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3 people agree with this review 2011/07/06
ブリテンは、パーセルの主題による変奏曲とフーガ(青少年のための管弦楽入門と称されているが、作品の質の高さからしてもこの呼称は全く気に入らない。)だけがやたら有名であり、他は、近年小澤による渾身の名演によって知られるようになった戦争レクイエムを除けば、殆どの作品はあまり知られているとは言い難い。ブリテンは、交響曲や管弦楽曲、協奏曲、室内楽曲、そして声楽曲など多岐に渡る分野の作品を数多く遺しているが、その真価は何と言ってもオペラにあると言えるのではないか。これは、ブリテンと同じ英国出身の大指揮者であるラトルなども同様の見解を表明しており、20世紀を代表するオペラとしてもっと広く知られてもいいのではないかとも考えられるところである。ブリテンは、10作を超えるオペラを作曲しているが、その中でも名実ともに傑作であるのは本盤におさめられた「ピーター・クライムズ」であるというのは論を待たないところだ。ピーター・クライムズという問題児に冤罪の濡れ衣を着せて、多数の人々によって自殺を強要されるという、いかにも20世紀的なテーマを扱っているが、ブリテンはこうしたストーリーに組曲「4つの海の間奏曲」や「パッサカリア」などに編曲されるほどに魅力的で親しみやすい管弦楽を付加して、実に奥深い内容を有した作品に仕立て上げていると言える。同曲の名演としては、ブリテンによる自作自演である本演奏とデイヴィス盤(1978年)が双璧にある名演として掲げられる。オーケストラや合唱団は同じくコヴェントガーデン王立歌劇場管弦楽団と同合唱団だ。ブリテンは、作曲者であるとともに指揮者としても相当な実力を有しており、同曲の演奏においても作曲者としての権威はいささかも揺るぎがないと言えるが、デイヴィスの指揮もその統率力といい、彫の深さといい、ブリテンに決して引けを取っているとは言い難い。両演奏の大きな違いは、主人公であるピーター・クライムズ役であり、骨太なジョン・ヴィッカーズに対して、抒情的なピーター・ピアーズと言ったところではないだろうか。したがって、後は聴き手の好みの問題であると言えるが、ブリテンと長年に渡って親交のあったピーター・ピアーズによる名唱は、同曲の静謐な悲劇を見事に音化していると言えるところであり、私としては本演奏の方をわずかではあるが上位に置きたいと考えている。その他の歌手陣も最高の歌唱を披露しているのも素晴らしい。英デッカによる超優秀録音による極上の高音質も、本名演の価値を高めるのに大きく貢献していると評価したい。
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2 people agree with this review 2011/07/06
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近年では村上春樹氏のとある有名小説によって、シンフォニエッタが非常に有名になったヤナーチェクであるが、こうした管弦楽曲や室内楽曲、声楽曲など多岐に渡るジャンルの作品を遺したヤナーチェクの最高傑作は何と言ってもオペラと言えるのではないだろうか。 ヤナーチェクは、自作にモラヴィアの民謡を高度に昇華させて取り入れるとともに、その作品には自然の中での人間の在り方、人間の心情などへの鋭い洞察と言ったものが集約されていると言えるが、それらの要素がすべて盛り込まれているのは正にオペラであると考えられるからだ。そして、そのような数あるオペラの中でも名実ともに最高傑作と言えば、何と言っても本盤におさめられた「利口な女狐の物語」であると言えるのではないだろうか。というのも、このオペラは主人公である女狐ビストロウシュカなどの動物を通して人間の所業を風刺した寓話劇であり、前述のようなヤナーチェクの作品の神髄そのものをテーマとしていると言えるし、音楽もいかにもモラヴィアの民謡的な語法を活用した魅力的なものであるのがその理由である。チェコではクリスマスにこのオペラを子ども向きに上映するそうであるが、これを観た子どもたちが本当にこのオペラを理解できているのか疑問に思われるような含蓄のある作品であり、聴けば聴くほどに新しい発見がある内容の濃い傑作であるとも言える。