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TOP > My page > Review List of つよしくん
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6 people agree with this review 2010/11/06
素晴らしい音質のSACDの登場だ。本演奏については、既にSACDハイブリッド盤が発売されており、マルチチャンネルも付いていたこともあって、魅力的なものであった。ユニバーサルが、一度SACDから撤退したが、撤退前の最後のCDということもあり、本盤さえ聴かなければ、素晴らしい音質のSACDと高く評価できるものであった。しかしながら、本盤の音質は、そもそも次元が異なる。マルチチャンネルが付いていないのに、ここまで臨場感溢れる音場を構築することが可能とは、大変恐れ入った次第だ。ムソルグスキーの雷鳴のようなティンパニは、少なくとも通常CDでは表現し得ないようなずしりと響いてくるような重量感であるし、バルトークに至っては、複雑怪奇なオーケストレーションが明晰に聴こえるのが素晴らしい。そして、何よりも、今回の高音質化に相応しいのは春の祭典だろう。各管楽器の音の分離は驚異的であり、弦楽器の弓使いさえ聴こえてくるような鮮明さには、戦壊ささえ感じるほどだ。どんなに最強奏に差し掛かっても、各楽器の分離が鮮明に鳴り切るのは、正に空前絶後の高音質化の成果と言えよう。演奏は、サロネンならではの若武者の快演。
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6 people agree with this review 2010/11/05
驚天動地の超名演だ。テンシュテットが咽頭癌に倒れる直前の演奏会の記録であるが、正に命がけの鬼気迫るような凄まじい豪演とも言える。ムソルグスキーのはげ山の一夜は、スタジオ録音も遺されているが、大きく違うのは本盤ではオリジナル版を採用している点。オリジナル版に拘った指揮者としてはアバドがあり、同じくベルリン・フィルとの録音を遺してはいるが、本盤と比べると、演奏にかける気迫、力強い生命力や表現力において、雲泥の差があると言えよう。冒頭から、何事が始まったかと思われるような、大地が鳴動するが如きド迫力であり、演奏終了後は、あまりの凄さに聴衆が拍手を一瞬ためらっているような様子も記録されている。プロコフィエフも凄い。グティェレスのピアノも、圧倒的な技量の下、最高のパフォーマンスを示しているとは言えるが、ここでの主役はやはりテンシュテットだ。緩急自在のテンポ設定や思い切った強弱の変化をつけて、プロコフィエフのピアノ協奏曲の中でも難解と言われる同曲を見事に解析してくれている。そして、メインの「新世界より」。同曲にはスタジオ録音があるが全く問題にならない。これほどまでにオーケストラを追い立てていく圧巻の指揮ぶりは、殆ど狂気ですらある。いわゆるチェコの民俗色など薬にもしたくはなく、テンシュテットの手にかかると、同曲は、ベートーヴェンの交響曲にも匹敵するような大芸術作品のように聴こえる。終楽章など、主部は阿修羅のような勢いで突進していくが、それでいて、中間部の抒情も実に美しくて感動的だ。演奏終了後の熱狂も当然のことのように思われる。録音も非常に鮮明で素晴らしい。
3 people agree with this review 2010/11/04
壮絶な超名演だ。テンシュテットは、もし現在も存命であれば、今年は84歳(これは、スクロヴァチェフスキよりも若い)になったはずで、咽頭癌で若くして死去したのは、音楽界にとって大きな損失であったが、本盤のような燃焼度の高い演奏を繰り返していた点にかんがみれば、心身ともに相当に負担がきていたのではないかと思われるほどだ。それほどまでに、本盤の演奏は豪演だ。メインのドヴォルザークの第8番は、スタジオ録音がなく、数年前にBBCからライブ音源が発売されたが、演奏の質は本盤の方がはるかに上。このように劇的な名演は、他には類例を見ないものと思われる。第1楽章は、うねるようなテンポ設定と、随所に噴き出てくるようなパッションの爆発が圧巻だ。第2楽章も、緩急自在のテンポ設定を駆使した一大叙事詩のようなスケールの雄大さが素晴らしい。第3楽章は、感傷には陥らない高踏的な美しさが見事である。そして、終楽章は、おそらくは史上最速とも言えるハイテンポで全曲を駆け抜ける。ベルリン・フィルの重量感溢れる演奏も相まって、圧倒的な迫力の下、全曲を締めくくるのである。次いで、プフィッンナーの序曲が素晴らしい。この生命力に満ち溢れた劇的な名演は、テンシュテットだからこそ可能な至芸と言える。モーツァルトは、ピアニストのヒアーホルツァーのサポートを最優先させた感もあるが、それでも第2楽章の悲劇的な表現などにテンシュテットならではの個性も散見され、名演と評価するのにやぶさかではない。録音も、非常に鮮明であり、十分に満足できる。
