録音は、今回のハイパー・リマスタリングによって、見違えるような高音質に蘇った。重量感にはいささか欠ける面はあるが、鮮明さが飛躍的に増しており、シベリウスの交響曲には理想的な音質になったと言える。かつて本演奏にはSACD盤が発売されていたが、本盤は、SACD盤に勝るとも劣らない音質であると言えるだろう。

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     2010/12/02

    シベリウスの交響曲は、初期の第1番及び第2番と、第3番以降の交響曲では、作風が全く異なる。まるで別人が作曲したかのようであり、シベリウスの真の魅力は、第3番以降の交響曲にあると言える。したがって、シベリウス指揮者としては、第3番以降の作品をいかに巧く演奏できるかに、その真価が問われていると言えるだろう。その中でも、第3番は、第4番以降の高峰に至る過渡期にあたる作品であり、シベリウスの交響曲の中でも演奏・録音の数が最も少ない。シベリウスを演奏することが少ない独墺系の指揮者の中でも、カラヤン、ザンデルリングは例外と言えるシベリウス指揮者と言えるが、カラヤンは第3番を録音せずに世を去ったので、本盤のザンデルリング盤が、独墺系の指揮者による唯一の演奏ということになる。そして、演奏は、いかにも独墺系の指揮者の手による、造型美と重厚さを誇る演奏であるが、木管楽器などの響かせ方など新鮮な箇所も多くあり、異色の名演として高く評価したい。第5番も、第3番と同様の性格の演奏であるが、こちらの方は、カラヤンが何度も録音するなど得意とした楽曲で、いずれも名演であることもあり、ザンデルリングのドイツ風の重厚なアプローチも珍しいものではなく、第3番ほどの感銘は受けなかった。もちろん、高いレベルでの比較の問題であり、名演であることには間違いがない。併録の3つの小品は、いずれも名演。特に、フィンランディアは、カラヤンの名演を凌ぐ名演と言っても過言ではあるまい。

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     2010/11/30

    独墺系の指揮者によるシベリウスの交響曲は大変珍しい。シベリウスの交響曲を頻繁に採り上げた指揮者としては、ザンデルリングのほか、カラヤンしかいないと思われるが、カラヤンは、録音予定はあったものの第3番をついに録音することなく世を去ったこともあり、今のところ、ザンデルリングは、シベリウスの交響曲全集を完成させた独墺系のただ一人の指揮者と言える。ザンデルリングのシベリウスは、いかにもドイツ風の重厚な性格の演奏だ。シベリウスを得意とする北欧や英国系の指揮者とは、一線を画するユニークなものであり、シベリウスを得意とした同じ独墺系のカラヤンの耽美的な(楽曲によっては劇的な)演奏とも大きく異なる。前述のように、野暮ったいほどドイツ的な性格を帯びており、あたかもブラームスの交響曲を指揮するかのように、造型美と重厚さを全面に打ち出した演奏である。しかしながら、よく聴くと、旋律の歌い込みであるとか、節度ある情感の豊かさであるとか、はたまた、無機的には決して陥らない力感であるとか、非常に考え抜かれた解釈された表現であることがよくわかる。要は、巧言令色とは薬にしたくもなく、噛めば噛むほど味わいが出てくる内容豊かな演奏ということができる。したがって、シベリウスの交響曲演奏としては、前述のようにユニークとも言えると考えるが、シベリウスの本質をしっかりと捉えた演奏ということができるところであり、名演と評価しても過言ではないものと考える。

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