このようにヤナーチェクの最高傑作とも言える「利口な女狐の物語」であるが、録音は極めて少ないと言わざるを得ない。本盤を除くと、現在でも入手可能なのは、ラトル&コヴェントガーテン王立歌劇場管(1990年)(ただし英語版)、ノイマン&プラハ国立劇場管(1957年)(旧盤)、ノイマン&チェコ・フィル(1979年)の3点しか存在していない。もっとも、これらはいずれも名演であると言えるが、ヤナーチェクの権威であったマッケラスがウィーン・フィルを指揮して演奏した本演奏こそが、同曲演奏史上最高の超名演であることは論を待たないところだ。マッケラスの指揮は、ヤナーチェクの作品を数多く演奏するとともに、楽譜校訂を行ってきたこともあって、厳格なスコアリーディングに基づく楽曲の心眼に踏み込んでいくような彫の深いものであり、加えてこの指揮者ならではの独特の格調の高さが全体を支配していると言える。そして、ウィーン・フィルによる豊穣な極上の美演が、本演奏全体に独特の潤いと豊かな情感を付加しているのを忘れてはならない。歌手陣も充実しており、ビストロウシュカ役の今は亡きルチア・ポップをはじめ、チェコの優秀な歌手陣が最高の歌唱を披露しているのが素晴らしい。英デッカによる超優秀録音による極上の高音質も、本名演の価値を高めるのに大きく貢献していると言える。ヤナーチェクのオペラには、「利口な女狐の物語」以外にも最晩年の「死者の家から」など優れた名作が多く、演奏時間も概ね85分〜120分の間におさまることから、歌詞対訳付で鑑賞するのが基本ではあるものの、必ずしも歌詞にとらわれずに音楽だけを楽しむというのも、マーラーの交響曲を鑑賞するような趣きでヤナーチェクの素晴らしい音楽を満喫できるという意味において、是非ともお薦めしておきたいと考える。
0 people agree with this review 2011/07/06
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6 people agree with this review 2011/07/06
カラヤンは広範なレパートリーを誇る指揮者であったが、その中でもオペラの分野においては、演奏内容の水準の高さにおいても他の指揮者の追随を許さない存在であったと言える。このようなカラヤンが最も愛したお気に入りのオペラの一つは、R・シュトラウスの楽劇「ばらの騎士」であったと言うのは論を待たないところだ。カラヤンは、本盤におさめられた演奏のほか、同曲の録音をDVD作品を含め、ウィーン・フィルとともに2度にわたってスタジオ録音を行っており、それらも素晴らしい名演であるとは言えるが、カラヤンによる同曲の演奏の最高峰は、まさしく本演奏であると言える。それどころか、本演奏は、様々な指揮者による同曲のいかなる名演にも冠絶するとともに、カラヤンが行った数多くのオペラの録音の中でもトップの座を争う至高の超名演と高く評価したいと考える。本演奏は、何と言ってもカラヤンの指揮が素晴らしい。壮年期のカラヤンならではの颯爽とした音楽性豊かな指揮ぶりが見事であり、第1幕の終結部の元帥夫人がオクタヴィアンに諭す場面の表現の何とも言えない味わい深さや、第3幕の有名な三重唱は至高・至純の美しさを誇っていると言える。カラヤンがその後ウィーン・フィルとともに行った録音では、これらの箇所においてはとても本演奏のような魅力はないと言えるところであり、カラヤンとしてもこれは空前にして絶後の絶妙な表現と言えるのではないだろうか。歌手陣も豪華極まりないと言えるところであり、元帥夫人のシュヴァルツコップを筆頭に、オクタヴィアン役のクリスタ・ルートヴィヒ、オックス男爵役のエーデルマン、そしてゾフィー役のシュティヒ=ランダル、ファニナル役のヴェヒター、さらには歌手役のニコライ・ゲッダなど、これ以上は求め得ないキャスティングの素晴らしさ、そしてその歌唱の凄さにただただ圧倒されるのみである。オーケストラはフィルハーモニア管弦楽団であるが、本演奏ではウィーン風の実に味わい深い名演奏を繰り広げており、いささかの不満を感じさせるものではないと言える。録音も、従来盤でも比較的満足できる音質であるが、同曲演奏史上最高の歴史的超名演でもあり、今後はHQCD化、そして可能であればSACD化を図るなど、更なる高音質化を大いに望んでおきたいと考える。