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4 people agree with this review 2010/11/03
このような微動だにしないインテンポによる威風堂々たる重厚なベートーヴェンにはただただ頭を垂れるのみである。最近では、ベートーヴェンの演奏にも、古楽器奏法やピリオド楽器による小編成のオーケストラによる演奏など、軽妙浮薄な演奏が流行であるが、本盤を聴いていると、現代の演奏など、まるで子どものお遊びのように感じてしまう。それくらい、本盤は、巨木のような大芸術作品と言うことができるだろう。第1番など、誰よりもテンポが遅いが、何にも邪魔をされることがない悠々たる進行は、正に巨象が大地を踏みしめるが如き重量感に満ち溢れている。それでいて、ウドの大木に陥ることなく、随所に聴かれる情感の豊かさも聴きものだ。第7番も素晴らしい超名演だ。最近発売された1968年盤の方をさらに上位に置きたいが、本盤の方もほぼ同格の名演と高く評価したい。楽曲の進行は殆ど鈍行列車だ。しかしながら、鈍行列車であるが故に、他の演奏では聴かれないような旋律やニュアンスが完璧に表現されており、踏みしめるような重量感溢れるリズムなど、殆ど人間業とは思えないような圧巻のド迫力だ。コリオランも、単なる序曲にとどまらないようなスケール雄大な名演であり、あらためて巨匠クレンペラーの芸術の底知れぬ深さを感じさせられた。HQCD化によって、音質は鮮明さを増しており、クレンペラーの至高の芸術を高音質で味わうことができる点を大いに喜びたい。
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3 people agree with this review 2010/11/03
クライバーは極端に録音の少ない指揮者であったが、それ故に、遺された録音はいずれも名演と評価されている。私も、そうした見解に異論を挟むつもりはないが、どうも、私は、本盤のシューベルトの第3番&第8番には、他のベートーヴェンの第5番&第7番や、ブラームスの第4番と比較すると、クライバーらしさが感じられないという、いささか歯痒い思いをしてきたのが正直なところである。こうなったのも、録音のせいが大きいのではないかという気がしている。本盤のSHM−CD盤もそうであるが、どうも音場が非常に狭い気がして、クライバーの透徹したアプローチが表現され尽くされていないように思われるからである。ところが、今般、ESOTERICから、SACDが発売されて驚いた。今までとはまるで違う鮮明な音質であり、これまでの奥歯に物が挟まったようなもやもや感から漸く解放された。クライバーの透徹したアプローチが完璧に再現されており、これによって、長年の渇きが癒されたと言える。未完成の何と言う力強さ。クライバーは、殆ど気づかれない程度ではあるが、第1主題と第2主題のテンポを微妙に変化させており、これが全体を引き締めている点を聴き逃してはなるまい。第2楽章もテンポは速めであるが、随所にニュアンス豊かなスパイスを利かせており、正に名人の一筆書きのような趣きがある。第3番に至っては、競合盤が殆ど存在しないだけに、間違いなく史上最高の名演と言えよう。これほどまでに、生命力に満ち溢れた力感溢れる同曲の演奏は、これまでにお目にかかったことはないほどだ。いずれにしても、今般のESOTERIC盤は、これまでのCDとは別次元の究極の高音質CDとして高く評価したい。
2 people agree with this review 2010/11/03
