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Review List of 風信子 

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     2018/05/24

    吹奏楽曲と思って聴くと肩透かしを食う 勿論アンサンブルであるが 木管楽器は多くソロあるいはソリで歌う 金管楽器はしばしば信号音のように使われ メロディーを感じる部分もあるが パーカッションしか登場しない曲もある 管楽(打楽器)アンサンブルを聴く と思えばいいのだろうが 三部形式だ ソナタ形式だ 将又 ロンドだ 舞曲だと既成の楽曲構造を探そうとすると道に迷う 風景のように 誤解を恐れなければ美術鑑賞をする心積もりで対峙すれば好いように思う 音色こそ最良の言語として語りかけてくる わたしは面白いと思う これらを何時何のように聞くかは聴衆に任されているように感じられる ランダムにBGMとして流しても粋なのではないかしら 作曲者に叱られそうだが わたしにはタペストリーのように感じると大変好ましいもののように聞こえた 悪しからず 

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     2018/05/24

    30年前の演奏で世評も様々というよりネガティブな評価をこそ聞くケーゲルのディスクが棚に並んでいた 自分で求めたに違いないのに求めた記憶がない 手に触れたので再生してみた あっケーゲルだ! フレーズの輪郭を色濃く出す歌いぶりに特徴がある 古いといえば古い 私はこうしないし現代の多くの指揮者もしないだろう これが正解か否かは知らないが 肝心のマーラーは存外首肯するような気がした 自己の意思かどうか分からないがケーゲルはマーラーを半分しか録音していないようだ 5,6,8,9&10番は聴いた記憶が無い 6番や9番は聴いてみたいものだ さて天国的な第4番がこれでいいのかとなれば議論百出だろう だいたいマーラーの言う”天国の生活”とは何だ 偽キリスト者であった彼が西欧で一般に信じられている天国に共感も感心も持てるはずがない 現実逃避の側面を想像せざるを得ない ケーゲルがマーラーをどう読んだか それは演奏に訊くしかない それには己のマーラー観が要る 朋よ何はともあれ聴かなければ始まらないか あなたは如何 

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     2018/05/23

    どうしちまったんだろう 涙が溢れる 長閑な牧歌に浸れると思ったのに ”第5番”はニ長調を掲げながらも”プレリュード”からニ短調やホ短調に”スケルツォ”すらイ短調にとマイナーに終始する ”ロマンス”を経てフィナーレの”パッサカリア”に至って漸くニ長調に落ち着くが後半はヘ長調で展開する 鑑賞はメジャーへ至る歴程を謂わばその旅の道程を共に歩いた感が強い 第二次世界大戦前夜から戦中にかけて書かれた作品であれば作曲者の心境が反映しないはずもない ”第6番”は戦中から戦後にかけて書き上げられた 勝利による終戦の歓喜が反映するやと思えば ホ短調を基調とした暴力と沈鬱に塗り込められた作品となった 戦争がRVWの心情を如何に傷つけ苦しめたかを知るばかりだ 二曲とも終楽章が弱音で静謐に終わるのが辛い マンゼ&RLPOの演奏はppからffまでニュートラルに奏でている 不鮮明にならないソノリティは賞賛に値する テュッティは煩くならずソロも無機質にならない それなりの装置と環境があって初めて再現可能である 全集の完成に期待が高まる 朋よもっとRVWの音楽を あなたも如何    

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     2018/05/23

    ルーセルの真影を伝える精緻な演奏 盛らず飾らず脚色せずルーセルが五線紙に何を書き残したのかが鮮明に見える 第一楽章の斬新さを初めて実感した ソナタ形式を脱却した簡素さが胸を打つ 続くレントが語りかけてくる 勇気と力をくれる緩徐楽章に胸熱くなる 脱却も諦観もない ただ平明な生命の歩みを澄んだ目が見つめている ルーセルのこころの有り様が清々しい 粋にステップを踏むスケルツォはどこまでも軽やかで好ましい フィナーレに至っても軽妙洒脱を逸脱せず声高になったり叫んだりしない 25分程の最後の交響曲にこそルーセルの真髄がある なんと生きることは愉しいのだろう エッシェンバッハ&パリ管は必要にして十分な演奏で最大の美を引き出した 刺激成分を持たない演奏と録音なので良い環境で聴かなければならない 第1交響曲に当たる「森の詩」も美しい 朋よ分かるだろうかこの好さが そしてあなたは如何