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7 people agree with this review 2011/07/06
巨匠カラヤンが遺した数多くのオペラのスタジオ録音の中でも、本盤におさめられたワーグナーの楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」は特異なものであると言える。というのも、もともと指揮を予定していたバルビローリがキャンセルしたということもあるが、オーケストラは当時鉄のカーテンの向こう側にあったシュターツカペレ・ドレスデン、そして歌手陣はいわゆるカラヤン組に属する歌手は殆ど皆無であるという、カラヤンにとって完全アウェイの中で録音が行われたからである。本盤の演奏は1970年であるが、この当時のカラヤンは、手兵ベルリン・フィルとともに黄金時代を築いていた時期に相当し、ベルリン・フィルの卓越した技量を誇る演奏に流麗なレガートを施したいわゆるカラヤンサウンドを駆使して、圧倒的な音のドラマを構築していた。それは、例えば、同時期にスタジオ録音されたワーグナーの楽劇「ニーベルングの指環」(1966〜1970年)を聴けばよく理解できるところである。しかしながら、本演奏においては、ベルリン・フィルを指揮して圧倒的な音のドラマを構築したカラヤンはどこにも存在していない。したがって、カラヤンサウンドなどというものは皆無の演奏に仕上がっているところであり、シュターツカペレ・ドレスデンならではのドイツ風のいぶし銀の重厚な音色が全体を支配していると言えるところだ。そして、カラヤンはシュターツカペレ・ドレスデンを巧みに統率するとともに、ライト・モティーフを適切に描き分けるなど、稀代のオペラ指揮者ならではの才能を十二分に発揮した見事な演出巧者ぶりを発揮していると言える。カラヤンは、本演奏の録音に際しては、演奏を細かく中断させることなくできるだけ通しで録音を行ったということであるが(編集も最小限に抑えられている。)、これによって音楽の流れがいささかも淀みがないとともに、どこをとっても強靭な気迫と緊迫感、そして生命力に満ち溢れているのが素晴らしいと言える。歌手陣も、主役級にはいわゆるカラヤン組に属する歌手は殆どいないものの全体としては豪華な布陣であり、ハンス・ザックス役のテオ・アダムとフェイト・ポーグナー役のカール・リッダーブッシュ、そしてシクストゥス・ベックメッサー役のジェレイント・エヴァンスは特に充実した歌唱を披露していると言える。また、ヴァルター・フォン・シュトルツリング役にルネ・コロ、ダーフィト役にペーター・シュライアー、エーファ役にヘレン・ドナート、そして夜警役にクルト・モルを起用する当たりは、いかにもカラヤンならではの豪華なキャスティングであると言える。ドレスデン国立歌劇場合唱団の豊穣にして充実した歌唱も、本名演に大きく貢献しているのを忘れてはならない。いずれにしても、本演奏はカラヤンのオペラ指揮者としての実力が存分に発揮された演奏であり、シュターツカペレ・ドレスデンの潤いに満ちたいぶし銀の音色も相まって、同曲演奏史上最高の超名演に仕上がっていると高く評価したい。録音は、ドレスデンのルカ教会の豊かな残響を活かした名録音であり、ARTによるリマスタリングも相まって比較的良好な音質であるとは言えるが、同曲最高の超名演でもあり、今後はHQCD化、可能であればSACD化を図るなど、更なる高音質化を大いに望んでおきたいと考える。
7 people agree with this review
10 people agree with this review 2011/07/06