カラヤンは様々なジャンルの音楽に名演を遺してきたが、その中でもオペラは最も得意の分野であったと言える。そうしたカラヤンのオペラのレパートリーの中でもワーグナーは重要な位置を占めていたと言えるが、録音運に恵まれていたかと言うと、必ずしもそうとは言い切れない面がある。バルシファル、ニーベルングの指環、ニュルンベルクのマイスタージンガーは、カラヤンならではの至高の名演と言えるが、他のオペラは、歌手陣などに条件が整わなかったこともあって、カラヤンの本領が発揮されたとは言い難い状況にある。それ故に、本盤のように、ワーグナーのオペラの序曲や前奏曲を集めた録音は大変貴重であると言える。カラヤンは、本盤の前後にも同様の序曲・前奏曲集を遺してはいるが、カラヤン&ベルリン・フィルの全盛期を考慮すると、本盤こそが、最高の名演と高く評価すべきものと考える。ニュルンベルクのマイスタージンガー前奏曲の堂々たる進軍は、ドレスデンシュターツカペレとの全曲録音よりもこちらの方の出来が上であるし、さまよえるオランダ人序曲の緩急自在のテンポ設定を駆使した演奏は、いかにも演出巧者らしいカラヤンの真骨頂であると言える。ローエングリン前奏曲の力感溢れる演奏は圧巻の迫力。パルシファルは、さすがに後年の全曲録音には及ばないが、それを除けば十分に感動的だ。本盤は、HQCD化によって、音質がかなりグレードアップされたが、今般、ESOTERICからSACDが発売された。パルシファルが収録されていないのは残念ではあるが、弦楽器の弓使いさえ聴こえてくるような鮮明な録音は見事なものがあり、ESOTERIC盤こそ、究極の高音質と高く評価したい。
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4 people agree with this review 2010/11/02
本盤の録音は1971年であり、正にカラヤン&ベルリン・フィルの黄金時代だ。両者の関係も蜜月状態であり、各管楽器のソリストとの関係も最高の状態にあったと言える。そのような指揮者・ソリスト・オーケストラが集まった演奏が悪かろうはずがない。本盤におさめられたクラリネット協奏曲、ファゴット協奏曲ともに、両曲の演奏史上最高の演奏の一つと高く評価したい。カラヤン&ベルリン・フィルは、いつもの豪快さは影を潜め、むしろ、モーツァルトの曲想にマッチした優美な演奏を心がけている。それは、ライスター、そしてピースクの名演奏をできるだけ際立たせたいという配慮があったものと思われる。後年のカラヤン&ベルリン・フィルをバックにした協奏曲の演奏では、どうしてもソリストの影が薄くなり、いわゆるソロの入った交響曲のようになってしまう傾向も散見されるが、本盤は、非常にバランスのとれた、いかにも協奏曲に相応しい演奏になっている点も高く評価できる。ライスターやピースクの演奏も卓越した技量をベースとした最美の演奏であるし、カラヤン&ベルリン・フィルの優美な演奏と相まって、これ以上は求め得ないような至高・至純の演奏に仕上がっていると言える。HQCD化による高音質化も、本盤の価値を大きく高めることに貢献している。
1 people agree with this review 2010/11/01
ハイドンの現存する2曲のチェロ協奏曲は、いずれも傑作の名に値する作品であるが、その性格は正反対である。第1番は、重厚で力強さを全面に打ち出した作品であるのに対して、第2番は、高貴で優美な美しさを旨としている。したがって、チェロパートも、こうした性格に照らした幅広い表現力を必要とするが、デュプレの演奏はこれ以上は求め得ないような完璧なものだ。第1番の第1楽章の何と言う力強さ。この数年後に不治の病を発症するとはとても思えないような体当たりの迫真の演奏を行っている。男性のチェリストでも、これほどまでの迫力のある演奏は、なかなか出来るものではないと思われる。オーケストラの音色を既に凌駕しているのだから、その桁外れの爆演には、聴き手は度肝を抜かれるはずだ。他方、第2番は、いかにも女流チェリストならではの情感溢れる歌謡性が際立つ。指揮者がバルビローリということも功を奏し、特に第2楽章の抒情的な美しさは感動的だ。いずれにしても、デュプレは、その体当たりの力強い演奏がクローズアップされがちであるが、本第2番に見られるような抒情的な演奏も素晴らしく、その意味では、表現力の豊かさにおいても群を抜くチェリストであったことがよくわかる。HQCD化による高音質化も成功している。
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10 people agree with this review 2010/10/31