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     2018/05/22

    20年前「バッカスとアリアーヌ」を録音したきり途切れていたルーセルをY.P.トルトゥリエが録音した BBCフィルの常任を退いてディスクも出なくなっていた 名誉指揮者であるから共演は続いていたのだろう 再び録音を再開したのであれば嬉しい ダンディ作品の多くを聴いた記憶が蘇る 名チェリスト ポール・トルトゥリエの子息で指揮者になった フランス音楽を多く録音していたが母国のオーケストラとは縁が薄い ビックネームにはならないが優れた指揮者だ ルーセルは軍人から転身して作曲家になった 30代まではダンディの指導を受けていた Opus1は29歳の時に書いたピアノ曲「時は過ぎゆく」であり遅い出発だった「エヴォカシオン(喚起)」は41〜42歳の作品で三楽章に声楽が入る交響曲で初期作品の部類に入る インド紀行から発想されたという「春の祝祭のために」と「組曲へ調」は50代に書いた彼には中期の作品となる 印象派の後継であるかのように思われるが全くもって独創性ある作風で威容を誇っている 一度好きになると忘れられなくなる世界の音楽だ あなたも如何 

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     2018/05/22

    ここにも寄らず触らず何事もなかったようにやり過ごされてしまった名盤がある ボヘミアの風は百年を掛けて世界を巡りその土地土地の風となりドヴォルジャークの感性を人々の頬に手に届けたのだ もうチェコ国民固有の情緒ではない ピリオド楽団を失ったノリントンがドイツのオケを起点に世界のメジャー・オーケストラでピリオド奏法を説き共に歌おうとした時 多くの反発があったのは推して知るべしである このシュトゥットガルトの放送オケも例外ではない その跡がブラームス交響曲全集の映像に残っている つまりピリオド奏法を拒否し続ける奏者の姿が現前と残されている それは聴衆にも起こっていた現実だった 虚心坦懐にものに臨むことの難しさを人間は持っている 知識や経験は生きる力となるが反面自由にものを感じる性質を殺す 今ボヘミアの草原を渡っていた風は爽やかに軽やかに世界の空を翔け人々の心の中に生命を吹き込んでいる ドヴォルジャークは喜んでいることだろう もしまだであれば この美しい演奏をあなたも如何

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     2018/05/21

    ヘルシンキ・ミュージック・センター竣工に伴って録音された”第5番”がホールの特性を生かした名録音となった 音像の明晰さ 壮大な空間性 響の豊かさと余韻のキレの良さ だからこそこのテンポでの演奏が生きた 一般的な演奏時間より3〜4分短い 第5番でこれほどの疾走感を貫いた演奏は稀有だ そこから立ち上がった音楽像は戦勝を祝い喜ぶ風情よりも戦後の未来への希望に胸震わす音楽になった 前衛のモダニズムに懸想したプロコフィエフの心根に複雑に組み上げられた骨組みを見るようだ HMCが出来る一年前に演奏された”第6番”はこれまで使われてきたフィンランディア・ホールで録音された 音の解像度や空間性の広がりは感じられないものの オラモ心酔の交響曲とあって熱演だ 指揮者に思い入れがあってこそ音楽に魂が入る だが気をつけなくてはいけない 客観性が失われることだ どんなに熱が入っても進むべき彼方に双眸は開かれていなければならない 常に新しい発見に瞳輝く道行きとならなくてはつまらない やや自家薬籠中の物になり掛けているようだ 是非HMCでの再録音の機会があらんことを願う やや無い物ねだりの感があった 十分に愉しめる演奏だ朋よ あなたも如何

      

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  • 1 people agree with this review
     2018/05/21