カラヤンは、クラシック音楽史上最大のレコーディングアーティストであり、膨大な数の録音を行った。とりわけオペラはカラヤンの絶対的な得意分野であり、遺された録音はいずれも水準が高く名演も数多く存在しているが、その中でも最高峰に君臨する名演は、本盤におさめられたワーグナーの舞台神聖祝典劇「パルジファル」ということになるのではないだろうか。それどころか、同曲の数々の演奏の中でも、クナッパーツブッシュ&バイロイト祝祭歌劇場管による名演(1962年)と並ぶ至高の超名演と高く評価したい。もっとも、本演奏はクナッパーツブッシュによる演奏とはその性格を大きく異にしていると言える。クナッパーツブッシュによる名演がスケール雄大な懐の深い人間のドラマであるとすれば、カラヤンによる本演奏は、同曲の極上の絶対美を誇る旋律の数々を徹底して美しく磨き抜いた圧倒的な音のドラマということができるのではないだろうか。本演奏は1979〜1980年のスタジオ録音であり、カラヤン&ベルリン・フィルの黄金コンビがその最後の輝きを放っていた時期のものだ。当時のカラヤン&ベルリン・フィルは、鉄壁のアンサンブル、ブラスセクションのブリリアントな響き、桁外れのテクニックを示す木管楽器、雷鳴のように轟きわたるティンパニなどが一体となった圧倒的な演奏に、カラヤンが流麗なレガートを施し、それこそオーケストラ演奏の極致とも言うべき圧倒的な音のドラマの構築を行っていたと言える。本演奏においてもそれは大いに健在であり、どこをとっても磨き抜かれた美しさを誇るいわゆるカラヤン・サウンドで満たされていると言える。おそらくは、同曲演奏史上、最も美しく磨き抜かれた演奏と言えるところであり、とりわけ有名な「聖金曜日の音楽」における極上の美しさには、身も心も蕩けてしまいそうになるほどだ。このようなカラヤン&ベルリン・フィルが構築した絶対美の世界にあっては、歌手陣や合唱団もそれに奉仕する一つの楽器に過ぎないとも言えるところであり、これほどまでに美を徹底して突き詰めた演奏は、カラヤンとしても空前にして絶後の出来であったとも言えるのではないだろうか。正に、本演奏は、マーラーの交響曲第9番(1982年ライヴ)と並んで、稀代のレコーディングアーティストであるカラヤンが構築し得た究極の美しさを誇る至高の超名演であると高く評価したい。もっとも、歌手陣も、カラヤンが構築した美の世界の中のおいて素晴らしい歌唱を行っていると言える。とりわけ、パルジファル役のペーター・ホフマンとグルネマンツ役のクルト・モルの歌唱は圧倒的であり、花の乙女役のバーバラ・ヘンドリックスやアルト独唱のハンナ・シュヴァルツなど、脇役陣にも目を光らせたカラヤンならではのキャスティングにも抜群のセンスの良さを感じることも可能だ。録音は、カラヤンにとっての初のデジタル録音であり、従来盤でもきわめて優秀なものであると言えるが、同曲演奏史上最高峰の超名演であるだけに、今後はSHM−CD化、そして可能であればシングルレイヤーによるSACD&SHM−CD化を図るなど、更なる高音質化を大いに望んでおきたいと考える。
10 people agree with this review
クナッパーツブッシュという指揮者をどう評価するのかということについては、クラシック音楽ファンの中でも意見が分かれるのではないだろうか。ブルックナーの交響曲の演奏に際しては改訂版に固執したり、ベートーヴェンの交響曲第8番やブラームスの交響曲第3番、ハイドンの交響曲第94番などにおける超スローテンポなど、かなり大胆な演奏を行っているからである。これを個性的な芸術と見るのか、それとも許し難いおふざけ演奏と感じるのかによって、クナッパーツブッシュに対する評価は大きく変わってくると言えるところだ。もっとも、そのようなクナッパーツブッシュが他の指揮者の追随を許さない名演奏の数々を成し遂げた楽曲がある。それこそは、ワーグナーのオペラであったと言える。それはクナッパーツブッシュが活躍していた時期はもとより、現在においてもクナッパーツブッシュを超える演奏が未だに存在していないと言えるところであり、クナッパーツブッシュこそは史上最大のワーグナー指揮者であったと言っても過言ではあるまい。もっとも、クナッパーツブッシュのワーグナーのオペラの録音は、いずれも音質的に恵まれているとは到底言い難いところであり、それが大きなハンディとなっているのであるが、ただ一つだけ音質面においても問題がない録音が存在している。それこそが、本盤におさめられた舞台神聖祝典劇「パルシファル」の1962年のライヴ録音であると言える。本演奏こそは圧倒的な超名演であり、おそらくは人類の遺産と言っても過言ではないのではないか。冒頭の序曲からして、その底知れぬ深みに圧倒されてしまう。その後は、悠揚迫らぬインテンポで曲想を進めていくが、楽曲の心眼に鋭く切り込んでいくような奥行きの深さ、演奏の彫の深さには凄みさえ感じさせるところであり、演奏全体から漂ってくる荘厳で神々しい雰囲気は、筆舌には尽くし難い崇高さを湛えていると言える。