巨匠クレンペラーにしか成し得ないスケール雄大な超名演だ。このような大オーケストラを用いた重量級の演奏様式は、古楽器奏法やピリオド楽器を用いた小編成のオーケストラによる演奏が一般化した今日においては、殆ど顧みられないものであるが、これだけの芸術性豊かな名演を聴かされると、今日一般に行われている小編成による演奏が、いかにスケールの小さい軽妙浮薄なもののように思われてくる。かつては、フルトヴェングラーやカラヤンなどが、大オーケストラを豪快に鳴らして、今日のマーラーやブルックナーの演奏様式に匹敵する重量級の演奏を繰り広げていたのだ。もちろん、バッハが生きていた時代の演奏様式を検証することの意義を否定するものではないが、芸術の感動という点において、それがどれほどの意味を持つのかは大いに疑問があると言わざるを得ない。バッハは、当時許されていた楽器性能の最大限を発揮させて、各楽曲を作曲しているのであり、時代考証的には問題があっても、クレンペラーの演奏に、バッハが感動した可能性だって否定できないのである。いずれにしても、これだけ重厚で力強いブランデンブルク協奏曲は、他にも類例はなく、このような演奏様式による、いわゆる旧スタイルの演奏の中では、随一の名演と高く評価したい。HQCD化による高音質化も成功している。
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2 people agree with this review 2010/10/31
グリーグの抒情小曲集は、メンデルスゾーンの無言歌集と並んで、ロマン派の二大名小品集と言えるだろう。グリーグが、ほぼ生涯にわたって作曲し続けた全10集、計66曲にも及ぶ荘大な小品集であるが、どの作品にも、北欧の大自然を彷彿とさせる美しい抒情に満ち溢れており、グリーグの巧みな作曲技法の下、珠玉の芸術作品に仕上がっていると言える。本盤が特徴的なのは、有名な小曲を抜粋するのではなく、作品集を抜粋したところにある。いずれも、北欧のピアノ音楽のスペシャリストである舘野泉ならではの名演であるが、抒情小曲集の中でも最高傑作との呼び声の高い第5集は、特に圧巻の出来栄えだ。羊飼いの少年の抒情はなんとも美しいし、ノルウェイ農民の行進曲は、あたかも眼前に、短い夏を終え収穫期を迎えた北欧の農民による秋祭りが行われているかのような、力強くも喜び見満ち溢れた表情を見せる。小人の行進のリズミカルな動きも、卓越した技量も相まって、至高の超名演と言える。締めくくりの鐘の音の憂いに満ちた抒情は、これぞグリーグとも言うべき至純の芸術性を湛えていると言える。全曲の中で最もスケールの大きいトロルドハウゲンの婚礼の日も、緩急自在のテンポ設定を駆使した演出の巧さが光る名演だ。HQCD化によって、音質がより一層鮮明になったのも素晴らしい。
0 people agree with this review 2010/10/30
ブーニンが1985年にショパンコンクールで優勝した際には、特に、我が国においてNHKで放映されたこともあって、センセーショナルな騒ぎとなった。確かに、個性的で才能のあるピアニストの登場であり、歓迎すべきことではあったが、何もあそこまで大騒ぎすることはないのではないかと思ったクラシックファンは、私だけではなかったと思われる。近年のブーニンは、自分の打ち出していくべき芸術の在り方に迷いと焦りが感じられ、私としてもあまり評価する気にならないが、コンクール優勝後の数年間は、さすがと思わせる才能の輝きが感じられる演奏も多かった。本盤もそのような演奏の一つと言えるのではないか。悲愴の第1楽章など、荒々しささえ感じさせるような凄まじさであるが、続く第2楽章の情感豊かさを聴くと、このダイナミックレンジの極端な幅広さにも必然性が感じられてくる。これは、他の諸曲にも当てはまるところであり、ブーニンは、才能のみを頼りにして、ベートーヴェンの4大ピアノソナタを、緩急自在のテンポ設定、極端とも言うべきダイナミックレンジの幅広さなどを駆使して、個性的な芸術作品を構築することに成功している。正に、才能、感性の勝利であり、これは、コンクール優勝後、数年間のみに許された個性的な演奏様式と言えるだろう。しかしながら、コンクール優勝の記憶も薄れ、より成熟した芸術を求められる近年においては、とても通用するものではなく、この高い壁を、どう乗り越えていくのか、あるいは乗り越えられるのかが、ブーニンの今後にかかっていると言えるだろう。
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6 people agree with this review 2010/10/30