    もう20年も前の録音だが ピリオド楽器によるクィンテット”鱒”でこれに勝るものを聞かない アンナー・ビルスマ率いるラルキブデッリとインマゼールのフォルテピアノが出会った最良の記録だ 先ずは音色の魅力に囚われてしまう ヴィブラートを施さないヴァイオリンからコントラバスまで弦の響きが胸の奥の琴線に直截触れてくる 奏者のナルシズムを消すのにノン・ヴィブラートがどれほど功を奏したかわかろうというもの 自然に”歌”が清新さを帯びシューベルトの真実の声を届けてくれる 使用楽器も名器揃いでその能力を十全に引き出している またビルスマによる”アルペジョーネ・ソナタ”が聴けるのも嬉しい 小型のチェロ・ピッコロを使った演奏が独特の情緒を醸し出してインマゼールが弾くFpとよく相和している 初夏になるとこのディスクが聴きたくなる あなたも如何  

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     2018/05/21

    朝露に濡れて嫋やかに揺れる花の姿に生けんが為に手折らんとした手が止まる そんな風情がメンデルスゾーンの音楽にはある 優美で闊達な人柄は一際繊細な歌い交わしを実現している 一瞬も弛まずまた張り切れず 伸縮自在に音楽の文目を織り出していく見事さに聴き惚れる トリオ・ワンダラーは流離うことなくメンデルスゾーンの小川に沿って流れる生命を身に取り込んで共和する ピアノ・トリオという最も根源的で自然な合奏体はアンサンブルの一理想形なので これに仮託して己が心模様と観想を歌わんとする者は自ずと物事の深層と正対せずにはいられない ここには人間の真実の姿と理想の内に醸成された面影が映し出されている 未来は過去から幻想され現在に憧れられる 美しい音楽はそこからしか生まれないと改めて確信させられた音楽と演奏だ 朋よ君の部屋に響かせよ あなたも如何  

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     2018/05/20

    問わず語りに繰り出された物言いを聞くようだ 18世紀の音楽嗜好を映して盛時を極めたカール・フィリップ・エマヌエルのクラヴィーア音楽の集大成を聴くことができる ハイドン モーツァルトの革新がそこに芽生えて時代は大きく動こうとしていた 父ヨハン・セバスチャンを凌駕する名声を得て迎えた60代後半からの晩年10年に6つの「専門家と愛好者のためのクラヴィーア・ソナタ集」を相次いで刊行する 第二集以降はロンド付きであり さらに第四集以降は幻想曲も加わる それぞれは独立した曲なので演奏順は指定されていない ベルダーはWq番号順に演奏している フォルテピアノとクラヴィコードを使い分けている 演奏は明快なソノリティをもたらしている 壮大な感情のドラマは生まれてはいないが タペストリーにして埃をかぶったままにしておくべき音楽ではない 未来に生き続ける音楽のエッセンスを感じずにはいられない 耳が疲れた時取り出して聞きたい音楽だ あなたも如何 

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     2018/05/18

    一昔も二昔も時を経てしまったけれど ご期待の更なる名演奏など出ようはずも無く 大栗裕を管弦楽で聴くディスクの最右翼に未だに立たされている 大栗博と彼の音楽を喧伝した過去の指揮者や演奏を贔屓するために却って大栗裕の音楽と新しい演奏の足を引っ張るがごとき物言いは聞き飽きた 高木和弘は若き頃よりわが国を代表する名ヴァイオリニストだった 長岡京室内アンサンブルや山形響のコンサートマスターとしての演奏も数多く聴いてきた 彼の働きなしにこうしたオーケストラの現在の知名度はない 下野竜也は無理解な読売日響を率いて真に誠実な音楽活動をしていた実力者だ 二人とも音楽を愛し生涯を捧げている また大阪との縁もご承知の通りだ そして何より二人が大栗裕を尊敬しその音楽を世界へ伝えんとする心意気に燃えている この演奏を聴けば自明のこと NAXOSに録音されたことがすでに世界基準なのだ 加えて大阪フィルの演奏もNAXOSの録音も一級品である ディスクはきちんとした装置と環境で聞こうではないか 大栗裕は伊福部昭と共に日本を代表する音楽家だ あなたも如何 