これほどの深沈とした深みと崇高さを湛えた演奏は、他の指揮者が束になっても敵わないような高みに達していると言える。カラヤンは、後年に、同曲のオーケストレーションを完璧に音化した絶対美とも言うべき圧倒的な音のドラマの構築に成功した超名演(1979〜1980年)を成し遂げており、ある意味では人間のドラマとも言うべきクナッパーツブッシュによる本超名演とはあらゆる意味で対極にある超名演と言えるところであり、容易に優劣はつけ難いと考えるが、我々聴き手の肺腑を打つ演奏は、クナッパーツブッシュによる本超名演であると考えられる。歌手陣も充実しており、グルネマンツ役のハンス・ホッターを筆頭に、パルシファル役のジェス・トーマス、アンフォルタス役のジョージ・ロンドン、ティトゥレル役のマルッティ・タルヴェラ、クリングゾール役のグスタフ・ナイトリンガー、そしてクンドリー役のアイリーン・ダリスなどが、クナッパーツブッシュの指揮の下、渾身の名唱を繰り広げているのが素晴らしい。いずれにしても、本演奏は、ワーグナーの舞台神聖祝典劇「パルシファル」の演奏史上でもトップの座を争う至高の超名演と高く評価したい。なお、クナッパーツブッシュによる同曲の録音は、1962年の前後の年代のものが多数発売されているが、音質面をも含めて総合的に考慮すれば、本演奏の優位性はいささかも揺るぎがないものと考える。録音は、リマスタリングがなされたこともあって従来盤でも十分に満足できる音質であると言える。もっとも、クナッパーツブッシュによる人類の遺産とも言うべき歴史的な超名演でもあり、今後はSHM−CD化、そして可能であればシングルレイヤーによるSACD&SHM−CD化を図るなど、更なる高音質化を大いに望んでおきたいと考える。
2度に渡ってピアノ・ソナタを録音するなどラフマニノフを十八番としているグリモーであるが、本盤には有名なピアノ協奏曲第2番や前奏曲、練習曲等の小品がおさめられている。いずれも、グリモーならではの素晴らしい名演と高く評価したい。グリモーのピアノは、ピアノ・ソナタでもそうであったが、力強い打鍵から繊細な抒情に至るまで、表現の幅が桁外れに広いと言える。これは、感情の起伏が激しいラフマニノフの演奏にとっては大きなアドバンテージであると言えるだろう。とりわけ、力強い打鍵は、男性ピアニスト顔負けの強靭さを誇っており、その圧倒的な迫力は我々聴き手の度肝を抜くのに十分だ。他方、繊細な抒情は、女流ピアニストならではの清澄な美しさに満ち溢れており、各旋律の端々から湧き上がってくる豊かな情感には抗し難い魅力に満ち溢れていると言える。そして、ここまでならば、同様のピアニズムを展開する女流ピアニストは他にも存在していると言えるが、グリモーの素晴らしいのは、これだけの表情の起伏の激しい演奏を行っても、いささかも格調の高さを失わない点であると考えられる。ラフマニノフの楽曲は、甘美な旋律に満ち溢れているが、あまり感情移入し過ぎると、感傷的で陳腐なロマンティシズムに陥ってしまう危険性があると言える。しかしながら、グリモーの場合は、前述のように情感の豊かさが演奏全体を支配していると言えるが、同時にどこをとっても気高い気品に満ち溢れているのが素晴らしい。厚手の衣装をまとったような感傷的で重々しい従来型のラフマニノフ演奏とは一線を画するものであり、その演奏に清新さを与えたという意味では、本演奏は、前述の2度にわたるピアノ・ソナタの演奏も含め、新時代のラフマニノフ演奏像を確立したと言っても過言ではないと考える。また、ピアノ協奏曲第2番の指揮はアシュケナージであるが、これまた素晴らしい。アシュケナージは、指揮者としてもピアニストとしてもラフマニノフを得意としているが、ここではグリモーの清新にして気高いピアニズムを引き立て、フィルハーモニア管弦楽団とともに最高のパフォーマンスを発揮している点を高く評価したい。録音は、2000〜2001年のスタジオ録音であり従来盤でも十分に高音質であるが、グリモーによる至高の名演でもあり、今後はSHM−CD化を図るなど、さらなる高音質化を大いに望んでおきたいと考える。
11 people agree with this review 2011/07/06