今を時めく気鋭の指揮者とピアニストどうしの組み合わせ。5年前に録音されたピアノ協奏曲第1番及び第2番も名演であったが、本盤もそれに勝るとも劣らない名演だ。両者のアプローチの特徴を一言で言えば、現代的に洗練された透明感溢れるアプローチと言ったところではないだろうか。ラフマニノフの演奏でよく聴かれるロシア的情緒を強調した民俗色溢れるあくの強さなど、薬にしたくもない。研ぎ澄まされた圧倒的な技量をベースとした透徹したピアニズムを銘とするアンスネスの美音と、それを現代的に洗練された指揮のパッパーノが巧みにサポートするという構図であり、このような切れ味鋭い現代的アプローチは、両曲の中でも第4番の方により相応しいものと言える。第4番には、本盤と似たアプローチで現代的な音のドラマを展開したミケランジェリによる超名演があるが、本盤の演奏も、ミケランジェリ盤に肉薄する名演と高く評価したい。力強い打鍵といささかも情緒には陥らない高踏的な美しさの見事な融合は、同曲が第2番や第3番に劣らぬ傑作であることをあらためて認識させてくれる。他方、第3番も名演とは言えるが、こうした現代的なアプローチが、いささか淡白さを感じさせる箇所が散見され、もう少し情感の豊かさが欲しいという気がしないでもなかった。HQCDによる音質は非常に重厚な芯の通ったもので、鮮明さにも欠けておらず、本名演の価値を高めることに大きく貢献している。
7 people agree with this review 2010/10/28
クレンペラーの死の4年前、最晩年の演奏であるが、いかにも巨匠ならではの重厚な名演である。バッハの演奏様式については、近年ではピリオド楽器による古楽器奏法や、現代楽器による古楽器奏法などによる小編成のオーケストラ演奏が主流となっている。本盤に聴かれるような大編成のオーケストラによる重厚な演奏は、かつては主流であったが、近年ではすっかりと聴かれなくなってしまった。そうした旧スタイルの演奏様式を古色蒼然と批判する向きもあるくらいである。しかしながら、近年の演奏の何と言う味気ないことか。芸術性の高い演奏も、稀には存在しているが、殆どは軽妙浮薄の最たるものであり、学者は喜ぶかもしれないが、音楽芸術の感動という点からは著しくかけ離れているのではないかと私としては考えている。このような軽妙浮薄な演奏が流布している中で、本盤のクレンペラーの演奏は何と感動的に響くことか。テンポも微動だにしない堂々たるインテンポであり、例えば、第2番のバディネリのように、かつての大編成のオーケストラによる旧スタイルの演奏の際にも、早めのテンポで駆け抜けるのが主流の楽曲でも、深沈たるテンポで実に味わい深い演奏を行っている。金管の鋭い響きや、巨像が踏みしめるような堂々たる音楽の進め方など、スケールは極大であり、この旧スタイルの演奏としては、トップの座を争う名演と高く評価したい。HQCD化によって、音質に力強い芯が一本通ったように感じられるのも素晴らしい。
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5 people agree with this review 2010/10/26
かつては知る人ぞ知る存在に甘んじていたプレートルが、数年前に発売されたマーラーの交響曲第5番及び第6番の超名演や、ニューイヤーコンサートでの味わい深い名演によって、一躍、現代の数少ない巨匠の一人と見做されるようになった。そうした名声もあって、数々のCDが発売されるようになったが、私としても、あらためて、この指揮者のレパートリーの幅広さと実力を思い知らされている次第だ。本盤におさめられた楽曲は、両曲ともに得意のフランス音楽であり、そもそも演奏が悪かろうはずがない。それどころか、両曲ともに、それぞれの様々な演奏の中でもトップの座を争う名演と高く評価したい。フォーレのレクイエムはいわゆる三大レクイエムの中でも最も慎ましやかな楽曲。それ故に、殆ど聴き取れないような最弱音を駆使した演奏が多く、せっかくの同曲の魅力を台無しにしてしまうような結果に陥りがちであるのは大変残念な傾向にあると言える。ところが、本盤は違う。例えば、サンクトゥスやアニュス・デイの中間部、われを許し給えの壮麗な金管の響きや、アニュス・デイ、楽園にての冒頭部の何とも言えないフランス風のエスプリ漂う瀟洒な味わいは、他の演奏では聴かれないような感動的なものだ。それでいて、全体としては、同曲に必要不可欠の清澄な美しさに不足はないのは、巨匠プレートルの類まれなる至芸と言える。ドビュッシーの夜想曲も超名演。雲からして、誰よりも早めのテンポでセンス良く全体を描いて行く。他方、祭は力強い迫力が際立つが、ここでもセンス抜群の味わい深さは健在だ。そして、シレーヌのこの世のものとは思えないような天国的美しさ。これほどまでに瀟洒な味わいと美しさ、そして力強さをも兼ね備えた、いい意味でのバランスのとれた夜想曲の演奏は、これまでにも殆ど類例も見ないし、今後とも容易にはあらわれないものと思われる。
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