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     2018/05/18

    聴き逃していたノリントンの一枚 それは碌な評価もされずほったらかされた名演であった ”パルシファル”組曲がラインスドルフ編であるとは知らず聴き始める 予想通りきりりと引き締まったアンサンブルで聴かせるワーグナーに引き込まれた ”悲愴”は子どもの頃に聴きすぎて食傷気味で遠ざけ ”パルジファル”は何度聞いてもストンと腑に落ちないから手が伸びなかった その音楽が感情を刺激してくるのだから驚いた 神秘性よりも親和性ある音楽に聴こえる さて”悲愴”だが 常々第一楽章が遅い演奏に辟易としていた 本来冒頭はAndanteだったものをAdagioに書き換えた者がいる そのために後のAllegroとのバランスが崩れ楽章全体も肥大化して歪んで鈍重な印象になってしまう 残念だがノリントンも悪しき因習の影から抜け出せず悪戦苦闘している ギクシャクしたチャコフスキーは第二楽章に入ると消えてアンサンブルの妙と美を聴かせる これでこそノリントン 優美にして軽妙洒脱 チャイコフスキーが微笑む そしてフィナーレのアダージョがさらっとして粘らず訥々と語り出す これぞラメントーソ 御涙頂戴ではない生きることそのものの根源にある哀しみをこそ刻み出す音楽 生きる勇気を絞り出す音楽 ここに ”悲愴”の感動はある 朋よ聴いてよかった あなたも如何    

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     2018/05/17

    シューベルトの序曲をコンサートで聴く機会は極めて少ない 勿論「ロザムンデ」=「魔法の竪琴」序曲は例外だが この一曲を含めて18曲のシューベルト”序曲”を網羅したのがこの一枚だ BAの音響に不満のあろうはずがない(しかも極めて安価だ) 先ず管弦楽曲として書かれた序曲7曲全てが聴ける これらは孰れもコンサート・ピースとして届けられて然るべき傑作だ 次に歌劇序曲が9曲 完成された歌劇の内「フェルナンド」一曲がなく代わりに未完の「鏡の騎士」が聴ける そして劇音楽序曲「魔法の竪琴」=
    「ロザムンデ」と「エンジニアになった悪魔」だ このD4の曲名だが 日本語カヴァーには”歌劇”とあるが劇音楽の間違い さらに”ヒュドラリウス”になったのではなく作ったのである ”ヒュドラリウス”は紀元前3世紀にエジプトで作られた”水力オルガン”とモノの本にある 交響曲創作では苦心惨憺未完成の山を築いたが 一楽章で完結する序曲では多作家であったシューベルトはむしろ不運であった こんなに素敵な音楽が皆の耳に届く機会に恵まれない 朋よシューベルトは好いよ あなたも如何

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     2018/05/16

    もう半世紀近く前の演奏録音になるのだなあと 改めて感慨一入のものがある 演奏録音共に古びないのが嬉しい グリーグはノルウェーの人だがお国のオーケストラで聞いた記憶がない 本場物なんて言い方がロシアやチェコのものを同国出身の指揮者や楽団が演奏する時によく聞くような気がする 慥かに他国の人の演奏とは一味違うなと感じたこともある グリーグは恵まれないのか自国の演奏家による演奏が世界に伝えられないようだ だが ものは考えようだ 国境を越えて様々な人が演奏し聞いているからこそわたしにまでこうして届いている 寧ろ幸運なことであり誇らしくもあろう それはノルウェー人皆にとっても嬉しいことだろう さてこの東ドイツの雄によるきっちりした立派な演奏がグリーグ自身好みだったかどうかは知らない だが グリーグの美しさを伝えて止まない事実は消えない 今も多くの人に愛されている それでもわたしはノルウェー”風”というか”流”というか お国訛りのグリーグを聴きたいなとちょっと思う しかし美しい演奏だ もしまだなら あなたも如何

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     2018/05/16

    ほとんどが初めて聴く曲だが愉しめた アルバムの性質からフィンランドの作曲家9人の12曲が並ぶ クラミの序曲「スオメンリンナ」やカヤヌスの「交響的序曲」はシベリウスの二曲と共になかなか聞きごたえがある 他の小品を含めてまだ見ぬ国フィンランドの牧歌的な雰囲気や闘争心の片鱗が伝わってくるような気がする それがわたしの勝手な思い込みであって現実を曲解していたとしても そこから感じられた人の思いの有り様に共感する心情の小川が流れ出でたことに間違いはない それでフィンランドとそこに生きる人へ想いを馳せるのは自然な心向きだと思う 音楽には想像の翼がある 空翔ける時希望を見ていない鳥はいるまい セーゲルスタム&ヘルシンキPOの快演を愉しもう朋よ あなたも如何  

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