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7 people agree with this review 2011/07/05
ワーグナーの楽劇「ニーベルングの指環」はそのストーリーの途方もないスケールの大きさもさることながら、ライトモチーフを効果的に活用したオーケストレーションの豪華さ、華麗さも大きな魅力となっているが、カラヤン&ベルリン・フィルによる本演奏は、そうしたオーケストレーションの魅力を最大限に表現し尽くした演奏ということができるのではないだろうか。カラヤン&ベルリン・フィルという稀代の黄金コンビの全盛期は、1960年代後半から1970年代にかけてというのは論を待たないところだ。この全盛期のカラヤン&ベルリン・フィルの演奏は、分厚い弦楽合奏、ブリリアントなブラスセクションの響き、桁外れのテクニックをベースに美音を振り撒く木管楽器群、そして雷鳴のように轟きわたるティンパニなどが、鉄壁のアンサンブルの下に融合し、およそ信じ難いような超絶的な名演奏の数々を繰り広げていたと言える。カラヤンは、このようなベルリン・フィルをしっかりと統率するとともに、流麗なレガートを施すことによっていわゆるカラヤンサウンドを醸成し、オーケストラ演奏の極致とも言うべき圧倒的な音のドラマを構築していた。本演奏においてもそれは健在であり、どこをとってもいわゆるカラヤンサウンド満載の圧倒的な音のドラマが構築されていると言える。これほどまでに豪華絢爛にして豪奢な同曲の演奏は他にも類例を見ないが、もちろん繊細な箇所における抒情豊かさ、そして室内楽的な精緻さにおいてもいささかも不足はないところであり、その表現力の桁外れの幅の広さも、全盛期のカラヤン&ベルリン・フィルの卓越した至芸の賜物であると言える。このような豪華絢爛であると同時に、繊細さ、精緻さをも兼ね備えた、いわゆるダイナミックレンジの幅広い演奏に対しては、とある影響力の大きい某音楽評論家が映画音楽のように響くとして酷評しているが、これだけの圧倒的な音のドラマを構築することによって、同曲のオーケストレーションの魅力を大いに満喫させてくれたことに対して文句は言えないのではないかと考えている。歌手陣も、トーマス・ステュアート、ジョン・ヴィッカーズ、ヘルガ・デルネシュ、ゲルハルト・シュトルツェと言った今や伝説となったワーグナー歌手の起用は順当であるが、楽劇「ワルキューレ」におけるジークリンデ役のグンドゥラ・ヤノヴィッツやブリュンヒルデ役のレジーヌ・クレスパンの起用は、いかにもカラヤンならではの意表を突くキャスティングであると言える。また、4つの楽劇において、例えばヴォータン役をディートリヒ・フィッシャー=ディースカウとトーマス・ステュアート、ブリュンヒルデ役をレジーヌ・クレスパンとヘルガ・デルネシュ、ジークフリート役をジェス・トーマスとヘルゲ・ブリリオートがつとめるなど、作品によって配役を変えているが、これは作品の性格によって配役を変更するというカラヤンならではの考えに基づくものと考えられるところである。もっとも、ショルティ&ウィーン・フィル盤(1958〜1965年)やベーム&バイロイト祝祭管盤(1966、1967年)と比較するといささか小粒なキャスティングであることや前述のような配役の統一性など、若干の問題もなきにしもあらずではあるが、カラヤンはこれらの歌手陣の能力を最大限に引き出すとともに、技量抜群のベルリン・フィルを巧みに統率して、楽曲全体として圧倒的な名演に仕立て上げている点をむしろ評価すべきであり、これは卓越したオペラ指揮者であったカラヤンの面目躍如たるものであると言えるだろう。いずれにしても、本盤の演奏は、オペラ指揮者としてのカラヤンが、その全盛期にベルリン・フィルとともに成し遂げた名演であり、とりわけオーケストラ演奏の充実ぶりにおいては比類のない名演であると考える。録音は、従来盤でも十分に満足できる音質であると言えるが、数年前にカラヤン生誕100年を記念して発売されたSHM−CD盤がこれまでのところベストの音質であった。もっとも、全盛期のカラヤン、そしてベルリン・フィルによる圧倒的な名演でもあり、今後はシングルレイヤーによるSACD&SHM−CD化を図るなど、更なる高音質化を大いに望んでおきたいと考える。
10 people agree with this review 2011/07/05
ベームの遺したワーグナーのオペラの録音には、バイロイト祝祭管との歌劇「さまよえるオランダ人」の演奏(1971年)や、バイロイト祝祭管との楽劇「ニーベルングの指環」の演奏(1966、1967年)など数々の名演を遺しているが、それらの名演にも冠絶する至高の名演は、本盤におさめられたバイロイト祝祭管との楽劇「トリスタンとイゾルデ」であると考える。それどころか、同曲の他の指揮者による名演であるフルトヴェングラー&フィルハーモニア管による演奏(1952年)やクライバー&シュターツカペレ・ドレスデンによる演奏(1980〜1982年)と並んで3強の一角を占める超名演と高く評価したい。そして、フルトヴェングラーが深沈とした奥行きの深さ、クライバーがオーケストラのいぶし銀の音色を活かした重厚さを特色とした名演であったのに対して、ベームによる本演奏は、実演ならではのドラマティックで劇的な演奏と言えるのではないだろうか。そして、学者風でにこりともしない堅物の風貌のベームが、同曲をこれほどまでに官能的に描き出すことができるとは殆ど信じられないほどであると言える。ベームは、実演でこそ本領を発揮する指揮者と言われたが、本演奏ではその実力を如何なく発揮しており、冒頭の前奏曲からして官能的で熱き歌心が全開だ。その後も、トゥッティに向けて畳み掛けていくような気迫や緊張感、そして切れば血が吹き出してくるような強靭な生命力に満ち溢れており、全盛期のベームならではのリズミカルな躍動感も健在だ。テンポは若干早めであると言えるが、隙間風が吹くような箇所は皆無であり、どこをとっても造型の堅固さと充実した響きが支配しているのが素晴らしい。とりわけ、第2幕のイゾルデ役のビルギット・ニルソンとトリスタン役のヴォルフガング・ヴィントガッセンによる愛の熱唱は、ベームの心を込め抜いた指揮も相まって、おそらくは同曲演奏史上でも最高峰の名演奏に仕上がっていると言えるところであり、その官能的な美しさといい、はたまたドラマティックな迫力といい、聴いていてただただ圧倒されるのみである。そして、第3幕終結部の愛と死におけるビルギット・ニルソンによる絶唱は、もはや筆舌には尽くし難い感動を覚えるところだ。これらの主役2人のほか、クルヴェナール役のエーベルハルト・ヴェヒター、ブランゲーネ役のクリスタ・ルートヴィヒ、そして、マルケ王役のマルッティ・タルヴェラによる渾身の熱唱も、本名演に大きく貢献していることを忘れてはならない。また、その後大歌手に成長することになるペーター・シュライヤーが水夫役で登場しているのも、今となっては贅沢な布陣と言える。録音は、従来盤でもリマスタリングが行われたこともあって十分に満足できる音質であると言えるが、同曲演奏史上トップの座を争うベームによる至高の超名演でもあり、今後はSHM−CD化、そして可能であればシングルレイヤーによるSACD&SHM−CD化を図るなど、更なる高音質化を大いに望んでおきたいと考える。
9 people agree with this review 2011/07/05
全盛期のベームによる圧倒的な名演だ。ベームはスタジオ録音よりも実演でこそその本領を発揮する指揮者と言われているが、本盤の演奏を聴いているとよく理解できるところだ。それにしても、本演奏におけるベームは凄まじいばかりのハイテンションだ。ひたすら音楽を前へと進めていこうと言う畳み掛けていくような気迫と緊張感、そして切れば血が噴き出してくるような圧倒的な生命力に満ち溢れていると言える。長大なワーグナーの楽劇「ニーベルングの指環」は、全体を演奏するのに大抵は14時間前後を要するが、ベームは何と約13時間程度で全曲を駆け抜けている。これだけ早いテンポだと、性急で浅薄な印象を聴き手に与える危険性もあるが、本演奏に関してはそのようなことはいささかもなく、どこをとっても隙間風の吹かない造型の堅固さと充実した響きが支配しているのが素晴らしい。全盛期のベームの特徴でもある快活なリズム感も効果的であり、随所に清新な躍動感が息づいているのが見事であるという他はない。同曲には、重厚で強烈無比なショルティ&ウィーン・フィルによる演奏(1958〜1965年)や、ドラマティックなフルトヴェングラー&RAIローマ響による演奏(1953年)、圧倒的な音のドラマを構築したカラヤン&ベルリン・フィルによる演奏(1966〜1970年)、あらゆる意味でバランスのとれたカイルベルト&バイロイト祝祭管による演奏(1955年)など、名演が目白押しではあるが、演奏の持つ実演ならではの根源的な迫力においては、ベームによる本名演もいささかも引けを取っていないと考える。歌手陣も豪華であり、ジークフリート役(「ラインの黄金」においてはローゲ役)のヴォルフガング・ヴィントガッセン、ブリュンヒルデ役のビルギット・ニルソン、ジークムント役のジェームズ・キング、アルベリヒ役のグスタフ・ナイトリンガー、ファフナー役のクルト・ベーメ、そしてハーゲン役のヨーゼフ・グラインドルなど、いまや伝説となった大物ワーグナー歌手も、持ち得る実力を最大限に発揮した渾身の名唱を披露しているのが素晴らしい。ヴォータン役に急遽抜擢されたテオ・アダムによる素晴らしい歌唱も、本名演に大きく貢献しているのを忘れてはならない。また、ライヴ録音だけに、4作を通じて活躍する配役が原則として同じ歌手によって歌われており、これによって自然なドラマの流れが高い集中力で持続されている点も本演奏の大きなアドバンテージと言えるだろう。いずれにしても、本盤の演奏は、全盛期のベーム、そして歴史的なワーグナー歌手がバイロイト祝祭劇場に一同に会した歴史的な超名演であると高く評価したい。録音は、さすがに1960年代のライヴ録音であり、必ずしも満足できる音質とは言い難いが、前述のようにベームによる歴史的な超名演でもあり、今後はSHM−CD化、そして可能であればシングルレイヤーによるSACD&SHM−CD化を図るなど、更なる高音質化を大いに望んでおきたいと考える。
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0 people agree with this review 2011/07/05
カラヤンはチャイコフスキーを得意としており、交響曲については全集を含め後期三大交響曲集を繰り返し録音するとともに、4度にわたるピアノ協奏曲やヴァイオリン協奏曲、そして主要な管弦楽曲など、とてつもない数の録音を行っているところである。本盤におさめられた幻想序曲「ロミオとジュリエット」及び組曲「くるみ割り人形」も、両曲ともにカラヤンによる4度目の録音に相当する(幻想序曲「ロミオとジュリエット」についてはウィーン・フィルとの1946年及び1960年の録音、ベルリン・フィルとの1966年及び本盤の1982年の録音が存在している。他方、組曲「くるみ割り人形」については、フィルハーモニア管との1952年の録音、ウィーン・フィルとの1961年の録音、ベルリン・フィルとの1966年及び本盤の1982年の録音が存在している。)。本盤はLP時代に、カラヤンの75歳の記念アルバムとして写真集が添付されていたのを記憶している。CD化されてからは、当該写真集は殆ど忘れられた存在となっているが、CDとしては比較的収録時間の少ない本盤だけに、かつての写真集を何らかの形で添付するなどの工夫を講じて欲しいと思う聴き手は私だけではあるまい。演奏については名演ではある。しかしながら、これは一般的な評価であり、カラヤンによる演奏としては必ずしもベストフォームにあるとは言い難いのではないだろうか。本盤におさめられた楽曲をカラヤン&ベルリン・フィルによる演奏で聴くのであれば、幻想序曲「ロミオとジュリエット」及び組曲「くるみ割り人形」ともに1966年の演奏をおすすめしたいと考える。本盤の演奏の録音は1982年9月。これは、カラヤンとベルリン・フィルの関係に深刻な亀裂が走ることになったザビーネ・マイヤー事件が勃発した時期に相当する。したがって、カラヤン&ベルリン・フィルという黄金コンビによる圧倒的な演奏にも陰りが出てきたと言えるところであり、本演奏にも前述の1966年盤にあった重厚さや華麗さがいささか減じていると言えなくもないところだ。もっとも、本演奏においても、カラヤン、そしてベルリン・フィルともにお互いにプロフェッショナルとして水準以上の演奏を行ってはいるが、過去の名演からすればいささか物足りないと言わざるを得ないことについては指摘しておかなければならない。録音は、リマスタリングが行われたこともあって、従来盤でも十分に満足できる音質であると評価したい。
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